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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/11スレ目短編/791 - (2010/08/01 (日) 08:32:50) の1つ前との変更点

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*ミッシング・リンク ~After_play_lovers. 2 #asciiart(){{{  (Sep.01_AM04:46)  日付は変わって9月1日早朝―――  上条当麻は、学園都市へ向かって走り続けている。  その傍らには、つい数時間前まで敵だった男、『ロリコン誘拐魔』改め闇咲逢魔が併走していた。  思い返すまでもなく、8月31日は上条にとって散々な一日だった。  朝からコンビニの缶コーヒーは売り切れているわ青髪ピアスや土御門に絡まれるわ御坂美琴に恋人役の演技をしろと迫られるわ海原光貴に化けたアステカの魔術師に追い回されるわ闇咲逢魔という魔術師にインデックスが拉致されるわ何故か夜の街で再会した御坂美琴を取り込み中(緊急事態)なのでスルーしたら雷撃の槍を叩きつけられそうになるわ一転その闇咲の知り合いの女性を助けるために学園都市の『外部』へ出なければならなくなるわその女性に呪いを掛けた魔術師と一戦交えるわと、この一日だけで夏休みの絵日記帳がすべて埋まってしまうくらい濃厚で、そして散々であった。  これから学園都市の『内部』へ戻るためには闇咲の協力が不可欠なのだが、(最悪の場合には)もう一度『壁』を強行突破しなければならないのだ。  夏休みの宿題はもう諦めるしかない。 (それにしても…昨日はなかなかスゲー約束をしちまったなぁ。よっく考ると、フツーああいうのは彼氏とか恋人とか、将来を言い交わしたような関係のヤツがするもんじゃないでせうか……)  昨日、上条は名前も知らないキザでいじけ虫な野郎ととある『約束』を交わした。 「御坂美琴と彼女の周りの世界を守る…か」  あらためて、声に出してみる。  少し気恥ずかしい気もするが、不思議と嫌な気持ちではない。  迷いや後悔は微塵もなかった。  あの時も、頭で考える前に、自然に言葉が紡ぎ出されたような気がする。  それが何故なのか、上条にはわからない。  理由なんてないのかもしれない。  きっと、美琴と一緒に過ごした時間が、心地良いと思ったからだろう。  上条は疲労と睡眠不足でふらふらになりつつある身体を引きずるようにして早朝マラソンを続けているが、汗を吸い込んだTシャツとズボンは既にずっしりと重く、上条の残り少ないライフゲージを確実に削り続けていた。  まだ日の出には暫く間があるものの、なんとしても夜が明けきるまでには学園都市の『内部』へ戻らなければならない。  宿題についてはもう諦めるしかない状況ではあるのだが、学生である上条にとって、本日9月1日は二学期の始業式の日なのである。  本音を言えばゆっくり寮に戻って二、三日は眠りこけていたいところなのだが、この少年はどうしてもこの始業式をサボることができない『とある事情』を抱えていた。  上条当麻は記憶喪失である。  正確に言うと、彼には7月28日以前の記憶がない。  つまり、始業式でこれから会うであろう彼のクラスメイトたちとは、夏休みの補習授業で一緒だった青髪ピアスと学生寮のお隣りさんである土御門元春以外はほとんど面識がないため、人間関係としてはまさに白紙、いわば転校初日のような状態であり、クラスの中での自分のポジションを把握するためにも、今日は是が非でも欠席する訳にはいかないのだ。  記憶喪失後の上条当麻の人間関係の中核をなす人物の一人、ビリビリ中学生こと御坂美琴とは8月20日にとある公園の自動販売機の前で出会った。  だが、美琴との会話の内容から推察するとその出会いはもう少し遡るらしく、あの自販機前での出会いはファーストコンタクトではなく、正確には『再会』とでもいうべきものらしい。  とは言え、上条の記憶では、美琴とは『再会』以来わずか10日余りのつきあいでしかない。  その10日余りの『密度』が尋常でないことも、否定しようのない事実ではあるのだが、いつ頃からのつきあいで、どのように知り合ったのかも詳しくはわからない。  上条当麻は、御坂美琴という少女のことをほとんど知らない。  いや、正確には知っていたのかすらもわからなかった。 (俺は、御坂に対しても、『記憶を失う前の上条当麻』を演じ続けなけりゃなんねーのか?)  ココロがチクリと痛んだ。  この痛みの正体を上条は知らない。  自分は彼女との想い出をどのくらい失ってしまったのだろうか。  その事実にココロが揺らいでいることに上条は驚く。  上条がすでに記憶を失い、自分との想い出を共有していないという事実を美琴が知ってしまったら、その時彼女はどんな表情(かお)を自分に向けるのだろうか。  今までの言動等からの推測になるのだが、もしかすると美琴の中では(上条にとっては甚だ理不尽なことではあるのだが)、ある種の信頼(ルール)に近いモノがあったのかもしれない。  だが、それは『今ここにいる上条当麻』に対して向けられたものではなく、『記憶を失う前の上条当麻』との間に築かれたモノだ。  そう、あのインデックスと名乗る少女と同じように…  それはある種の『呪縛』であり、部外者である『今ここにいる上条当麻』が決して足を踏み入れてはいけない聖域……  また、ココロがチクリと痛む。  上条自身にも理由がわからない正体不明な感情。  ここまでは、記憶を失ってから何度も繰り返してきた堂々巡り―――  しかし、今回はいつもと様相が違った。  あの正体不明な感情が上条のココロの中で蠢き出したのだ。 「まぁ、御坂に関しては、ここんところ大分派手に上書きしちまいましたけどね」  自身の口から思わず発せられた言葉に、上条は驚きを隠せない。  こんなことは今までに一度だってなかったことだからだ。  8月21日、絶望に打ちひしがれ、『死』という選択肢しか持っていなかったとある少女を、頼まれもしないのに勝手に駆けつけて、そのココロに土足で踏み込むような強引なやり方で、自らも文字通りボロ雑巾のように傷つきながら、地獄の淵から死に物狂いで引きずり上げたとある少年がいた。  ならばあの夜、とある少女こと御坂美琴と、とある少年こと上条当麻は一度死んだも同然なのではないだろうか。  そして、それをやったのは、ほかでもない『今ここにいる上条当麻』だ。  それならば、美琴に対してだけは、『記憶を失う前の上条当麻』に、もうご退場いただいてもいいのではないか。  何でこんな言い訳がましいことを考えているのか、自分でもわからなかった。  だが、上条を縛りつけていたあの『呪縛』が、まるで彼の右手に触れられたかのように、音を立てて弾けたような気がしたのも紛れもない事実だ。 (そもそも記憶を失う前の俺と御坂の関係ってどんなんだったんだ……ケンカ友達?腐れ縁??それとも天敵???なんだぁ、今と大して代わり映えがしねーじゃねーか……ってことは、デフォは今のままで問題ないってことかよ)  上条当麻は記憶喪失である。  『ごっこ』とはいえ(しかも相手があのビリビリ中学生とはいえ)、女の子にデートに誘われるなんていう素敵イベントは、『今ここにいる上条当麻』の記憶としては初めての体験だったりする。  確かに散々な結末(オチ)ではあったのだけれど、8月31日という日を一緒に過ごして、美琴の今まで見たことがなかった一面にも触れることができたような気がする。 (いきなりビリビリしてくるあの癖さえなけりゃ、根はいいヤツだと思うし、くるくる表情が変わるから一緒にいて飽きないしな…)  それに…… (『妹達』や『実験』のことは例外中の例外だとしても、前にあの白井ってヤツも言ってたけど、常盤台のエースとか、レベル5とかって、色々面倒なんだろうしな。俺が丁度良いガス抜きになってるっていうんなら、上条さんもやられ甲斐があるってもんですよー。ま、一発でも当たったら俺死にますけどね)  もはや挨拶代わりになりつつある美琴の電撃を、毎度余裕綽々で受け流しているかのようにも見える上条だが、幻想殺しの効果範囲は右手首より先だけに限定されるので、万が一受け損えば当然三途の川へ直送なのだ。  美琴の前ではそんなことはおくびにも出さずに振る舞ってはいるものの、その実それは彼一流のハッタリでありブラフでしかない。  たとえ美琴の事情を汲んだとしても、やはり怖いものは怖いし、少しは遠慮しやがれコノヤローというのが上条の偽らざる本音であるはずなのだが… 『なによぉ、どうせ効かないんでしょうが』  上条の脳内会議に突然美琴の幻影が乱入してツッコミを入れてきた。  アヒル口のふくれっ面がちょっとかわいく思えて、自然にこぼれた笑みに上条は驚き、そして確信した。 「そっか、結局俺はなんだかんだ言いながら、あの状況を楽しいと思ってたのか」  御坂美琴―――  超電磁砲の異名を持つ学園都市に7人しかいない超能力者(レベル5)の第三位。  学園都市の全学生の憧れ、能力開発の名門・常盤台中学の誇るスーパーお嬢様。  だが、上条にとってそんな肩書きは大した意味を持たない。  上条当麻は知っている。  あの夜、鉄橋で見た美琴は、あまりにも弱く、脆く、今にも消えてしまいそうな程疲れ切り、一人暗闇で絶望に震え続ける、ただの女の子だった。  そして、上条当麻は知っている。  美琴が上条に時折見せる、あまりに素直で、あまりに無防備な笑顔を。 (いつもは勝ち気で、生意気で、人の話をまったく聞かない、自分勝手なお嬢様だけどさ… アイツには本当に笑顔が似合う。もう二度とアイツのあんな顔は……御坂が傷つく所なんて俺は見たくねぇんだよ!!)  だから上条は守る。御坂美琴の笑顔を。  上条にしかできない、上条にならできるやり方で、  痛みの理由(わけ)すらわからないクセに。 ◆         ◇         ◆         ◇ (そういえば御坂のヤツ、なんか俺のこと心配してくれてたみたいだったなー)  夜の街で再会したあの時は、宿題とか人さらいとかファミレスでの騒ぎとかついでに無銭飲食とかが複雑に絡み合った言わばお祭り状態だったので思わず放ったらかしにしてしまったけれど、冷静になってみれば美琴にちょっと悪いことをしてしまったのかもしれない。  それに――― (何かが引っかかるような気がするんですが…ってアレっ?アイツ確か「やっと見つけたわよ」って言ってなかったか?よく覚えてねーけど、あん時ってもう21時は回ってたよーな気が…うわっ、まさか、御坂たんは、あれからずっと上条さんのことを探してくれてたってことですか!?)  海原のニセモノ騒ぎではぐれてしまってから、相当な時間が経過していたし、完全下校時刻はおろか、寮の門限だってとっくに過ぎてしまっていたはずだ。  その間、美琴はずっと自分のことを探し続けていたのだろうか。 (それが正しけりゃ、御坂はどんだけ俺のことを心配してくれてたんだ!?にも関わらず、いざ顔を合わせた途端、10億ボルトのビリビリって、一体どっちの御坂が本当のアイツなんだよ…?いや、絶対におかしいですって!?夜遊びの帰り道にたまたま俺と出くわして、思わず口走っただけかもしれないし……そもそもアイツは俺の事が嫌いなんじゃないのか!?だぁぁぁっっっ、もう不幸だぁぁぁっっっ!夏休みの課題すら片付けられない上条さんには女のコのキモチなんて理解不能なんですよーっ!!)  握った拳が小刻みに震えているのがわかる。  理由はわからないが、何かこれ以上この急遽追加された『課題』に踏み込んでいくと、美琴にとって色々とマズイことになるのでは?と上条の本能が訴えかけていた。  その結果は、おそらく上条自身への不幸(ビリビリ)として跳ね返ってくるであろうことも。  上条は、己の不幸センサーの判定に従いこの『課題』を簀巻きにして心の奥深く沈めておくことを誓った。  上条当麻の半分は優しさで出来ているのだ。  もっとも、その優しさは時として残酷さの裏返しであることに、彼が気付く日は果たして巡ってくるのだろうか。  上条当麻は不幸な人間である。  彼は生来の不幸体質も相まって、誰かに救いの手を差しのべ、その人の不幸を取り除いてマイナスをゼロに戻すことが最大の幸せになってしまっていた。  それは言い換えれば上条当麻という人間の限界でもあった。  自分にとって都合の良いことなんて絶対に起こらないと、とうの昔にあきらめてしまっている上条が、不幸の蔭で生まれ育まれていたプラス、『とある少女の自分に対する好意』に気付くことが出来ないのは無理からぬことなのかもしれない。  この自身が設定してしまった限界こそが、上条にとって本当の『不幸』であることに、彼はいつか気付くことが出来るのだろうか。  この限界を打ち砕くのは、『幻想をブチ殺す』少年自身か、『あり得ないことをあり得ると信じた』少女か、それとも………  ◆         ◇         ◆         ◇         ◆  いったいどれくらいの時間旅立っていたのだろう。  ふと視線を隣にやると、ずっと併走していた闇咲逢魔が何か奇妙なモノでも見るような表情を上条に向けていた。  疲労はとうの昔に臨界点を超えているが、それもなんだか心地良いような気もする。  どんなことでも全力を出し切るってことはいいことなんだなぁと上条は思うが、寝不足でぼんやりした頭からは、折角の脳内会議の議事録もその何割かは失われてしまうに違いない。  半分夢の国を彷徨いながら、上条は自分がやらなければならないことを、ホントにボソッとつぶやいた。 「しゃーねぇーな…デフォは今までどおりとしても、今度会った時は、たまには俺の方から声かけてみるか」  もうすぐ9月1日の太陽が昇ってくる  ようやく学園都市を囲む『壁』が見えてきた。  あの『壁』さえ越えてしまえば、そこはいつもの世界。  いつもの世界に、彼が守りたい世界に戻れることが、上条は嬉しかった。  Sep.01_AM05:07 終了 }}}

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