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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/6スレ目ログ/6-894 - (2010/03/28 (日) 14:29:20) の1つ前との変更点

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#asciiart(){{{ ―――上条視点  完歩大きく早歩きする美琴の手をしっかりと掴んで、ついて行く。  本音としては『この御坂…可愛すぎてヤバい』まで来ているのだが、言葉に表せない感情が混じってしまう。  『常盤台の御坂美琴と一緒に出掛けられる』―――そう、彼は知り合いのオンナノコと出掛けているという意識ではない。  学園都市の超能力者、そして誰もが聞いた事のある『常盤台の超電磁砲』―――と自分が一緒にいるという考えなのだ。  ある日、美琴の同居人である白井に言われた言葉を思い出す―――お姉様(美琴)にとって重要なのは自分を対等に見てくれる存在。  今の自分は本当に対等に見れているのだろうか……? 答えは『見れていなかった』――この現実はまだ殺せそうにない。 ―――美琴視点  恥ずかしさを紛らわす為に首をブンブン振りながら早歩きしている。  自分が上条の手を掴もうとしたら、情けないくらい力が入らなかった、でも彼は握り返してくれた。 (ないないない! アイツは無意識でこういう事するんだから……)  こちらはいつもの調子のようだった。しかし今日は状況が状況なのでこの調子で最後まで持つかどうかは疑問……。  手の方に意識を置けば『恥ずかしくなる』自分の服装について考えれば『恥ずかしくなる』今の状況について考えれば『恥ずかしくなる』  今の彼女はさっさと目的地について気を紛らわそうとしか考えていなかった。  そこにあるのは常盤台の超電磁砲の姿ではなく、お年頃の恋するオンナノコの姿だった――上条はまだこの姿を知らない。 ―――最高のデートスポット!? 「あ、あのー御坂さん?ここはどのような場所なんでしょうか?」 「見て分かんないの?ゲーセンよゲーセン」  美琴が上条を引っ張ってきたのは学区内にあるゲームセンター、休日にも関わらず客の姿は見当たらない。  それでも揃う物は揃っているので遊びたい人間にとっては絶好の場所と言えるだろう。 「今日は美琴センセーの驕りだから、じゃんじゃん遊びましょ」 「お金なら上条さんも多少は持ち合わせてるので大丈夫ですよ?」 「……そんなこと言ってると両替機に2千円札呑まれるわよ」 「まだ引っ張りますか……」 「私が連れてきたんだから気にしない気にしない」 「…んじゃ、お嬢様のお言葉に甘えさせてもらいます」 「よろしい」  そんな二人が最初に楽しもうとしたのは『ゴーストボックス』  一気に4人が入れる個室の中で座っているだけ…という簡単な物。  中が揺れ、そして風等を表現する為このような形になっている。  内容は名前の通り、この二人が今更そのような物に対して怖がったり等するワケがない…? 「え、えーっと?御坂さん?」 「なによ…」 「何故ゆえ…中に入った途端、上条さんの腕に捕まってらっしゃるのですか?」 「だって怖いもん」  まだ始まってすらいないのだが……。 「と、と、取り敢えず…お金を入れなきゃな」 「アンタが入れなさいよ」  そう言って美琴は上条に100円玉一枚を渡した。基本的にワンコインで大丈夫なのがこの学園都市の特徴でもある。  (し、試験的に稼働させてるから…とかそういうダークな理由は一切ございませんのでご、ご安心を)  『ゴォオオオオオオオオオ』  音&風と共に中の映像が動き始めた。  座席には振動が伝わり、実際に動いてるような感覚を得られる。 「これは結構本格的だな……うおっ!?」  上条が驚いたのは『ゴーストボックス』の演出ではなく、隣の美琴に対してだった。  無言で目をウルウルさせながら、彼を上目遣いで見つめる…。このウルウルがどこから来たのかはサッパリ分からない。 「前向きましょうよ……御坂さん」 「だって怖いんだもん」 「そんな目で見ないで!凄い人になっちゃいますから!」  『ギャァアアアアアアアア』  そんな中『ゴーストボックス』はプログラムにより、更に怖いルートへと入り込んだ。  ただ中の演出で怖がらせるだけではない、乗っている人間の心拍数などを自動で測定し  その人が怖がっていなかった場合は『上級者ルート』怖がっていた場合は『中級者.初級者ルート』  大まかに分けると以上の3種類なのだが、演出そのものは数十あるとされている。この辺が試…学園都市らしいといえばらしい。  上条の右腕に掴まりながら、肩に体重を任せている美琴…この体制に一番困惑しているのは彼だろう。 (何やら柔らかい感触があるようなないような…全神経を腕に…じゃなくて!)  しかし次の瞬間、座席が不規則にガタガタ揺れ始める。並の揺れではなかった。  シートベルトは設置させていない為、少しでも気を抜けば倒れ…そして間違いなくケガをする。  危険を察知した上条は咄嗟に美琴を抱き抱える体制に入った。 「ちょっとアンタ、何して…」 「ごめん御坂! でも今はこうしてないと!」  その揺れは30秒程続いた…この二人の人生のおいて一番長く感じる30秒だった事は間違いないだろう。  ……揺れが収まったのを確認し、上条と美琴が同時に目を開けると―――まるで上条が美琴を押し倒したかのようなお約束の体制に…。  右手が美琴の顔の横、左手が美琴の腕の下、そして左膝が美琴の太股の挟まれるような形になっている。  美琴は上条の何かを思っているような表情を確認するともう一度目を閉じる……  しかし何も起きなかった。そしてもう一度目を開ける……と?  そこに彼の姿はなかった、美琴が慌てて起き上がると座席の下に土下座の体制をしている彼の姿が……。 「ごめんなさいごめんなさい!」 「……ば、馬鹿ーーー!!!!」 「ひぃい! こ、この通りです!」  場所が場所なので電撃は放たれなかったが、もしこれが屋外だったら大規模な停電が起きてたに違いない。 「す、少しでも期待した私が馬鹿みたいじゃない……」 「……はい?」 「…………馬鹿」  そんなこんなで『ゴーストボックス』から出ると、外の小さな液晶に二人ともビビり度「レベル5」と書かれていた。  測定は心拍数等を参考にしている……別の意味で『ゴーストボックス』にドキドキさせられたのは間違いない。 ―――最高の思い出  時刻は10時30分過ぎ 「……色んな意味で疲れたわ」  『ふー』と軽くため息をつく。 「さ、さて…次は何にしましょうかー美琴さん」 「み、み、美琴!?」  ついさっきまで疲れた…と言っていた美琴の頬が一瞬で赤く染まる。 「あ……下の名前で呼んじゃマズかったか?」 「い、いきなり呼ばれたからビックリしただけよ!」 「んじゃ、御坂。次はどうする?」 「……美琴でいい」 「…? 美琴、次は―――」 「あ、アレにしましょ!」  美琴が指をさしたのは試作機と貼り紙のされた『プリクラ』だった。 「ああいうのってカップルとかじゃないとマズイんじゃないか?」 「そ、そんなルールあるわけないじゃない!!」  繋いだ手を確認してからそう告げる。 「記念にもなりそうだし、やるか」 「まるでこれが最後みたいな言い方じゃない」 「……もしかして違う?」 「アンタが良ければこれからも…ね?」  この言葉を聞いて、上条は何故か嬉しかった…それに気付いた事もある――もしかしたら美琴の事が好き?  まだ自分の中で納得行く答えは見つかっていないものの、確実に何かを掴んだ。  早速、プリクラ機の中に入った二人。中にある説明書きを見ると、シチュエーション撮影なるものがある。  指定したシチュエーションになったら自動で撮影を行うシステムになっており  その中で更に細かく分けると――LoverモードとFriendモードの二種類。  Loverモードは『キス』『お姫様抱っこ』『抱き合う』等、細かなものが求められているのに対し  Friendモードでは主に『ピース』『笑顔』等、大雑把なポーズ的なものが求められている。  その説明書きを見て目を輝かせているのは―――美琴だ。  どうやら『キス』の方ではなく『お姫様抱っこ』の方が目的らしい。 「…これ」  指をさし目的を伝えようとする。 「へ?」 「だからこれ…」 「…上条さんが美琴さんをお姫様抱っこするって事でせうか…?」 「う、うん…」 「……わ、分かった」 「あ、ありがとう…」  美琴がお金を投入し、シチュエーションを設定する。  その間、上条は後ろで軽いストレッチを行っていた……これを見られたら間違いなく怒られたハズだが、幸い見られる事はなかった。 「…持ち上げるぞ?」 「お、落としたら怒るわよ」  1・2・3の掛け声で美琴を持ち上げ、お姫様抱っこの体制に入った。  持ってみて分かったのは美琴も普通のオンナノコという事、少しでも力を入れたら壊れてしまいそうな…そんな気さえした。  プリクラの方は上条が所定の位置につくと、機械の方で自動的にカウントダウンが始まった。  5・・・  4・・・  3・・・  2・・・  1・・・  撮影は無事終了し、上条が美琴を降ろすと落書きタイムがスタートした。  美琴は手際よく、平仮名で『みこと』『とうま』と書き、ハート柄のフレームと端っこにカエルのキャラクターを――  そして制限時間ギリギリまでデコレーションに努める、その姿を後ろからボーッと眺めていた上条だったが見ても良く理解は出来なかった。    外の受け取り口にてプリクラを受け取ると共に赤外線を使い、その映像を美琴は携帯にも取り込んだ。 「これでよし…と、後はこっちを切り取るだけね」 「んじゃ、俺はそこのベンチで休んでるぞー」  そう言って上条はベンチに腰を掛ける。 (しっかし、見事なまでに人がこねぇなここ……休日でこれじゃ店やっていけんのか?)  そんな心配をしつつ、プリクラを切り取っている美琴の後ろ姿を眺める。 (そういやアイツって好きな奴いんのか……?)  一つ疑問が浮かんだ、なんでこれが頭に浮かんだのかは分からない。それでも気になったのだ。 「ちょっと携帯出して」  切り取り終わった美琴が上条の元へ戻ってきた。そして彼は言われるがまま美琴に携帯を手渡す。 「ほい、って人の携帯で何やるんだ?」 「良いから!」  ……待つこと数十秒、美琴が何やら笑みを浮かべながら、上条に携帯を返す。  返ってきた携帯の待ち受け画面を見ると…さっき撮影したプリクラになっていた  『裏も見なさい』と言われ、電池パックの方を確認すると撮影したプリクラが貼りつけられている。 「記念じゃなくて、思い出だから…分かった?」 「なんか違うのかそれ?」 「思い出って積み重ねて行くって言葉がピッタリじゃない?」 「まー言われてみれば、そんな感じもするな」  何やら納得した表情で頷いた。 「それと今日、朝まともに食べてないのよねー」 「俺もだ、自販機前についたのが8時30分前…」 「そんな早くから待っててくれたの…?」 「ま、不幸が無かっただけなんだけどな」 「は?」 「安心して下さい、時間だけならいくらでもあります! 宿題は…徹夜で片付けるしかねぇよな……」 「宿題……? そういえばアンタの学校はそういうのあったのよね…」 「終わらなかったら終わらなかったで、次の休日を補習に充てるだけだ…慣れっこですよ慣れっこ」  その後に大きなため息をつき『この話はヤメヤメ!』と言い放った。 「宿題…美琴センセーが引き受けちゃう…? もちろん全部やるワケじゃないけどねー。あ、別にアンタが補習になって困るとか、そんなんじゃないからね」 「よろしいんですか!?」  頭の中の整理を行った…白いのは巫女の所に行ってる、部屋は朝掃除したばっかり…上条の心は決まった。 「ついでに何か材料買って行って、お昼もアンタの所で食べちゃおっか」 「……春が来た」 「は?」 「こっちの話だから気にすんな」  そしてサッと美琴の前に手を出す、一瞬戸惑ったような表情を見せたが、言葉にはせずそっと手を掴む。  こうして二人は思い出を心のノートの刻み、ゲームセンターを後にした。 ―――Change  時刻は12時前。  二人はデパートで材料を仕入れた。普段特売日にスーパーや八百屋でまとめ買いしている上条にとってはほぼ無縁  仕入れを済ませた二人は上条を先頭に目的地へ……。  寮の入り口で土御門兄妹を見かけたが……上条は『元春』美琴は『舞夏』に反応。身を隠す事で危機を回避した。    最初で最後の難関を乗り越えた二人は無事に上条宅へ到着した。 「へぇー。ここがアンタの部屋? 意外と普通じゃない」 「どんな所に住んでると思ってたんだよ…」 「早速だけど、台所借りるわよー?」  美琴は材料を持って台所へ向かった、それほど複雑な間取りでもないので位置は簡単に把握出来たようだ。 「えっ? 料理ってお前が作んの!?」 「他に誰が作るのよ…」  上条は猛烈に嫌な予感がした……この手のキャラクターはやる気だけはピカイチでも例外なく鍋を焦がす。  漫画やらアニメやらの勝手なイメージでしかないのだが、嫌な予感しかしなかった。 「よし!上条さんも手伝う!」 「大丈夫よ、二人分くらい簡単に出来るから」 「ほら、その服だって汚れたら大変だろ?」 「もし汚れたら新しいの買うから大丈夫」 「……今のお前、最高に可愛いからさ出来ればそのままでいて欲しい…と思っているんですよ?」 「ちょ、あ、あああアンタ。いきなりナニ口走ってんのよ!! そんな事言われたくらいでね、私が折れるとでも思ってるワケ!?」  数分後、材料を切り始めた美琴の隣にはしっかりと上条が居た。  トントンと材料を刻む小気味好い音が静かな上条宅に響く。  美琴の隣で腕を組み見張っている上条だったが、その手つきをみるに明らかに自分より上手かった…無駄な動き一つなく材料を切り落として行く。 「も、もしかして美琴さんって料理出来る人…?」 「当たり前じゃない、ウチの人間はみんなこれくらい出来るわよ」 「ほぇ~」  上条の中で常盤台中学校というのがどのようなモノか更に理解出来なくなってきた。  高位能力者を集めたお嬢様学校で、能力開発に関しても学園都市でトップクラスくらいにしか思っていなかっただけに…。 「でもあんまりお嬢様に幻想抱くんじゃないわよー。 裸で寮内を走り回る人間だっているんだから」 「自販機蹴ったりするお嬢様も居るからなー」  美琴は材料の下ごしらえをしながら『ぷくー』っとほっぺを膨らませる。 「悪かった悪かった、鍋を焦がす心配もなさそうだし、邪魔者は失礼しますよっと」 「ちょっと待って…」 「なんだ?」 「一人じゃなんか…アレなのよね。寂しいとかそういうんじゃないんだけど…」  美琴の表情から何かを察した上条は聞き返すこともなく 「…分かりました。その代わり俺に出来る事があれば何でも言う、OK?」 「よーし!そこの男子学生!美琴センセーの本気を目に焼き付けとくのよ!」 「はい?」  急なキャラ転換について行けなかった上条は結局何も手伝う事なく、遠い目で見守るだけだった。  完成した料理が食卓に並べられて行く、それは彩りも鮮やかな和食の数々だった。  全て美琴一人で作った。というのは目の前で見ていた上条ですら信じられない。  テレビに出てきても疑わない…むしろ自然と言えるレベルだった。   「いつからここは一流の和食料理屋になったんだっけか?」 「べ、別に普通じゃない」 「…いただいちゃってもよろしいでしょうか…?」  上条は座る体制を正座に切り替えて美琴に尋ねる。 「そ、そりゃーアンタの為に作ったんだから食べて貰わないと困るわよ」  『いただきます!』の掛け声と共に上条が煮物料理を口へ運ぶ…。 「…………美琴さんって今何歳?」 「14だけど…それがどうかした?」 「後2年ちょいかー。俺もだけどさ」 「……アンタは一人で何をブツブツ言ってんの?」 「何でもない何でもない。しっかし家でこんな美味い料理を食えるとは思わなかったぜ…」 「満足してくれたんなら良かったわ…。もし口に合わないとか言われたら学園都市ごと吹っ飛ばしてたわよ」 「人質がデカ過ぎます!!」 「冗談よ冗談、学区一つくらいなら何とかなるかもしれないけどねー」  そう言って笑い飛ばす、その表情は言ってる事とは正反対の優しさを含んでいた。 ―――家庭教師?  昼を済ませ、休憩を挟んだ後…二人は本題に取り組もうとしていた。 「ハァ……」 「さっきまでの元気はどこ行ったのよ…」 「取り敢えず、やらない事には先に進まないからな」  そう言って、プリントに目を通す…しかしペンは進まない。 「……もしかしてもしかすると、アンタってやらないんじゃなくて出来ない…?」 「言わないでー!!」 「名前だけ書きなさいよ、後は私は片付けるから」 「全部はやらない…とおっしゃっていませんでしたっけ?」 「まともに教えながらやってたら日が暮れるわよ」 「今サラッと上条さんの学力について最低レベルの評価をしませんでした…?ねぇ、したでしょ!!」 「ほら、アンタは名前書くだけで良いんだからさっさとする!」  言われるがまま名前欄に『上条当麻』と記入した。 「これでどうすんだ…?」 「よし、後は全部任せなさい。あ、後メモ帳ある?」  またまた言われるがまま美琴にメモ帳を渡す。 「このメモ帳にどうやって答えを出すとか書いとくから、後で目を通しときなさいよ」 「は、はぁ…」  物凄く若い家庭教師…ではなく、現実を見ると女子中学生…何とも言えない虚しさ、そして自分に対する情けなさが心を支配していった。  数分後。 「一応筆跡も真似といたから、鑑定にさえかけられなければ大丈夫!」 「数問しか答えが合ってるかすら分かんねぇ……」 「2年後……。あ、そっか! 私がアンタの学校行けば…」 「はい!? じょ、冗談ですよね…?」 「どうだろ? そん時なってみないと分からないわよ」 「そこは否定して欲しかった……」 「考えてみなさい…こんな可愛い後輩が毎日、毎日お昼にお弁当届けにくるのよ?」 「いや…毎日さっきみたいな料理が食べれるって考えると…って俺を迷わせるんじゃねぇ!」  美琴が自分で自分を可愛いと言った事に対しては自然と受け流していた。 「でもアンタより先に私が卒業しちゃったりして…」 「えっ?それって…」 「留年」 「……リアルで怖い!」  一瞬で顔から血の気が引いた上条に対し、隣で楽しそうに笑う美琴。  でもこんな学生生活ならもっと楽しんだろうなーと彼の心には徐々に変化がもたらされていった。 }}} #back(hr,left,text=Back)
*Little Love Melody 3 #asciiart(){{{ ―――上条視点  完歩大きく早歩きする美琴の手をしっかりと掴んで、ついて行く。  本音としては『この御坂…可愛すぎてヤバい』まで来ているのだが、言葉に表せない感情が混じってしまう。  『常盤台の御坂美琴と一緒に出掛けられる』―――そう、彼は知り合いのオンナノコと出掛けているという意識ではない。  学園都市の超能力者、そして誰もが聞いた事のある『常盤台の超電磁砲』―――と自分が一緒にいるという考えなのだ。  ある日、美琴の同居人である白井に言われた言葉を思い出す―――お姉様(美琴)にとって重要なのは自分を対等に見てくれる存在。  今の自分は本当に対等に見れているのだろうか……? 答えは『見れていなかった』――この現実はまだ殺せそうにない。 ―――美琴視点  恥ずかしさを紛らわす為に首をブンブン振りながら早歩きしている。  自分が上条の手を掴もうとしたら、情けないくらい力が入らなかった、でも彼は握り返してくれた。 (ないないない! アイツは無意識でこういう事するんだから……)  こちらはいつもの調子のようだった。しかし今日は状況が状況なのでこの調子で最後まで持つかどうかは疑問……。  手の方に意識を置けば『恥ずかしくなる』自分の服装について考えれば『恥ずかしくなる』今の状況について考えれば『恥ずかしくなる』  今の彼女はさっさと目的地について気を紛らわそうとしか考えていなかった。  そこにあるのは常盤台の超電磁砲の姿ではなく、お年頃の恋するオンナノコの姿だった――上条はまだこの姿を知らない。 ―――最高のデートスポット!? 「あ、あのー御坂さん?ここはどのような場所なんでしょうか?」 「見て分かんないの?ゲーセンよゲーセン」  美琴が上条を引っ張ってきたのは学区内にあるゲームセンター、休日にも関わらず客の姿は見当たらない。  それでも揃う物は揃っているので遊びたい人間にとっては絶好の場所と言えるだろう。 「今日は美琴センセーの驕りだから、じゃんじゃん遊びましょ」 「お金なら上条さんも多少は持ち合わせてるので大丈夫ですよ?」 「……そんなこと言ってると両替機に2千円札呑まれるわよ」 「まだ引っ張りますか……」 「私が連れてきたんだから気にしない気にしない」 「…んじゃ、お嬢様のお言葉に甘えさせてもらいます」 「よろしい」  そんな二人が最初に楽しもうとしたのは『ゴーストボックス』  一気に4人が入れる個室の中で座っているだけ…という簡単な物。  中が揺れ、そして風等を表現する為このような形になっている。  内容は名前の通り、この二人が今更そのような物に対して怖がったり等するワケがない…? 「え、えーっと?御坂さん?」 「なによ…」 「何故ゆえ…中に入った途端、上条さんの腕に捕まってらっしゃるのですか?」 「だって怖いもん」  まだ始まってすらいないのだが……。 「と、と、取り敢えず…お金を入れなきゃな」 「アンタが入れなさいよ」  そう言って美琴は上条に100円玉一枚を渡した。基本的にワンコインで大丈夫なのがこの学園都市の特徴でもある。  (し、試験的に稼働させてるから…とかそういうダークな理由は一切ございませんのでご、ご安心を)  『ゴォオオオオオオオオオ』  音&風と共に中の映像が動き始めた。  座席には振動が伝わり、実際に動いてるような感覚を得られる。 「これは結構本格的だな……うおっ!?」  上条が驚いたのは『ゴーストボックス』の演出ではなく、隣の美琴に対してだった。  無言で目をウルウルさせながら、彼を上目遣いで見つめる…。このウルウルがどこから来たのかはサッパリ分からない。 「前向きましょうよ……御坂さん」 「だって怖いんだもん」 「そんな目で見ないで!凄い人になっちゃいますから!」  『ギャァアアアアアアアア』  そんな中『ゴーストボックス』はプログラムにより、更に怖いルートへと入り込んだ。  ただ中の演出で怖がらせるだけではない、乗っている人間の心拍数などを自動で測定し  その人が怖がっていなかった場合は『上級者ルート』怖がっていた場合は『中級者.初級者ルート』  大まかに分けると以上の3種類なのだが、演出そのものは数十あるとされている。この辺が試…学園都市らしいといえばらしい。  上条の右腕に掴まりながら、肩に体重を任せている美琴…この体制に一番困惑しているのは彼だろう。 (何やら柔らかい感触があるようなないような…全神経を腕に…じゃなくて!)  しかし次の瞬間、座席が不規則にガタガタ揺れ始める。並の揺れではなかった。  シートベルトは設置させていない為、少しでも気を抜けば倒れ…そして間違いなくケガをする。  危険を察知した上条は咄嗟に美琴を抱き抱える体制に入った。 「ちょっとアンタ、何して…」 「ごめん御坂! でも今はこうしてないと!」  その揺れは30秒程続いた…この二人の人生のおいて一番長く感じる30秒だった事は間違いないだろう。  ……揺れが収まったのを確認し、上条と美琴が同時に目を開けると―――まるで上条が美琴を押し倒したかのようなお約束の体制に…。  右手が美琴の顔の横、左手が美琴の腕の下、そして左膝が美琴の太股の挟まれるような形になっている。  美琴は上条の何かを思っているような表情を確認するともう一度目を閉じる……  しかし何も起きなかった。そしてもう一度目を開ける……と?  そこに彼の姿はなかった、美琴が慌てて起き上がると座席の下に土下座の体制をしている彼の姿が……。 「ごめんなさいごめんなさい!」 「……ば、馬鹿ーーー!!!!」 「ひぃい! こ、この通りです!」  場所が場所なので電撃は放たれなかったが、もしこれが屋外だったら大規模な停電が起きてたに違いない。 「す、少しでも期待した私が馬鹿みたいじゃない……」 「……はい?」 「…………馬鹿」  そんなこんなで『ゴーストボックス』から出ると、外の小さな液晶に二人ともビビり度「レベル5」と書かれていた。  測定は心拍数等を参考にしている……別の意味で『ゴーストボックス』にドキドキさせられたのは間違いない。 ―――最高の思い出  時刻は10時30分過ぎ 「……色んな意味で疲れたわ」  『ふー』と軽くため息をつく。 「さ、さて…次は何にしましょうかー美琴さん」 「み、み、美琴!?」  ついさっきまで疲れた…と言っていた美琴の頬が一瞬で赤く染まる。 「あ……下の名前で呼んじゃマズかったか?」 「い、いきなり呼ばれたからビックリしただけよ!」 「んじゃ、御坂。次はどうする?」 「……美琴でいい」 「…? 美琴、次は―――」 「あ、アレにしましょ!」  美琴が指をさしたのは試作機と貼り紙のされた『プリクラ』だった。 「ああいうのってカップルとかじゃないとマズイんじゃないか?」 「そ、そんなルールあるわけないじゃない!!」  繋いだ手を確認してからそう告げる。 「記念にもなりそうだし、やるか」 「まるでこれが最後みたいな言い方じゃない」 「……もしかして違う?」 「アンタが良ければこれからも…ね?」  この言葉を聞いて、上条は何故か嬉しかった…それに気付いた事もある――もしかしたら美琴の事が好き?  まだ自分の中で納得行く答えは見つかっていないものの、確実に何かを掴んだ。  早速、プリクラ機の中に入った二人。中にある説明書きを見ると、シチュエーション撮影なるものがある。  指定したシチュエーションになったら自動で撮影を行うシステムになっており  その中で更に細かく分けると――LoverモードとFriendモードの二種類。  Loverモードは『キス』『お姫様抱っこ』『抱き合う』等、細かなものが求められているのに対し  Friendモードでは主に『ピース』『笑顔』等、大雑把なポーズ的なものが求められている。  その説明書きを見て目を輝かせているのは―――美琴だ。  どうやら『キス』の方ではなく『お姫様抱っこ』の方が目的らしい。 「…これ」  指をさし目的を伝えようとする。 「へ?」 「だからこれ…」 「…上条さんが美琴さんをお姫様抱っこするって事でせうか…?」 「う、うん…」 「……わ、分かった」 「あ、ありがとう…」  美琴がお金を投入し、シチュエーションを設定する。  その間、上条は後ろで軽いストレッチを行っていた……これを見られたら間違いなく怒られたハズだが、幸い見られる事はなかった。 「…持ち上げるぞ?」 「お、落としたら怒るわよ」  1・2・3の掛け声で美琴を持ち上げ、お姫様抱っこの体制に入った。  持ってみて分かったのは美琴も普通のオンナノコという事、少しでも力を入れたら壊れてしまいそうな…そんな気さえした。  プリクラの方は上条が所定の位置につくと、機械の方で自動的にカウントダウンが始まった。  5・・・  4・・・  3・・・  2・・・  1・・・  撮影は無事終了し、上条が美琴を降ろすと落書きタイムがスタートした。  美琴は手際よく、平仮名で『みこと』『とうま』と書き、ハート柄のフレームと端っこにカエルのキャラクターを――  そして制限時間ギリギリまでデコレーションに努める、その姿を後ろからボーッと眺めていた上条だったが見ても良く理解は出来なかった。    外の受け取り口にてプリクラを受け取ると共に赤外線を使い、その映像を美琴は携帯にも取り込んだ。 「これでよし…と、後はこっちを切り取るだけね」 「んじゃ、俺はそこのベンチで休んでるぞー」  そう言って上条はベンチに腰を掛ける。 (しっかし、見事なまでに人がこねぇなここ……休日でこれじゃ店やっていけんのか?)  そんな心配をしつつ、プリクラを切り取っている美琴の後ろ姿を眺める。 (そういやアイツって好きな奴いんのか……?)  一つ疑問が浮かんだ、なんでこれが頭に浮かんだのかは分からない。それでも気になったのだ。 「ちょっと携帯出して」  切り取り終わった美琴が上条の元へ戻ってきた。そして彼は言われるがまま美琴に携帯を手渡す。 「ほい、って人の携帯で何やるんだ?」 「良いから!」  ……待つこと数十秒、美琴が何やら笑みを浮かべながら、上条に携帯を返す。  返ってきた携帯の待ち受け画面を見ると…さっき撮影したプリクラになっていた  『裏も見なさい』と言われ、電池パックの方を確認すると撮影したプリクラが貼りつけられている。 「記念じゃなくて、思い出だから…分かった?」 「なんか違うのかそれ?」 「思い出って積み重ねて行くって言葉がピッタリじゃない?」 「まー言われてみれば、そんな感じもするな」  何やら納得した表情で頷いた。 「それと今日、朝まともに食べてないのよねー」 「俺もだ、自販機前についたのが8時30分前…」 「そんな早くから待っててくれたの…?」 「ま、不幸が無かっただけなんだけどな」 「は?」 「安心して下さい、時間だけならいくらでもあります! 宿題は…徹夜で片付けるしかねぇよな……」 「宿題……? そういえばアンタの学校はそういうのあったのよね…」 「終わらなかったら終わらなかったで、次の休日を補習に充てるだけだ…慣れっこですよ慣れっこ」  その後に大きなため息をつき『この話はヤメヤメ!』と言い放った。 「宿題…美琴センセーが引き受けちゃう…? もちろん全部やるワケじゃないけどねー。あ、別にアンタが補習になって困るとか、そんなんじゃないからね」 「よろしいんですか!?」  頭の中の整理を行った…白いのは巫女の所に行ってる、部屋は朝掃除したばっかり…上条の心は決まった。 「ついでに何か材料買って行って、お昼もアンタの所で食べちゃおっか」 「……春が来た」 「は?」 「こっちの話だから気にすんな」  そしてサッと美琴の前に手を出す、一瞬戸惑ったような表情を見せたが、言葉にはせずそっと手を掴む。  こうして二人は思い出を心のノートの刻み、ゲームセンターを後にした。 ―――Change  時刻は12時前。  二人はデパートで材料を仕入れた。普段特売日にスーパーや八百屋でまとめ買いしている上条にとってはほぼ無縁  仕入れを済ませた二人は上条を先頭に目的地へ……。  寮の入り口で土御門兄妹を見かけたが……上条は『元春』美琴は『舞夏』に反応。身を隠す事で危機を回避した。    最初で最後の難関を乗り越えた二人は無事に上条宅へ到着した。 「へぇー。ここがアンタの部屋? 意外と普通じゃない」 「どんな所に住んでると思ってたんだよ…」 「早速だけど、台所借りるわよー?」  美琴は材料を持って台所へ向かった、それほど複雑な間取りでもないので位置は簡単に把握出来たようだ。 「えっ? 料理ってお前が作んの!?」 「他に誰が作るのよ…」  上条は猛烈に嫌な予感がした……この手のキャラクターはやる気だけはピカイチでも例外なく鍋を焦がす。  漫画やらアニメやらの勝手なイメージでしかないのだが、嫌な予感しかしなかった。 「よし!上条さんも手伝う!」 「大丈夫よ、二人分くらい簡単に出来るから」 「ほら、その服だって汚れたら大変だろ?」 「もし汚れたら新しいの買うから大丈夫」 「……今のお前、最高に可愛いからさ出来ればそのままでいて欲しい…と思っているんですよ?」 「ちょ、あ、あああアンタ。いきなりナニ口走ってんのよ!! そんな事言われたくらいでね、私が折れるとでも思ってるワケ!?」  数分後、材料を切り始めた美琴の隣にはしっかりと上条が居た。  トントンと材料を刻む小気味好い音が静かな上条宅に響く。  美琴の隣で腕を組み見張っている上条だったが、その手つきをみるに明らかに自分より上手かった…無駄な動き一つなく材料を切り落として行く。 「も、もしかして美琴さんって料理出来る人…?」 「当たり前じゃない、ウチの人間はみんなこれくらい出来るわよ」 「ほぇ~」  上条の中で常盤台中学校というのがどのようなモノか更に理解出来なくなってきた。  高位能力者を集めたお嬢様学校で、能力開発に関しても学園都市でトップクラスくらいにしか思っていなかっただけに…。 「でもあんまりお嬢様に幻想抱くんじゃないわよー。 裸で寮内を走り回る人間だっているんだから」 「自販機蹴ったりするお嬢様も居るからなー」  美琴は材料の下ごしらえをしながら『ぷくー』っとほっぺを膨らませる。 「悪かった悪かった、鍋を焦がす心配もなさそうだし、邪魔者は失礼しますよっと」 「ちょっと待って…」 「なんだ?」 「一人じゃなんか…アレなのよね。寂しいとかそういうんじゃないんだけど…」  美琴の表情から何かを察した上条は聞き返すこともなく 「…分かりました。その代わり俺に出来る事があれば何でも言う、OK?」 「よーし!そこの男子学生!美琴センセーの本気を目に焼き付けとくのよ!」 「はい?」  急なキャラ転換について行けなかった上条は結局何も手伝う事なく、遠い目で見守るだけだった。  完成した料理が食卓に並べられて行く、それは彩りも鮮やかな和食の数々だった。  全て美琴一人で作った。というのは目の前で見ていた上条ですら信じられない。  テレビに出てきても疑わない…むしろ自然と言えるレベルだった。   「いつからここは一流の和食料理屋になったんだっけか?」 「べ、別に普通じゃない」 「…いただいちゃってもよろしいでしょうか…?」  上条は座る体制を正座に切り替えて美琴に尋ねる。 「そ、そりゃーアンタの為に作ったんだから食べて貰わないと困るわよ」  『いただきます!』の掛け声と共に上条が煮物料理を口へ運ぶ…。 「…………美琴さんって今何歳?」 「14だけど…それがどうかした?」 「後2年ちょいかー。俺もだけどさ」 「……アンタは一人で何をブツブツ言ってんの?」 「何でもない何でもない。しっかし家でこんな美味い料理を食えるとは思わなかったぜ…」 「満足してくれたんなら良かったわ…。もし口に合わないとか言われたら学園都市ごと吹っ飛ばしてたわよ」 「人質がデカ過ぎます!!」 「冗談よ冗談、学区一つくらいなら何とかなるかもしれないけどねー」  そう言って笑い飛ばす、その表情は言ってる事とは正反対の優しさを含んでいた。 ―――家庭教師?  昼を済ませ、休憩を挟んだ後…二人は本題に取り組もうとしていた。 「ハァ……」 「さっきまでの元気はどこ行ったのよ…」 「取り敢えず、やらない事には先に進まないからな」  そう言って、プリントに目を通す…しかしペンは進まない。 「……もしかしてもしかすると、アンタってやらないんじゃなくて出来ない…?」 「言わないでー!!」 「名前だけ書きなさいよ、後は私は片付けるから」 「全部はやらない…とおっしゃっていませんでしたっけ?」 「まともに教えながらやってたら日が暮れるわよ」 「今サラッと上条さんの学力について最低レベルの評価をしませんでした…?ねぇ、したでしょ!!」 「ほら、アンタは名前書くだけで良いんだからさっさとする!」  言われるがまま名前欄に『上条当麻』と記入した。 「これでどうすんだ…?」 「よし、後は全部任せなさい。あ、後メモ帳ある?」  またまた言われるがまま美琴にメモ帳を渡す。 「このメモ帳にどうやって答えを出すとか書いとくから、後で目を通しときなさいよ」 「は、はぁ…」  物凄く若い家庭教師…ではなく、現実を見ると女子中学生…何とも言えない虚しさ、そして自分に対する情けなさが心を支配していった。  数分後。 「一応筆跡も真似といたから、鑑定にさえかけられなければ大丈夫!」 「数問しか答えが合ってるかすら分かんねぇ……」 「2年後……。あ、そっか! 私がアンタの学校行けば…」 「はい!? じょ、冗談ですよね…?」 「どうだろ? そん時なってみないと分からないわよ」 「そこは否定して欲しかった……」 「考えてみなさい…こんな可愛い後輩が毎日、毎日お昼にお弁当届けにくるのよ?」 「いや…毎日さっきみたいな料理が食べれるって考えると…って俺を迷わせるんじゃねぇ!」  美琴が自分で自分を可愛いと言った事に対しては自然と受け流していた。 「でもアンタより先に私が卒業しちゃったりして…」 「えっ?それって…」 「留年」 「……リアルで怖い!」  一瞬で顔から血の気が引いた上条に対し、隣で楽しそうに笑う美琴。  でもこんな学生生活ならもっと楽しんだろうなーと彼の心には徐々に変化がもたらされていった。 }}} #back(hr,left,text=Back)

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