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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/1スレ目短編/717 - (2010/02/03 (水) 13:05:55) の最新版との変更点

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#asciiart(){{{ 「え、今日寮監いないの?」 「ええ、遠縁の方が亡くなったそうですの。明日には戻られるそうですけど」 「ふーん。と、なると。」 「と、なりますわね」 鬼の寮監も人の子。年に数回やむをえず寮を空けるケースがある。 寮長に代理委任されるが、寮長も3年生とはいえ学生であり、 …つまりはたいていの事には目を瞑ってくれる。 とはいえ、突然の事なので計画的な何かをできるわけでなく、 せいぜい軽い門限やぶりや、友達の部屋で夜通しおしゃべりするぐらいで、 男を連れ込んだり、物騒な夜に出歩くような事はほとんどない。…一部超能力者除く。 御坂美琴は夜の街を歩いていた。 (つまんないな…) 後輩からおしゃべり会に誘われたのだが、丁重に断っていた。 大抵の場合、美琴の独壇場になってしまうからである。話すにしろ、聞かれるにしろ。 そのため、理由をでっちあげて夜の街に飛び出したが、目的などない。 (アイツもいないし) 上条当麻とは地下鉄のシャッターがどうのこうの、と数日前に電話で話したきりである。 そこからまったく音信不通である。意を決して掛けてみても、繋がらない。 (コインでも補充しとこうかしら) 思い立って、ゲーセンに向かう。 数あるゲーセンの中でも、ちょっと遠いが金色のコインを採用しているゲーセンに向かう。 「あらあら常盤台のお嬢さんがどったの~~?遊びにいきたいのかな~?」 軽薄そうなイヤな目つきの男が声を掛ける。 (きたっ!) 常盤台の女の子は能力者と分かっているのに、声を掛ける…油断はできない。 美琴は無視してずんずんと歩き続ける。 突然、左からガバッ!と肩に手が回される。 (な、何っ!あつかましいっ!コイツは焼くっ!!!) 一瞬振り向くと、ロシア帽が目に入る。 「何だアンタはっ!…え?」 電撃が効かない。いや、出ない!? ロシア帽の男が、先刻の男に声を掛けると、あんまり未練もなく引き下がる。 「お前は全く…また不良狩りか?」 「へ?」 ロシア帽の男は、上条当麻だった。 「な、な、ななな?」 上条は肩に回していた手を離すと、ため息をつく。 「お前な、不良狩りはホントやめとけ。俺みたいな能力の不良がいたら、お前ひん剥かれるぞ」 美琴は口をぱくぱくさせている。 「な、なによ、その頭…」 「ロシア帰りにつきイメチェン。似あうだろ?」 「なにワケわかんないことやってんのよ!なんでここにいんのよ!」 「ワケわかんないとはヒデエな。今朝日本に帰ってきて、んで病院立ち寄っての帰り道だ。」 「今朝…」 「ああ。それで歩いてたらお前がいて、何かガラの悪い方歩いていくから付いていったら案の定…」 「べ、別に不良狩りが目的じゃないわよ!さっきのも無視してたでしょ!」 「ほー。んじゃ目的はなんだったんだ。」 「…ちゃんとあったけど、もう行く気なくしたから、もういいわ…」 「んでアンタはもう今日は帰るだけなの?」 「そーだな。メシ食って帰るだけだ。何なら行くか?」 ドキッ!としたが、さらに美琴は閃き、 「んじゃあさ・・・ウチの寮にこない?簡単なパスタぐらいなら出してあげる」 「はあ?男子禁制だろ?」 「今日は寮監がいないの。あ、もちろん黒子とかもいるから、妙な期待はしないように!」 「期待って…ホントにいいのかよ?禁断の園に踏み入れるような背徳感が…」 「めったに見られないモンだし。じゃあ行きましょー」 「そういや地下鉄のシャッターでは助かったよ。ありがとな」 「アンタほんと何やってんだか…」 「聞いて驚くな、実はあの時、横にイギリス王女がいたんだぜ。お前に感謝してたよ」 「は?」 話せる程度のオミヤゲ話で寮までテクテクと歩いていく。 上条は早くも来たことを後悔し始めていた。好奇の目がものすごい。 二度目の訪問だが、今回は入口で既に数人から見られている。 何故か黒子がおらず、208号室に通すと2人きりとなったが、 「じゃ、じゃあ適当に作ってくるね!家捜ししちゃダメよ!」 と、部屋を飛び出して行く。 あえて扉を締めて行かなかったのか、廊下の声が聞こえる。 『御坂さんが男の方を』『御坂さまの彼氏?彼氏?』 『え、え、どちらにいらっしゃるの?』 丸聞こえである。たまに顔がにゅっと飛び出し、『居ましたわ居ましたわ』等々。 これでは珍獣扱いである。 「何事ですの?」 208号室に群がる人々に、黒子は首をかしげつつ問う。雑用をこなしていたらしい。 「御坂さまが、部屋の中で、男の方と」 「ぬあんですって!!!」 黒子は怒り狂って飛び込む。 「よお」 上条は引きつりながら挨拶する。 「久しぶりだな。もうあん時のケガはいいのか?」 「おかげさまで、ってちがいますの!貴方、いったいぜんたい何してますの!?しかもお姉様のベッドに腰掛けて!」 「いや、なりゆきといいますか、なんといいますか」 「ああ、黒子おかえり。びっくりした?」 美琴が部屋に帰ってきた。 「はい。ありあわせだけど、どーぞ」 出てきたのはキャベツ入りのツナパスタ。 「お、うまそーだな。んではありがたく、いただきまーす、っと」 「どうぞ~。お水こっちにおいとくわね」 たまらないのは、黒子と扉の外の観衆である。 『こ、これがラブラブというものなんですね』 『うらやましい…』『御坂さまが甲斐甲斐しい…』 黒子はもはや劇画調の顔になって真っ白である。言葉も出ない様子だ。 上条は不穏な空気を感じながらも、ツナパスタをかっこんでいた。 「うめえな御坂。これなら俺でも作れるかな」 「できるでしょー。キャベツをしっかり炒めるのがコツね。ツナは缶詰だし」 「んーと…そこで見られてても気になるから、気になるなら入ってきなさいな。」 意外にも、美琴は観衆に声をかける。 「え、いいのですか?」 「別にいいわよ。隠すもんじゃなし。」 遠慮がちに5人の女の子が入って来た。 そもそも美琴の部屋に入る事自体が初めてらしく、キョロキョロしている。 そして、やはり間近で男を見る機会がないためか、上条をちらちら見つめている。 ちなみに、女の子たちは美琴と黒子のベッドに分かれて腰掛けている。 とりあえず何も考えないようにして、食べきった上条だが、一気に高まった女の子密度に動揺する。 「えーと、御坂さん…なんでせうかこのハーレムは?」 『キャー!』 女の子たちが笑いさざめく。 (と、とりあえずこういうノリで乗り切るか?) 「まあ、こういうのも新鮮でいいでしょー。どう、中学生のお嬢様に囲まれる気分は?」 「いや、この珍獣扱いは何とかして欲しいんですけど」 また『キャー!』と女の子たちにウケている。 箸が転んでも可笑しい年頃ですかね、と上条はつぶやく。 「はいっ!御坂さま!」 「ん?なあに?」 「お二人はいつからの仲なんですか?」 「仲って、だいたい半年ぐらいだけど…言っとくけど、恋人じゃないからね?勘違いしないように」 「「「「え?」」」」 数人がハモる。そりゃそうだ、ここまでやって「恋人じゃない」はないだろう。 「違うんですか?」 「違うわよ。ホレ、黒子だって頷いてるでしょ」 黒子がブンブンと縦に首を振っている。 「と、おっしゃってますが?」 その女の子は頬を赤らめながら、上条にマイクを差し出すように腕を出す。 「まあ、美琴がそういうんなら、そうじゃないですか?」 「そうなんですかー、って、え?」 (な、何いきなり名前で呼んでんのよ!?) 「あ、つい。むしろ敵だよな?御坂」 「そそそ、そーよ、コイツは敵。敵なのよ!」 「敵…?」 「フフフ、常盤台のエース、御坂美琴は既に完全無敵ではない。俺に敗れてるんですよねー!」 「「「えーーーーっ!?」」」 女の子たちの驚きは尋常では無かった。LV5の凄まじさは能力者である彼女たちが一番よく知っている。 「ったく、ムカつく…」 美琴はさっきの『美琴』の衝撃が抜けておらず、ブツブツ言うのみになっている。 「ホントなんですか、御坂さま!?」 「…まあ、ほぼギブアップ状態だからね。癪だけど」 「ひええええ」 本人も認めてる以上、疑う余地もなく、どんな能力があるのかとまじまじと上条を見つめている。 「んーと、そうだな」 視線を感じた上条は、乗り出して右手を差し出す。 「この中で、この右手に頭をなでられてもいいって人いるか?ま、ちょっとした遊びだけどな」 ちょっと間をおいて、一人がちょっと頬を染めて、上条の右手の下に潜り込むようにして座る。 「君の能力は?何なら言わなくてもいいけど」 「いえ、白井さんと同じくテレポートです。まだ自分は動かせませんが、モノなら大抵のものは。」 「おっけー、わかりやすい。一度この携帯動かしてみて」 上条の携帯を受け取ったその子は、瞬時に右手から左手へテレポートさせる。 上条はニヤリと笑って、「じゃあナデナデ…っと。ほい、もう一度」 笑っていたその子の顔が強ばって行く。 「え?どうして?え?…できない」 「んじゃ手を離すぞ。どうだ?」 「あ…戻った」 「ということだ。俺の前では、君らはみな普通の女の子になっちまうんだよ」 「ひええええええ」 「これで分かったろ?常盤台中最強の御坂も…」 と、いいつつ上条は美琴の左手をやさしく包むように握る。 美琴がいきなりの上条の行動に固まる。 「こうやって、握るだけで、…能力のない、普通の可愛い女の子になるというわけだ。」 上条はワザと浮いた言葉を入れて美琴を挑発する。 しかし美琴はそれを返せない。ただただ真っ赤になるばかり。 (か、可愛いとか、やめて…手、手も…) もはや女の子たちには衝撃の展開しかなく、能力・御坂・台詞の何から突っ込んでいいのかも分からない状態だ。 一人、白井黒子だけが面白くなさそうにしている。 ただ、ひとまず上条の人となりを見定められる数少ない機会ということで、とりあえずはおとなしくしていた。 「まあ、これが『敵』という事だ。君らにとっても『敵』だけどさ。でも敵対、ということじゃない」 「すごい能力ですね…私もやってもらっていいですか?」 と、上条の右手でなでられたり、触ったりして、『おわっ本当だ』『なにこれなにこれ』と騒いでいる。 「まあ教訓としてだな。みんな頑張って能力を鍛えるのはいいけど、足元掬われない様にな。美琴みたいに。」 「うっさいわね!」 後輩の女の子をなでたりしている上条を見て、どうにも落ち着かない気分になる。 スキンシップをとったせいか、やたら皆の上条への距離が近い。見つめる目がキラキラしている。 (これが、フラグ体質と言われる所以ね。なるほど…) ここで命を助けて貰おうもんなら、一気に持っていかれるというワケだ。 (早く一端覧祭キープしないと…これ以上色々増やされちゃかなわないわね) 「でも、どう見ても、お二人は恋人にしか見えないんですけど…」 「へ?」 「たまに名前でお呼びになってますし、なんといいますか、こんな御坂さま初めて見ます…」 「そそ、そんな事ないわよ!私はいつも通り、うん、普通よ?」 「ま、美琴は人前じゃこう言っちゃうんだよなー」 上条は美琴おちょくりモードに突入した。 「え…?」 上条を除く全員が固まる。 「別に照れなくてもいいじゃん。ここだけの秘密ってことで。なあ美琴?」 「ちょ、ちょっと待ってよアンタ!」 「アンタって…いつも通り当麻でいいのに。いつかボロでるって」 女の子たちは口に手を当てて真っ赤になっている。 黒子は変な震え方をしている。表情はうつむいて見えない。 美琴は。 (な、なに言って…!いやでも反撃しないと、勘違いされ、ああ、でも…) コイツの言ってること冗談だから、と言いたいのに、言葉が出せない。 (ひとまず、コイツを止めないと!) 美琴は枕をひっぱりあげると、そのまま上条の顔に押し付け、押し込んでベッドに転ばせた。 「こ、こいつ超軽くて、こんなこと言う奴なの!本気にしなくていーから!」 「で、でも御坂さん、この人って…あの、夏休みの最後の日に…あい、びきしてた人じゃ…?」 「!」 一人の女の子の指摘に、他の子たちも反応する。 「ああ、あの伝説の!」「ということは大覇星祭の借り物競争もって話だったよね?」 「あー、あの人なんだ!髪型違うからわかんなかった!」 美琴は、ドツボにハマった事を自覚した。 「ひでえな…」と軽い口調で言いながら上条は起き上がる。 その姿を見た黒子が叫ぶ。 「上条さん、なんですの!?その頭」 押し倒されてロシア帽が外れた上条の頭は、鮮血ににじんだ包帯状態であった。 「あ、いやー参ったな。見られちまったか。」 全員あまりの事態に驚いている。上条はロシア帽をかぶり直しながら、 「えーとこれは気にしなくていいよ。もう1週間もすれば取れるだろ」 美琴は、上条が病院帰りだと言っていたことを思い出す。 「ちょっと海外でケガしちまってな。ま、これぐらいは御坂や白井なら見慣れたモンだ。むしろ入院してないと言える」 上条は、よっ、と立ち上がって。 「場を白けさせちまったし、腹も膨れたし、帰るわ。御坂ありがとな、旨かったぞ」 「う、うん…」 「というわけで、上条当麻は恋人募集中につき、お嬢様方、またいつでもお声がけくださいっ!」 立ち去ろうとしている上条に、 「待って!送るからちょっと待って」 「いいよ。女の子はこんな時間に出歩くな。じゃあ、御坂。白井も騒がせたな。じゃあな」 美琴は呆然としていた。あんなケガで付き合ってくれてたなんて。 「ま、今日の所は許して差し上げますわ。殿方を連れ込むなんて、お姉様」 「…」 女の子の一人がつぶやく。 「御坂さまが惹かれたのが、なんとなく分かる方ですね…」 数人が同意して頷く。 頷かなかった子は…胸に秘めたるものが出来たのかもしれない。 それじゃあ失礼致します、おやすみなさいと女の子たちは去っていく。 人気のなくなった部屋の中、黒子は美琴を見つめてため息をつく。 (これは…さらに重症になるかもですわね…困ったものですわ。) なお、この女の子たちにより、上条は”どんな能力者もLV0にする男”ということで、 通称『ミスターLV0』と呼ばれるようになり、一端覧祭では「あ、ミスターLV0だ!」と指さされ、 なんで俺がLV0なのをイジめる女子中学生が増えたのかと悩む羽目になる… fin. }}} #back(hr,left,text=Back)
*ロシア帽のフラグ男 #asciiart(){{{ 「え、今日寮監いないの?」 「ええ、遠縁の方が亡くなったそうですの。明日には戻られるそうですけど」 「ふーん。と、なると。」 「と、なりますわね」 鬼の寮監も人の子。年に数回やむをえず寮を空けるケースがある。 寮長に代理委任されるが、寮長も3年生とはいえ学生であり、 …つまりはたいていの事には目を瞑ってくれる。 とはいえ、突然の事なので計画的な何かをできるわけでなく、 せいぜい軽い門限やぶりや、友達の部屋で夜通しおしゃべりするぐらいで、 男を連れ込んだり、物騒な夜に出歩くような事はほとんどない。…一部超能力者除く。 御坂美琴は夜の街を歩いていた。 (つまんないな…) 後輩からおしゃべり会に誘われたのだが、丁重に断っていた。 大抵の場合、美琴の独壇場になってしまうからである。話すにしろ、聞かれるにしろ。 そのため、理由をでっちあげて夜の街に飛び出したが、目的などない。 (アイツもいないし) 上条当麻とは地下鉄のシャッターがどうのこうの、と数日前に電話で話したきりである。 そこからまったく音信不通である。意を決して掛けてみても、繋がらない。 (コインでも補充しとこうかしら) 思い立って、ゲーセンに向かう。 数あるゲーセンの中でも、ちょっと遠いが金色のコインを採用しているゲーセンに向かう。 「あらあら常盤台のお嬢さんがどったの~~?遊びにいきたいのかな~?」 軽薄そうなイヤな目つきの男が声を掛ける。 (きたっ!) 常盤台の女の子は能力者と分かっているのに、声を掛ける…油断はできない。 美琴は無視してずんずんと歩き続ける。 突然、左からガバッ!と肩に手が回される。 (な、何っ!あつかましいっ!コイツは焼くっ!!!) 一瞬振り向くと、ロシア帽が目に入る。 「何だアンタはっ!…え?」 電撃が効かない。いや、出ない!? ロシア帽の男が、先刻の男に声を掛けると、あんまり未練もなく引き下がる。 「お前は全く…また不良狩りか?」 「へ?」 ロシア帽の男は、上条当麻だった。 「な、な、ななな?」 上条は肩に回していた手を離すと、ため息をつく。 「お前な、不良狩りはホントやめとけ。俺みたいな能力の不良がいたら、お前ひん剥かれるぞ」 美琴は口をぱくぱくさせている。 「な、なによ、その頭…」 「ロシア帰りにつきイメチェン。似あうだろ?」 「なにワケわかんないことやってんのよ!なんでここにいんのよ!」 「ワケわかんないとはヒデエな。今朝日本に帰ってきて、んで病院立ち寄っての帰り道だ。」 「今朝…」 「ああ。それで歩いてたらお前がいて、何かガラの悪い方歩いていくから付いていったら案の定…」 「べ、別に不良狩りが目的じゃないわよ!さっきのも無視してたでしょ!」 「ほー。んじゃ目的はなんだったんだ。」 「…ちゃんとあったけど、もう行く気なくしたから、もういいわ…」 「んでアンタはもう今日は帰るだけなの?」 「そーだな。メシ食って帰るだけだ。何なら行くか?」 ドキッ!としたが、さらに美琴は閃き、 「んじゃあさ・・・ウチの寮にこない?簡単なパスタぐらいなら出してあげる」 「はあ?男子禁制だろ?」 「今日は寮監がいないの。あ、もちろん黒子とかもいるから、妙な期待はしないように!」 「期待って…ホントにいいのかよ?禁断の園に踏み入れるような背徳感が…」 「めったに見られないモンだし。じゃあ行きましょー」 「そういや地下鉄のシャッターでは助かったよ。ありがとな」 「アンタほんと何やってんだか…」 「聞いて驚くな、実はあの時、横にイギリス王女がいたんだぜ。お前に感謝してたよ」 「は?」 話せる程度のオミヤゲ話で寮までテクテクと歩いていく。 上条は早くも来たことを後悔し始めていた。好奇の目がものすごい。 二度目の訪問だが、今回は入口で既に数人から見られている。 何故か黒子がおらず、208号室に通すと2人きりとなったが、 「じゃ、じゃあ適当に作ってくるね!家捜ししちゃダメよ!」 と、部屋を飛び出して行く。 あえて扉を締めて行かなかったのか、廊下の声が聞こえる。 『御坂さんが男の方を』『御坂さまの彼氏?彼氏?』 『え、え、どちらにいらっしゃるの?』 丸聞こえである。たまに顔がにゅっと飛び出し、『居ましたわ居ましたわ』等々。 これでは珍獣扱いである。 「何事ですの?」 208号室に群がる人々に、黒子は首をかしげつつ問う。雑用をこなしていたらしい。 「御坂さまが、部屋の中で、男の方と」 「ぬあんですって!!!」 黒子は怒り狂って飛び込む。 「よお」 上条は引きつりながら挨拶する。 「久しぶりだな。もうあん時のケガはいいのか?」 「おかげさまで、ってちがいますの!貴方、いったいぜんたい何してますの!?しかもお姉様のベッドに腰掛けて!」 「いや、なりゆきといいますか、なんといいますか」 「ああ、黒子おかえり。びっくりした?」 美琴が部屋に帰ってきた。 「はい。ありあわせだけど、どーぞ」 出てきたのはキャベツ入りのツナパスタ。 「お、うまそーだな。んではありがたく、いただきまーす、っと」 「どうぞ~。お水こっちにおいとくわね」 たまらないのは、黒子と扉の外の観衆である。 『こ、これがラブラブというものなんですね』 『うらやましい…』『御坂さまが甲斐甲斐しい…』 黒子はもはや劇画調の顔になって真っ白である。言葉も出ない様子だ。 上条は不穏な空気を感じながらも、ツナパスタをかっこんでいた。 「うめえな御坂。これなら俺でも作れるかな」 「できるでしょー。キャベツをしっかり炒めるのがコツね。ツナは缶詰だし」 「んーと…そこで見られてても気になるから、気になるなら入ってきなさいな。」 意外にも、美琴は観衆に声をかける。 「え、いいのですか?」 「別にいいわよ。隠すもんじゃなし。」 遠慮がちに5人の女の子が入って来た。 そもそも美琴の部屋に入る事自体が初めてらしく、キョロキョロしている。 そして、やはり間近で男を見る機会がないためか、上条をちらちら見つめている。 ちなみに、女の子たちは美琴と黒子のベッドに分かれて腰掛けている。 とりあえず何も考えないようにして、食べきった上条だが、一気に高まった女の子密度に動揺する。 「えーと、御坂さん…なんでせうかこのハーレムは?」 『キャー!』 女の子たちが笑いさざめく。 (と、とりあえずこういうノリで乗り切るか?) 「まあ、こういうのも新鮮でいいでしょー。どう、中学生のお嬢様に囲まれる気分は?」 「いや、この珍獣扱いは何とかして欲しいんですけど」 また『キャー!』と女の子たちにウケている。 箸が転んでも可笑しい年頃ですかね、と上条はつぶやく。 「はいっ!御坂さま!」 「ん?なあに?」 「お二人はいつからの仲なんですか?」 「仲って、だいたい半年ぐらいだけど…言っとくけど、恋人じゃないからね?勘違いしないように」 「「「「え?」」」」 数人がハモる。そりゃそうだ、ここまでやって「恋人じゃない」はないだろう。 「違うんですか?」 「違うわよ。ホレ、黒子だって頷いてるでしょ」 黒子がブンブンと縦に首を振っている。 「と、おっしゃってますが?」 その女の子は頬を赤らめながら、上条にマイクを差し出すように腕を出す。 「まあ、美琴がそういうんなら、そうじゃないですか?」 「そうなんですかー、って、え?」 (な、何いきなり名前で呼んでんのよ!?) 「あ、つい。むしろ敵だよな?御坂」 「そそそ、そーよ、コイツは敵。敵なのよ!」 「敵…?」 「フフフ、常盤台のエース、御坂美琴は既に完全無敵ではない。俺に敗れてるんですよねー!」 「「「えーーーーっ!?」」」 女の子たちの驚きは尋常では無かった。LV5の凄まじさは能力者である彼女たちが一番よく知っている。 「ったく、ムカつく…」 美琴はさっきの『美琴』の衝撃が抜けておらず、ブツブツ言うのみになっている。 「ホントなんですか、御坂さま!?」 「…まあ、ほぼギブアップ状態だからね。癪だけど」 「ひええええ」 本人も認めてる以上、疑う余地もなく、どんな能力があるのかとまじまじと上条を見つめている。 「んーと、そうだな」 視線を感じた上条は、乗り出して右手を差し出す。 「この中で、この右手に頭をなでられてもいいって人いるか?ま、ちょっとした遊びだけどな」 ちょっと間をおいて、一人がちょっと頬を染めて、上条の右手の下に潜り込むようにして座る。 「君の能力は?何なら言わなくてもいいけど」 「いえ、白井さんと同じくテレポートです。まだ自分は動かせませんが、モノなら大抵のものは。」 「おっけー、わかりやすい。一度この携帯動かしてみて」 上条の携帯を受け取ったその子は、瞬時に右手から左手へテレポートさせる。 上条はニヤリと笑って、「じゃあナデナデ…っと。ほい、もう一度」 笑っていたその子の顔が強ばって行く。 「え?どうして?え?…できない」 「んじゃ手を離すぞ。どうだ?」 「あ…戻った」 「ということだ。俺の前では、君らはみな普通の女の子になっちまうんだよ」 「ひええええええ」 「これで分かったろ?常盤台中最強の御坂も…」 と、いいつつ上条は美琴の左手をやさしく包むように握る。 美琴がいきなりの上条の行動に固まる。 「こうやって、握るだけで、…能力のない、普通の可愛い女の子になるというわけだ。」 上条はワザと浮いた言葉を入れて美琴を挑発する。 しかし美琴はそれを返せない。ただただ真っ赤になるばかり。 (か、可愛いとか、やめて…手、手も…) もはや女の子たちには衝撃の展開しかなく、能力・御坂・台詞の何から突っ込んでいいのかも分からない状態だ。 一人、白井黒子だけが面白くなさそうにしている。 ただ、ひとまず上条の人となりを見定められる数少ない機会ということで、とりあえずはおとなしくしていた。 「まあ、これが『敵』という事だ。君らにとっても『敵』だけどさ。でも敵対、ということじゃない」 「すごい能力ですね…私もやってもらっていいですか?」 と、上条の右手でなでられたり、触ったりして、『おわっ本当だ』『なにこれなにこれ』と騒いでいる。 「まあ教訓としてだな。みんな頑張って能力を鍛えるのはいいけど、足元掬われない様にな。美琴みたいに。」 「うっさいわね!」 後輩の女の子をなでたりしている上条を見て、どうにも落ち着かない気分になる。 スキンシップをとったせいか、やたら皆の上条への距離が近い。見つめる目がキラキラしている。 (これが、フラグ体質と言われる所以ね。なるほど…) ここで命を助けて貰おうもんなら、一気に持っていかれるというワケだ。 (早く一端覧祭キープしないと…これ以上色々増やされちゃかなわないわね) 「でも、どう見ても、お二人は恋人にしか見えないんですけど…」 「へ?」 「たまに名前でお呼びになってますし、なんといいますか、こんな御坂さま初めて見ます…」 「そそ、そんな事ないわよ!私はいつも通り、うん、普通よ?」 「ま、美琴は人前じゃこう言っちゃうんだよなー」 上条は美琴おちょくりモードに突入した。 「え…?」 上条を除く全員が固まる。 「別に照れなくてもいいじゃん。ここだけの秘密ってことで。なあ美琴?」 「ちょ、ちょっと待ってよアンタ!」 「アンタって…いつも通り当麻でいいのに。いつかボロでるって」 女の子たちは口に手を当てて真っ赤になっている。 黒子は変な震え方をしている。表情はうつむいて見えない。 美琴は。 (な、なに言って…!いやでも反撃しないと、勘違いされ、ああ、でも…) コイツの言ってること冗談だから、と言いたいのに、言葉が出せない。 (ひとまず、コイツを止めないと!) 美琴は枕をひっぱりあげると、そのまま上条の顔に押し付け、押し込んでベッドに転ばせた。 「こ、こいつ超軽くて、こんなこと言う奴なの!本気にしなくていーから!」 「で、でも御坂さん、この人って…あの、夏休みの最後の日に…あい、びきしてた人じゃ…?」 「!」 一人の女の子の指摘に、他の子たちも反応する。 「ああ、あの伝説の!」「ということは大覇星祭の借り物競争もって話だったよね?」 「あー、あの人なんだ!髪型違うからわかんなかった!」 美琴は、ドツボにハマった事を自覚した。 「ひでえな…」と軽い口調で言いながら上条は起き上がる。 その姿を見た黒子が叫ぶ。 「上条さん、なんですの!?その頭」 押し倒されてロシア帽が外れた上条の頭は、鮮血ににじんだ包帯状態であった。 「あ、いやー参ったな。見られちまったか。」 全員あまりの事態に驚いている。上条はロシア帽をかぶり直しながら、 「えーとこれは気にしなくていいよ。もう1週間もすれば取れるだろ」 美琴は、上条が病院帰りだと言っていたことを思い出す。 「ちょっと海外でケガしちまってな。ま、これぐらいは御坂や白井なら見慣れたモンだ。むしろ入院してないと言える」 上条は、よっ、と立ち上がって。 「場を白けさせちまったし、腹も膨れたし、帰るわ。御坂ありがとな、旨かったぞ」 「う、うん…」 「というわけで、上条当麻は恋人募集中につき、お嬢様方、またいつでもお声がけくださいっ!」 立ち去ろうとしている上条に、 「待って!送るからちょっと待って」 「いいよ。女の子はこんな時間に出歩くな。じゃあ、御坂。白井も騒がせたな。じゃあな」 美琴は呆然としていた。あんなケガで付き合ってくれてたなんて。 「ま、今日の所は許して差し上げますわ。殿方を連れ込むなんて、お姉様」 「…」 女の子の一人がつぶやく。 「御坂さまが惹かれたのが、なんとなく分かる方ですね…」 数人が同意して頷く。 頷かなかった子は…胸に秘めたるものが出来たのかもしれない。 それじゃあ失礼致します、おやすみなさいと女の子たちは去っていく。 人気のなくなった部屋の中、黒子は美琴を見つめてため息をつく。 (これは…さらに重症になるかもですわね…困ったものですわ。) なお、この女の子たちにより、上条は”どんな能力者もLV0にする男”ということで、 通称『ミスターLV0』と呼ばれるようになり、一端覧祭では「あ、ミスターLV0だ!」と指さされ、 なんで俺がLV0なのをイジめる女子中学生が増えたのかと悩む羽目になる… fin. }}} #back(hr,left,text=Back)

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