格闘家達とタブンネ 番外編

「ミィミィ♪」
「チィーィ♪」

ここは鬱蒼とした森の中、この森には沢山のタブンネ達がのんきに暮らしていた
何故戦闘力の低いタブンネ達がここまで増えたのかというと、この森にはタブンネにとって天敵である人間、ジャングルや森の中で狩りををするレントラーやレパルダスをはじめ、待ち伏せや奇襲を得意とする猫科系の肉食ポケモンやムクホーク等の猛禽類ポケモンが何故か全くいないからだ

このタブンネ達を一言で表すならば、よくいえば戦闘に慣れてない争いを好まない優しいポケモン達、悪くいえば平和ボケで怠け者の集団と表せる

「ここは平和だミィ、ずっとこの平和が続けばいいミィ」ムシャムシャ
「食べ物には困らないし、ミィ達を襲う怖いポケモンもいないミィ、きっとここはアルセウス様が可愛いタブンネちゃん達の為に用意してくれた天国だミィ」クッチャクッチャ

「ベビちゃん、こっちミィ」
「チィチィ♪」ヨチヨチ

どうやらメスンネがベビンネを歩かせる練習をしている
このベビンネはまだ産まれて2~3週間といったところだろうか

普通、子供を連れた親ンネは警戒心が強く、巣から子供を出すことは殆ど無い
子供を巣から出しているということはこの親ンネをはじめここのタブンネ達は警戒心が全く無い事が伺える

それが命取りになるとも知らずに…

「まま、ミィも抱っこしてミィ」
「いいミィ」
メスンネは長女ンネを抱き上げる
メスンネはベビンネをちらっと見て、すぐに長女ンネに構いはじめた
普通のタブンネならベビンネから片時も目を話すことは無いのだが…
これも警戒心の無さ故か

「チィチィ…♪」トコトコ

やがてベビンネは親ンネから離れ森の中を彷徨いていた

既にこの森に腹を空かせた鬼…いや鬼軍曹が潜んでいることなど、どのタブンネも考えもしていなかった

「チィチィ」

そんなことは露知らず、警戒心なく楽しそうに歩くベビンネ

ガササッ

「チィィ?」

不意に音がした。ベビンネは辺りを見回した、ベビの近くの草むらが揺れている

「チャーィ♪」
恐らく親ンネが迎えに来てくれたのだろう

ベビンネは草むらに飛び込んだ
その瞬間…

「ヂィィィィィィ?!!」

ベビンネの断末魔が響いた。それと同時に咀嚼音が聞こえる

ガブッ…ガフッ…ゴクッ


「…どうやらここには豚が生息しているようだな…ちょうど良いッ…!」

草むらの中からどすの効いた声が響いた。

「ミィ?!あの声はベビちゃん?!」
どうやらメスンネがベビの断末魔を聞き取ったようだ
聴力だけは普通のタブンネと同じく良いようだ

メスンネは長女ンネを巣に隠し、ベビの声がした方向に向かう

「ベビちゃんに一体何が?ここには天敵なんていないはずミィ…」

メスンネは草むらにやって来た。
メスンネは耳をすます、ベビの声を聞き取るためだ

「ベビちゃん?!ベビちゃん?!何だか苦しそうだミィ?!それにどんどん声が小さく弱々しく…」

メスンネはベビの微かな声を頼りに草むらに飛び込もうとしたが…

バサアッ!!!!!

「ミギャア?!」

草むらからいきなり何かが立ち上がった。メスンネは驚いて尻餅をついてしまった

「…ミィ?!」

メスンネは初めてタブンネ以外の生き物を見た
それは人間の男だった

黄色い軍服に血のように赤いベレー帽、体に装備した手榴弾、、鋭い目付きに顔に付いた傷痕…恐らく武器であろうロッド…

人間なら一目で軍人と分かる風貌の男だ

「ミィ…?!ベビちゃんっ?!」

どうやらベビンネの声はこの男の腹の中から聞こえてくるようだ

「何だ?貴様、まさか子豚の母親か?」

「ミィ…ミャアー!」
いきなりメスンネは泣き崩れた
どうやらベビンネがこの男の胃袋の胃酸によって溶かされて絶命したようだ

「成る程…子を助けに来たのか…離れた場所からでも声を聞き取れる…つまり耳が良いということか」

軍人は何かを思い付いたかのように、にんまりと笑った

「これは…役にたちそうだッ!」

軍人はいきなりメスンネの耳を掴むと取り出したナイフでメスンネの腹を一気に切り裂いた

「ミギャアアアアア?!!!?!!」

内臓を一気に引きずり出し、心臓をナイフで突いた
メスンネは反撃することなく絶命した

軍人はメスンネの肉と内臓を持つと、森の中に入っていった


「…さて、火を起こすか」
そう言うと軍人は石で竈の様なものを作り、よく乾いた枯れ葉と枝を集め、ライターで火を着けた

そして、メスンネの肉を枝に差し火にかけた
内臓は火の中に放り込んだ

「豚肉には寄生虫がいる、よく焼いてから食べないとな」

と言ってメスンネの肉にかぶりついた
内臓もしっかりと火を通してから食べた

軍人は一時間ほどでメスンネを食べ終えた

「まだ豚は他にいるのだろうか?」
軍人はふとそう思った
どうやらこの軍人はかなりの大食漢のようだ

ふと草むらのほうを見ると、何匹かのタブンネがいるのが見えた
恐らくメスンネの断末魔を聞き付けてここまでやって来たのだろう
どうしたら良いのか分からず右往左往している

「フッ…やっぱり声を聞き付けてここにやって来たか…ちょうど良い、演習も兼ねて我輩が全て狩って食ってやるぞ豚共…覚悟しろッ…!」

軍人は膨れた腹を擦りながら舌舐めずりをした


ミィミィミィミィ…
タブンネ達は相変わらず草むらで右往左往している。
平和ボケしているからどうしたらよいのかわからないのだろう

「ここら辺から悲鳴が聞こえたミィ、怖いミィ…」
「なんで可愛いタブンネちゃん達がこんな怖い目に合わなくてはいけないミィ?」

「でも何もいないし襲われたであろうタブンネすら見えないミィ?きっと聞き間違いだミィ」キョロキョロ
一匹のタブンネが周りを見渡しながら言った。

すると
「確かに何も居ないミィ」
「なんだ聞き間違いだったミィか」
「ミィ達は耳が良いから取り越し苦労しやすいミィ。耳が良すぎるのも困りものだミィ」

安堵感ゆえか一斉に甘ったるいミィミィ声を発し出した
全くもって脳内お花畑である
目立つピンクの体色からしてもはや野生をなめている感じがするが…

ピュン

すると石のようなものがタブンネ達の前に飛んできた

「ミィ?」

ドカン!
爆発音と同時に激しいフラッシュが焚かれタブンネ達の目を襲った

「ミヤアアアアア!!!!」
「痛いミィ!お目が眩しいミイ!」
「何も見えないミィ!!」

タブンネ達はパニックになり、散々になって逃げ出した
しかし目が見えていないのでタブンネ同士衝突したり、転んだりしている。端から見たら御世辞にも逃げているとはいえない。

ドカンッ!!

新たな爆発音がし、次は熱波と鉄の欠片がタブンネ達を襲った

「ミギャアアアアアア!!!!」
「熱い、息が出来ないミイ!!!」
「体が千切れちゃうミイ!!」
「ミャアアアア…」

タブンネ達は虫の息状態である
爆発をもろに食らった何匹かはもはや生きたえている

ある一匹のタブンネがぼろぼろに焼きただれた体で辛うじて白く濁った眼を開けた
もう長くはないだろう

(…向こうから長身の男がやって来るのが見えるミィ…
きっとあいつが僕達を襲った張本人ミィ…
みんなに逃げろと叫びたいけど、喉が焼かれて叫べないミィ…

ミィ…でんげき…せんって何だミィ…?

…よく分からな)

ミギャッ

タブンネの頭を軍人が踏みつける
タブンネは血を吐き息絶えた


「電撃戦がまさかここまで上手くいくとは…!(思考力が)弱い、弱すぎるッ!」

軍人は揚々としながらいい具合に焼けたタブンネ達の死体を集める
焦げていない部分の毛皮をナイフで剥がし、灰やすすを払い、取っておく。肉を再度焚き火で焼き、食らう

やがて腹が一杯になり、タブンネの毛皮にくるまって軍人は眠りについた



早朝

「ミフッミフッ」
二匹のタブンネが森の中を走っている
見たところまだ若いタブンネのオスメスのカップルのようだ

昨日の惨劇を見たのだろうか、その表情から焦りと恐怖が伺える

「ミイ…タブ男、私もう疲れたミイ…」
メスタブンネ(以外メスンネとする)が疲れのせいか座りこんでしまう

「タブ子しっかりするミィ!奴に見つかる前にこの森を出るミィ、休んでいる暇は無いミィ」

このオスタブンネ(以下オスンネ)は他のタブンネとは違い危機感があるようだ

メスンネ「嫌、嫌ミィ!足が痛いミィ…お腹空いたミィ…」

このメスンネはかなり我儘な性格のようだ。オスンネはなんとかメスンネを宥める

オスンネ「わかったミィ、タブ子。少し休憩するミィ。僕は体力の回復するオレンの実を探してくるミィ。そこで待ってるミィ」

オスンネはメスンネを置いてオレンを探しに行った

メスンネ「早く帰ってくるミィ…」

メスンネは膨れっ面で返事をする

オスンネが森の中に消えると、向こうから別のオスンネがやって来るのが見えた

メスンネ「誰だミィ?」

別オスンネ「メスンネちゃん、大丈夫かミィ!」

別オスンネはメスンネに声をかける。体もあのオスンネよりはるかに大きくタブンネにしては立派な体格をしており見るからに強そうだ(タブンネの中では)

メスンネ「貴方も逃げて来たのかミィ?」

メスンネは別オスンネに声をかける。その声は少し緊張している。こんな緊急時に立派で頼りになりそうな(イケメン)オスンネを前にしたメスンネはすっかりメロメロになってしまったのだ

別オスンネ「一匹より二匹のほうが心強いミィ!一緒に逃げようミィ」
メスンネ「ミィ…」

メスンネはちらりとオスンネの去っていった方を振り反る
メスンネの心が揺れる
メスンネ「ミッ!」
別ンネ「ミィ…」

「ミッフッ、ミッフッ」
その頃、オスンネは二つのオレンを手に持ちメスンネの元に戻って行くところだった
メスンネの所までもうすぐだ

「タブ子、遅くなってゴメ…」

メスンネ「ミイイイイイイイ!!!」
メスンネの悲鳴がした。メスンネを見たオスンネは絶句する

なんとタブンネの皮を被ったあの軍人がメスンネをがっしり掴み首にナイフを当てているではないか

メスンネ「タブ男、助けてミィ!」
オスンネ「ミイイイイ?!」

軍人はニヤリと笑う
「この雌豚の夫か?我輩のハニートラップにまんまとはまったぞ、こんな淫らな雌だったとはな…雄として、信頼していた雌に裏切られた気分はどうだ?」

その言葉はオスンネの心を裂いていく

メスンネ「タブ男…違うんだミィ…これは訳が…」

オスンネはショックのあまり手にしていたオレンを落とす
軍人は相変わらずニヤニヤしている、この状況になるのは分かっていたようだ

「殴れ」
軍人がオスンネに声をかける

オスンネ「…ミィ?」

「この雌に腹がたっているんだろう?だったら殴れ」

オスンネはふらふらとした足取りながらも静かにメスンネに近寄る
オスンネは軍人が掴んでいるメスンネに思いっきりビンタを食らわす
メスンネ「ミッ、ミィミッ!」バシンバシン
何度もビンタを食らわせた
メスンネの顔は腫れ上がっている

メスンネ「ミッヒャアアア…」
オスンネ渾身の怒りのビンタを受けたメスンネは脳震盪を起こしたようだ
気を失ってしまった

それを見たオスンネも心身ともに疲れきっていたのか倒れてしまった

軍人は失神した二匹を担ぎ上げ運びそして二匹の首に首輪のような物をつけた

軍人はどうやら新しいタブンネ狩り法を思い付いたようだ


翌朝
首輪カップルンネは目を覚ました
二匹は目をあける、軍人が覗き込んでおり目が覚めたのを確認すると二匹に語りかけた

「貴様らは捕虜だ、これからは我輩の言うことを聞け、聞かなければ殺す。生かしてやってるぶんだけ有りがたいと思え」

メスンネ「…ミィ!この首輪苦しいミィ!外してミィ!」ジタバタ
オスンネ「タブ子、ちょっと落ち着くミィ!」

「あまり暴れると首輪が爆発するかも知れないぞ」

オスンネは軍人の方に振り返る
どうやら本物の爆弾のようだ
オスンネはメスンネにそう言い聞かせ宥める
先程のハニートラップでメスンネに裏切られているのに、このオスンネはメスンネに必死に世話を焼く
どうやらこのメスンネを嫌いになれないようなのだ

「逃げようと考えるものなら起爆ボタンを押す、因みに我輩から200m離れれば自動的に爆発する仕組みになっている。精々この我輩を楽しませてくれ。ただ我輩も鬼じゃない、飽きたら逃がしてやる、ただし100%の保証は無いがな!」

そう言って軍人はメスンネに液体の入ったペットボトルを渡す

オスンネには小さな金属の塊を渡す
これから何が始まるのだろう
軍人はカップルネを連れて歩く

メスンネは恐怖のあまりすっかり大人しくなっていた
オスンネ「…タブ子、僕らは捕虜だミィ、あの軍人の言うことを聞かなければ殺されるミィ、ちゃんと言うことを聞けばきっとなんとかなるミィ…」
メスンネ「ミィ…」

暫く歩くと地面に穴が空いている所に着いた
これはタブンネの巣だ

「メス、巣の中にその液体を流し込め」

メスンネ「ミイイィ…」
メスンネは嫌々ながらも液体を巣に流し込む
この液体は一体何なのだろう

巣の中には二匹の親ンネと四匹の子タブが隠れていた
液体が流れ込んできたのを見た親ンネは子タブが濡れないように抱き抱え奥に逃げる
すると子タブがその液体に近づきペロペロなめ始めた
喉が乾いているのだろう
親ンネが子タブに止めるよう言い聞かせるが聞かない

「おいオス、さっさとその道具を使え」

オスンネはおろおろしている、この道具の使い方が分からず焦っているようだ
その姿を見ていた軍人は業を煮やしたのか
「こうするんだよッ!」
道具ごとオスンネの手をひっ掴みボタンを押し火を着けた
これはライターだったのだ
オスンネの手を掴み液体にライターを押し付ける。すると炎が上がる。

そうこの液体はガソリン
例のガソリン攻めだ

巣穴が一瞬にして業火のオーブンへと姿を変える
「熱いミイイイイ!!!」
ガソリンが染み込んだ親ンネの毛皮に炎がまとわりつく
「チャアアアアアア!!!!」
水と間違えガソリンを飲んだ子タブの体内に炎が引火する
子タブは体の中から外まで焼かれていき灰になった

悲鳴が聞こえなくなるまでの間オスンネはずっと耳を塞ぎ、目を瞑る
メスンネはガタガタ震えながら失禁している
二匹とも知らず知らずのうちに同族を殺めてしまったことに動揺していた

火が鎮火すると、軍人は巣の中のタブンネを引っ張りだし、焼けたタブ肉を頬張り始めた

「うむ、旨いッ!これはタブンネのガソリン焼きと名付けよう」
と親ンネ二匹と子タブ三匹を平らげた

そして残った灰子タブを掴むとカップルンネの方に投げた
「それがお前らの飯だ」

それを見たメスンネはワッと声をあげミィミィ泣き出した
オスンネは灰子タブを食べもせずただ虚ろな目で眺めていた

夜はワイヤーに宙吊りにされた(寝ている間に攻撃されないように)
すっかり大人しくなったオスンネ、メスンネはまだミィミィ泣いていた

そして朝になりカップルネは地に下ろされた。タブ肉をしゃぶる軍人を先頭にまた森の中を進んでいった

オスンネ(僕から言わせればこいつは少し食い過ぎミィ…)
メスンネ「…」

軍人がいきなり止まる。大きな岩の壁を背に30匹程のタブンネが集まっている
この森から逃げ出そうと考えているのだろう

軍人はM14を構えタブンネ達の前に現れる
群れンネは不意を付かれ大慌てしている
まさか見つかるとは思っていなかったのだろう
カップルネには隠れているよう合図する


「餓鬼を一匹寄越せ。寄越さなければ皆殺しだ」
いきなりの軍人の要求に群れンネは動揺する

「速くしろ」
やがて一匹の親ンネが抱いていた赤子ンネを軍人の方に差し出す
その手は震えている

軍人は赤子ンネを抱いた。チィチィと鳴き軍人の腕に抱かれながら揺られている
親ンネは安堵の息を漏らそうとした

軍人は赤子ンネを宙に投げた
無力な赤子ンネはなすすべもなく軍人の掲げた剣銃に串刺しになった

「ミギャアアアア!!!!」
逆上した親ンネが軍人に向かって突進を仕掛けたと同時にM14が火を吹いた
親ンネの脳天に風穴が空き崩れ落ちる
そして壁際ンネにも容赦なく銃弾の洗礼が浴びせられる

「反撃さえしなかったら見逃してやったものを…」

壁に血の花が咲く
タブンネの死骸がなければアートのようにも見えるだろう

「銃で撃ち抜くことで血抜き完了ッ!」
軍人はカップルネを呼び死骸を集めるよう指示する
カップルネは泣きながら死骸を引きずり軍人の前に持っていく

軍人は死骸ンネ達の触覚を切り落とし、水と塩を入れた鍋に入れ茹でる。触覚パスタ(塩味)の完成だ
ずるずるすする姿をカップルネに見せつけるようにして完食

タブ肉を大きなブロック状に切り、串にさしてバーベキュー(これも塩味)
銃弾を取ってないので銃弾が入っているのは仕方無い
肉にかぶり付き、銃弾が入っていたら西瓜の種のようにカップルネに向かって吐き出す

新たに肉を切り出そうと軍人は死骸に手をかけた。すると死骸ンネの腕に何か丸いものが抱かれているのに気付いた

メスンネ「ミッ!」
メスンネが気付き飛びかかり丸いものを奪おうとする、それは卵だった
しかし軍人に突き飛ばされて卵を奪われてしまった

軍人はニヤリと笑うとその卵に指で穴を開け卵の中身を飲み干した、卵の殻を口に放り込み噛み砕き飲み込んでしまった

メスンネ「…ミギャアアアア!!!!」
メスンネの悲痛な叫びが響く

「おっと、メインディッシュを忘れていた」
軍人はM14の剣銃に刺さったままの赤子ンネを思い出した
メスンネが必死の形相でその子は!その子だけは食べないでぇ!!!とミィミィ鳴き軍人の足にすがり付く
軍人はメスンネの頭を銃の台じりで何度も殴り付けた。メスンネは頭から血を流し倒れた

「歯向かうなと言っただろう!」
軍人は銃剣に串刺しになった赤子ンネをそのまま火にくべた
小さな赤子ンネはパチパチと音をたてて燃えこんがりと焼き上がった
赤子ンネの丸焼きの完成だ

軍人が赤子ンネにかじりつくとぱりぱりという小気味良い音が響く

「ミ゙イ゛イイ゙ィィ!!!」
それを見て血を吐き出しながら怒りの叫び声をあげるメスンネ

メスンネの叫びも虚しく赤子ンネは軍人のタブ肉で膨れた腹の中に消えてしまった

メスンネの頭に何かが飛んできた
それは赤子ンネの頭だった

「ミ゙゙ャアア゙アア゙ァ!!!!」
メスンネは発狂してしまったようだ
オスンネは唖然としている
もはやどうしたら良いのか分からなくなってしまったのだろう

その後、軍人はカップルネにワイヤーを使って獲物を採ることを教えた(ワイヤーを地面にはって足とかが引っ掛かったら絡まるあれ)ただしかかる獲物はタブンネばかりだが

この頃からメスンネの目付きが変わった
迫力のなかった目が少し鋭い目付きになり、塞ぎ込みになり、ちょっとしたことではミィミィ鳴かなくなった
相変わらずオスンネはそんなメスンネを心配して寄り添うがメスンネはオスンネを無視していた。もはやパートナーとしては見ていないようだった

「タブ子、どうしちゃったんだミィ…?前まであんなに僕を慕ってくれてたのにミィ?」

無言でメスンネはワイヤーに絡まっているタブンネを弱らせるためビンタを食らわせている

「生き残る為にこうしなくちゃいけないのは分かるミィ、でもこういうことはよくないミィ…タブ子考えなお…」
メスンネは瀕死ンネを引きずり軍人の元に持っていった。オスンネは慌てて追いかける

軍人は瀕死ンネの皮をはぎ火にかけて食べ始める
たとえ自分で獲物を獲ったとしても殆どは軍人が食べてしまう
自分達は骨や皮、固い肉などの残りものだ

メスンネは逃げられないこの現状を受け入れたのだろうか、生きるために残り物を食べ始める

反対にオスンネは屑肉を遠くに押しやり食べようとしない
これが何日か続いた

(「…タブ子…」)

そしてメスンネ、いやタブンネの本当の姿が露になる…

軍人はタブもも肉をかじりながらカップルネを連れ森の奥へ進み続ける
すると深さ3mほど、直径50m程のクレーターのような大きな窪地が見えてきた
耳をすますと窪地のなかからミィミィ♪という賑かな声が聴こえてくる
茂みから窪地の中を見てみると100匹近くのタブンネが窪地の中にいるではないか
ここに皆隠れていたようだ、しかし考えが甘い、甘すぎる
オスンネは小さくミィ!という鳴き声をあげる、仲間を見つけて安心したのか

これを見て興奮した軍人はありったけのダイナマイトを持ち窪地の中に放り込む
窪地の中に落ちてきたダイナマイトを見たタブンネ達は慌てて窪地を登り始める
しかし短足では3mを昇りきるなど無理に等しいだろう
崖から落ち仲間を巻き込みながらまた窪地に落ちていくのだった

そうこうしている間にダイナマイトが爆発しタブンネ達は吹き飛ばされる
内臓が露出しているもの、頭が陥没し虫の息のもの、破片が突き刺さり痛がるもの、手足が吹き飛ばされもがくもの、窪地の中は大騒ぎだ

もうやめてくれ!とオスンネが軍人にしがみつく
軍人はオスンネを振り払う
軍人は言った
「見ろ、お前らの仲間が怪我をして苦しんでいるぞ。早く助けてやれ、じゃなきゃ皆死ぬぞ」軍人はカップルネに言う
急いでカップルネは窪地に降りる

オスンネは破片が突き刺さったタブンネに癒しの波動をする
傷が塞がり元気になったと思ったが、何故かタブンネは悶え苦しむ
「ミィ!?」
オスンネはもう一度癒しの波動をする
「俺の女房になんてことしてくれたんだミィ!破片が体に入ったまま癒しの波動をしたら傷が塞がって破片が取れなくなる事ぐらいも分からないのかミィ!」
隣に転がっていたタブンネが叫んだ。どうやら破片ンネの夫のようだ

「ミギャアアアアア痛いミィ!」
破片ンネは苦悶の表情をしながら転げ回る
オスンネはまた癒しの波動ををする
しかし破片が取れるわけではない、ただ苦しむ時間が長くなるだけだ
「苦しい…いっそのこともう殺してミィ!」
破片ンネが叫んだ
「ミィィィィ?!」
夫ンネは絶望のあまり叫ぶ
「ミ…ミ…」
オスンネは慌てる

ドカッ
不意に破片ンネの体が宙を舞う
なんとメスンネが破片ンネに突進したのだ

「ミ…グ」
破片ンネは体を地に打ち付けられ死んだ
「タブ子?!」
「ミィヒヒ…どうせもうこのタブンネは助からないミィ、さっさと殺してやった方が苦しまなくていいミィ」
といってメスンネは隣の夫ンネの頭を掴み近くの岩に頭をぶつけさせる
「ミギャ!ミギャア!」
夫ンネは痛みのあまり叫ぶ

「向こうで奥さんが待ってるミィ」
メスンネがそう言うと夫ンネは力尽き倒れた

メスンネは怪我をしているタブンネを次々攻撃していく
「痛い…ミィ」
「ママ、死にたくない…ミギャア!」
「だれか、助けてミィ…」
「これで痛みから解放されて天国に行けるミィ…」
タブンネ達の悲痛な叫びがオスンネを襲う
オスンネは耳を塞ぎ涙をボロボロ流す

軍人はその様子を見て(タブ肉で)膨れた腹を抱えて大笑いしている(笑)

「御兄ちゃん…ミィに癒しの波動してミィ…」
オスンネの足下でか細い声で助けを求めるチビタブンネ
辛うじて生きてはいるが体は千切れて破片が突き刺さりもう助かりそうもない

「…ミィ!」
オスンネは癒しの波動をする
「ミ…ィ」
チビタブの怪我が治っていく
「もう大丈夫だミィ!」
オスンネが言った。しかし、チビタブは動かない、チビタブは死んでいた
癒しの波動は怪我を治せるだけで毒などの状態異常や瀕死状態のポケモンの寿命その物を伸ばす技ではない
チビタブは力尽きて死んだのだ
「…ミャアアア…なんで、なんで?僕達や小さな子がこんな目に合わなくちゃいけないんだミィ…?」
オスンネはチビタブを助けられなかった無力感で泣き出す

その時も軍人は焼けたタブ肉を貪っていた…が軍人がいきなりひっくり返る
油断していて後ろからタブンネに突進を食らいひっくり返った軍人にタブンネがのし掛かる
軍人は苦しそうな呻き声をあげる
メスンネは軍人の首に噛み付き動きを封じ手で爆弾付き首輪を外そうとしている
共に自爆するつもりだ
メスンネは軍人が油断するこの時を待っていたのだ
従っているように見せて、心の奥底では相手を蹴落とすことを考えている、メロメロや癒しの波動で相手に媚をうり、許しをこい、生存率を上げる。これがタブンネの本性なのだ

軍人の顔が青ざめていく、チアノーゼをおこしているようだ
はやくそいつを倒してといわんばかり怪我タブンネ達が弱々しくもミィミィと鳴き出した
オスンネはメスンネの異変に気付き、メスンネの所へ駆け寄る

メスンネは軍人に「ミヒヒッ」と嫌らしく笑った
もはやその顔はタブンネの媚び顔ではなく復讐に燃える顔だった
軍人は力を振り絞りメスンネの頭をおもいっきり拳で振り抜くメスンネは歯が折れ血を吐き出しながら吹き飛ばされた
軍人がメスンネの首を掴みタブンネの群れの中に投げつける

すかさず軍人が起爆スイッチを押した
メスンネの首輪が爆発した
そして周りンネも巻き込みメスンネは吹きとんだ

ただ一匹、オスンネをのぞいてタブンネは全滅した

森の中から一匹のタブンネと人間がてできた
そのタブンネは首輪をつけており、目が濁りげっそりと痩せ細っている
あの生き残りのオスンネだ

少し太った軍人は首に怪我をおっている以外は健康そうだ
沢山タブ肉が入った軍隊リュックを背負っている

軍隊はオスンネに振り向き話しかけた
「お前はもう用済みだ、何処にでも好きな所へ行け」
「ミ…ィ?」
オスンネは力なく返事をする

「ほら、好きな所へ行け」

オスンネはおぼつかない足取りで軍人から離れる
オスンネは感動と悲しみの涙を流しながら200m先の森へと戻っていく
もう何もされないんだ、もう自由なんだ。オスンネは歩みを強くする

「…タブ子、助けてあげられなくてごめんミィ…タブ子の分まで僕が生きるミギャアアアア!!!!」
オスンネの首輪が爆発し、オスンネは吹き飛んだ

「ああ、そうだった。彼奴の首輪を取るのを忘れていた」
軍人は頭を掻きながらぼそっと言った
そして軍人はリュックの中から生きている幼女ンネを取りだした。親とはぐれたうえに先ほどのオスンネの断末魔を聞いてすっかり怯えている
軍人はニヤリと笑うとそのまま幼女ンネを丸飲みした

「ミャアアア…まま…たすけて…ミ…ィ…」

呑み込まれた時の幼女ンネの顔はそれはそれは絶望的な顔をしていたという

おわり
最終更新:2015年12月21日 17:00