奇眼藩国

とある二人の食料確保作戦

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とある二人の食料確保作戦

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戦いが始まる前に出された食糧増産命令を受け、奇眼藩国は大慌てで食料生産に移行した。

同時に緊急指令を受けて、二人の青年が飛び出した。
彼らに与えられた使命は一つ。
「育てるのに時間がかからない食料を手に入れる」
割と難題だった。

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二人は雪に覆われた針葉樹林を歩いていた。
この国には針葉樹林が広がっているが、凄く大雑把に二分割した場合。
雪に覆われた地域と、そうでもない地域に分けられる。
「……それで。俺達はどうしてここで、こうしてるんだ」
「いや、だーからさぁ。食料が必要な訳ですよ、分かる?」

大げさな身振りで離す片方の、どこかあどけない青年、いや少年という言うべき人物。
ついでにスコップも振り回されるので大変危ない。

「そんなことは分かってる。どうしてスコップを担いで森を歩いてるんだ、と。俺はそういうことが言いたいの」
言い聞かせるように、呟く、大人びた少年、いや青年と言ってもいいだろう人物。
どうにも好対照な二人である。

「それは……」
神妙な顔で頷く、あどけない青年(以後便宜的にAと呼称する)

「その辺から小麦を持ってくる訳にもいかないからだ」
「全く増やしてないからな、それ」
顔色を変えずに突っ込みをいれる、大人びた少年(以後便宜的にBと呼称する)

「んで、こうして山菜取りに来たってわけだ」
「……山菜取りに来るのに、何故こっちの森なんだ。普通、雪が無い地域に行くだろうが」
「……うわ、気づかなかった!」
「気付けよ!?」
ほとんどコントな会話を続ける二人。
ただむなしく声だけが森に響いている……。

現在の戦果、無し。

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「と、いうわけで。作戦βだ!」
おー、ぱちぱち、と投げやりに応じるB。
場所は先ほどと変わらない雪の森。

「――で、何で猟銃なんか持ってるんだ」
「この辺りには熊とか猪とか出るからな。それをこう、ずどーんと」
「……待て、俺は何気なく危険なことに巻き込まれていないか?!」
慌てて止めようとするBに対し、Aはあくまで強気に胸を張る。
無意味に、自信満々。

「ふふん、模型ヨットに乗った気分で待っていたまえ!」
「すぐに沈みそうじゃねえか」
頭を抱えるB。
表情にこそ感情が出にくいが、動作には思い切り現れるタイプらしい。

「……そもそもこの辺りに熊だの猪だのが出るなんて、聞いたこと無いが。もっと奥深くならともかく」
「え、だってこないだ聞いたんだぜ?『きゅう……』とか『もげ』とか鳴く生き物がこの辺りで暴れ回ってる、って」

「なんだ、その怪奇生物は」
「熊」
「な訳無いだろう!」
「猪、じゃないか」
「図鑑でも読み直せ」
「何かの虫、とか」
「喰うのか、それを」
つ、と目を逸らすA。目線が著しく泳いでいる。

「……ま、まあ何かは現れるだろう、多分」
「あ、おい……ち、後で追求するか」
誤魔化すようにすたすたと歩き出したAを追って歩く、B。
雪の森はそんな二人と裏腹に、ただ静かに静かに、変わらないまま。

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「……そりゃ!」
ずどん、と森に響き渡る銃声。
まったく直撃していないが、その衝撃音だけで『それ』は気絶していた。

「お前にしては珍しいな、外すなんて」
「いやー、何かあんまり大きいやつじゃなかったから、追っ払おうか。……思ったより繊細だった訳だけど」
がさがさ、と物陰から冬季迷彩(要するに真っ白なシートだ)をはいで出ていく。

「で、さてさて。何なのかなー、こいつは、と」
ぎゅっと気絶したものを掴む。

「もげ……きゅぅ……」
奇声をあげる、怪しい生き物。

「なあ、B」
「なんだ、A」
「これ、食べれるかな……」
「さぁ……」

何とも言えない沈黙だけが、ただでさえ静かな冬の森を覆っていた。

現在の戦果、謎の生物(Aによる命名:もげきゅう。B:ネーミングセンス、壊滅的だな)

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「さて、最後の作戦γだ……これに失敗すると我々はもげきゅうだけを持って帰らねばならない」
「我々って二人しかいないけどな。あと、そのネーミングセンスは改めろ」

釣り竿とバケツを持って二人は、凍った池の前に居た。
「ワカサギ釣りか。まあ、割と真っ当だな……?」
「なんだ、その表情」
「どうせ、何かオチがあるんじゃないかと」
「信頼無いな、俺!」
釣り竿に仕掛けをセットしながら会話を続ける。
ワカサギ釣りは棚の見極めが難しい。
泳いでいる層を見極めて仕掛けを調整しければ、高い釣果を得ることはできないのだ。

「ここ数時間で下がりっぱなしだからな。だが安心しろ」
「おお?作戦γで俺、挽回?」
「すでにストップ安だ。これ以上下がらん」
「もう最後通告!?」
ガビーン、とポーズを決めて再度叫ぶA。

「こうなりゃ大物釣って挽回するしか無いだろこのやろう。……さあ、来い!池の主よ!」
「間違いなく竿が折れるだろうが……」
言いつつ、自分でも竿を握るB。目の色が変わる(物語的表現)

「えー、やってみないと分からないだろ……おっと、フィッシュフィッシュフィーーーッシュ!」
「静かにしろ、魚が逃げるだろうが!」
B。釣り竿を握ると、性格が変わるタイプの人間だった。

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ちゃぽん。

「……地味だな」
「……ああ」

「……でも釣れるな」
「……ああ」

「……お、当たり」
「……ああ」

「……大物、かからないかなぁ……」
「……ああ」

「……ひょっとしてお前適当に答えてる?」
「……ああ」

「……メードさん、褒めてくれるかな」
「それは無い」

「適当じゃないじゃんかよ!?」
「黙れ、当たりが逃げる」

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「あー、そこそこ釣れたな。地味だったけど」
「……まあ、お前はよくやったんじゃないか」
「お、何々?友情復活?じーんと来ちゃうよ?」

「……俺の方が釣れてたけどな」
「何だって?お前、このバケツが目に入らない訳?」
「その程度で勝ち誇る気か……?ふん、計りに乗せてから謝ったって遅いぜ」

ぎゃーぎゃーと叫びながら池を後にする、二人。

「もげ……」
謎の生物、もげきゅうを池の上に忘れさったまま……

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「あら?……まあまあ、大変」

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報告書より抜粋。
『緊急食料増産令を受け、各地で食料の確保が行われた模様。本日に限り、釣り、山菜採り、狩猟の許可が大々的に出た』

『……勇敢なる有志二名の手によって、もげきゅう(仮の名前。個人的には変更の必要を感じる)なる摩訶不思議な生物の存在を確認。穀物を荒らす可能性もある為、至急対策が必要……』

『件のもげきゅう(……くどいが変更の必要性を略)が凍った池で溺れているのをある女性が発見。彼女に大変懐く』

『もげきゅう(三度言うが略)に、彼らの隠れ家と思わしき場所に案内される。そこには豊潤な天然の食料があった……古来より、動物の力というものは侮れないものだ。感謝しつつ少しだけ分けて頂く。ここのことは、我ら数名のみの秘密である』

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(文士・水瀬悠)