起源というのは、それよりさらに上のモノを指
す。前世があるのなら、さらにまたその前世がある
のは道理だろう? 前世が人でなく、さらにその前
世は物でもないのに、脈々と繋がる存在の糸。キミ
という魂の原点、キミという存在が創まった場所は
確かにあるんだ。だがその場所には生命なんて物は
存在しない。あるのはなんらかの始まりの因、物事
を決定づける何らかの方向性だけなんだ。
全ての元である渦の中で、閃く稲光のように発生
する何らかの方向性。“……をする”という意味づ
けが流れて、その流れに適った物質を象り、時とし
てソレは人間になる。始まりの因で発生した物事の
方向性というのかな。根源の渦という混沌で生じた
"……をする""……をしなければならない"という
衝動。結局、全てのカタチあるものがそうであるよ
うに仕組んでいる絶対命令。この混沌衝動をね、魔
術では起源という。
「まあ普段は決して知覚できない物だよ。ただ中に
は生まれながらにして起源に近い人間もいる。超能
力者と同じでね、そういった輩ほど秀でた能力を持
っていて、同時に社会から外れやすい。
ちなみに死を求める式の起源は虚無で、律から外
れようとする鮮花は禁忌という所か。式は近すぎる
からその衝動に引きずられているが、鮮花はいたっ
て普通だろう? 起源はあくまで因であって、個人
を支配するものではないからだ。───何かの弾み
で、それを自覚しないかぎりは」
「加えて私は死なない。私の起源は『静止』であ
る。起源を呼び起こす者は、起源そのものに支配さ
れる。すでに止まっている者を、おまえはどう殺す
というのだ」
……どうも君は白純里緒に肩入れしているようだ
から忠告しておこう。いいか、起源覚醒者はたしか
に自己の人格を失ってしまう。しかしそれが二つに
分かれる事はないんだ。白純里緒という意志が残っ
ているのなら、残っているうちは衝動を抑えられ
る。人格は二重人格のようにスイッチしない。彼は
自分の意志で人を食べているんだぞ、黒桐。(以下略)
端的に言ってしまえば霊魂だ。
あるいは、元素を結合させている"存在の雛形"だな。
この、形而上の概念をデータとしてカタチにしたものが
霊子だ。エネルギーをもった情報、
生命を得たデータと思えばいい。
*1 アーチャートーク 11日目