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一方その頃 - (2006/01/08 (日) 01:38:29) の編集履歴(バックアップ)


一方その頃

地球軍

チュートリアル時の遭遇で敗退

一方その頃
敵艦から、一つの救命用ボートが
飛び出した。

ほうほうの体で逃げ帰るスミス。

スミス/
おのれ…おのれ、
おのれ馬鹿にしよって反乱軍め!

スミス/
俺を笑うか、火星人め!
きっと見ていろよ。

スミス/
必ずお前たちを殺してやる!
イィ、ィー!

スミスは、そう叫ぶと気が済むまで
奇声をあげた。

地球大統領官邸にてジョージとエノラ

一方その頃
地球政府 大統領官邸。

官邸内を元気良く走るエノラは、
大統領の姿を見る。

エノラ・タフト/
おじいちゃん!

ジョージ・タフト地球大統領/
おぉ、エノラ。
良く来た。

エノラ・タフト/
大統領就任、2周年おめでとう。

ジョージ・タフト地球大統領/
ありがとう。
エノラも飛び級での大学卒業、
おめでとう。

エノラ・タフト/
ありがとう。
これ、お母さんから。

ジョージ・タフト地球大統領/
すまないな。
フィオも、遊びにくればいいのに。

エノラ・タフト/
お母さんは、あんまりおじいちゃんと
話したことないから…。

ジョージ・タフト地球大統領/
話したことがないなら、
話し始めればいいんだよ…。
まだ、私を許してはくれんらしい。

エノラ・タフト/
ううん。
お母さんは、おじいちゃんが宇宙人と
停戦したことは怒ってないわ。

エノラ・タフト/
お父さんの復讐をしても、
何も解決しないって言っていたから。

ジョージ・タフト地球大統領/
…そうか。

補佐官が、
大統領のそばによって口を開いた。

ベーカー補佐官/
大統領、お時間です。
そろそろいかれませんと。

ジョージ・タフト地球大統領/
おお、そうか、残念だ。
エノラ、すまないが。

エノラ・タフト/
お留守番でしょ。
いいわよ。

ジョージ・タフト地球大統領/
すぐ戻ってくる。
…不思議だな、お前は息子にそっくりだ。

エノラ・タフト/
親子だから、似ていて当然よ。

ジョージ・タフト地球大統領/
…そうか、そうだな。
では行ってくる。

エノラ・タフト/
お仕事、がんばってね。

地球大統領官邸にてジョージとエノラ その2

一方その頃
地球政府 大統領官邸。

祖父と孫娘が、
向き合ってリンゴをむいている。

ジョージ・タフト地球大統領/
中々、リンゴの剥き方が
しっかりしてきたな。

エノラ・タフト/
おじいちゃん、料理好きなの?

ジョージ・タフト地球大統領/
宇宙軍の士官も兵士も、
みんなこういうのが好きでな。

ジョージ・タフト地球大統領/
なぜだかな。
宇宙にいると、
こういうのがみんな好きになる。

エノラ・タフト/
…そう。
あのね、おじいちゃん。

ジョージ・タフト地球大統領/
うん?

エノラ・タフト/
私、おじいちゃんの孫じゃないんでしょ。
…お母さんからきいちゃった。
…その、なんていうかな。

エノラ・タフト/
戦争でお父さん死んで、
お父さんと言っていいのかな…。

エノラ・タフト/
うっ、お父さん死んじゃって、
それでお母さん、ひどいめに…。

ジョージ・タフト地球大統領/
あの頃の戦争は、本当にひどかった。
私がフィオを探し出したときは、特に。

ジョージ・タフト地球大統領/
人間と人間が争うのさ。
宇宙人と戦っているのにな。

ジョージ・タフト地球大統領/
いや、宇宙人と戦うことだって、
いいことじゃない。
…人は、なんで人はこうなのかなあ。

ジョージ・タフト地球大統領/
だから、…だから気にするな。
わしの孫は、お前だけだよ。

エノラ・タフト/
………。

ジョージ・タフト地球大統領/
泣くな。
せっかくのリンゴタルトが
塩味になると困るだろう。

会議(ジョージ、ベーカー、コリンズ、オナー)

一方その頃
地球政府 大統領官邸 会議室。

大統領が着席すると、場が静まった。
ゆっくり口を開く。

ジョージ・タフト大統領/
それではスタッフの諸君。
今我々の懸案である火星問題について
話そうではないか。

ジョージ・タフト大統領/
…ベーカー補佐官。

ベーカー補佐官/
火星の状況ですが、反乱はもはや、
火星政府では押さえ切れないレベルにあります。
アンナ・グレースは早急な支援を要請しています。

コリンズ財務長官/
ただでさえ戦後復興が遅れているというのに…。

オナー分析官/
とはいえ、盟主である地球でしか、
この事態に対処出来る所はあるまい。

ジョージ・タフト大統領/
静かにしたまえ、諸君。
…ベーカー君、続けたまえ。

ベーカー補佐官/
はい。
すでに反乱は反乱軍と呼べる規模になりつつあります。

ベーカー補佐官/
汎銀河大戦終戦にともなって市場に流れた
大量の武器を買いあさって武装しています。

コリンズ財務長官/
緊縮財政にあえぐタイタン政府あたりが放出した
大気圏軍の装備でしょうな。

ベーカー補佐官/
確かに、火星の弱体なコーストガードでは
対処不能と思われます。
早急な対応を。

コリンズ財務長官/
まて。

ジョージ・タフト大統領/
コリンズ財務長官。

コリンズ財務長官/
そろそろ中間選挙だ。
市民はそぞろ孤立主義にもどりつつあるし、
この不景気だ。

コリンズ財務長官/
税金の使い道に関してもうるさくなっている。
オナー分析官の意見がききたい。

オナー分析官/
何もしないのが上策だね。
火星の政権がかわっても、
宇宙人とまた戦うことでもない限り、影響はない。

オナー分析官/
そんなことは、従軍者が多いんだ。
すぐわかる。

ベーカー補佐官/
どうなさいますか、大統領。

ジョージ・タフト大統領/
周辺国は?

ベーカー補佐官/
光国は重大な懸念を持つと
大使を通じて連絡してきました。

ベーカー補佐官/
必要であれば、友邦国のために
艦隊を送る用意があると。

ベーカー補佐官/
ネーバルウィッチは何も、
声明は出しておりません。

オナー(?チェック漏れ)/
光国は友邦国の立場よりも、
太陽系を従属させたいようですな。

ジョージ・タフト大統領/
真に対等な国家間の関係などないよ。

ジョージ・タフト大統領/
…ベーカー君、地球人は?
火星に在住する地球人の被害は?

ベーカー補佐官/
数名のビジネスマンが
反乱軍を名乗る者に誘拐されています。

ベーカー補佐官/
身代金の要求もでています。
おそらく反乱軍とは無関係でしょう。
もっとも事件自体、事件の性質上、極秘ですが。

ジョージ・タフト大統領/
それを公表するか。
それを口実に出兵する。

コリンズ財務長官/
それなら選挙にも勝てます。
いい手ですな。

コリンズ財務長官/
金を使うのを嫌がる国民も、
殴られれば殴り返すことに躊躇はないでしょう。

ジョージ・タフト大統領/
誘拐されている者には悪いが、
その線で火星の内乱に介入することにしよう。

ベーカー補佐官/
わかりました。

ジョージ・タフト大統領/
ホン・サン将軍をあとで呼んでくれ。

ベーカー補佐官/
はい。

平和のための戦争?(ジョージ、ホン・サン、エノラ)

一方その頃
地球政府 大統領官邸。

エノラ・タフト/
お帰りなさい、おじいちゃん。

ジョージ・タフト大統領/
ああ、ただいま、エノラ。

エノラ・タフト/
その人は?

ホン・サン/
ははは。
あなたのおじいちゃんの部下の
ホン・サンです。

ジョージ・タフト大統領/
将軍で私の親友だよ。
同期だった。

ホン・サン/
そう言うと、私まで年寄りに聞こえるな。

ジョージ・タフト大統領/
実際そうだろうが。

エノラ・タフト/
仲がいいのね、二人とも。

ホン・サン/
いやいや、…ははは。
いや、お嬢さんには、勝てませんな。
その通りです。

エノラ・タフト/
歓迎するわ、ホン・サン将軍。

ホン・サン/
ありがとうエノラ・タフト。
お話はたくさん伺ってます。

エノラ・タフト/
いえいえ。
そう言えば、おじいちゃん。
アステルから聞いたんだけど。

エノラ・タフト/
火星に軍隊を送るの…?

ジョージ・タフト大統領/
…ああ、送ることになるよ。
…折角の平和だ。
地球だけというのは、もったいない。

エノラ・タフト/
平和のために戦争を起こすの?

ホン・サン/
お嬢さん、戦争を起こすんじゃない。
今起きてることを治めるんだ。

ホン・サン/
軍人だって戦争は望んでいない。
負けた責任を取らされるのが軍人だとすれば、
なおさらな。

エノラ・タフト/
…でも勝てると思っていたら?
その論法なら、勝てるなら軍人は
戦争するんじゃないの?

ホン・サン/
ははは、頭のいい子だ。
確かにそうだな。

ホン・サン/
だが、考えてみてくれ。
たとえ勝っても、戦争には被害は必ず出る。

ホン・サン/
私の部下も死ぬな。
私も死ぬかもしれん。
死にたくはない、誰でもな。

ホン・サン/
それでも戦わなければならんのは、
それ相応の理由がある。

ジョージ・タフト大統領/
……エノラ、そろそろホンを許して
やっておくれ。

ジョージ・タフト大統領/
おじいちゃんたちは、
夕食までに会議せねばならん。

エノラ・タフト/
…ごめんなさい、おじいちゃん。

ジョージ・タフト大統領/
いや…、お前が戦争を嫌うのはわかる。
お前からお父さんを奪ったのは戦争だ。

ジョージ・タフト大統領/
…だが、平和はね、
我々だけの独占物ではない。
出来るなら、全部に平和を、だよ。

ホン・サン/
そして、自立だ。

ホン・サン/
前の戦争で味方だった光国も、
太陽系がごたごたするようなら
どう出るかわからん。

ホン・サン/
太陽系の自立を守るためにも
火星の反乱を鎮圧せねばなりません。

エノラ・タフト/
ソフィーはそういう宇宙人じゃないわ、
将軍。

ホン・サン/
一人だけなら。
だが、集団というものは恐ろしいものです。

静かな確執(ノギ、スミス) 火星傀儡政権のほうかも?

一方その頃
火星鎮定軍司令部、廊下。

威風堂々と歩くノギに、
スミスが小走りでついてくる。

スミス/
おはようございます。
ノギ少将。

ノギ少将/
おはよう、スミス少佐。
元気そうで残念だ。

スミス/
元部下に、
ひどいことを言うじゃありませんか。

ノギ少将/
俺は、貴様のやり方が好かん。

スミス/
…サン将軍は、少将のそういう態度を
余りお好きでないようで。

ノギ少将/
…そうか。

ノギが歩き去った後、スミスはつぶやいた。

スミス/
ふん。
俺より少しばかり殺しがうまいからって・・・。

クーデター成功(ホン・サン)

一方その頃
ー地球ー太陽系連合評議会 議事堂。

兵士達が続々と議事堂に突入し、
庭には装甲車が止まっている
兵士達の敬礼の中、査察するサン将軍。

副官が敬礼する。

副官/
クーデターは成功です。
ホン・サン将軍。

ホン・サン/
うむ。

副官/
大統領の拘束にも成功しました。
議員のほとんども、現在自宅軟禁中です。

副官/
4、5名ほど射殺し、10名ほどが
地下に潜伏した模様ですが、
すぐに逮捕出来る予定です。

ホン・サン/
予定通りか。
ここからが大事だな。

ホン・サン/
新政権の正しさを証明するためにも、
火星の反乱を叩き潰さねばならん。

副官/
はっ。

ホン・サン/
今夜の政見放送に
暫定政府首班として私が出る。
演説の後、私自ら火星に降りる。

副官/
(最初から人材不足だな…。
 信用出来る部下が、この人には少なすぎる。)

ホン・サン/
どうした。

副官/
いえ、承知いたしました。

ホン・サン/
急がねばならん。

ホン・サン/
光国が本格的に介入してくる前に、
太陽系の自立を守るために
火星の反乱を制圧せねばならん。


ホン・サン艦隊出撃(ホン・サン)

一方その頃
火星鎮定軍地球艦隊、旗艦。

ホン・サン/
宇宙と比べて、揺れるな。

艦長/
そうですか?

ホン・サン/
いや、久しぶりの艦隊勤務だから
かもしれん。

艦長/
すぐに慣れますよ。
それでは提督、御命令を。

ホン・サン/
艦隊出撃。

艦長/
サン艦隊出撃!

一斉に大小の艦が抜錨する。

ホン・サン/
いいな。
いよいよ戦争している気になってきたな、
…おい!

艦長/
そうですな。

ホン・サン/
一つ、ネーバルウィッチをひねるように、
火星の反乱軍とやらを光子魚雷で
吹き飛ばしてやるか。

艦長/
ここではただの魚雷ですよ。


壊れた笑顔(ホン・サンとスミスの最期)

一方その頃
オリンポス宇宙港。

ホン・サンは、脱出便に乗り込もうと
小走りになっていた。

副官/
将軍!

ホン・サン/
一時的に火星を離れるだけだ。負けたわけではない。
私はさらなる戦力を引き連れて…うっ。

スミス/
将軍!

物陰から現れた薄汚れたスミスが、
よろけながらホン・サンに壊れた笑顔を送った。
拳銃を向ける。

スミス/
この日をまっておりましたよ。
サン将軍。

ホン・サン/
お前は…。

スミス/
スミスです。
あなたにお仕えしたトシロー・スミスです!
今日はお礼にね!

スミスは何度も引き鉄を引いた。

ホン・サン/
……馬鹿…め。

崩れ落ちるホン・サンの声を心地よく
聞いたスミスは、直後に副官に胸を撃ちぬかれた。
それでも、笑ったままだった。


ノギ艦隊出撃(ノギ)

一方その頃

火星鎮定軍地球艦隊、旗艦。
ノギは、帽子を被って夢を見ている。
ライオンの夢を見ていたのであった。

傍らに座って発令する艦長が、
気遣うように口を開いた。

艦長/
ノギ提督、御命令を。

ノギ少将/
…んー、うむ、すまんな。
艦隊出撃。

艦長/
ノギ艦隊出撃!

一斉に大小の艦が抜錯する。

古風な時計を見ながら艦長は口を開いた。

艦長/
見事なタイムですな。
訓練予算が不足しているなかで、
よくぞここままで。(原文ママ)

ノギ少将/
いい艦長を揃えただけだ。
組織は、頭で決まるんだよ。

艦長/
なるほど。
確かに提督は優秀でいらっしゃる。
お休みになられますか。

艦長/
出撃まで物資をかき集めるのでお疲れだと
愚考しますが。

ノギ少将/
疲れていたわけじゃない。
懐かしかっただけさ。

眉だけを動かしてうながす艦長に、
ノギは独り言のように言った。

ノギ少将/
私の母は、火星に移民していてね。

艦長/
心配ですな。

ノギ少将/
…さあな。

ノギは帽子を被り直した。

ノギ少将/
さあ、それでは火星独立軍の腕前、
見せてもらおうか。
全艦、進路0ー0ー0。

艦長/
はっ。
訓練の総仕上げだ! 一斉転蛇!(原文ママ。正確には「転舵」)


ノギ少将、火星について

一方その頃
火星鎮定軍地球艦隊、旗艦。
ノギ 私室。

ノギは、個室でBALLSが映し出す
母の写真を見ている。

ノックの音に、写真を隠した。

部下/
接敵に成功しました。
…反乱軍の尻尾、捕まえましたな。

ノギ少将/
火星独立軍だ。
彼らとて、戦いたいから
戦っているわけではない。

ノギ少将/
戦うしかないから、戦っているだけだ。

ノギ少将/
反乱を起しているのではない、
パンをくれと叫んでいるだけだ…。

ノギ少将/
…それよりいいのかね。
艦長がこんなところで油を売っていても。

部下/
戦いの前に、提督の顔を拝んでおいた方が
御利益があると思いまして。

ノギ少将/
ふん。
君も冗談を言うのかね。

部下/
自分の出身は木星ですが。
ギャグ以外の物資はいつも足りませんでした。

ノギ少将/
ああ、まったく火星と同じというわけだ。
多くの将兵にとってもそうだろう。

ノギ少将/
明日は我が身か、だよ。
最低接触戦争の時、火星の兵は優秀だった。
それが今は反乱軍だ。

部下/
どうしても士気は高くなりませんな。

ノギ少将/
当然だ。
火星は何故反乱を起したのか。

ノギ少将/
復員する3億近くの兵に、仕事も、パンも、軍も、
地球も渡せなかった。

ノギ少将/
そのうちの半分は、銃の撃ち方と敬礼の仕方しか
しらん若造どもだ。
そして今から戦争以外を覚えるには、不景気すぎる。

部下/
…ここだけの話、もう一度宇宙人に
攻めてもらいたいですな。

部下/
そうすれば、もう一度我々は火星人とも
うまくやっていけると思いますが。

ノギ少将/
…そう考える者も、一人ではないだろうな。


ノギ少将、火星上陸

一方その頃
火星鎮定軍地球艦隊、旗艦。
都市船オリンポスに寄港中。

艦長/
提督、上陸をされるのですか?

ノギ少将/
一度くらい敵の、いや火星の都市を見てみるのも
いいと思ってな。

ノギ少将/
困っているようなら、
少しは物資を分ける事も出来るだろうし、
火星政府に勧告も出来るだろう。

艦長/
母君をお探しになるので。

ノギ少将/
私の事なんか忘れているさ。
そういう人だ……。

ノギ少将/
しかし、本物の海で戦うのもいいが、
やはり宇宙が懐かしいな、艦長。

艦長/
宇宙でネーバルの嬢ちゃん達と
光子魚雷の撃ち合いをしていた方が、
我々の分でしたな。

ノギ少将/
帰りたいものだ。

艦長/
まったくです。

ノギ少将/
さて、準備良しだ。
私はいくよ。

艦長/
お気をつけて。
最近は街中にも反乱軍のシンパがいると
聞いています。

ノギ少将/
ありがとう。
死ぬなら宇宙で死ぬよ。

ノギ少将/
気のいい部下や、
大勢のBALLSにかこまれてな。

艦長/
自分もご一緒したいところです。

エノラ誘拐

地球政府 大統領官邸。

ベーカー補佐官/
大統領。

ジョージ・タフト地球大統領/
おお、ベーカー補佐官。
そちらに孫が、遊びにいってないかね。探しているんだが。

ベーカー補佐官/
残念ですが、エノラ・タフトは火星反乱軍に誘拐されたようです。
要人の家族を狙うのは…、

ジョージ・タフト地球大統領/
なん…だと?SPはどうした!

ベーカー補佐官/
全員死んでいました。お孫さんの学校の中にも、火星出身者などがいたようですな…。

ジョージ・タフト地球大統領/
………。

ベーカー補佐官/
お気の毒です。今すぐ非公式のチャンネルで接触を図りましょう。
なんとか大気圏内で犯人たちの逮捕が出来るといいのですが。

大統領辞任

地球政府 大統領官邸。
大統領就任式などをおこなう庭に、タフトは立っている。
彼を映す報道カメラの列。

ジョージ・タフト地球大統領/
みなさんに発表があります。本日をもって、私、ジョージ・タフトは地球大統領及び、太陽系連合議長の職を辞職します。

一斉にどよめき、フラッシュがたかれた。

報道陣/
大統領退陣ですか。
それは、火星問題の責任をとるということですか?

ジョージ・タフト地球大統領/
そう思ってもらってもかまいません。
…民主主義の根幹は、最も多くの支持される者が政権を担うということです。
私は、今もっとも多くの支持を得ているという自信を失いました。

報道陣/
今後は、地球と太陽系は、どうなるのでしょうか。

ジョージ・タフト地球大統領/
今後の後任は規定に従い、副大統領のワトソン君が就任することになります。

報道陣/
大統領が退陣することで、より強硬派が勢力を伸ばすと思われますが?
たとえば火星にさらなる軍を送り、完全に占領するなどの選択があると思われますが。

ジョージ・タフト地球大統領/
それが市民の選択なら、仕方がありません。
ただ、一市民として言えば、私はこれ以上の事態の悪化を望んでいません。

報道陣/
元々出兵を決めたのは、大統領ではありませんか。

ジョージ・タフト地球大統領/
戦争を激化させるために、軍を送ったわけではないと言いたいのです。

セプテントリオン

ブラック・レイディ派遣

一方その頃
天井に映る銀河の星々。
パイプオルガンの曲が、鳴っている。

一際高いパイプオルガンを演奏するのは、
純白の長衣を着た男。

その下には黒衣の男女が並び、
新たな指令を待っている。

MA/
セントラルワールドタイムゲート、
解放を確認しました。

WA/
第5世界で接触があったという、
他の世界間移動組織の差し金か?

MA/
いくつかの世界で我々が遭遇した、
一連の敵の一つと思われます。

ブランカ/
組織化に成功していたのか。
友よ。

WA/
ブランカ、御命令を。

ブランカ/
我々の作る未来以外は、必要ない。
フットワーカーを送り込め。
介入し、敵を探し、排除せよ。

WA/
BL。

その他大勢と言った感じの中から、
ブラック・レイディが顔をあげる。

BL/
は…。

WA/
いけ。
異星人の一つをお前にやろう。
間接的に太陽系を使い、目的を達成せよ。

BL/
は…。


介入本格化

一方その頃

天井に映る銀河の星々。
パイプオルガンの曲が、鳴っている。

一際高いパイプオルガンを演奏するのは、
純白の長衣を着た男。

その下には黒衣の男女が並び、
新たな指令を待っている。

MA/
BLよりの報告がきました。
第3異星人の制御に成功しました。
現在太陽系に移動しています。

WA/
新しい身体の調子は良いようだな。
今は、火星か。
水資源会社の一つが、粘っていたな。

MA/
今は、都市船を追われて海賊化して
いるようです。

BA/
不愉快な動きだ。
…直接介入している者がいますな。

ブランカ/
知恵者だ。
友が、完全なる青が、出て来ている。
私にはわかる。

WA/
第3異星人を経由した太陽系への介入を
本格化させましょう。

WA/
BLに伝えよ。第3異星人を
高圧的な態度に変え、地球の危機感を募らせて
火星の内乱を潰すのを急がせるのだ。

MA/
第3異星人への餌は、どうするつもりで。

ブランカ/
嘘の情報でよかろう。
火星に、グレートワイズマンの遺跡あり。
それぐらいでどうだ。

WA/
御意に。
BLに命じましょう。


TAGAMI

一方その頃
天井に映る銀河の星々。
パイプオルガンの曲が、鳴っている。

一際高いパイプオルガンを演奏するのは、
純白の長衣を着た男。

その下には黒衣の男女が並び、
新たな指令を待っている。

MA/
BLが気になる報告をあげてきております。

WA/
どういうものだ。

MA/
裏切り者が姿を見せたと。

ブランカ/
夫を捜しに来たのだろう。
どうやら、逢えるようだな。

MA/
刺客を送りますか?

ブランカ/
必要ない。
あれはただ、夫を追っているだけだ。
敵にも味方にもなるまい。

ブランカ/
そもそも、あれは死ぬような存在ではない。

ブランカは、目を伏せた。

ブランカ/
…永遠の寿命を持つ化け物と、
永遠に伝わる心の組み合わせか。

ブランカ/
悲しい組み合わせだ。
その間にどんな子供をつくろうと言うのだ?


暗殺計画

天井に映る銀河の星々。
パイプオルガンの曲が、鳴っている。

一際高いパイプオルガンを演奏するのは、
純白の長衣を着た男。

その下には黒衣の男女が並び、
新たな指令を待っている。

MA/
続報です。
海賊達は介入者を中心に戦闘を続行中。

MA/
敵対する太陽系総軍は、総崩れです。
周辺のミリタリーバランスは、
完全に崩れました。

WA/
さらなる増援を打ち破ってか?

WA/
たった一人で、何の特殊な措置も訓練も
受けていない人間が銀河のミリタリーバランスを
突き崩せるのか?

BA/
…人中の竜とは、恐ろしいものですな。
RBよりも宇宙戦艦よりも、一人の心の中の
煌きのほうが強いときかある、か。

ブランカ/
…そうか、ブラウは、研究を完成させたのだな。
奴が辿り着いた最後の答えは、ただの人間か。

WA/
敵を誉めるべき時ではないでしょう。
…MA。

MA/
は。

WA/
刺客を送れ。
奴は武力では殺せぬ。

WA/
だが、そういう英雄ほど、平時はもろい。
暗殺してしまえばいい。

ブランカ/
…もし、それを守るシステムを
奴が組み上げていればどうなる?
いや、やってみなければわからんか…。


刺客失敗

天井に映る銀河の星々。
パイプオルガンの曲が、鳴っている。

一際高いパイプオルガンを演奏するのは、
純白の長衣を着た男。

その下には黒衣の男女が並び、
新たな指令を待っている。

MA/
BLからの連絡です。
刺客はことごとく、邪魔をされました。

MA/
どうやら、都市船のあらゆる情報機器を
操作する仲間がいるようです。

BA/
暗殺も無理とは、これは困りましたな。

WA/
………。

ブランカ/
投資効果が低すぎるな。

WA/
おまちください!
まだです。

WA/
BLに命じ、
第3異星人を直接侵攻させるのです。

ブランカ/
火星が、奴の作った罠だということに
気付かないのか。

ブランカ/
人を食った名前だ。
マーズ、戦の神とは。

ブランカ/
このままでは、我々の血によって
あの星はまた赤くなるぞ。

WA/
我々の血ではありません。
我々の家畜の血です。
騙されてはいけません。

WA/
奴がいかに強かろうと、セプテントリオンには
いささかの人的被害も与えていないのです。
奴等は、勝っているわけではないのです。

ブランカ/
…刺客のことで、責任を感じる必要はない。

WA/
そういう訳にはいきません。
私にもう一度チャンスを。

ブランカ/
…最後のチャンスをやろう。

WA/
はっ。


知恵者からの通告

天井に映る銀河の星々。
パイプオルガンの曲が、鳴っている。

一際高いパイプオルガンを演奏するのは、
純白の長衣を着た男。

その下には黒衣の男女が並び、
新たな指令を待っている。

MA/
知恵者を名乗る者から、
BLに通告が入りました。
第7世界に戻り、急ぎ防御を固めよと。

パイプオルガンを鳴らす手が止まった。
振り返るブランカ。

ブランカ/
なんだと。

MA/
ヤオトです。
閣下、第4世界に引き続いて
第5世界を制圧したヤオトが、
第6世界にも枝を伸ばしてきたと。

すでに多くの世界が、
ファンタジーに引きずりこまれているようです。

WA/
知恵者とは?

ブランカ/
他からは、尊称としてグレートを
つけて呼ばれる。
第6世界を分裂させ、
防壁である論理迷宮を作った、
我が組織の至宝。

BA/
偽装ですな。
ブラウは、我々を謀略で退けようと
しているはずです。
ヤオトが迷宮を突破するまでには、
主観時間でまだ50年近い時間があるはず。
何を急ぐ必要がありましょう。

ブランカ/
友は、嘘をつくような。人間ではない
リューンの観測を強化せよ。
全ゲート上で降るリューン量を調べるのだ。
ヤオトが加速する可能性が、ないわけではない。



第6世界を放棄


天井に映る銀河の星々。
パイプオルガンの曲が、鳴っている。

一際高いパイプオルガンを演奏するのは、
純白の長衣を着た男。

その下には黒衣の男女が並び、
新たな指令を待っている。

MA/
BLより報告です。
リューンの極端な増大を確認。
ヤオト接近は確実の情勢。

BA/
第3異星人の艦隊は?

MA/
介入者によって、ほぼ駆逐されました。
もはや組織的な戦いは困難です。

ブランカ/
第6世界を放棄する。
第7世界で防衛線の構築を開始する。
WA。

WA/
…は。

ブランカ/
責任を取れ。

WAは己の額に銃を当てた。
そのまま倒れる。

MA/
防衛線ですか?

ブランカ/
第6世界を分けたように、
第7世界を分離して、
片方を盾とするしかあるまい。

BA/
第4、第5世界に引き続き、第6世界までも…。

ブランカ/
のんびりと原因の追究は
出来んということか、友よ。

MA/
火星にいるBLをどうしますか。

ブランカ/
残念だった。
…この上は立派に戦えと伝えろ。

MA/
了解しました。
第6世界を放棄して、世界を閉じます。



光国人

火星への助成(プリンセス派遣)

一方その頃

第3異星人 光国大審院。

光国人達が車座になっている。
彼らは回転しながら天にあがり、
対話を行っていた。

ファーザー/
我が属国であり、
今敵国になる予定の太陽系はどうか。

ロドー/
我が属国であり、
今敵国になる予定の太陽系は強大です。

アストーラ/
あのネーバルウィッチすらも、
破ったのだ。

アストーラ/
それも、グレートワイズマンの遺産すら
受け取らずに。

エレクシル/
危険だ。

アーミァ/
変身や巨大化しないうちに、
攻めるしかあるまい。
奴等はいずれ、変身する。

ロドー/
我が属国であり、
今敵国になる予定の太陽系は強大ですが、
付け入る隙がないわけではありません。

アストーラ/
隙だと?
光国人らしくない。

アストーラ/
敵の攻撃はすべて受け止め、その上で勝つ。
それが、光国の戦い方のはずだ。

ロドー/
では、言い方を変えましょう。
彼らには弱点があります。

アストーラ/
それならいい。
弱点を突いて勝つのは正しいことだ。

ロドー/
太陽系は、内乱を起こしています。
火星という地球の隣の惑星です。

アーミァ/
火星に加勢して、内乱を拡大させるか。

エレクシル/
よかろう、では使者を送ろう。

ファーザー/
プリンセスを送れ。

アーミァ/
太陽系を混乱の渦に叩き込むのだ。


プリンセスの報告1

一方その頃
第3異星人 光国大審院。

光国人達が車座になっている。
彼らは回転しながら天にあがり、
対話を行っていた。

ファーザー/
我が属国であり、
今敵国になる予定の太陽系はどうか。

ロドー/
我が属国であり、
今敵国になる予定の太陽系は内乱中です。

アーミァ/
火星に送ったプリンセスはどうか。

シン/
地球重力と比較して、
200倍の時間は本来の姿で動けるようです。

エレクシル/
600分か。
短いな。

アストーラ/
単に戦闘する分には構うまい。

ファーザー/
火星に送ったプリンセスの現状を問え。

ロドー/
問いました。
現在は、人形の姿になっていると
返答がありました。

アストーラ/
現地人の姿を借りたのかと問え。

ロドー/
問いました。
いえ、自身の遺伝子情報を
使っているとのことです。

アーミァ/
気付かれぬように注意せよ。
光国人であることがわからぬように
黒い夜の闇で身を包めと。

エレクシル/
伝えたか。
では待とう。
プリンセスの次なる報告を。

アストーラ/
待つのは光国の得意とするところだ。

ファーザー/
我らの寿命は長い。


プリンセスの報告2 グレートワイズマンの遺産

一方その頃
第3異星人 光国大審院。

光国人達が車座になっている。
彼らは回転しながら天にあがり、
対話を行っていた。

ファーザー/
我が属国であり、
今敵国になる予定の太陽系はどうか。

ロドー/
我が属国であり、
今敵国になる予定の太陽系は内乱中です。

アストーラ/
火星に送ったプリンセスはどうか。
首尾はどうかと問え。

ロドー/
問いました。
首尾は上々と返答がありました。

ロドー/
プリンセスは、気になる報告をしています。

アーミァ/
報告を聞くと問え。

ロドー/
問いました。
火星にグレートワイズマンの遺産がある
兆候ありと返答がありました。

エレクシル/
ヤ・デウォン…なんだと。
星系最外縁の惑星以外に、グレートワイズマンの
遺産があるという話など、聞いたことがないぞ。

アーミァ/
報告を続けよと問え。

ロドー/
グレートワイズマンの旅の終着点は、
火星である可能性高し。

アーミァ/
ヤ・デウォン。

アストーラ/
太陽系が火星を殻で包むのは、そのせいか!

エレクシル/
グレートワイズマンの痕跡は?

ファーザー/
よかろう、調査を続行させよう。
場合によっては全ての星系が、
火星を目指すかも知れぬ。


太陽系への同盟堅守

一方その頃
第3異星人 光国大審院。

光国人達が車座になっている。
彼らは回転しながら天にあがり、
対話を行っていた。

ファーザー/
我が属国である太陽系はどうか。

シン/
我が属国である太陽系は内乱を起しています。

アストーラ/
あの国では、よくある話だ。
我々が見守っていた300年昔からそうだった。

アーミァ/
同族で戦うのは醜い。

エレクシル/
だが、同族で戦うほど強くなる
手段もあるまい。

ファーザー/
我が属国である太陽系に送った
二人の光国人はどうか。

アーミァ/
ソフィーは太陽系に肩入れしすぎる。
プリンセスの方はどうか。

ロドー/
プリンセスは内乱の火星にいます。
かの地でグレートワイズマンの遺産を探しています。

アーミァ/
火星に、本当にグレートワイズマンの通路が
あるのかと問え。

ロドー/
問いました。
あると返答がありました。

ファーザー/
では、太陽系に我が庇護を与えるだけの
価値はあるかと問え。

ロドー/
問いました。
あると返答がありました。

アーミァ/
何故と、問え。

ロドー/
問いました。
本当に価値があるかどうか、
わからないから価値があると。

アストーラ/
ベフベフベフ!
300年前、はじめて太陽系に接触した
光国人と同じ事を言ったな。

エレクシル/
300年で太陽系は変ったと思ったが、
変っていないということか。

ファーザー/
太陽系人は、いまだ何もわかっておらぬ。
自分達ですら自分達が何かわかっておらぬ。

エレクシル/
光法に問う。
世に罪は数々あれど、無知は罪か?

シン/
否、罪はなし。
それが努力を伴うならば。

ファーザー/
よかろう。
では、友誼を続けよう。
300年前と同じように。

ファーザー/
我々は待とう。
裁きの時を。

アーミァ/
いかなる状況にあろうとも、
光国は、同盟を堅守すると太陽系政府に伝えよ。

エレクシル/
光国は、我が属国である太陽系を護ると。


太陽系への宣戦布告

光国人達が車座になっている。
彼らは回転しながら天にあがり、
対話を行っていた。

ファーザー/
我が属国である太陽系はどうか。

ロドー/
我が属国である太陽系は、
内乱を起こしています。

エレクシル/
あの国では、よくある話だ。
我々が見守っていた300年昔からそうだった。

アーミァ/
しかし、強大ではある。

アーミァ/
あの野蛮さこそが、わずか300年で
我が敵国であるネーバルウィッチを
打ち破ったのだ。

ファーザー/
危険な強さだ。
心が育っていない強さ、野獣の強さだ。

アーミァ/
我が属国である太陽系に送った
二人の光国人はどうか。

エレクシル/
ソフィーは太陽系に肩入れしすぎる。
プリンセスの方はどうか。

ロドー/
プリンセスは内乱の火星にいます。
かの地でグレートワイズマンの
遺産を探しています。

ファーザー/
火星に、本当にグレートワイズマンの通路が
あるのかと問え。

ロドー/
問いました。
あると返答がありました。

エレクシル/
では、太陽系に我が庇護を与えるだけの
価値はあるかと問え。

ロドー/
問いました。
ないと返答がありました。

ファーザー/
よかろう。
では戦争だ。

アーミァ/
了解した。
これ以上、強くなる前に鎮定しよう。

ファーザー/
同盟を破棄したと、太陽系政府に伝えよ。

アーミァ/
光国は、我が属国である太陽系を併合し、
遺伝子をいじり、もっとも正しい教育を
与えると伝えよ。

光国人太陽系侵攻開始

―太陽系最外縁・冥王星軌道―

びっくりするほど巨大な光国人の出現を受け、
RBを駆るBALLSたちが通信を開始した。

BALLS/
”敵発見。
所属、第3異星人光国人。
艦船規模不明。”

BALLS/
”太陽系の金星に緊急電。
敵味方の序列なし、最優先コード。”

光国人の一体が、額のビームでRBを破壊。
爆発を吸収しながら光国人達が飛翔する。

第3異星人光国人が、
太陽系に侵攻を開始しました。

太陽系との和睦(?)

第3異星人 光国大審院。

光国人が達が車座になっている。
彼らは回転しながら天にあがり、対話を行っていた。

ファーザー/
我が属国であり、今敵国である太陽系はどうか。

ロドー/
我が属国であり、今敵国である太陽系は強大です。
我々が送った討伐隊が各地で苦戦を強いられています。

アストーラ/
誤りましたな。

アーミァ/
光国人は間違いを起さない。

シン/
それ以上に我が敵国である太陽系が正しかったということでしょう。

エレクシル/
ヤ・デウォン…。地球は、我々が護ってやってきたのだ、我々が。あの小さな人形を、我々が。

シン/
その護ってやった人形が、我が敵であるゼトーを倒し、ネーバルウィッチを倒し…、今また我々を倒したのです。

アストーラ/
我々は、弱くなっていない。

ロドー/
太陽系は、強くなりましたな。
あの小さな人形達が、さらに小さな丸いものを作ったとき、気付くべきでした。
グレードワイズマンが残した最後の遺産を。

アーミァ/
最後の遺産だと。

シン/
グレートワイズマンは、新たな知的種族を生み出しながら旅を続けていたのです。
銀河百一の種族でグレートワイズマンと同じことをやってのけた種族を、
自分と対等か、それ以上の力を持った存在を恐れもなく作った種族を、私は一つしか知りません。

ファーザー/
我が属国であり、今敵国である太陽系が、グレートワイズマンの後継者だと。

シン/
グレートワイズマンが最強だったのは、グレートワイズマンの子供たちが最強だったからかも知れません。

アストーラ/
…どうすれば。

シン/
和を願いましょう。
我々はもはや数が少なくなりました。もはや、レッド族に至っては滅亡寸前です。
今なら太陽系は、我々の母星まで攻め込む戦力はありますまい。

ファーザー/
無敵の伝説が、光の帝国が終る。

シン/
ですが、光国人は生き残ります。

変わり者(ファーザー、シン、アストーラ)

一方その頃
第3異星人 光国。

無限に広がる大宇宙。

弱々しい光を放つ偏光恒星の近くで、
光国人は銀に赤に輝くその姿で、
車座になっている。

光国人は、100mを超える大きさを持つ
種族である。

彼らの一人が破壊されたRBを手の平に
浮かべている。

ファーザー/
我が属国である、太陽系のものが
気に入っているな…。
…シン。

シン/
これは、もう死んでいます。

アストーラ/
シンは昔、我が属国である太陽系に居たな。
飼い慣らした原住民はどうしている。

シン/
彼ら友人は、長く生きられません。
もう、皆死んでいるでしょう。

ファーザー/
改造すればいいではないか。
永遠の命をやればいい。

シン/
どうでしょうか。
私は、それがいいことかどうか
自信はありません。

アストーラ/w
長生きするほうがいいに決まっている。
光を直接浴びれない劣等種族なら
なおさらだ。

シン/
…どうでしょうか。
私の友人は死にましたが、
その子孫は自力で宇宙に出てきました。

シン/
あの時と同じように、
自分の力だけでやってのけたのです。

シン/
彼らにとって、
固体の命の長さはどうでもいいかも
知れません。

ファーザー/
我が属国である太陽系は、
変わり者を引き付けるようだな。

シン/
あなたも一度いけばわかるでしょう。
あそこには、我々より大きな流れがあります。

ネーバルウィッチ

グランドフリート出撃開始

一方その頃
その艦隊はもう一つの銀河のような煌きを、
宇宙に与えていた。

見事な紡錘陣形を組んだ200万を超える艦が、
互いで互いを光の線で連結して整然と進んでいる。

かつて太陽系総軍と死闘を重ねたその艦隊を、
ネーバルウィッチと言った。

大提督/
BALLSとその寄生種という未開種族に
苦しめられて幾星霜。
我々は待望叶い、ついにこの日を迎えた!!

大提督/
グランドフリートは再び整備され、
淑女達は揃った。
我々はまた、銀河の全てを踏みにじるのだ!

大提督/
再び栄光を、艦隊に勝利を!
グランドフリート、機動開始!

流浪の民

一方その頃
その艦隊は、もう一つの銀河のような煌きを、
宇宙に与えていた。

見事な紡錘陣形を組んだ200万を超える艦が、
互いで互いを光の線で連結して整然と進んでいる。

かつて太陽系総軍と死闘を重ねたその艦隊を、
ネーバルウィッチと言った。

少女の形をした生体機械と、
その母胎である艦だけで構成された星間種族である。

彼女たちは、遠い昔に母星系を滅ぼして
星の海を流浪している。

ネーバルウィッチ太陽系侵攻開始

一方その頃

ー太陽系最外縁・冥王星軌道ー

艦隊のうちの一つに、
RBを駆るBALLS達が
通信を送っている。

BALLS/
”敵、発見。
所属、第2異星人ネーバルウィッチ。
艦隊規模不明。”

BALLS/
”太陽系の全星に緊急電。
敵味方の序列なし、最優先コード。”

一隻の艦隊が、対空射撃でRBを破壊。
爆発を吸収しながらネーバルウィッチの艦隊が前進する。

第2異星人ネーバルウィッチが太陽系に
侵攻を開始しました。

エステル派遣

一方その頃
ネーバルウィッチ エイン艦氏族艦隊。

大提督/
エステル、エステル。
エステル・エイン艦氏族・アストラーダ。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
はっ。

大提督/
大提督は、あなたに命令を下しました。
ソル星域第4惑星“マーズ”へ行きなさい。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
ソルとは、あの忌まわしいBALLSと
その寄生種からなる汚らわしい聖域でしょうか。

大提督/
命令を復唱しなさい、エステル。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
…はっ。
エステル・エイン艦氏族・アストラーダは
ソル星域第4惑星マーズへ行きます。

大提督/
よろしい。
エステル・エイン艦氏族・アストラーダ。

大提督/
現在マーズでは内乱が起きています。
敵の敵は味方。

大提督/
貴官はマーズに降下して反乱軍に接触、
力を貸しなさい。

大提督/
愚かなソルを内部から疲弊させるのです。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
我々の姿では問題があるのでは。

大提督/
BALLSの寄生種の半分は、
我々と同じ構造をし、さらに14%は我々と
姿格好が酷似しています。

大提督/
忌々しい未開種族と似ていることを、
感謝しなければならないわね。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ
わかりました。

大提督/
18標準単位後に連絡艦を出します。
それまでに準備なさい。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
はっ。
淑女達とグランドフリートのために
全力をつくします。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
再び栄光を得るために。

大提督/
再び栄光を。

エステル定期報告1

一方その頃
エステルは艦内から、
ネーバルの大提督と通信会話している。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
エステル・エイン艦氏族・アストラーダ。
定期報告を開始します。

大提督/
エステル・エイン艦氏族・アストラーダ。
定期報告を開始しなさい。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
反乱軍と接触、
艦に乗り込むことに成功しました。

大提督/
よろしい。
引き続き反乱軍に力を貸し、
忌々しい太陽系総軍に損害を与えつづけなさい。

大提督/
淑女とグランドフリートは、
外交ルートを通じて反乱軍に荷担するでしょう。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
反乱軍は、自らを火星独立軍と呼んでいます。
反乱軍と自らを呼ぶことを好きでは
ないようです。

大提督/
我々がネーバルウィッチなどと
呼ばれることを嫌がるとの同じね。

大提督/
わかりました。
外交時には注意させましょう。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
はっ。
それでは失礼します。

大提督/
再び栄光を。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
艦隊に勝利を。

エステルは通信を切ると、
ため息をついた。

最後の通信

一方その頃
エステルは艦内から、
ネーバルの大提督と通信会話している。

大提督/
何故連絡する?
エステル。
エステル・エイン艦氏族・アストラーダ。

大提督/
定期連絡までには、まだ間があるはずだが。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
……。

大提督/
エステル・エイン艦氏族・アストラーダ。
返事をしなさい。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
お別れを、言いにきました。
私は…、私はもう何が正しいのか、
…わかりません。

大提督/
正しいのは、淑女達とグリンドフリート。
それのみです。

大提督/
悪夢から目を醒ましなさい。
エステル・エイン艦氏族・アストラーダ。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
現実は、こちらかもしれません。
大提督、私はずっと考えてきました。
我々になぜ秩序があり、何故彼らにないのかを。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
私は思いました。
ネーバルウィッチに秩序があるのは、
守るべきものが、もうないからだと。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
我々は母星を、男を、老人を、
多様な文化を失いました。
いまや守るべきは、我々そのものだけになりました。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
我々が秩序と呼ぶものは、正解が一つだけしかない、
寂しい状態ではないですか。

大提督/
愚かなことを。
複数の正解など、この宇宙にはない。
グレートワイズマンがそう決めたのだ。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
グレートワイズマンはなぜ1つだけではなく、
101の種族を銀河に置いたのですか。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
それは、正解が一つではないことを、
我々に伝えるためでは。

大提督/
エステル!

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
…お別れを。
私は沢山の秩序にふれすぎました。

エステル・エイン艦氏族・アストラーダ/
もうどれか一つだけを選ぶことは出来ません。
選ぶことが出来るとするならば、それは…それは。

エステルは通信を切ると、
手で顔をおおって泣き始めた。

火星傀儡政権

地球軍の方に入れるべき?

視察(アンナと運転手)

一方その頃
火星では、火星暫定政府主席が
視察旅行をしていた。

運転手/
ひどい状況ですね、街は。

アンナ・グレース/
ホントに。
軍隊ってのは、
ホント物壊すのにしか使えないわ。

運転手/
どうされるんですか、お嬢様。
このまま、奴等のいいなりに
なるおつもりで?

アンナ・グレース/
私、もうお嬢様なんて年じゃなくてよ。

運転手/
…なんでしたら、
火星独立軍でも頼れば、
いいんじゃないですかね。

運転手/
あそこにゃナイアル・ポーも
いるって話ですぜ。
それに…。

アンナ・グレース/
ポー教授か、お元気かしら。
でも駄目よ。
奴等、それを狙ってるんだから。

アンナ・グレース/
本格的に火星を直轄領に組み入れるつもりよ。
必要なら、NEPの一つも使うつもりかも。

運転手/
そこまでやりますか。

アンナ・グレース/
教授は、自分で考えろって言っていたわ。

アンナ・グレース/
私は優等生のつもり…どんなにお飾りでも、
火星政府がある限り、独立国として扱うしか
ないはずよ。

運転手/
…宇宙人相手ならともかく、
同じ地球の子らにNEP撃ちこむ奴等が
信用出来るんですかね。

アンナ・グレース/
…私が向こうへ行っても、働く場所はないわ。
あそこにはアキもいれば、教授もいる。

アンナ・グレース/
私が役に立つとすれば、
それはあの人達の目の届かないところよ。
あ、あそこ見て、壊れてる。

運転手/
戦車が通った道はみんなあんな風に
なるんですよ。

アンナ・グレース/
んまっ、なんてことでしょう。
あれもこれも、みんなお金が足りないわ。

火星コーストガード強化(スミスとアンナ)

一方その頃
火星軍鎮定軍司令部の一室。

アンナ・グレースは
サインをしながら口を開いた。

アンナ・グレース/
これで、この署名で火星コーストガードは
戦力強化されることになりますね。

スミス/
その通りです。レディ・グレース。
戦力をうまく使って反乱軍を
叩き潰してください。

アンナ・グレース/
…ありがとうございます。

スミス/
いえいえ。
そうだ、今夜お食事でも。
もちろん、お嫌なら結構ですが。

アンナ・グレース/
グレースは、スミスの凶悪そうな顔を見た後
下を見た。

アンナ・グレース/
わかりました。
お付き合いします。

スミス/
ええ、ありがとうございます。
常々あなたの美しさについては軍でも
噂になっていましてな。

アンナ・グレース/
…失礼、まだ公務が残っておりますから。

スミス/
ああ、それでは後で。

グレースが去った後、スミスは口の端を笑わせた。

スミス/
ふん、バカ女が。
火星の犬は色香を売るしか能がないと見える。

スミス/
戦力が強化される、だと!
火星人を助けるために、何故他の星が
苦労せねばならんのだ。

スミス/
自分達で殺しあえば、被害は少なくなる、
それだけだ!

スミス/
………。

スミス/
まあ、いい。
どんなことにも喜びはある。
そう、次はどうやって反乱軍をいじめてやろう。


解放戦線の非合法化(スミスとアンナ)

一方その頃
火星大議会。

この日、火星議会は火星解放戦線欠席のまま、
同党の非合法化を可決した。

火星解放戦線の幹部以下は地下に潜り、
一部は火星独立軍に合流した。

議会ビルの高所から、火星解放戦線の非合法化に
反対する与党議員も含めた反対デモを見下ろしながら、
スミス少佐は、後ろを振り向いた。

スミス/
ずいぶん思い切った手を選ばれましたな。

アンナ・グレース/
そうさせたのは、あなた方でしょう?

スミス/
…なるほど。


大統領に告げ口(アンナと地球大統領)

一方その頃
火星では、火星暫定政府主席が
火星動乱の事態収拾のために動き回っていた。

通信スクリーンに向かって、
アンナは話し掛けた。

タイムラグのせいで、
通信にはずいぶんの間があいている。

アンナ・グレース/
地球大統領閣下にお願いがあります。

ジョージ・タフト地球大統領/
なんだろう、アンナ。
地球で出来ることがあれば、なんでもやろう。

アンナ・グレース/
地球軍を中心とした太陽系総軍の撤兵を
お願いしたいのです。

ジョージ・タフト地球大統領/
それは出来ない。
そちらで頻発している人質は、地球人だ。

ジョージ・タフト地球大統領/
地球人は地球の政府が保護するのでなければ、
どこの国民が自分達の政府を支持出来る?

アンナ・グレース/
まさに、そういう意味で撤兵を
要求しているのです、閣下。

アンナ・グレース/
火星人の安全を保護するために火星政府が
お願い申し上げています。

ジョージ・タフト地球大統領/
海賊も守る対称だと?

アンナ・グレース/
そうは申し上げておりません。
私が申し上げるのは、貴国の軍が都市で横暴を
働いていることを言っているのです。

ジョージ・タフト地球大統領/
太陽系総軍の規律は、
そこまでひどくないはずだ。

ジョージ・タフト地球大統領/
それに、ホン・サンも、
ノギもそのようなことを許すわけがない。

アンナ・グレース/
宇宙では、物理的に略奪が出来ませんでした。
やりたくてもやれなかっただけかもしれません。

アンナ・グレース/
それに昔と違って、
軍人は十分に給料を貰っているわけではありません。

ジョージ・タフト地球大統領/
…わかった、アンナ。
より一層の綱紀粛正をはかろう。

ジョージ・タフト地球大統領/
すぐ司令部には通達する。
だが、軍は引けない。

アンナ・グレース/
閣下、それでは駄目なのです。

ジョージ・タフト地球大統領/
わかってくれ、アンナ。
そして信じてくれ。

ジョージ・タフト地球大統領/
私は最善をつくす。
ホン・サンには、きつく言っておく。

アンナ・グレース/
そのホン・サンが心変わりしていたら
どうするのです。

唐突に切れる通信スクリーン。

アンナは、スクリーンにハイヒールを投げた。


告げ口、その後(スミスとアンナ)

一方その頃
火星首都ユートピア、議会ビル。

スミス/
大変なことをしてくれましたな。

アンナ・グレース/
なんのことでしょう?

スミス/
我々の友情に対して、泥を塗るおつもりか?
タフト大統領は、我が将軍に厳命を
下しましたぞ。

アンナ・グレース/
そしてあなたが、殴られたのですね。

スミス/
そう!
いや、それはどうでもいい。
問題なのはあなたの行動だ。

スミス/
あなたが悪い!

アンナ・グレース/
なぜですか?

スミス/
あなたはタフト大統領に通信をした。
我が軍を誹謗中傷する内容です。
すでに証拠はあがっている。

アンナ・グレース/
盗聴は犯罪ですよ。

スミス/
…あー、いや、もちろん今のは想像です。
…ふん。

スミス/
しかし、その非協力的な態度、
覚えておくことですな。
我が軍はかならず最終的に勝ちます。

アンナ・グレース/
んまっ、それまでにあなたが飛ばされて
なければいいのですけれど。


選挙協力(スミスとアンナ)

一方その頃
火星 首都ユートピア。

スミス/
実にいい気分ですな。
実にいい気分だ。
もう一度その言葉、お願い出来ますか。

アンナ・グレース/
…選挙協力をお願いしますわ。

スミス/
よく聞こえませんなあ。

アンナ・グレース/
選挙協力をお願いしますわ!

スミス/
おお! いいですとも。
ははは、あはははは。

スミス/
いやはや、政治家というものは、
なんとも背骨がないことですな。

スミス/
覚えておいでですか、
貴方が我が軍を追い出すと
大統領に告げ口した時のことを。

アンナ・グレース/
…革命派政党が政権を取ったら、
すぐ議会を中止するくせに。

スミス/
それはもちろんですよ。
地球よりの党以外に、
存在する価値はありませんな。

スミス/
そもそも、あの海賊どもと組んでいるという
噂がある火星解放戦線党が合法というのが
おかしいのです。

アンナ・グレース/
…疑わしければ罰するなんて、
地球でも禁止されているはずですが。

スミス/
個人と国家は違うのです
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