数秒後、轟音と閃光が止んだ。
エレナさんの投げた『アレ』とは、警察や軍事関係の人なら知っているだろう。
フラッシュバンだ。
スタングレネードとも言うが、主に人質事件などの際に、犯人を爆音と閃光で鎮圧する武器だ。
しかしそんな物も所有しているとは…
タブンネ被害者の会恐るべし…
「守る」でガードしてもらったから、俺とエレナさんは何とも無い。
対して、それをもろに浴びたタブンネどもは、
「ヂャアアァァァァッ!ヂュアアァァァァッ!」
(パパアアァァァッ!ママアァァァッ!)
「ミビュアァァァッ!ミビャアアァァァッ!ヂャアアァァァッ!」
(おみみがきこえないよーっ!おめめもみえないよーっ!ママアアァァァァッ!)
「タビュアッ!タビュアアァァァッ!」
(チビちゃん!どこにいるのぉぉぉっ!)
と、お互い聞こえないのに喚きながらのたうち回ったり、手探りで自分の親か子を探している。
聴覚の発達したタブンネどもにとってこの爆音は、間近でジェット音を聞くより遥かに地獄だろう。
もしかしたら聴覚は永遠に失われたかもな。
たまに大人タブンネが子タブンネにつまづいて「のしかかり」を決めたりしている。
「ブギュアアァァァッ!ミビャアァァァッ!」ギュウギュウ ジタバタ
(おもいよぉぉぉぉっ!ママアァァァァッ!)
「タ、タブッ!?タブ…、タブネェェェェッ!」
(ミッ!?チビちゃんなの!?…ちがう…、チビちゃんどこなのおぉぉぉっ!?)
よかったなぁ、「のしかかり」を覚えられて^ ^
皆でくるくる歩き回ったり、のたうちまわる光景は、まるでタブンネの無様な野外ミュージカルだ。
実に滑稽である。
さてさて、今のうちに動きを封じなければ…
「アリアドス、デンチュラ、出番よ!」
エレナさんは援軍の人から受け取ったポケモンを繰り出した。
「ではアレンさん。アリアドスをお貸しします。」
「ありがとうございます。よろしくなアリアドス!」
「アリアリ~♪」
徐々に目が見えてきたタブンネどもを、アリアドスとデンチュラが片っ端から糸で絡めていく。
「デチュラッ!」シュ- シュ-
「アリアーッ!」シュルシュル
「ミヒッ!?ミヒュアアァァァッ!」ジタバタ
(ミッ!?助けてぇぇぇっ!)
「ミヒィミヒィ!」ジタバタ
(いやだいやだよぉ!)
そして巣穴へ逃げようとする豚は、「蜘蛛の巣」で逃がさない。
突き破れると思ったのか、豚どもは蜘蛛の巣に突進した。
「ミィィィィッ!」ドスドス
「チィィィィッ!」ポテポテ
当然豚なんぞに突破できるはずもなく、ある豚はアリアドスの粘着糸で引っ掛かり、ある豚はデンチュラの電気糸で悶え苦しんでいる。
タブンネはもう逃げられない!
「タブゥタブタブネェェェェッ!」ジタバタ
(誰かここから放してぇぇぇぇっ!)
「ミ”ィ~!ミ”ヒ”ィミ”ヒ”ィィィィッ!」ビリビリビリ
(マ”マ”~!た”す”け”て”ぇぇぇっ!)
俺の顔面蹴りを食らったママンネとその子タブンネどもも、アリアドスがまとめて糸で絡めている。
「タ”ヒ”ュ…、タ”ヒ”ュア…」ピクピク
(ヂビ…、おヂビぢゃん…)
「ミビャアァァァッ!」ジタバタ
(ママアァァァッ!)
「ミヒミィッ!ミビャアァァァァッ!」フルフル
(ねばつくよぉ!とれないよおぉぉぉっ!)
まるで綿菓子の中でピンクの豚どもが暴れているようだ。
さて、巣穴からのこのこ出て来たタブンネどもはこれでいいだろう。
後は巣穴に篭城するタブンネをどう引きずり出すか…
とりあえず糸を切ろうと暴れる豚を一匹足蹴にして、
「後でたっぷりいたぶってやるからな。」
と言い残した。
その豚は顔を青ざめて、より必死に暴れた。
「さて、次は巣穴に篭ったタブンネ達ですね。」
「そうですね。臆病豚を俺達の前に引きずり出してやりましょう!」
するとエレナさんは思い出したように、
「あ、でもアレンさん、目的の
タブンネ一家を見つけ出したんですよね?ここから先は見物するだけでも構いませんよ?」
確かにエネコの仇どもを捕らえることはできた…
しかし、
「いえ、むしろ手伝わせてください。まだ父タブンネを見つけていません。それにこの森で苦しい思いをするポケモン達を助けたいんです!」
俺達を助けてくれたペンドラー達…
そんな彼らを、あんな糞豚どもに苦しむ状況を看過できるものか。
エレナさんは察してくれたようで、
「わかりました。では私からもお願いしますね。アレンさん。」
エレナさんは優しい笑顔を見せて言った。
ちなみにこの時は仇の内のパパンネが、俺達を待ち伏せたタブンネ達の中にいたことをまだ知らない。
そのパパンネは今はバギーから降ろされ、会が用意した檻の中にぶち込まれている。
しかも下半身を潰されているために立つことができず、激痛でのたうちまわっている。
「ミビイィィィッ!ミビイィィィィッ!」ビタ-ン
ビタ-ン
妻は顔面を、夫は下半身を潰された…
お似合いの夫婦だな。
一方、ストライクに両腕を切断された豚二匹は、
「ミヒィッ!ミヒィッ!」プルプル
「タブネェェッ!タブネェェッ!」ガタガタ
檻から媚びた声で会員達に助けを乞いている
しかし
自業自得の恐怖で尿を漏らし、しかも会で皆から親しまれている受付嬢のエレナさんを、その汚れた手で(もう無いけど^ ^)人質に取った糞豚を檻から出す者などいるはずも無い。
だが一人のポケリンガルを持った会員が、
「おい貴様ら、檻からでたいか?」
と、問い掛けた。
媚びが通じたと思った二匹は、
「ミイィ~ン、ミイィ~ン」スリスリ
「タブゥ~ン、タブゥ~ン」コビコビ
より甘ったるい声で全身をくねらせ、檻に擦り寄る…
見ていて不快感と殺意しか湧かない。
だがそんな糞豚は見慣れているのだろう。
新人は不快感を顔に表すが、この会員は眉一つ動かさずに真顔で言う。
「俺の質問に正直に答えたら、この檻から出してやる。」
「ミイッ!?ミイミィン?」
(ミイッ!?答えれば出してくれのかミィ?)
「タブタブネェ!」
(何でも答えますミィ!)
腕無しンネ二匹は必死に喚く。
「なら質問だ。一時間ほど前に貴様らが罠に嵌めた人間。その人のエネコが昨日ヒウンシティで、お前達の同胞のある一家に暴行された。どこの一家か教えろ。」
後ろで見ていている新人は少し怪訝な顔をしている。
タブンネは家族内だけでなく、コロニーの他のタブンネとも結束が固いと聞く。
拷問でもしないと聞き出せないのではないかと思っていた。
だが、
「ミィッ!?ミィ、ミヒュイッ!ミヒュイッ!」
(ミィッ!?それならあいつですミィ!あいつの一家ミィ!)
一匹がむこうの檻でのたうちまわる下半身潰されパパンネを、無い腕でピョンピョン跳ねながら示す。
「タブタ~ブ、タブタブネェタブネッ!『ミビャハハハッ!ブヒャ~ハハハハッ!ミ~ヒャハハハ~ッ!』、ミィ!」
(昨日のディナーパーティーの時に自慢していましたミィ!『今日は弱いエネコからフーズを一家総出で殴って奪い取ってやったミィ!「やめてやめて」て懇願してやがったミィ。あの人間も優しいポケモンを演じてやったら、もろ引っ掛かってやがったミィ!人間はミィ達タブンネ様に飯を与えるだけの存在だミィ!』と言っていましたミィ!)
……なんて奴らだ。
下半身潰されパパンネもそうだが、今は何よりこいつら…
……売ったのだ…
仲間を…
何の躊躇いも無く…
自分達の保身のために…
新人は不快感を通り越して、怒りの感情を暴露した。
新人は二匹の余りの糞豚ぶりに我慢できず、
「おい糞豚っ!お前らにはポケモンとしてのプライドは無いのか!?」ガンガン
新人は檻を何度も蹴る。
二匹は怯えて檻の奥に逃げた。
「ミヒィィィィィン」ブルブル ビシャ-
「タブッ!タブッ!」ガタガタ ビシャ-
またもや失禁している。
先輩会員は新人をなだめた。
「おいおい、落ち着け後輩。」
「すみません。でもこいつら仲間を平気で売りやがったので…」
「まあな、お前の考えもわかるよ。俺も新人の頃は、タブンネの糞豚な行為に何度もキレて、誤って指示を無視して殴り殺したこともあった。だがな、だんだんとわかったんだよ。こいつらは鋭い爪も持たなければ、固い鱗も無い。自慢の聴覚で敵を察知しても、脂肪がたっぷりの腹とすっとろい鈍足で形無し。だから
生きるために弱者を見下し、強者には媚びまくる。こいつらはそういうポケモンなんだよ。それしかタブンネが生きられる道は無い。お前もそのうち悟るさ。」
「は、はぁ…」
「さて、おいお前ら!」
「ミッ!ミフィッ!?」プルプル
「タブネェェッ!」ガタガタ
「出してやる。」
会員は短く言った。
「ミ…ミィ?」
「タブネェ?」
タブンネらも呆気に取られている。
「て…、先輩!本当に檻から出すんですか!?」
「俺は約束を反故にするのが好きじゃないからな。」
そう言うと会員は檻の鍵を開けた。
「ミッミッミッミィ~♪」ポテポテ
「タブネェ~♪タァブネェ~♪」ドスドス
腕無しンネ二匹は嬉しそうに檻から出た。
そのままタブタブ鼻歌を歌いながら森へ向かった。
……だが、
「メガヤンマ、二匹の左足にエアスラッシュだ。」
「ヤマーッ!」シュパッ
いつボールから繰り出したのか…
会員の命令を受けたメガヤンマが、ルンルン気分で歩く豚二匹の左足にエアスラッシュを当てた!
ズサアァァァァッ!!
ストライクの時と同じく、二匹はまだ自分にされたことを理解していない。
ただ自分達の左足に違和感を感じている。
「タ…タブネ?」
「ミィィン?」
そして二匹はバランスが取れないのか、よろよろしだしてうつぶせに転倒した。
「ミビャッ!」ボテ-ン
「タビャッ!」ズシ-ン
そして左足を見ると、……無い。
左足が…
血がドクドクと流れ始めた。
「タ…、タ…、タブ…ネッ!?」カタカタ
「ミッ…ミミィッ!?」ワナワナ
二匹の脳裏に、ストライクに両腕を刈られた場面が甦る。
そして恐る恐る後ろを振り返る。
そこには二つの肌色の物体がある。
一つはピンクのハートマークが見える。
二匹は理解した。
そして…
「ミ、ミビャアァァァァァァッ!!」フルフル
「タアッ!タアッ!タブネェェェェェェェェッ!」フルフル
二匹は必死に首を横に振り続ける。
受け入れたくないのだ…
両腕に続いて左足も失ったことを…
会員達はそんなタブンネ二匹を嘲笑している。
「おい豚ども。両腕に加えて左足ぶった切られた気分はどうだ?」
会員がそう問うと、二匹はギャアギャアと抗議をし始めた。
「ミィッ!ミィィッ!」ギャアギャア
(足をっ!足を戻すミィ!)
「タブネェッ!タブネェッ!」ギャアギャア
(足を返してミィ!くっつけてミィ!)
しかし会員は喚く豚二匹を汚物を見る目で見ている。
「ギャアギャア喚くな豚。黙らねえと声帯潰すぞ。」
すると一匹がキレた。
「ミイィィィィィィッ!」ボヨボヨ
突進しようとしているらしい。
だが当然右足だけで立てるはずも無く、
「ミギャアァッ!」ボテ-ン
倒れて顔を思い切り地にぶつけた。
「ブ…ブミィィ」
地面にうつぶせになったまま、もぞもぞと芋虫のようにうねりながら起き上がれずにいる豚の後頭部を、会員は踏み付けた。
「おらっ!」グリグリ
「ブギャッ!」ピクピク
するともう一匹が抗議した。
「タァブネェェッ!タァブネェェェェッ!」ウルウル
(約束が違うミィ!自由にする約束ミィ!)
対して会員は、
「あぁ?何言ってんだ豚。そんな約束は無い。俺は『正直に答えたら《檻から出してやる》』と言ったんだ。わかるか?『檻から出す』と言っただけだ。誰が『逃がす』と言った?」
それを聞いた豚は、
「ビャアァァァァァァッ!」ガクガク
泣き崩れた。
だが会員に踏まれている豚は、
「ミィィィッ!ミィィィィィッ!」ジタバタ
(ふざけるなミィ!卑怯だミィ!)
そんな豚の戯言に会員は怒りを含んだ口調で、
「『卑怯』だぁ?お前らに文句を言う権利は無い。お前ら豚どもは人質という卑怯な手段を取った。卑劣な方法を行う者は、卑劣な方法をされても文句を言う権利は無い。『他はいいけど自分はいやだ』などという道理が通るほど、この世は甘くないんだよ。糞豚が…」
だが豚は耳を傾ける様子も無く、
「ミィミィィィッ!ミィィミィミィッ!ミィンミィン!」ジタバタ
(黙れ黙れミィ!タブンネちゃんは崇高にして特別なポケモンミィ!とっとと足をくっつけて解放するミィ!)
……どうやらこの踏み付けられタブンネは、タブンネの中でも劣悪な糞豚のようだ。
「所詮糞豚に念仏を唱えても無駄ということか…。」
会員は飽きた顔で、
「新人。鉄杭と杭打ち機もってこい。」
「?、はい。」
「あ、あと枷つきの鎖もな」
新人は指示通りに4WDの車のトランクから、鉄製の杭と杭打ち機、枷が両端についた鎖を持って来た。
「よし、それじゃあそこの地面に杭を打ってくれ、」
新人は杭打ち機を地面に向けて引き金を引いた。
ガンッという音と共に、鉄製の杭は地に深く突き刺さった。
タブンネどもは爆音にビビっている。
「ミビャアァァァッ!」ブルブル
「タブネェ!」ガタガタ
何が始まるのかわからずに怯えているようだ。
「ご苦労。あとは鎖を穴に通して…」カチャカチャ
会員は鎖の一方の枷を一旦外し、杭の端に空いている穴に鎖を通した。
そして枷を鎖に戻し、
「よし、新人。お前はそっちのタブンネを枷にはめろ。俺はこっちのタブンネをやる。」
「わかりました。」
「さあ来い豚!」
右足を掴まれて引きずられるタブンネは、じたばたと抵抗している。
「ミッ、ミビャアァァァッ!」ジタバタ
(は、放せミィィィ!)
「タブネェ!タブネェェ!」フルフル
(嫌だミィ!嫌だミィ!)
「大人しくしねぇか豚ァ!」ゲシィッ
「ミブギャッ!」ピクピク
腹にもろにキックを受けたタブンネは大人しくなった。
そして二匹の残った右足に枷がはめられた。
杭を挟んで鎖の両端にタブンネ二匹は繋がれている。
「先輩、一体何をしようとしてるんですか?」
「な~に、ちょっとした『ゲーム』だよ。『実験』ともいうかな。だがそれは『お客さん』達が戻ってからにしよう。」
泣き喚くタブンネ二匹と悶え苦しむパパンネを放って、先輩と後輩の二人は煙草を吹かしながら休憩に入った。
さて、場所は戻ってタブンネのコロニー。
全く有り得ない状況になっている。
「ぐわっ!わかった!降参だ!」
「デンチュラ!アリアドス!しっかりして!」
「ア…リィ…」バタンキュ-
「デ…チュ…ラ…」バタンキュ-
アリアドスとデンチュラがひっくり返っている。
「ミィ~ヒャハハハハハ~~ァ」ドヤンネ- ボッ
そして勝ち誇っているタブンネが口から炎を漏らしている。
どうやら「火炎放射」を覚えているタブンネのようだ。
そして、
「ミィィィン!ミィィィン!」
勝利の雄叫びがコロニー に響き渡った。
するとある巣穴からタブンネ母子が恐る恐る顔を覗かせた。
「タブ…ネ?」オソルオソル
「チィチィ?」コソコソ
タブンネ母子の目に映ったのは、「火炎放射」を空に吹きながら勝ち誇るタブンネと、やられた虫ポケ二体、降参ポーズを取る人間二人だ。
「ミィ!ミィヒャハハ!ミィ~ン!ミィミィミィミィン!」ドヤンネ-
(ミィ!人間達やられてやがるミィ!みんな~!人間達が降参してるミィ!)
すると次々とタブンネ達が様子を見に巣穴から出て来た。
「ミィ?ミィ!ミヒャハハハ!」ドヤンネ-
(ミィ?ミィ!本当に降参してるミィ!)
「ミヒャハハハ!。ブヒャハハハ~!」ドヤンネ-
(人間ごときが勝つなんて百万年早いミィ!やっぱりタブンネちゃんは最強だミィ!)
敵の敗北を確信した糞豚どもは続々と巣穴から這い出して来た。
そして俺とエレナさん達を取り囲み、
「タブネ!タブネ!タブネ!」ブタブタ
(殺せ!殺せ!殺せミィ!)
「タブタブタブネ?タ~ブネタ~ブ~ネ?」ブタブタ
(見逃して欲しいかミィ?ならタブンネちゃんの足を4時間舐め続けるミィ!)
などなど。
醜い顔で好き勝手にほざいている。
自分達は敵の襲来にビビって巣穴に篭り、いざ安全になれば途端に巣穴から出て敵を嘲る。
糞豚らしい行動だ。
「タブ、タブタブタブネ。タ~ブネ?タブタ。タブッ!タブタァブネェェ!」
(ところでこいつらを倒してくれたタブンネちゃん。見かけない顔ミィね?まあいいミィ。さあ!「火炎放射」で止めを刺すミィ!)
「タブタブネ?タブネタブネタブ?」
(いいのか?火達磨になるぞ?)
しかし糞豚はそれを望むかのように、
「タブネタブネ!ミヒャハハハ!」ドヤンネ-
(遠慮は要らないミィ!敵に情けは不要ミィ!)
「タブネ。」
(わかった。)
火炎タブンネは大きく息を吸い、赤い炎を浴びせた。
………醜く勝ち誇る糞豚どもに…
ボォォォォォォォッ!
糞豚どもは理解する隙も無く、紅蓮の炎に包まれた。
「「「「「フ”ッヒ”ャア”ア”ア”ア”ア”ア”ァァァァァァッ!!!!!」」」」」ボウボウ
火達磨ンネになった糞豚どもは、炎を振り払おうと走り回ったり転げ回ったりしている。
「タブネェェェェッ!ミィ!ミィミィミィミィッ!」ギャアギャア
(タブンネちゃん達ぃぃぃっ!お前!同胞に何をするミィ!)
「タブネタァブネ、『タブタブネ?』」
(だから聞いただろう。『いいのか?』とな。)
すると糞豚は前傾姿勢を構えて、
「タブネェ!タブゥゥゥゥゥ!」ボテボテ
(ふざけるなミィ!タブンネちゃん達の償いをさせてやるミィィィ!)
鈍足で突進して来た。
「ただの」タブンネなら、避けられずに肉塊同士ぶつかっていただろう。
だがこの火炎タブンネは「ただの」タブンネではない。
「タアッ!」スタッ
火炎タブンネは糞豚では考えられない高さまでジャンプして回避した。
「ミィ!?ミブギャ!」ボテ-ン
「ブギャアァァァ!」ボヨ-ン
回避された糞豚は勢いを殺せずに他の糞豚と衝突した。
そして空中で火炎タブンネは黒い光に包まれた。
そして現れたのは…
「シャラアァァァァッ!!」
鋭い目付きと爪、赤と黒のコントラストの髪、それを縛る青緑色の玉、そしてスレンダーな黒いボディを持つポケモン。
ゾロアークだ!
「シャアァァァッ!」
ゾロアークはその鋭い爪を、衝突して転げ回る糞豚に叩き込んだ。
ズサアァァァアァァァァッ!
ゾロアークの鋭い爪がタブンネの胴体を貫いた!
「フ”ホ”ア”ァァァァァァッ!」ビクンビクン
胴体に風穴が空いた糞豚は大量出血している。
「フ”ホ”ォ…フ”ハ”ッ!」ドバドバ
口からも血を吐き、赤い液体が地面に染み込んでいく。
特性が「再生力」でも生きてはいられないだろう。
「フ”…、フ”ヒ”ャア”ア”ァァァァァッ!!」ジタバタ
死への恐怖からか、断末魔を叫びながら仰向けでじたばたしている。
一体どこからそんな力が出るのか…
しぶとい生命力だ。
しかしとうとう、
「フ”…ハ”ハッ!」ダラン
……死んだ。
絶望に染まり切った表情で死んでいる。
やはり糞豚の死に様はこうでなくては…
ゾロアークは汚物を触ったかのように、手に付着した血液を拭き取った
「ミィィィィッ!」ワナワナ
「チィィィィッ!」プルプル
タブンネと子タブンネが死体ンネに寄り添った。
「ミィィィン!ミィィンィ!」ユサユサ
(あなたぁぁぁ!死なないでぇ!)
「チィチィ!チィィィン!チィチィィィン!」ユサユサ
(パパァ!おきてよぅ!あいつらをやっつけてよぉ!)
なるほど、こいつら死体ンネの妻子か…
もう二度と動くことの無い夫を必死に揺さ振っている。
見ていて飽きないな。
だがこいつらだけに構ってはいられない。
「アリアドス、デンチュラ。ご苦労様。名演技だったぞ。」
アリアドスとデンチュラはけろりと起き上がった。
もうみなさんお分かりの通り、これは巣穴に篭ったタブンネどもをおびき寄せる演技である。
CDプレイヤーのオスタブンネの声が偽物と気付かれた以上、糞豚といえどもう引っ掛かることは無かっただろう。
ならば再びおびき寄せるには、糞豚どもの望む「状況」を見せてやればいい。
実際糞豚どもは罠の可能性も考えず、自分達の都合のいい「状況」に飛び付いた。
糞豚らしい思考回路だな。
ちなみにこのゾロアークはエレナさんのポケモンである。
「ゾロアーク、ご苦労様。見事な化かしだったわよ。」
「シャルゥゥ♪」
ふさふさの赤髪を撫でられて嬉しそうだ。
「アリアドス。糸で捕獲してくれ。」
「アリッ!」シュ-
「ミビャアァァァァ!」ジタバタ
「チィチィ!ヂィィィィ!」ジタバタ
妻子ンネ二匹は糸でぐるぐる巻きにされ、無駄な足掻きをしている。
後でたっぷりいたぶるとしよう。
「「「「「タァブネェェェェ!」」」」」ドスドス ドスドス
すると五匹のタブンネが俺とエレナさんに突進してきた。
しかし鈍足であるから余裕で対応できる。
だが反対側からも別の四匹のタブンネが同じく鈍足で突進してきた。
なるほど、挟み撃ちか…
糞豚にしては頭を使ったかな?
「五匹は任せてください!四匹の方お願いします!」
「わかりました!ゾロアーク!ナイトバースト!」
「シャアァァァ!」ビュンッ
ゾロアークから放たれた黒い波動が、四匹を吹き飛ばした!
ドバアァァァァッ!
「「「「ミッビャアァァァァァァァッ!!!」」」」グシャアァァ
派手に吹き飛ばされた豚どもは、地面や木々にたたき付けられた。
「フ”…フ”ハ”ッ…」ドハッ
「ヒ”ュー……ヒ”ュー…」ビクンビクン
そして五匹の方は、
「ストライク!シザークロスだ!」
「スットオォォォ!」スバッ スパッ
茂みに待機していたストライクは上空に勢いよく飛び出し、太陽を背にして五匹に突っ込んだ!
「ストッ!」トンッ
ストライクはいつの間にか五匹の背後に回っている。
「「「「「ミ…」」」」」
五匹は硬直したまま動かない…
と思ったら…
「「「「「ミビャビャビャビャビャヒ”ャヒ”ャヒ”ャヒ”ャヒ”ャヒ”ャヒ”ャアァァァァ!!!」」」」」ボタッ ボタッ ボタッ
五匹は頭から6等分に輪切りになり、断末魔を叫びながら文字通り崩れ落ちた。
血染めのスライスされたハムみたいだ。
すごいぞストライク!
まるで南○聖拳だな。
次はどう来るかと思っていたら、どこからか、
「ミブヒィィィィ!」ドス-ン ドス-ン
正に豚の鳴き声が聞こえた。
コロニーの一番大きく目立つ巣穴から、普通のタブンネの三倍の体積はあろう巨体タブンネが這い出て来た。
「ブヒャア!ブヒブヒャアッ!ブヒャハハハアァ!」ボヨンボヨン
(おいてめえら。よくも同胞を殺してくれたブヒィね?ミィが直々にタブンネちゃん達の償いをさせてやるブヒィ!)
巨体タブンネは大きく息を吸い、「大文字」を放った!
「!!、ストライク!『守る』だ!」
「ゾロアークも!『守る』!」
ボオォォォォン!
ストライク達はギリギリで「大文字」を防いでくれた。
「ブヒャハハハハアァ!ブヒブヒブヒャア!」
(ブヒャハハハハアァ!『守る』は二度は続かないブヒィよ?)
巨体タブンネはまたも息を吸い始めた。
しかしこんな大技を使えるなら、もっと早く出て来いよ…
もしそうだったら俺達もてこずって、作戦を容易に進められなかっただろうに…
「ゾロアーク!『いちゃもん』よ!」
「シャア!」ペチャクチャ
「ブヒィ!?」プスン
巨体タブンネは「大文字」を中断された。
「恐らくあの巨体タブンネがリーダータブンネでしょう。タブンネのコロニーはリーダーを失えば容易く瓦解します。ただ雑魚と違って容易には殺せません。」
「しかも雑魚はまだ結構います。どう戦います?」
「ペンドラー達に助けてもらいましょう。デンチュラ!アリアドス!あなたたちはペンドラー達と一緒に雑魚をお願い!」
「デチュ!」ラジャッ
「アリッ!」ラジャッ
エレナさんは腰に装着していた信号弾を、上空に向けて発射した。
ヒュ~~~~…ドーン!
「「「ペドッ!」」」
「「「ホイッ!」」」
これが突入の合図だ。
ペンドラー達はコロニーに疾走した!
「ブヒィ!ブヒャブヒブヒィ?」
(同胞達よ!「火炎放射」を使えるタブンネちゃんはいるかブヒィ?)
「ミッミッ!」ドスドス
「ミィミッ!」ピョンピョン
今生き残っているタブンネは、リーダー含め27匹。
26匹中7匹が「火炎放射」を覚えているらしい。
いやいや、そんなにいるなら最初から出て来いよ…
こっちは炎に弱い虫タイプ3体に草タイプ1体だから、ゾロアークがいるとはいえ苦戦しただろうに…
「ブヒィィブヒブヒブヒィィィィィ!」
(火炎タブンネちゃんは虫ポケどもを痛め付けてやるブヒィ!)
「タブネェェェェ!」
1 )
「ブッヒィィィィ!」サッ
(同胞達よ!やっちまえブヒィ!)
「「「「ミィィィィィィィィ!!!!」」」」ドスドス ドスドス ドスドス
豚どもが鈍足で一斉攻撃に出た。
だがこちらも一斉攻撃だ。
「ペドーッ!」ゴゴゴゴ
「ホイーッ!」ゴロゴロ
ペンドラーとホイーガ達がタブンネの群れに突っ込んだ!
「ブギャアァァァ!」グシャア
「タバアァァァァ!」ドガアァ
ペンドラー達はメガホーンで豚を三匹まとめて串刺しにしたり、ホイーガはハードローラーで次々に豚を轢き殺している。
「タブネェェ!」スゥ-
一匹がホイーガに「火炎放射」を浴びせようとしている!
俺は阻止するためにストライクに攻撃を命令した!
だがその時!
パアァァァァン!!
何かが爆ぜる音が広がった。
「ブギャ…」ドサッ
火炎タブンネは地面に仰向けに倒れ、動かなくなった。
額には穴が空いており、そこから血が流れている。
「狙撃班グッドキル!残りもお願いします!」
エレナさんは無線機で誰かと交信している。
エレナさんの視線の先を見ると、一見高台にある茂みしかないように見えるが、そこにはスコープ付きの猟銃を持ったスナイパーが、ギリースーツでカモフラージュしているのだ。
「次はリーダータブンネの左前にいるやつ…」
スコープには同胞がいきなり倒れて、混乱しているタブンネのマヌケ顔が捉らえられていた。
「ブヒィブヒィ!ブヒィ!ブヒャアァァァ!」
(狙撃なんて卑怯だブヒィ!タブンネちゃん達!スナイパーを探して始末するブヒィ!)
「「「ミィィィィ!」」」
2 )
三匹が群れを離れてスナイパーの捜索に向かった!
「させるか!ストライク!」
「スットオォォォォ!」ビュンッ
ストライクは捜索タブンネ達を次々に生ハムに切り落とした!
「「「ミィバァァァァ!!」」」
血染めだからあまり美味しそうではないけどな…
「アレンさんはスナイパーへ向かうタブンネを食い止めてください!私は…」
リーダータブンネは次々に殺されていく同胞に我慢できず、
「ブヒィ!ブヒブヒィ?ブヒィィィィィ!」
(そこの人間のメス!さっきから好き勝手にやってくれたブヒィね?ミィが直々に始末してくれるブヒィ!)
エレナさんは冷ややかな目をリーダータブンネに向け、
「このデカブツは私が相手します!」
そう言って腰に装着された二つのモンスターボールに手を掛けた。
「出番よ!エルレイド!カポエラー!」
エレナさんはエルレイドとカポエラーを繰り出した!
「エルッ!」スタッ
「カポッ!」クルクル
リーダーンネは馬鹿にした口調で、
「ブヒャハハハァ!ブヒィブヒブヒィ!?ブッヒャア!ブヒャアァァァ!」ドスンッ ドスンッ
(ブヒャハハハァ!格闘ポケモン二匹出せば勝てると思ってるブヒィ!?所詮は人間の浅智恵だブヒィ!ミィとの格の違いを思い知らせてやるブヒィ!)
エレナさんは冷ややかな目で、
「その傲慢もここまでよ!エルレイドはインファイト!カポエラーは回し蹴り!」
エルレイドは素早い突きで「インファイト」を、カポエラーは遠心力で威力を増した「回し蹴り」を食らわせた。
「エルゥゥゥゥゥ!」ササササササッ
「カポォォォォォ!」ヒュンッ
ドガアァァァァァァ!!
二体の格闘技は確かに命中した…
だが…、
「ブヒャハハハハァ!」ドヤンネ-
リーダーンネは平気な顔で突っ立っている。
「そ…そんな…、ノーマルタイプのタブンネが、高威力の格闘技を受けて平気なはずが…」
エレナさんは有り得ない状況に慌てている。
だが直ぐに冷静に考え、
「エルレイド!カポエラー!一度間合いを取って、今度は奴の頭よ!」
エレナさんは二体にリーダーンネから離れるように指示したが、
「エ…エルッ!」
「カポエッ!」
二体は離れようとしない。
どうしたのかと思ったら、エルレイドの両腕とカポエラーの右足が、分厚い脂肪が詰まったリーダーンネの腹に食い込んでいる。
「エルッ!エルッ!」
「カポッ!カポエッ!」
必死に抜こうとする二体を勝ち誇った目で、
「ブゥヒィ?ブヒィブヒィ!ブッヒャッヒャッ!ブヒィ…」ドヤンネ-
(抜けないブヒィ?ミィの腹はゴムのようになっているブヒィ!どれだけ高威力な格闘技を仕掛けたところで、ミィの崇高なる脂肪が衝撃を吸収してくれるブヒィ!そして…)
リーダーンネは二体に張手を構え…
バアァァァァァン!
「エルアァァァァァ!」ズサアァァァ
「カポォアァァァァ!」ズサアァァァ
二体を吹き飛ばした!
「エルレイド!カポエラー!」
エレナさんは吹き飛ばされた二体に駆け寄る。
俺もストライクと加勢したいが、雑魚タブンネどもが次から次へと突進してくる。
「エ…エルッ!」
「カポ…カポエルッ!」
二体は「大丈夫」だと、駆け寄るエレナさんを静止した。
「あなたたち、大丈夫?まだ闘える?」
「エルレイッ!」
「カポエイッ!
二体の目にはまだ闘志が宿っている。
「よしっ!ならもう一度!あいつの頭にインファイトと回し蹴り!」
「エルゥ!」
「カポエィ!」
二体は再びリーダーンネへの攻撃を構えた。
だがその時!
「ミィィィィィィィ!」
(そこまでだミィィィィィ!)
どこからかタブンネの雄叫びが聞こえた。
辺りを見渡すと、コロニーの周りがピンク、ピンク、ピンクッ!
大量のタブンネに囲まれている。
…なんだこれは…
悪い夢か?
「こ…これは…?」
エレナさんも唖然としている。
『エ…エレナさん!』ガガガッ
エレナさんの無線からノイズの混じった、危機迫る声が聞こえる。
「狙撃班どうしました!?」
『い、いつの間にかタブンネに囲まれて……ぐあっ!』ガッ
「狙撃班!?狙撃班!?」
無線が途絶えた。
「な…何故こんな大量のタブンネが…?」
ぱっと見て約300匹はいる。
こいつらどこから湧いたんだ…?
大量のタブンネ達は徐々に包囲網を狭めて来る。
リーダーンネも予想外の現象に驚いているようだ。
すると大量のタブンネから、紫色の
色違いタブンネが出て来た。
「タブネェ~?」ドヤンネ-
(大丈夫だったかミィ?)
「ブヒィ!?ブヒィブヒブヒィ!?」
(ブヒィ!?もしかして川のコロニーのリーダータブンネちゃんかブヒィ!?)
「タブネ!タブネタブネタァブネェ!タァブンネタブネェ!タビャハハハハハハァ!」ドヤンネ-
(そうだミィ!同胞から人間を乗せたおかしなペンドラー一団の報告を受けたミィ!それで胸騒ぎがしてこのコロニーにパトロールタブンネちゃんを向かわせたら、攻撃を受けているとわかったミィ!だからこうして他のコロニーのタブンネちゃん達も呼び集めて、総出で援軍に来たミィ!)
くそっ!
なんてことだっ!
確かに目立ち過ぎていたし、目的のコロニーしか考えず、他のタブンネの存在を考えていなかった!しかしよりによってこんなに大群で来るとは…っ!
「ブヒャハハァ!ブヒィ!ブブヒィ?ブヒャハハハハハァ!」
(ブヒャハハァ!人間ども!形勢大逆転のようだブヒィ?まあたとえタブンネちゃん達が来なかったとしても、今頃お前達はミィの崇高な脂肪の前に平伏していたブヒィ!)
…はっきり言って、ムカつくの一言だ…
だが今こいつを攻撃すれば、一斉にタブンネどもが突撃してくるだろう…
こちらはストライク達に加えてペンドラー達もいるが、無傷で全て捌き切るのは流石に不可能…
しかも口から火を漏らすタブンネが見受けられる。
火炎タブンネは40匹はいるようだ…
さらに手から電気を、口から冷気を漏らすタブンネもいる。
特にストライクはタイプでは圧倒的に不利っ!
しかしこのままではなぶり殺しだ…
…覚悟を決めて戦うしかないのか…
するとエレナさんは小声で、
「アレンさん、1,2,3でゾロアークがタブンネ達に『ナイトバースト』を有りったけ放ちます…。タブンネ達が怯んだ隙に全速力で逃げてください…。私は狙撃手の皆さんを助けに行きます…。」
「…っ!なら俺も行きます…。」
「駄目です…!アレンさんは仮にも『お客様』…!ここまで手伝ってもらいすぎた位です…!」
するとリーダーンネはドヤ顔で、
「ブヒャハハハァ!人間ども!タブンネちゃんの崇高なお耳で丸聞こえだブヒィ!やれるものならやってみろブヒィ!」ドヤンネ-
「…っ!ゾロアーク!ナイトバースト!」
「甘いブヒィ!タブンネちゃん!一斉攻撃だブヒィ!」
リーダーンネが右手を掲げると、タブンネどもは技マシンや遺伝で覚えたであろうあらゆる技を放った!
火炎放射…
十万ボルト…
冷凍ビ…ム…
シャドーボール…
破壊光線…etc
それら全てが俺やエレナさん、ストライク達目掛けて飛んで来る…
…ここで終わるのか…俺は…
ハハハ…
こんな糞豚どもにやられるとはな…
だがせめて…っ!
せめて一矢報いる…っ!
「ストライクゥゥゥゥゥゥ!!!」
俺の叫びを聞いたストライクはデカブツのリーダーンネに突貫した…っ!
そして俺はエレナさんを地に伏せさせた…
俺が盾になるために…
エレナさん…
申し訳ない…
そしてありがとう…
ここまで来れたのはエレナさんのおかげです…
ストライク…
お前は絶対に生きてくれ…
そしてエネコ…
ゴメンな…
お前を残して逝っちまうなんて…
ストライクと仲良くやれよ…
ズガァアアアァァァァァァァン!!!
タブンネの技が命中した。
…死んだな…
願わくば…
あの世から見たいものだ…
天誅を受ける糞豚どもを…
…何だか俺の体がどんどん空へあがって行く…
「へぇ…、死んだ後って空を飛べるんだ…」
そんな戯言を呟くと、
「おやおや若者よ…。天に召されるにはまだ若すぎるよ。」
…死神の声?
励ましの言葉なのだろうか…
「しっかりしなさい若者よ。お前さんはまだ生きとるよ。」
…生きてる?
…俺が?
…あれ?
…俺がもたれ掛かっているポケモンって…
「やれやれ…。とはいえ、タブンネ達の動向を把握しきれていなかった私達に責任があるからね…」
この人見覚えがある…
たしか…
「…会長さん?」
「いかにも。私が『タブンネ被害者の会』会長である!」
…俺が乗っているポケモンは間違い無くボーマンダだ…
「…なんでボーマンダに?」
「私のボーマンダがギリギリで君達を拾ったのだよ。エレナ君も拾うのに苦労したよ。」
……エレナさん!
後ろを振り返ると、気絶しながらも無事なエレナさんが確かにいる。
「そうか…。会長さんに助けていただいたのか…」
「私は命令を出しただけだよ。お礼はこのボーマンダに言ってあげてくれ。」
俺は三人も乗せながら優雅に飛行するボーマンダに感謝した。
「ありがとう。お前は俺達の命の恩人だよ。ボーマンダ。」
「ボマアァ…」ツン
ボーマンダは素っ気ない態度ながらも、どこと無く照れた顔だ。
「…ってそうだ!ストライク!ストライク達は!?」
「あぁ、あの子達ならほら…。私のサーナイトとリグレーの『テレポート』で救出したよ。」
地上の会長が指差す場所を見ると、サーナイトにリグレー、突然のことに呆然としているストライク達が無事にいる。
「あら?ここは…?」
エレナさんが目覚めたようだ。
「!、会長!」
「おや、気付いたようだね。」
「…もしかして会長に助けていただいた?」
「そんなところかな…。しかし君達は運がいい…。私が気まぐれでボーマンダと空中散歩していたら、森を移動するタブンネの群れを発見したのだからね。しばらく様子を見ていたら君達が連中に囲まれたから、助けに入ったという訳さ。」
「そうでしたか…。会長!ありがとうございます!」
エレナさんは会長に頭を下げた。
みんな無事で何よりだ。
ここでふと考えた…
糞豚どもが放った数々の特殊技…
本来俺達が受けるはずだったが、会長によって回避できた…
…ということは……
糞豚どもを見下ろすと、…案の定だ!
「フ”…ヒ”…ィ…」ピクピク
「ヒ”ェ…、ヒ”ェェ…」ビクンビクン
「ミ”ィ…ィィ…、ミ”ハ”ッ!」ブバッ
「ン”~~、ン”~~」ジタバタ
ある豚は「十万ボルト」で痙攣…
又ある豚は「火炎放射」で焼け爛れ…
そして又ある豚は冷凍ビームが顔に命中したらしく、鼻と口が凍って息が出来ずにもがき苦しんでいる。
俺達に技を放った糞豚どもは、自分らが放った技に潰されたのだ。
見事な同士討ちだな。
ボーマンダは緩やかに着地した。
「ゾロアーク!大丈夫だった?」
「シャルルルゥ♪」
みんな怪我も無いようだ。
「サーナイト、リグレー。ストライク達を助けてくれてありがとうな。」
「サナサナ~♪」
「リグリグ~♪」
二体は感謝されて照れている。
「ブヒィィィィィ!」ドスンドスン
(貴様らあぁぁぁぁぁ!)
…ちっ!
人の感動に水を差す糞豚が耳障りに叫んでいる。
「ブヒィブヒィ?ブヒィブブヒィ!」ボヨボヨ
(よくも同胞を殺してくれたブヒィね?もう我慢できないブヒィ!)
…逆ギレとは正にこのことだな…
「技の軌道も考えずに撃ったお前達の同士討ちだろうが…」
そう言うとリーダーンネはますます逆上し、
(黙れブヒィ!お前達が逃げなければよかったんだブヒィ!楽に殺してやろうと思ったブヒィが、気が変わったブヒィ!苦しめて殺してやるブヒィ!)
…それはこっちの台詞だ。
一匹残らず地獄に叩き落としてやる。
「アレンさん!まだ戦えますか?」
「当然ですよ。一匹残らずやっちまいましょう!」
「はい!…ところでその、会長は…?」
会長は少し息を切らせて、
「私も参戦したいところだけどね…。歳を取ってのボーマンダと急降下はキツかったな。若い頃は何十回やっても元気だったのになぁ…。だから少し傍観させてもらうよ。」
老体に鞭を打っても助けてくれた会長に、俺はより感謝の念を深めた。
「ブヒィヤハハハハハアァ!ブッヒィィィィィ!」サッ
(たとえそんなジジイ一人増えたところで、お前達の敗北は変わらないブヒィ!やっちまえブヒィィィィ!)
「「「「「ミィィィィィィィ!」」」」」ドスンドスン
一回目とは比較にならぬ数のピンクの大群が突進して来た。
「あぁそうだ。戦う前に一つ。」
会長は思い出したように語った。
「?、なんでしょう会長?」
「連中のペースに乗せられてはいけないよ。豚も大群となれば厄介だが、所詮は訓練も学習もしていない堕落したポケモン達。逆に連中のペースを崩してやりなさい。後は烏合の衆だ。」
長年タブンネを相手にしてきたのだろうか…
仙人の教えみたいだ…
「ブヒィィィィ!ブッヒィィィィィ!」
(反撃の隙を与えるなブヒィ!一気に攻め込むブヒィ!)
……そうだ…
真正面からやり合っては無傷では済まないだろう…
ならば!
最終更新:2015年02月20日 17:37