人の名前聞いて笑うとか失礼だ◆NIKUcB1AGw
困惑。それが、現在
剣桃太郎の抱く感情であった。
自分は七牙冥界闘(バトル・オブ・セブンタスクス)の戦いを終え、
黒幕である藤堂兵衛を捕縛して男塾に帰還する途中だったはずだ。
なのに、なぜこんなところにいるのか。
まさか藤堂に一杯食わされ、またしても命を賭けたイベントに参加させられたというのか?
いや、それにしては妙だ。配られた人別帖にあった男塾関係者の名前は、自分と死んだはずの赤石の2人だけ。
塾長である江田島の名前もなければ、伊達やJ、富樫、虎丸といった男塾の中核をなす面々の名前もない。
男塾にただならぬ恨みを持つ藤堂なら、もっと多くの男塾関係者を巻き込もうとするはずだ。
自分を拉致できて、他の連中を拉致できない道理があるとも思えない。
最終的に、彼は今回の件の黒幕は藤堂ではないという結論を導き出した。
ちなみに赤石が生きている件については、
またいつものように王大人が蘇生処置を施してくれたのだろうと考えあまり気にしていない。
(さて、どうするか……)
桃は考える。強者と戦えるのは、桃としてもやぶさかではない。
数々の死闘を制してきた彼に、戦いの結果としての殺人を忌避する考えもない。
この殺し合いに真っ向から臨み、最後の一人になるまで戦い続けるのもいいだろう。
だが……。
(気に入らねえ……)
見せしめとして一人の少年を参加者たちの前で殺して見せ、逆らえばお前たちもそうなるのだと参加者たちを脅す。
そのやり口が、桃は気にくわない。他人を脅して無理矢理言うことを聞かせようとする姿勢が、彼の反骨精神を刺激する。
(そうだな……。戦う意思のない奴にはこちらからしかけない。向こうからしかけてきた時だけ戦う。
まずはこんなところか。まあ、まずは動いてから考えるかな。とりあえず、城にでも行ってみるか)
行李を背負い、桃はとりあえず歩き出す。
まだ漠然とした行動方針しか持たない彼は、他人と接触すれば何かやるべきことが見つかるかも知れないと考えたのだ。
そのために目指すのは城。人の集まりそうな場所だ。
だが城まで行かずとも、ほんの数十秒歩いただけで彼は他の参加者と接触することになる。
「おーい! 誰か! 誰かいないか! 助けてくれー!」
民家の中から聞こえてきたのは、男の声。それは、助けを求めるものだった。
(すでに誰かが戦っているのか? いや、それなら声以外の物音がしないのは妙だ。
それでも、いちおう警戒はしておくか……)
右手に支給された得物を握りしめ、桃は声が聞こえてきた民家に入っていく。
中に入ってみれば、そこはごく普通の日本家屋。特に争ったような形跡はない。
「おーい! 誰か! 誰かいないのー!?」
声が聞こえてくるのは、家の奥からのようだ。警戒を怠らぬまま、桃は奥に進んでいく。
「ここは……厠?」
「おお! 誰かいるのか! 助けてくれ!」
「ああ、ここにいるが……。どうした?」
「紙持ってきてくれ! 足りなくなっちまったんだよ!」
「…………」
まったく予想していなかった展開に、さしもの桃も苦笑いを浮かべるしかなかった。
◇ ◇ ◇
「いやー、助かったぜ。本当にありがとうな。緊張したせいか急に腹が緩くなっちまってな。
とりあえず手持ちの紙使ったのはいいんだけど、拭いた刺激でまた出てきちまって。
あんたが来てくれなかったら冗談抜きであそこから出られなくなるところだったぜ」
数分後、桃は厠から出てきた白髪の男と会話をしていた。
「まったく、たまたま積極的に戦うつもりがない俺が通りかかったからよかったものの……。
声を聞きつけた人によっちゃ、戸の向こうから刀でグサリ、とやられてもおかしくなかったぜ?」
「やべっ、言われてみれば確かにそうだな……。
あー、あれだ。人間の自然な欲求ってのは冷静な判断力を失わせるな、うん」
そういいながらボリボリと頭をかく姿は、はっきり言って駄目人間にしか見えない。
だが、桃は彼を見下すどころか一目置いていた。命を賭けた戦場であるこの場で、目の前の男は良くも悪くも自然体だ。
生ぬるい日常を送っていた人間では、こうはいかないだろう。
それにこの男、死んだ魚のような目をしているが、その奥には何か強い志を感じさせるものがある。
「何だよ、人の顔じっと見つめやがって。何かついてるか?」
「ああ、すまない。ちょっとな……。それより、まだ名前を名乗ってなかったな。
俺は剣桃太郎だ。あんたは?」
「俺は万事屋をやってる
坂田銀時ってもんだ。銀さんでいいぜ」
「坂田銀時……。昔話の金太郎と一文字違いか……。ははは、こりゃ奇遇だ。桃太郎と金太郎とはな」
「おいおい、人の名前聞いて笑うんじゃねえよ。失礼だぞ、そういうの」
「おっと、そうだな。悪かった」
口元に浮かんだ笑みを消し、桃は真顔になる。
「ところで銀さん、あんたはこの御前試合とやらに乗り気じゃないように見えるが……。実際のところはどうなんだい?」
「ああ、要するに殺し合えって話だろ? 誰がそんなもんやるかっつうんだよ。
俺はバトルマニアとかそういうんじゃないしね。
なんで『お前ら殺し合え』って言われて殺し合いやらなきゃいけないんだよ。
そういうのはね、もう人斬りとかそういう奴らだけでやってろと。
俺はバトルより自分の家でごろごろしながらジャンプ読んでる方が好なんだよ。
ああっ! そういや明日はジャンプの発売日じゃねえか!
ちくしょう、よりによって日曜日に拉致なんぞしやがってあの親父!
何日も戻れなくて、ジャンプが売り切れてたらどうしてくれるんだー!
いや、それ以外の日に拉致されてもそれはそれで困るけど!」
真面目な話だったはずが、徐々におかしな方向に進んでいく銀時の発言。
それを聞いていて、桃は思わずその顔に再び笑みを浮かべてしまう。
「銀さん、あんた本当に面白い人だな。今まで俺が会ったことのない類の人間だ」
「おいおい、珍獣扱いですか? 嬉しくないから、そういうこと言われても」
「褒めてるんだよ」
「俺なんか褒めても、何も出ねえぞ? 出るもん全部出した後だしな」
「はいはい、わかったよ」
「だからさー……。なんつうか、その自分は全てを極めた万能系主人公です的な話し方やめろっつうの」
「いや、そんなつもりはないんだがな」
笑みを消さない桃とは対照的に、銀時は仏頂面である。
「そんなことより銀さん、あんたはこれからどうするつもりだい?
俺は積極的に戦うつもりはないんだが、これといった目的がなくて困ってるんだ」
「ん? 俺の目的か……。とりあえずさっさと帰ってジャンプ買いに行きたいんだが……。
何かうちの従業員も連れてこられてるみたいでよ。
さすがに置いていくわけにはいかねえから、まずはそいつを捜し出そうと思ってる」
「そうか……。俺もついて行っていいかい?」
「あー、別にいいんじゃねえの? ついてきたいって言ってる奴を断固として断るほど俺も野暮じゃねえよ」
桃の申し入れを、銀時はあっさり快諾する。
「ああ、そうだ。ついてきていいとは言ったが……。お前のほうは探したい相手とかいねえのか?」
「先輩が一人連れて来られてるみたいだが……。俺の助けを必要とするような人じゃないさ。
むしろ前に俺が勝ってるから、この機会に雪辱を果たそうと俺を狙ってるかもな」
「おいおい、どんな物騒な先輩後輩関係だよお前ら」
「まあ、そんなわけでわざわざ探すつもりはない。だからやることが思いつかなくて困ってるんだ。
そんなわけでよろしく頼むよ、銀さん」
「わかったよ、よろしく。ところで剣、あと一つだけ聞かせてもらってもいいか?」
「なんだい?」
「お前がさっきから持ってるそれ、いったいなんだ?」
「ああ、これか。俺の荷物の中には、武器になりそうなものはこれしかなかったんでね」
「いや、武器ってお前……。それ……」
桃が持っていたのは紙を蛇腹状に折り、片側をテープで固定し握りとした物体。
つまり、簡単に言うならば……。
「ハリセンじゃねえかぁぁぁぁぁぁぁ!!」
【ほノ肆/城下町/一日目/深夜】
【剣桃太郎@魁!!男塾】
【状態】健康
【装備】ハリセン
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者が気に入らないので、積極的に戦うことはしない。
1:銀時に同行する。
2:向こうからしかけてくる相手には容赦しない。
3:赤石のことはあまり気にしない。
※七牙冥界闘終了直後からの参戦です。
【坂田銀時@銀魂】
【状態】健康
【装備】木刀
【道具】支給品一式(紙類全て無し)
【思考】基本:さっさと帰りたい。
1:新八を探し出す。
※参戦時期は次以降の書き手さんにお任せします。
※人別帖も地図も見ていません。
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2009年03月12日 21:31