渡る世間は敵ばかり

タブンネってポケモン知ってますか?
そう、皆さんご存知ヒヤリングポケモン
馬鹿でノロマ、食い意地だけはポケ一倍の屑豚です。
今日はそんな生態系の底辺、タブンネがどうやって野生で生きているのかをお兄さんと一緒に見てみましょう。

今回見るのは母親タブンネに子タブンネが3匹の一家です。
どうして父タブンネがいないのかな?
鈍いからウォーグルにでも食べられちゃったんでしょうね。
おや、起きたタブンネ親子が歩き出しましたよ。
朝ご飯でも探しに行くんでしょうか?
ぽてぽてのんびり、子タブンネがじゃれ合えば足を止めて付き合っています。
野生ポケモンにあるまじき無警戒ぶり。
同じピンク色のピッピさんはとても警戒心が強いのに。
目立つ色をしている自覚がない、脳内お花畑な証拠ですね。
小一時間かけて、タブンネ親子はオボンの実のなる木に到着しました。
よく他の野生ポケモンに出くわさなかったものです。
奇跡と言っていいでしょう。
木の前に立つと、親タブンネは懸命にジャンプしてオボンの実を採ろうとしています。
飛び跳ねる度にお腹がダブダブと揺れて見苦しいですね。
何十回とやって採れた木の実は僅か4~5個。
ナマケロさんだってもっと上手に取れるのに、何て不器用なんでしょう。
でもタブンネ親子は満足みたい。
子タブンネ達も「ミィミィ♪」と嬉しそうです。
木の実を広げ、一家で囲み、木の実を持っていただきます。

ビュン!!

ん?今何かがタブンネ親子の間を通り抜けました。
タブンネ達もいきなり目の前を横切った何かに驚いているようです。
どうやらマメパトさんがタブンネ親子の木の実を横取りしたみたい。
タブンネ親子もなくなっている木の実に驚いています。
気付くのが遅いですねぇ。
マメパトさんが木の枝に降りて美味しそうに食べてますよ。
「ミィ!ミィ!」
漸く気付いた親タブンネがマメパトさんに向かって何やら喚いています。
返せとでも言っているみたいですが、マメパトさんは気にも止めず木の実をいただいています。
「ミィィィィイ!!」
怒った親タブンネはマメパトさんに向かって突進していきます。
けどマメパトさんは飛行タイプ。
ひょいと飛び上がって難なくかわします。
親タブンネは勢い余って木の枝に顔面をぶつけ、仰向けに倒れてしまいました。
いや~、無様ですね。

するとマメパトさん、悪戯な笑みを浮かべ子タブンネ達飛びかかっていきます。
子タブンネ達を啄んで遊び始めました。
「ピィ!ピィィ…!」
子タブンネ達はそれぞれ頭を抱えよちよち走りで逃げ惑っています。
マメパトさんは子タブンネ達の逃げる先に巧みに回り込み、啄むだけでなく翼を広げて威嚇したりもしています。
中々のテクニシャンですね。
子タブンネ達はすっかり怯え、身体を丸めてぶるぶる震えています。
すると我が子の悲鳴を聞きつけた親タブンネが慌てて戻ってきました。
しかしマメパトさん、再び飛び上がって親タブンネの頭上をひょいと飛び越えると
今度は親タブンネの尻尾を強く啄みました。
「ミヒャ!?」
何とも情けない声を上げて飛び上がる親タブンネ。
マメパトさんもくるくると笑って馬鹿にしています。
「自分より数倍大きいのに、何て弱っちいんだ」とでも言っているのでしょう。
結局、タブンネ親子はマメパトさんに弄ばれ続けた上、木の実を全て食べられてしまいました。
しかもそうこうしている内に、マメパトさんの家族らしいハトーボーさんとケンホロウさんが集まってきてしまいました。
こうなるとタブンネ親子も諦めるしかありません。
トボトボとオボンの木から離れていきます。
途中子タブンネが名残惜しそうに振り返りましたが、ケンホロウさんに睨み付けられ、すぐに向き直りました。

さぁ、餌を食べられなかったタブンネ親子はどこに行くのかな?
追ってみましょう。

ご飯を食べ損ねたタブンネ親子が、今度着いたのは水飲み場の池。
親タブンネはぐるっと簡単に周囲を見て誰もいないのを確認すると四つん這いに
なり、池に顔を浸けて水を飲み始めました。
草むらの陰に潜む虫ポケモンや水中の水ポケモンへの警戒はないようです。
おめでた思考なので仕方ないでしょう。
子タブンネも親タブンネに倣いますが水が怖いのか、顔を浸けられず「ミィミィ」と情けない声を上げだしました。
親タブンネはよしよしと子タブンネ達の頭を撫でると、手で水を掬ってやります。
子タブンネはそこに顔を突っ込みちびちびと飲みますが、タブンネの短い手で酌める水は少なくすぐに飲み干してしまいます。
まだ足りないのか再び「ミィミィ」と甘えた声で鳴き始めました。
食い意地張りますねぇ。
再び水を掬おうとした親タブンネとそれを待つ子タブンネ達の背後から突如、「ブモォォ!」と牛のような鳴き声が聞こえました。
ビクリと振り返った先にいたのはバッフロンさんの群れ。
皆怒っているのか片足で地面を蹴り、今にも飛び出さん勢いです。

どうやら此処は彼らの水飲み場だったよう。
タブンネ親子の行為はバッフロンさんにとって泥棒に等しき行為です。
リーダーのバッフロンさんが吠えると、群れが一斉にタブンネ親子に突撃していきました。
力強く地面を蹴って走るバッフロンさんの突進は、タブンネのそれとは格が違います。
タブンネ達は恐れおののき、慌てて逃げ出しますがもう遅い。
1匹が突進を食らわせ、倒れたところを取り囲み一斉に踏みつけます。
「ミギィ!ミギャア!」
親タブンネは子タブンネ達を守るように覆い被さり、ひたすらバッフロンさんのリンチに耐えています。
強烈な踏みつけに臓器を圧迫され、血液や胃液を嘔吐しています。
いやぁ、汚らしい。
傷ついていく親タブンネに子タブンネ達はまたも「ピィピィ!」と甲高い声で泣き始めました。
しかしその喧しい泣き声はバッフロン達の神経を逆なでし、踏みつけの力を却って強くしてしまいます。
正に逆効果。
池にはバッフロンが踏みつける音とタブンネ親子の悲鳴が木霊しています。
永遠に続くとも思えた踏みつけリンチは、リーダーバッフロンさん渾身の後ろ足キックがタブンネ親子を吹き飛ばして終わりました。
タブンネ親子を追い払ったバッフロンさん達は満足そうに鼻を鳴らすと、水を飲み始めました。
良かったね。
さて、バッフロンに吹き飛ばされたタブンネ親子。
おやおや、親タブンネは全身青痣だらけでまるで色違いのようです。
子タブンネはというと、ボロボロの親タブンネにすり寄りまだ泣いています。
親タブンネはフラフラと立ち上がると、子タブンネをあやし、再び食べ物を探して歩き始めました。

しかし、聴力に優れるのならバッフロンが走る音くらい気付きそうなものですが、どうやら水飲みに夢中で気付かなかったみたい。
自分の長所を全く生かせていない“豚に真珠”という言葉が実にピッタリです。
一つ勉強になりましたね。
さぁ、タブンネ親子を追いましょう。


タブンネ親子は何処に向かっているんでしょう。
空腹からか、子タブンネ達は親タブンネに縋りつき「ミィミィ」耳障りに鳴いています。
本当に食べることしか頭にないんですね。
親タブンネは適当な草むらで足を止めると、四つん這になり地面を見回し始めました。
草むらから尻尾だけが覗いている何とも間抜けな姿ですが、どうやら落ちている
木の実を探しているみたいですね。
子タブンネ達は変わらず親タブンネにくっついているだけ、一緒に探すくらい出来ないんでしょうか。
「ミギャア!?」
ん?何やら親タブンネが悲鳴をあげましたよ。
何でしょう?
あらあら、手をクルミルさんに噛みつかれているではないですか。
まだ小さいところを見ると子供のクルミルさんみたい。
瞳がくりくりして可愛いですね。
大方親タブンネが木の実と勘違いして掴んでしまったんでしょう。
子供とはいえ葉っぱを食べる力を持つクルミルさんの歯ががっちり手に食い込み、親タブンネはじたばたもがいています。
同じ子供なのに、食事をねだりミィミィ鳴くことしか出来ないタブンネとは偉い違い。
暫くして噛み疲れたクルミルさんが離れると、親タブンネの手にはしっかり歯形が残り赤く腫れていました。
親タブンネは噛まれた手にふうふうと息を吹きかけ、痛みを和らげようとしています。
慎重さが足りませんねぇ。


さて、気を取り直して再び木の実を探す親タブンネ。
何度か木の実を発見してはいるものの、タブンネよりも素早いチラーミィさんや
チョロネコさんに横取りされてしまい、中々手に入りません。
それでも我が子に食事を与える為、親タブンネは懸命に草むらを這い回ります。
おぉ、ついに草むらの陰にあるオレンの実を見つけましたよ。
しかも横取りを狙うポケモンも周囲にいません。
願いが届きましたね。

タブンネ親子は草むらをガサガサ揺らし、木の実目指して懸命に走ります。
ほら、後少し。
息を切らしながら手を伸ばしたその時、
「ラッキー、草むら揺れてる!ゆけ!オノンド!」
ビクリと大きく身体を震わせるタブンネ親子。
走った時に草むらを揺らしてトレーナーに気付かれてしまいました。
お間抜けさんですねぇ。
トレーナーに鍛えられたオノンドさんのただならぬ気配を感じた親タブンネは、お先にどうぞ、癒やしの波動等の非攻撃技で必死に媚び、許しを乞うています。
しかし早くオノノクスになりたいのか、トレーナーもオノンドさんもやる気満々。
全く意味はありません。
渾身のドラゴンクローが容赦なく親タブンネを吹き飛ばし、またもピィピィ泣きだした子タブンネもついでとばかりに足で小突きます。
「ミギャア!?」という悲鳴を上げながら親子揃って草むらを転がっていきます。
更にはトレーナーが落ちていたオレンの実に気付き、オノンドのご褒美にそれを与えてしまいました。
「ミッ……ミィ…」
それに気付いた親タブンネが弱々しく鳴いていますが、トレーナーは気付いていません。
気付いた所で木の実を渡すとも思えませんがねぇ。
嬉しそうに木の実を頬張りながら離れていくオノンドさんとトレーナーに親タブンネは手を延ばし続けていました。


さてさて、その愚鈍さと迂闊さからまたも食べ物を手に入れられなかったタブンネ親子。
体力のない子タブンネはそろそろ疲れが見えています。
これからどうするのか、引き続き後を追いましょう。

さて、もう傷だらけのタブンネ親子。
加えて子タブンネ達はかなり疲れているらしく、歩く度ミィミィ泣き言を言っています。
食べ物を強請るか泣くかしかしない子タブンネには、さすがの私も苛々してきました。
しかし親タブンネは子タブンネ達を懸命にあやし、草むらを進みます。
どうやら今までとは違い、人里の方を目指しているよう。
うーん、これは街に行きゴミ漁りでもするんでしょうか?
子タブンネの衛生的にどうかと思いますが、背に腹は変えられないんでしょうね。
段々と人工的な物が増えていく中、タブンネ親子は野菜畑にやって来ました。
成る程、農家に忍び込んで野菜を頂くつもりのようです。
自力で食べ物が手に入らないからとうとう人間の作物に手を出すんですね。
ポケモンとしての尊厳、プライドといった言葉はタブンネの辞書には存在しないようです。
まぁ、生態系の底辺だから仕方ない。
とは言ったものの、木の実も満足に採れないタブンネがどうやってこの柵を越えるというのでしょう。 おや、タブンネ親子は何やら柵の端へ歩いていきますね。
迷いなく動いているところを見ると、何か秘策があるようですが。
あ!端の方に柵が切れている所が!
しかもお誂え向きにタブンネが潜るのに丁度良い大きさです。
この場所を知っているところを見ると、このタブンネ親子は食べ物が手に入らない時は決まってこの場所に来て野菜を盗んでいるのでしょう。
まさか常習犯だったとは。
いやはや農家が可哀想です。
タブンネ親子は柵を潜り抜け、畑にたどり着きました。

そこには、この畑の主が如何に大事に育ててるか窺える程に、瑞々しい輝きを放つ野菜の数々。
タブンネ親子は遠慮せずにずかずかと畑に足を踏み入れていきます。
子タブンネ達も好き好きに野菜へと向かっていきました。
子タブンネは先ほどまであんなにフラフラだったのが嘘のように我先にと野菜へ向かっていきます。
流石はポケ一倍の食い意地ぶり。
しかし、野菜畑の中には番犬ヘルガーの姿が。
恐らく度重なるタブンネの被害に業を煮やした農家が飼い始めたのでしょう。
しかし、いい加減その聴力を活用したらどうなんでしょうと思いますが、能力に知能が追いついていないのでしょう。
可哀想で涙が出てきちゃいますね。
ヘルガーは主より教えられていた敵を発見すると咆哮し、タブンネ親子へ飛び掛っていきます。
今まで見てきた皆さんならお分かりだと思いますが、タブンネの足でヘルガーから逃げられる筈がありませんね。
ヘルガーは頭を潰そうと思ったのか親タブンネに狙いを定め、逃げようとしているその尻に噛み付きました。

「ミギャァァァァアァァア!!」
親タブンネの絶叫が迸ります。
何とか逃れようと身体をじたばたさせますが、却って牙が食い込み痛みが増すばかり。
親タブンネの尻からは止め処なく血が流れ、子タブンネ達も震え上がって身動きが取れなくなっています。
そうこうしている内に農家の親父が騒ぎを聞きつけてやってきました。
畑を荒らした犯人の姿に怒り心頭で、鍬で武装しています。
しかし、これが農家にとってミスでした。
やってきた主にヘルガーは嬉しそうに農家へ尻尾を振っています。
ご主人が大好きなんですね。
しかしそれで牙が緩んでしまい、親タブンネはその隙を突いてヘルガーから逃れ、子タブンネと共に一目散に逃げ出していきました。
ヘルガーも面食らってしまい、あろうことか逃げ切られてしまいました。
農家は遠ざかっていくタブンネ親子に向かって石を投げつけ、
「この豚が!次来たらただじゃおかんぞ!!」
と叫んでいます。
とはいえ、ヘルガーがいるとなればもうタブンネ親子もこの畑には近寄れないでしょう。
農家にとっては一安心。
同時に、タブンネ親子は非常時の餌場を失ったことになります。
まぁ、そもそも畑を荒らしていたタブンネ親子が悪いんですから、同情の余地はありませんがね。
尻からどくどくと血を流しながらすごすごと畑から離れていく親タブンネとその子供達。

とうとう日が暮れてきてしまいました。
丸一日、殆ど飲まず食わずのタブンネ親子はもうフラフラ。
タブンネ親子はとぼとぼと寝床へ戻っていきました。


辺りはすっかり暗くなり、気温もかなり低くなっています。
夜の冷たい風は空腹に堪えるようで、タブンネ親子はぶるぶると身体を震わせています。
少しでも暖かくしようと互いに集まって、寒さに耐えながら寝床への帰路に。
この集まって歩く行動、タブンネ親子にとっては単なる寒さ凌ぎでしょう。
しかし、密集して縮こまることで姿が草むらに隠れ、普段よりも遥かに他のポケモンやトレーナーに見つかりにくくなっています。
タブンネが野生で生きていけるのは、こういった偶然や悪運が大きい気がしますね。
さぁ、いよいよタブンネ親子の寝床が見えてきましたよ。
良い草や落ち葉を集めた親タブンネ自慢の我が家。
流石に寝床に戻るとホッとするのか、先程から寒さと飢えで泣いぐずっていた子
タブンネ達の表情も和らいでいます。
珍しく足早に歩き、寝床に戻ったタブンネ親子。
しかし寝床に入ることはなく、その手前で呆然と立ち尽くしています。
どうしたというのでしょう。
何と、タブンネ親子の寝床はもう使えない程に荒らされていました。
食い散らかされた上物の草、マンムーが地ならしでもしたかのような凸凹の地面。
極めつけはタブンネ親子が寝ていると思われる箇所に貯まった、これでもかという量の糞尿。
恐らく留守の間、近くを通り過ぎた野生ポケモンがやったものだと思われます。
人間からすれば酷いものでしょう。
しかし、野生の世界にとっては何のこともない。
タブンネに限らず全てのポケモンに起こり得る自然の摂理ですね。
ただしタブンネ親子、いやタブンネという種族には受け入れられないみたい。
「どうして仲良くしてくれないの?」
「どうしていじめるの?」
とでも言いたげな表情で、身体を震わせ涙ぐんでいます。
こんなところでも如何にお花畑思考であるかを窺い知ることが出来ますね。

「ミビャアァァア!!」
あーあ、ついに子タブンネ達がその場に座り込んで泣きだしてしまいましたよ。
親タブンネがあやそうとしますが、その手を払いのけ「やだやだやだやだ!」と
いった感じに手足をじたばたさせて泣き喚いています。
そんな大声で泣いては他の野生ポケモンが聞きつけて来てしまいますよ。
そんなことを考える頭はないでしょうが。
唯一それが理解出来そうな親タブンネは意外にも動じていません。
これはどうしたことでしょう。
すると親タブンネは自らのモフモフな尻尾に手を入れ、何やらゴソゴソしています。
取り出したのは何とオボンの実。
少し茶色過ぎな気もしますが、形から見てもオボンの実で間違いないようです。
農家に偶然落ちていたものをヘルガーから逃げる際、密かに拾っていたみたい。
何という執念でしょうか。
親タブンネはそれを三つに分け、子タブンネの前に差し出してやります。
すると先程までバクオングのような勢いの泣き声はピタリと止み、代わりに
「ミィ♪ミィミィミィ♪」
と甘ったるい媚びた声を出し始めました。
殆ど飲まず食わずの中、最後の最後で手に入ったご馳走。
嬉しさも一塩でしょう。
子タブンネ達はそれぞれ受け取ると、嬉しそうにはしゃいでいます。
親タブンネが我慢しているという事実に気付く者は1匹としていません。
まぁ、今までもひたすら親タブンネに強請るか泣きつくしかしなかった子タブンネにそういったものを期待するだけ無駄でしょうけどね

3つに分けたとはいえ、子タブンネ達には十分過ぎる大きさ。
3匹の子タブンネは一斉に木の実を食べ始めます。
しかし、これは食べるというよりは、貪ると言った方がしっくりくる気が。
くちゃくちゃと音を立て、唾液と食べかすを撒き散らしながら食べるその様は、普段の媚びた姿からは想像もつかない程に醜悪です。
ここにきてタブンネの本性が垣間見えてきましたね。
「ミブォ…!?」
おやおや、1匹が喉に詰まらせたのか咳き込みました。
親タブンネは苦笑いしながら子タブンネの背中を軽く叩いてやり、詰まった木の実を出してやろうとしています。
「ミバァッ…!」
ん?吐き出されたのは木の実ではなく大量の血です。
すると他の2匹の子タブンネも同様に口や鼻から血を吹き、腹を抱えて苦しみだしました。
何と、畑で親タブンネが拾った木の実は農家がヘルガーの他に対策として用意した毒団子だったようです。
そんなことはつゆ知らず、親タブンネは木の実型の毒団子を子タブンネに与えてしまいました。
「ミィ!?ミッミィ!」
何がなんだか分からずに混乱した様子で子タブンネ達を抱き寄せ、ミィミィ鳴く親タブンネ。
しかし、かなり毒の強いものだったようです。
親タブンネの言葉も耳に入らずこの世のものとは思えぬ声で呻く子タブンネ達。
眼球、鼻、耳、口からは血が溢れ、下腹部からは糞尿がだらしなく漏れ出ています。
始めこそ苦しそうにのたうち回ってものの、徐々にその動きさえ鈍くなり始めました。
もう長くないでしょう。
親タブンネは訳が分からずに泣き叫びながら我が子を揺すっています。
そんな行動は子タブンネの死を早めるだけなんですがね。

やがて、目を見開きその動きを完全に停止させた子タブンネ達。
先程までの阿鼻叫喚が嘘のように静まり返っています。
寝床に転がる3匹の死体とその前に佇むその原因の親タブンネ1匹。
正に因果応報な最期だった訳なんですが、そんな事は理解出来ない親タブンネはただ立ち尽くしています。
どれほどの時間が経過したでしょうか?
親タブンネは子タブンネの亡骸を1匹抱き上げると、その場に座り込み子タブンネの死体を掲げたではありませんか。
これは我々で言うところの高い高いです。
その表情は我が子を失ったとは思えないほど満面の笑顔です。
恐らく我が子の死を受け入れることを脳が拒否しているのでしょう。
それから親タブンネは3匹をかわりばんこに、いつまでも子タブンネを高い高いしていました。

翌朝、寝床には子タブンネの死体を放り出し虚ろな表情で座り込む親タブンネの姿が。
とうとう子タブンネの死を受け入れたようですね。
昨日までの扱いが嘘のように乱雑に投げ出された子タブンネの死骸がそれを物語っています。
親タブンネは食事を探しに行こうともしません。
もう生きることを放棄したのでしょうか。
こういった所も普通の野生ポケモンには考えられないことです。
そしてついに血の臭いや腐敗臭を嗅ぎつけた肉食ポケモンや絶望や恐怖の感情を感じ取ったゴーストポケモンが集まってきました。
これではこの親タブンネにまともな、安らかな死は望めないと言っていいでしょう。
肉体、精神共に地獄の苦しみを味わうことになる筈です。
「ミィ……」
蝦のなくような親タブンネの声を合図にポケモン達が一斉に親タブンネに群がっていき、その姿は見えなくなりました。


さて皆様、野生のタブンネの実態は如何だったでしょうか?
生態系の底辺に相応しい思考、行動、最期でしたね。
勿論全てのタブンネがあの親子のようなものではないでしょう。
もっと優しいタブンネ、もっと勇敢なタブンネ、そしてもっと意地汚いタブンネ。
色々いると思います。
ただ、悲しいことに優しいタブンネや勇敢なタブンネはその数が圧倒的に少なく、
大半はあの親子のようにお花畑な考えを持ち、他人に媚びいるしか取り柄がないのです。
皆様もタブンネを育てる時はつけ上がらせないように注意して下さいね。
でないとあの子タブンネのように育ってしまいますよ?
それでは、またお会いする機会があれば。
ごきげんよう。
最終更新:2014年06月22日 22:07