空き巣タブンネ一家 1日目

俺はとあるトレーナー、自分で言うのもなんだが腕も立つ
あらゆる地方を旅をするなかで修羅場も何度かくぐり抜けてきた

そんな俺だがとある出来事でかなりの大金を手に入れてしまった
ある時、川で溺れている子供を助けたらなんとその子供は有名な大企業の社長の一人息子とのこと
…後はわかるな…?どうしてもお礼をしたいという社長の言葉を断りきれず、大金を押しつけられてしまった

俺はこの金の使い道に悩んでいた、大金というのは持っているとロクなことがない
そしてしばらくして俺はある一つのことを思いついた

それから何ヵ月か経った後…

俺はとある大きな一軒家の前に立っていた
庭には綺麗に手入れされた芝生が敷き詰められ、近くには綺麗な湖がある
二階建てで造られた家はまるで光を放っているような見事な出来で
これから自分の主となる人物を今か今かと待ち構えている
そしてそれに応えるべくを俺は家に向かって歩み始めた

そう、俺は家と土地を買ったのだ

玄関から新築の家に入り、まずは家の構造を確認する
廊下はかなり広く造られている、それに限らず各部屋を出入りするための入り口なども不自然なほどに大きい
また、それらに見劣りしないほどに居間もかなりの広さを持っている
一階にはキッチンや風呂などがあり、他にも小さな小部屋も存在している

次に俺は二階へと上がった、ちなみに二階の廊下からは居間が見降ろせる造りになっている
二階は俺の部屋や書斎、来客用の部屋などの部屋で構成されていた

一通り家の中に目を通したら、俺は居間に向かう
そして腰につけたモンスターボールからポケモン達を解き放った
ボールから出てきたのはエーフィ、ルカリオ、ゾロアーク、エアームド…そしてラプラスにカイリュー
みんな俺と共にバトルを制してきた相棒だ

ラプラスやカイリューといったサイズの大きいポケモンは普通の家ではボールの中か、外に放つかしかできない
そういったポケモンと暮らすために俺はこの家を設計してもらった、不自然に広い廊下などもそのためだ

そんなわけで俺はまず新しい家に対する相棒達の反応を見てみる
エーフィはテラスに出るための窓から庭を眺めている、ちなみにこいつは俺の一番最初のポケモンだ
ゾロアークは広い空間を堪能するように辺りを跳ね回っている…あ、ルカリオがそれを見て対抗心を燃やすよう付いていっ


実はこの二匹、互いをライバル視しているので些細なことで勝負になる、だからって仲が悪いわけじゃないが
居間は屋根に達するまでに天井が高い、そしてそれなりの高さに設置された止まり木にエアームドはいた
カイリューは跳ね回る二匹を座って眺め、ラプラスはエーフィの隣で一緒に庭を眺めている

どうやら仲間達の期待には応えられそうだ、俺はこれからの生活を想像した
ポケモン達と過ごす日々はとても楽しそうだ、今までもそうだったがそれも旅の中でのことで
こうして落ち着いて暮らす生活も悪くなさそうだと俺は考えた

だが、そんな俺達の城を踏み荒らすものがこの世に存在した…

数日後、俺はトレーナー仲間に誘われて手持ちを連れてライモンシティに行ってきた、勿論バトルだ
そうして新築の自宅に帰ってきたのだが…

「…?」

玄関にて不審な気配を感じ取る、俺はエーフィとルカリオを出し、家の中を調べる
居間に入り、俺はハッと息を飲んだ、居間がグチャグチャに荒らされていた為だ
観葉植物は鉢植えごと倒され土がこぼれている、カーペットには泥にまみれた足跡のようなもの

「フィ~」

唖然としているとエーフィが何かを感じ取ったのか、鳴き声を上げた
その声に俺は我に返ると、エーフィは案内するようにキッチンに向かって歩いていく

キッチンも同様に荒らされていた、泥の付いた足跡のようなもので床は酷く汚れ
冷蔵庫は全て開け放たれ、中の食べ物には歯形が付けられている

(野生のポケモンが忍び込んだか…)

人間の空き巣であればこんな無意味なことはするまい、そう考えてる内にエーフィは今度は二階へ向かう

二階に上がり各部屋を調べていく、俺は警戒をしながらもほんの少し安心していた
人間の空き巣の場合、遭遇したらどんな手段に出られるかわからない
それどころか今入ろうとしているドアの陰からナイフを振りかざして襲ってくるかもしれない

野生のポケモンならば、そのような心配はない
そして俺の傍には鍛え抜かれた相棒達がいる何も恐れることはない

そして俺はこの空き巣を働いた犯人達を見つけた

タブンネだ、大人のタブンネが二匹、子供のタブンネが四匹、まだ赤ん坊と思われる個体が一匹、そしてタマゴが一個…
おそらくこのタブンネ達は家族だろう、大人のタブンネが子供達の両親と思われる
空き巣の犯人達は来客用の部屋のベッドに寝そべり、ミィミィと寝息を立てている

(こいつら…)

エーフィとルカリオを待機させ、音を立てないようにタブンネ達に近づく
幸せそうに眠るタブンネ達を見て、俺は怒りを覚えた

土足で踏み荒らし、食物をむさぼり、我が物顔でベッドを占領し
そのくせこの媚びるようなピンク色の体の生物が許せなかった

俺は起こさないようにそっと赤ちゃんタブンネ(ベビンネ)を拝借した
こいつらに地獄を見せてやろう

ベビンネは寝ぼけて俺の指にしがみつき「チィチィ」と寝息を立てている
普段の俺ならばこのベビンネを見て癒されていただろう、だが今は駄眠をむさぼる卑しい生物にしか見えない
それほどに俺は自宅を荒らされたことに怒りを感じていた、そしてタブンネにもだ

あれがピカチュウやポッポだったらまだこれほど怒りを覚えることはなかった
俺は知っているのだ、タブンネというポケモンを…

なにせ俺は前にもタブンネに空き巣に入られたことがあるのだ
その時はキッチンを荒らしているところを見つけ、現行犯で捕らえたのだが…
そのタブンネは俺を見ると媚びるような視線で見つめてきたのだが
俺はその時にはタブンネというポケモンの本性を知らなかったため
タブンネを可愛いと感じてしまい「二度来るなよ」という警告のみでタブンネを逃がしてしまった

しかし後日再びそのタブンネは現れた、見つけた時と同じくキッチンで食物を漁りながら発見された
俺を見るとタブンネは飛び上がって驚いたが、すぐに媚びるように「ミィミィ♪」と鳴いた

その時だ、俺がタブンネという生物を本当に知ったのは

俺はエアームドを出し、ベビンネを止まり木にまで運ばせてそのまま止まり木で待機してもらう
ルカリオをボールに戻して俺は一階で物置として使用している部屋から
ビデオカメラとノートPCを取り出し、さらにビデオカメラを専用の台と組み合わせた
この台は遠隔操作で浮遊させながら動かすことができ、またビデオカメラはPCにリアルタイムで映像を映せる
要するに遠隔操作できる監視カメラだ、ちなみにこれは前のタブンネに制裁を加える際に購入した物である

タブンネ達はベビンネがいないことに気づけば大パニックになるだろう
まずはその慌てふためく様子を離れたところから見させてもらうとしよう…

準備を整え、カメラをタブンネ達のいるところまで移動させると丁度タブンネ達は目を覚まし始めた
ちなみに俺とエーフィは一階の小部屋に隠れているが結構狭く、隠れて悪巧みをしている感じが堪らない

「ミィ…ミ?」「ミィミィ」

タブンネ達は次々と目を覚ましていき、子タブンネ達が小さい口を開けて欠伸をしているそんな時
父タブンネ(パパンネ)が辺りを見回し、何かを探しているようだ

「ミ?ミ…ミ…ミーーーーーーッ!」

途端に甲高い声が響く、気付いたな

タブンネ達がパニックになってベビンネを探して走り回っている

「ミィーッ!ミィーッ!」

恐らくベビンネを呼んでいるのだろう、そんな感じの声だ
残念ながら赤ちゃんは捕らわれの身です

「ミ”ヤ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!」

しばらくタブンネ達の必死な姿を見て楽しんでいたら、突然タブンネの絶叫が聞こえた、な…何だ!?

「ミィ!ミィィィ!」

階段の一番下の段で子タブンネが悲鳴を上げながらのたうちまわっている
どうやら階段から転がり落ちたみたいだ、ざまぁw

「ミィィ、ミィミィ」「ミゥゥゥゥ」

すぐに両親ネが駆けつけ、落下ンネを抱きしめる
子タブンネは泣きじゃくっており、体の至るところが腫れて血を流している
それを見てママンネとパパンネが慰めている、癒しの波動使えないのかこいつら

「ミィ!」

ママンネは何かを思い出したようにキッチンに向かって駆け出す

「ミッミ~♪」

そして得意気に台所からくすねた木の実を子タブンネの元に持ってくる

「ミィ~…ミ?ミィ♪」

途端に子タブンネは泣き止み、木の実をかじり始めた
そのオボンの実は誰の物だと思ってやがる

そうしてさらに怒りに火を付けた俺だった

「ミィ!」「ミィミィ」「ミィ~♪」

シャクシャクと音を立ててオボンをかじる子タブンネを見て、他の三匹の子タブンネ達もママンネに強請り始める
それに応えるように再びキッチンに走り、オボンを調達して子タブンネ達に与えるママンネ

「ミィミィ♪」「ミィ~♪」「ミプッ…ミポッ…」

焦って喉に詰まらせて咳込む子タブンネの背中をトントンと叩いてやるパパンネ
至福の笑顔で食事をするタブンネ一家は普通ならとても癒される光景に見えるだろう
もっとも俺にとってはただの盗人一家にしか見えないわけだが

「ミィ~…ミゥ~…」

タブンネ達を見ているとオボンを食べ終わった子タブンネの一匹が四つん這いになり
尻尾を上げてふんばるような声を出している

「おい…まさか」

悪い予感は当たった、子タブンネの肛門から茶色の糞が飛び出して床を汚していく
特に悪びれる様子もなくすっきりしたような顔を見せる子タブンネ

(頃合だな)

その様子を見て、俺は次の行動に移す
こいつらの正体は改めて確認したし、そろそろ俺のいかりのボルテージも頂点に近い

待機しているエアームドに「寝ているベビンネを起こせ」という指示をエーフィにテレパシーで伝えてもらう

「クアァァァ!」

指示を受け取ったエアームドは止まり木に付いているカゴで寝ているベビンネをつつき始める

「ヂァッ!?チィ!?…チィィ!」

夢の世界に浸っていたベビンネは突然のつつかれる痛みに目を覚ました

「チ…?」

周囲を見回し、エアームドと目が合う
そして…

「チィィィィ!?チィ!?チィチィ!」

ベビンネの絶叫が響く、目が覚めると母親はおらず、近くには今にも自分を食べてしまいそうな鳥ポケモン
そしてエアームドの止まり木は居間からかなりの高さの場所に位置している

「チッ!?チ…」

ベビンネ下を見降ろした途端に悲鳴が止まり、ポタポタとカゴから液体が落ちていく
どうやらあまりの高さに失禁してしまったようだ

「ミィ!?ミィミィ!」

さて…先程の悲鳴に耳の良いタブンネ達が気づかないわけがない
ママンネが悲鳴が聞こえた居間に駆け込み、ベビンネを探して鳴く

「チィ!チィチィ!」「ミッ…!?」

自分の母親を見て助けを求める様に鳴くベビンネ、それを聞いて上を見上げたママンネは…

「ミィィィィィィィ!?ミィ!ミィィィィ!」

頭上には愛する赤ちゃん、そしてそれを捕らえている鳥ポケモン
悲鳴を上げつつ腰を抜かして尻餅をつくママンネ

「ミッ!?ミィィィィィ!!」「ミィィィ!」

後からやってきたタブンネ達も大きく悲鳴を上げる

「ミッ!ミッ!ミィィィ!」

赤ちゃんを返して!と言ってるいるのだろう
ピョンピョンとジャンプしながらエアームドに向かって両手を上げるママンネ

「ミ…」「ミィィ…」

一方子タブンネ達はエアームドにおびえて、縮こまっている

「……」

下から両手を上げて叫んでいるタブンネをジッと見ているエアームド

「チィッ!?」

そして次の瞬間に行動を起こし、ベビンネを掴んで居間に降下していく

「ミィ~!」

エアームドがベビンネをもって床に降り立つと、ママンネが無防備にもベビンネに駆け寄ろうとする

「チィ!チィチィ♪」

エアームドが掴んでいた足を放し、解放されるベビンネ
喜ぶように鳴いてママンネの元にハイハイで寄ろうとするが…

「ヂッ!?ヂェッ…チ…」

そのベビンネの背中をギュウと押さえつける様にエアームドが踏みつけた!

「ミーッ!!ミギーッ!!」

自分の息子を踏みつけられて怒りの声を上げるママンネ

「ミィッ!ミィィ!」

赤ちゃんを放して!とでも言うかのようにベビンネを踏みつけている足を指差す

「ヂ…ヂィ…」

背中を潰されそうな重みに濁った鳴き声で助けを求めるベビンネ
目の前で苦しむ様を見せつけるようにエアームドは徐々に足の力を強めていく

「ミフーッ!ミガーッ!!」

威嚇するように激しく声を上げて、ついにママンネはエアームドに攻撃を仕掛けようとする

ガキィィィィィン!

勢いをつけてエアームドの胴体に頭からすてみタックルを食らわす、確かな手応えに笑みを浮かべるママンネ…だが

「ミッ…!ミィアアアアア!!!」

直後に脳天から走った鈍く、それでいて激しい痛みにたまらず叫ぶママンネ
ハンマーで殴られたように頭を押さえながらゴロゴロと転がり苦しんでいる
一方エアームドは平然としており、まともに突進を受けたというのに傷一つ付いていない
その状況を見てパパンネ達はわけがわからず混乱していた

エアームドはあらゆるタイプに耐性を持つ頑強な鋼タイプだ、あらゆるポケモンの中でも屈指の防御力を持っている
さらにそれを活かすために俺はエアームドの体力と防御を一片の無駄もなく鍛え上げた
まさに鋼鉄の盾そのものと言ってもいい体だ

一方タブンネという種族は攻撃力が低く、戦闘に適した種族ではない
反動が出るほどの勢いで突進するすてみタックルでも、エアームドにダメージを与えるなど無理な話だ
それどころか鋼鉄の壁に頭から衝突したのも同然、その反動からくる痛みは想像を絶する

「ヂ…ヂィィィィ!」

ママンネがのたうちまわり、パパンネが目の前のことに呆然としている間もベビンネは苦しんでいる

「ミッ!ミィィィィ!」

苦しそうな声を聞いてハッと我に返り、ベビンネを救出しようとエアームドに近づくパパンネ

「クァァァァ!」カッ

「ミッ!?ミィ…」

パパンネを威嚇するように翼を広げ、鋭い眼光でパパンネをエアームドが睨む
パパンネはそのあまりの殺気に思わず足を止め、萎縮する

このまま戦っても勝ち目はない…そう考えるパパンネ
どうすれば赤ちゃん助けられる…早くしないと


そしてパパンネは一つの方法を思いついた

パパンネが再びエアームドに近寄っていく、だが先程とは少し様子が違う

「ミィ♪ミィ~ン♪」

媚びるような甘ったるい声を出しながらエアームドにすり寄っていくパパンネ
クリームのような尻尾を可愛らしくフリフリしたり、キラキラと目を輝かせてみたり
エアームドに対して精一杯自分の可愛さをアピールしようとしている

パパンネの作戦とはなんということはない
要するに媚びて許してもらおうとしているのだ

「ミィ!」「ミィミィ♪」「ミィン♪」

それを見て子タブンネ達もパパンネと一緒に媚び始める

”僕達可愛いでしょ?そんな僕達に酷いことできないよね、許してくれるよね”

そんなタブンネ達の声が聞こえてくるようだ
エアームドは先程から動かずタブンネ達をジッと見据えている
一見して何を考えてるのか解らない鉄仮面だが、トレーナーの俺にはわかった


”バカなやつらめ…虫酸が走る!”

突然エアームドが動き!翼を広げる、それを見てパパンネが「ミィ!?」と驚いた声を上げた
怒らせてしまったことに気づいて逃げようとするタブンネ達、だがもう遅い

「ミィアァァァァ!ミギュッ!?」「ピキャア!」「ミィエッ!」

エアームドがバサーッ!大きく羽ばたいたことで強い突風が発生し、パパンネ達は吹き飛ばされていく
勢いよく壁に叩きつけられ、続けざまに悲鳴をあげるパパンネ達
しかしまだエアームドの怒りは静まっていない

「ミ…?ミッ…ミギャアアアアアアア!!」

背景にとけ込むように隠れていた岩がさらにパパンネ達を痛めつけていく
そう、吹き飛ばされた場所にステルスロックが仕掛けられていたのだ

「ミィ…」「ミェ~ン…」

タブンネ達は鋭い岩に体中をガリガリと削られ、酷い有り様となっている
パパンネの体はあちこちの皮が破れ、出血している
子タブンネの中にしても同様だ、罠程度の技でしかないのでそれほど深い傷は無い

「ミィ…ミェェェェェン!!」

子タブンネの中でも特に身体の小さいのが、痛みに耐えられず泣き出してしまった
それを見てよしよしという風に慰めるパパンネ、どうやら本当に癒しの波動を使えないらしい

愚かなタブンネ達に制裁を加えたエアームドだがそれだけでは終わらなかった
ギリギリと再びチビンネを押さえた足に力を入れていく

「チギィィィィ…チィッ!チッチ~!」

今度こそ潰そうとしているかのようなエアームドの足に、たまらず悲鳴を上げて助けを求めるベビンネ

”苦しいよう…助けてぇ…”

そんな声が聞こえてくるかのようだ

「ミィ!ミィィィィ!」

立ち直ったママンネが赤ちゃんの助けを乞うかのように鳴く

”お願い!もうやめてあげてー!”

それに続くようにパパンネも許しを請い始める

”赤ちゃんを助けて!お願いします!”

床にピッタリと這いつくばってひたすらベビンネの命乞いをするパパンネとママンネ
そこには先程の媚びていた生物としての面影はなかった

(さて…と、そろそろいいか)

このままここでエアームドにやらせておくのにも飽きてきたところだ
そろそろタブンネ達とのご対面としよう

エーフィを連れて小部屋から出るとそのまま居間へと向かう俺だった

「エアームド、赤ちゃんを放してやってくれ」

居間に現れるなり、エアームドにそう指示する
エアームドはそれに従いベビンネの上から足をどける
元々あそこで命まで奪うつもりはなかった、こんなことで死なれてはつまらない

「チィ!チィチィ!」

ようやく背中からくる圧迫感から解放され、両親の元へと向かっていくベビンネ

「ミィ!」「ミィミィー!」

ベビンネの無事な姿を見て喜ぶ両親ネ

「ミッミ♪」「ミィ!」

それを見て万歳のような仕草をしている子タブンネ達
目の前に自分達が荒らした家の主がいるというのに…

「おい」

「ミッ!?」

突然話しかけられて飛び上がって驚く両親ネ、子タブンネ達も驚いて万歳を止める
さてと…まずは…

「エーフィ!」

「フィ!!」

俺はエーフィに先程与えておいた指示を実行させる
エーフィの目が光り、家中の外へと通じる入り口が封鎖される

これでまず逃げられることはなくなった、この家で存分に虐待してやろうタブンネ共

それから俺はタブンネ達に何も言わずにキッチンに行き、料理を始めた
既に日は沈んでおり、時計は7時を指している、夕食の準備というわけだ

タブンネ達はというと、俺が何もしてこなかったことと
、エアームドがボールの中にいることに安心したのか居間でくつろいでいる
子タブンネ達はミッミッとじゃれあい、ベビンネはママンネからおっぱいをもらっている
そして時折キッチンから漂うに匂いに涎を垂らしてミィ!と鳴くタブンネ
ちなみに荒らされた居間やキッチンは俺が全て片づけた
タブンネにやらせようと思ったが恐らく無駄だと思ってやめた

「よし!できたぞー!」

俺がそう叫ぶとタブンネ達はパッと顔を輝かせた
ミィミィと俺の傍に群がり、早く頂戴とせがんでいる

「みんな!ご飯だぞ!」

「ミッ!?」

俺はタブンネ達を無視し、腰のボールからポケモン達を出す
それぞれカイリューやルカリオといったポケモンに合わせて作ったフーズをポケモン達の前に並べていく
俺自身は簡単なサンドイッチで我慢することにした

「ミィ…ミィミィ?」

私達の分は?とでも言いたげに鳴いてくるママンネ
それも無視して俺達は夕食を食べ始めた

カイリューもラプラスもその身体から想像できるように大食いだ、ゾロアークもよく食べる
エアームドとルカリオは小食でエーフィは普通といった感じだ
みんな俺が作った物を気に入っておいしそうに食べている

そんな中、タブンネ達は何も与えられず腹を空かせていた

「ミィ…」「ミィミィ…」「ミィ…ミ~!」

先程からママンネとパパンネが俺に向かって媚びたよう鳴いてきてるが当然無視する
そう、奴らには葱一本与えない…空腹にしている奴らの前でうまそうな食事を取り
奴らを精神的に追いつめていく、そうすれば奴らは必ずあの行動に出る

「ミィ~…ミッミィ~…」「ミィ…ミィミィ…」

子タブンネ達が「お腹空いたよう」とでも言っているのか、悲しそうに鳴き始める
それを聞いた、ママンネとパパンネが意を決したように動き出した

「ミィ~♪」「ミィミィ♪」

例の媚びるような声を出しながら、食事を続けているカイリューにすり寄っていく両親ネ
それを見たカイリューは食事の手を止め、両親ネ達に興味持ったように見始める

「ミッミ!」「ミィ~…ミィミィ」

カイリューに向かって必死に何かを訴えている両親ネ
俺はエーフィに頼んでテレパシーで通訳してもらうことにした

「ミィ!ミィミィ!ミィ~ミ、ミィ!ミッ!」

”お願いカッコいいドラゴンポケモンさん、私達にご飯を少し分けてくれないかしら?”

なるほどやっぱりそう言ってたのか、なんとなく予想はついていたが…
俺じゃなくて俺のポケモンに頼めば飯がもらえると思ってるいるのかこいつら
その思考回路には俺は呆れてしまう、流石はタブンネだ

さて、カイリューは何も言わずにそれを聞いていたが
聞き終わった途端にプイッとそっぽを向き、食事を再開する
カイリューというポケモンは温厚な種族としと知られているが
逆鱗をLv技で覚えるように怒りの感情も当然持っている
居心地のいいこの空間を荒らしたタブンネ達にカイリューは…いや、この場の手持ち達全てがタブンネに敵対心を抱いている
奴らに飯を与える者はいないだろう

「ミィー…」

カイリューに拒絶され、落ち込んだように鳴く両親ネ

「ミッ!ミィミィ!」

だがすぐに立ち直り、今度はラプラスに向かって強請り始める…が、すぐに拒絶された
エーフィとルカリオは既にタブンネを睨み、追い返す体勢になっている
先程の恐怖が残ってるのかエアームドには媚びようとしないタブンネ達
そんな中、ゾロアークだけは興味を示していないかのように食事に没頭していた

「ミッ!ミィミィ!」

それを見て次はゾロアークに強請りに行く両親ネ達
エーフィとルカリオには媚びる前から拒絶されたので
それをしないゾロアークには少しでも通じると思ったのか

馬鹿な奴らめ…


「ミギャアアアアアアアア!!!?」

突然響いたタブンネの全力の悲鳴、見るとパパンネの腹が深く切り裂かれている
恐らく肉には楽々達しているだろう、おびただしい量の血がパパンネの腹から流れ出ている

「シャアアアアアアッ!」

俺のゾロアークは食事を邪魔されるのを極端に嫌うのだ
ゾロアークの怒りの琴線に触れ、腹を爪で切り裂かれて泣きわめくパパンネ、まさに自業自得

「ミギャアアアア!!!ミ…ミェェ…」

「ミィ!?ミィ!ミィミィ!」

腹を切り裂かれた痛みに絶叫するパパンネの声が弱り始めていく
それを見てママンネが何か叫んでいる、頼むエーフィ

”あなた!しっかりして!子供達と私を残して死んではダメ!”

「ミィー!」「ミィミィ!」

”パパー!””死なないで!”

子タブンネ達もパパンネの傍に駆け寄り、励ましている。いい家族愛だ、感動的だな、だが無意味だ

「ミ…ミィ…ミッ…!ミギィ…。……」

だがそんな家族の呼びかけも虚しくパパンネは大きく痙攣して息耐えた
呆気無い最後だ、もっと苦しめてやろうと思ったのに運の良いやつめ、パパンネ:死因→出血多量っと

「ミ…?ミィミ…?ミ…ミギャアアアアアアアア!!!!」

愛する夫の死にブルー瞳から涙を流しながら泣くママンネ

「ミィィィィィ!」「ミェェェン!」「ミフーッ!」

子タブンネ達はパパンネの死を受け入れられず未だにパパンネに呼びかける者、涙を流す者
生意気にも怒りでこちらを威嚇する者までいる、どうやら自分の立場がわかってないようだ

「おい、汚いからそのゴミを片づけとけよ」

俺はそれだけ言い残して食事を続けた

パパンネが死んだ後、俺は食事を終えて片づけを始めた
エーフィ達も満足したように笑顔になっている、それでこそ作りがいがあるというものだ

「ミフーッ!!ミガーッ!!」

そんなことを考えていたら突然威嚇するような声が聞こえてきた
見てみると俺に向かってママンネが激しく鳴いている、全然怖くねぇ(笑)

「なんだ?」

「ミギーッ!ミィミィ!」

恐らくパパンネのことで訴えているんだろうな、俺は何もしてないのに
ま、万年お花畑思考の糞豚には理解できないか

「ミギィィィィィ!!」

そんな俺のバカにした思考を感じたのか唸り声をあげて俺に突進してくる

「エーフィ!」

俺が叫ぶと素早くエーフィは行動に移った、ノロマなタブンネとは雲泥の差だ

「ミッ!?ミィィ!?」

サイコキネシスによってママンネの体が宙に浮かぶ

「エアームド、ステルスロック」

エアームドに指示を出し、尖った岩を並べさせる
ちなみにこのコンボはタブンネ虐待によく使われるらしい
まず宙に浮くママンネをステロの上に移動させる

「ミィ…ミ…」

不安そうな声で鳴くママンネ、先程の威勢のよさはどこにいったのやら

タブンネは家族の絆が人一倍強いと聞いたのだが
しかしママンネが危機に瀕しているのに子タブンネ達は先程から音沙汰無しだ
俺はふと気になって子タブンネ達を探して周りを見回した

「ミィ…」「ミィ」

いた、部屋の隅でおびえてこちらを見ている、なんだかつまらないな…
チビ共にももっと恐怖を与えてやりたい…よし!

「おーい!チビ共ー!いいのかー?大事なパパに続いてママも酷い目にあっちゃうぞー^^」

「ミッ!?」

パパという言葉に反応する子タブンネ達

「ミッ!」「ミィミィ!」

狙い通りだ、ビクビクしながらもこっちに近づいてきた
ミィミィという媚び声で俺のズボンの裾を引っ張っている

「なんだ?ママを助けてほしいか?」

「ミッ!」「ミィ!」

コクコクと頷く子タブンネ達(これよりチビンネと名付けよう)

「そうだな~、どうしようかな~?」

「ミィ♪」「ミィミィ♪」

俺の心が揺れてると思ったのか、先程よりも一層可愛らしく媚び始めるチビンネ達

「よーし、君達の可愛さに免じて助けてあげよう!」

「ミィ!」「ミィミィ~♪」

それを聞いてチビンネ達の顔がパァっと輝く

次の瞬間、ママンネが岩の上に落下した

「ピギャアアアアアア!!!?」

無数の尖った岩の上に体全体で落下し、ママンネの悲鳴があがる
鋭い切っ先はママンネの全身に突き刺さり、真っ赤な血が岩を赤く染めていく

「ミィィィィィ!?」「ミィ!ミィ!」

”助けてくれるって言ったのに!どうして!?”

チビンネ達が叫びながら訴えてくる、もはやエーフィに頼まなくてもわかった

「誰がお前らみたいな豚を可愛いなんて思うかよ!身の程を知りな、この空き巣共!」

チビンネ達は信じられないという表情で愕然としている、あー…スッキリした

「ミ…ミィ…」

ママンネがピクピクと痙攣しながら、蠢いている
さらには赤く染まった血溜まりと茶色の物体が混じっており、どうやら漏らしたようだ
俺がエアームドにステルスロックを消してもらうとズリズリと血の軌跡を残して這いずるママンネ

ちなみにこいつらを調べたところ、ママンネは再生力、パパンネは卑しの…失礼、癒しの心だった
つまりママンネの傷は放っておいても直っていく、ちなみにタブンネは生命力が強く
この程度では死なない…いや死ねないのほうが正しいか、パパンネは傷が深すぎて血が流れすぎてしまったがマズかったようだ

「ミィィ…」

全身に穴だらけになりながら弱々しく鳴くママンネ、さすがにこれ以上痛めつけたら死んでしまいそうだ
パパンネがくたばった以上、ママンネに今死なれてはマズいし、それに…

『ポッポー!ポッポー!』

ポッポ時計を見ると針は既に23時を指していた、夜ももう遅いし
それにパパンネやママンネの血などを掃除しなければならない
夢中になって気づいてなかったが居間に血の臭いがこびりついたら大変だ
ちなみにパパンネの遺体は後でゾロアークがおいしくいただくそうだ

「ミ…ミィ!」「ミィミィ!」

全身に穴の開いた姿に少しおびえながらもママンネ励ますチビンネを尻目に俺は片づけを始める

明日も楽しい一日になりそうだ

続く 二日目
最終更新:2015年02月20日 17:17