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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/当麻と美琴の恋愛サイド/幸福の美琴サンタ/Part7 - (2010/01/30 (土) 22:24:19) の最新版との変更点

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---- #navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/当麻と美琴の恋愛サイド/幸福の美琴サンタ) 12/25 AM3:12 雪  上条が目を覚まして最初に見たのはいつもの天井だった。 上条(はは、またこの病院か、……………ッ!!?)  一瞬で色々な事を思いだしガバッ!と起き上がる。 上条「美琴………よ、良かった。夢落ちかと思った!」  美琴は椅子に座り、上条が寝ているベッドに上半身だけ預けて眠っていた。  上条は一瞬怖くなって嫌な汗がどっと吹き出すのを感じたが、それを見てやっと安心する。 美琴「むにゃ…………あ、起きたぁ?…………と、当麻」  上条は時計を見る。午前3時を少し回ったあたりだ。 上条「おい、良いのかよこんな時間まで」 美琴「……と、とと当麻のこと置いて帰れるわけないじゃない。私はと、当麻のこっ………ここ、こ恋人なんだから!!」  美琴は死ぬほど顔を赤くしながら無理矢理そっぽを向いて妙な単語を口走った。 上条「えーと……………、でもほら、誤魔化せるのは12時までって言ってなかったっけ」 美琴「………………アンタ、私にだけ恥ずかしい台詞言わせておいて全部無視するわけ?」 上条「……自分から言ったんだろ。何だ、俺にも言って欲しいのかよ?」 美琴「べ、別に言って欲しくなんか無いわよ馬鹿!!」 上条「うわっ!だから病室でビリビリすんな、っつかやらないんじゃなかったのか!!」 美琴「もう12時過ぎたから無効ですよーだ」 上条「あー。何だか俺、お前のこと嫌いになりそう」 美琴「ッ!!??や、やだ!それだけは絶対やだ!!」 上条「わー冗談です冗談!!だから泣くな―――――ってはい!ごめんなさい全面的に俺が悪かっただから今すぐその青白い     電撃をしまって下さいー!!!」  叫びながら土下座モードへ滑らかに移行する。 看護婦「ちょっと、上条さんうるさいですよ!毎度毎度、今何時だと思ってるんですか!!」  いきなりドカドカと恰幅の良い看護婦が乱入してきて、二人仲良く怒鳴られる。  『お前の方が声デカイだろ』なんてツッコミは出来ずに上条は土下座モードのまま平謝りを繰り返した。 看護婦「今回はいつもに比べて軽傷で済んだみたいなので、起きたのならもう帰っても良いですよ」  言外に『さっさと帰れ』と言われているような気がするが、とりあえずその点には素直に喜んでおく。  二人は帰りの準備を整えることにした。  制服やコートは生乾きだったが、文句は言っていられない。 上条「あ、これ……結局俺の言ったとおりになっちまったけど、どうする?洗って返すってことでいいか?」  美琴に借りた手袋とマフラーはもはや泥まみれになってしまっていた。特にマフラーは展望台でも付けていたので酷い有様だ。 原型を留めているだけで上条的にはまだ良い方だとは思ったが、借り物としては相当マズイだろう。 美琴「それもアンタあてに作ったものよ。アンタが持ってて良いわ」 上条「へ?」  上条はポカーンとする。 美琴「鈍感」 上条「あ、…………」  やっと上条は気付いて、気恥ずかしくて頬を染める。  ちなみに美琴は初めから汚れるのを見越していて、最終的には上条へと無理矢理押しつけるつもりだった。 上条「ん、待てよ?ってことはこの可愛いらしい猫の刺繍が入った手袋は俺向けなのか?」 美琴「…………何か文句あんの?」 上条「いいえ。ありません」  真実の口の前なら嘘ー!!!とか言われそうだったが、別にこのくらい良いだろう。 美琴「駄目になったら言ってちょうだい。直すから」 上条「………そりゃ、助かる」  『TOMA(はぁと)』と書いてあるマフラーや、猫の刺繍がされた手袋と共に当分過ごすことになるのかと思うと、正直素直 に喜べなかったが、さすがにそれは贅沢というものだろうか。 上条「準備できたか?」 美琴「ん、オッケー」  美琴はクマのぬいぐるみが入った紙袋を掲げて応じる。  それを見て上条は先に歩き出す。 上条「んじゃ行くぞー美琴」 美琴「え、………ナニナニ、もう一回言ってみ?」  上条の隣まで小走りで駆け寄り下から顔を覗き込む。 上条「行くぞー御坂」 美琴「………………アンタ、私をおちょくってるわけ?」 上条「いえいえまさかそんなって、あ、雪降ってる」 美琴「話逸らすな!ってうわ、大雪ね」  それも粉雪ならまだ良かったが、霙に近い濡れ雪だった。 上条「傘持ってねえぞ俺は」 美琴「あ、それ、持ってって良い傘じゃない?」  美琴が指差した先には大きめの傘立てがあり、『ご自由にどうぞ』と書かれた木の板が掛けられいた。恐らく忘れ物か何かだろう。  上条はその傘立ての中をよーく観察する。  残りの傘の数―――1本。  大きさ―――小さめ。  結論―――相合い傘。 上条「………………」 美琴「………………」 上条「はぁ。まぁそうなるよな」 美琴「何で嫌そうなのよ」 上条「お約束過ぎてげんなりしただけだ」  上条が傘をさし二人でそれに入る。時間帯のせいか人がまばらであるのが幸いだった。昼ならさすがに恥ずかしすぎる。  二人はとりあえず常盤台中学の学生寮近くまで行くことにした。 上条「こりゃ明日は電車止まるかもなー」 美琴「………そ、そうね」 上条「っておい、もっと近づけ濡れるじゃねえか」  傘がそれほど大きくないので二人で密着しないと肩がはみ出てしまう。  それなのに美琴は少しずつ上条から離れていってしまい、それを少しずつ上条が追う。  さっきから真っ直ぐ歩けていない。 上条(こういうのが色々積み重なって、俺は嫌われてると勘違いしてたような気がする……) 美琴「は………恥ずかしいんだからしょうがないでしょ!」  午前3時過ぎとは言え、さすがは若者ばかりの学園都市であった。ぱらぱらとだが先程から通行人とすれ違っている。  よく見ると美琴の頬が染まっていた。 上条(何だかこいつ……………)  上条はやっとそこで美琴の行動原理が一部理解できた気がした。 上条(って待てよ。つーことは、アレも……アレも……それにアレも恥ずかしかっただけか??)  これまでの二人の思い出で美琴の行動が理解不能だったシーンを漁ってみたら、『恥ずかしいから』で解けそうなパズルが そこそこ見つかった。  上条はどういう場合に美琴がどういう反応をして、どう考えるのかが無性に知りたくなってくる。試しに傘を右手から左手 に持ち替え、右手で美琴の肩を抱いて思い切り引き寄せてみる。 美琴「わっ、わわ!……い、いきなり何すんのよ!」  美琴の声が裏返り、顔がさらに赤くなる。。  正直上条もかなり恥ずかしいが、それを無視して美琴の反応を観察する。 上条「あ、あんま濡れると風邪引くだろ」 美琴「え、えっと、まぁ、そうね。その……アンタが言うなら、し、仕方にゃい……から……このままで、その………」  微妙に怒った様子でゴニョゴニョ言っているが、その口元は少しにやけている。 上条(……………もしかしてこいつって物凄く可愛い奴なんじゃ?)  そう考えると今までの美琴の行動が全て可愛い物に見えてくる。 上条(いや、いかんいかんぞ上条当麻!さすがにその思考はマズイ。勘違いかもしれないし、勘違いじゃなかったら俺が美琴に     溺れちまう………)  そうだ。こいつはいつもビリビリしてくる暴力女でもあるのだ。と考えて今まで攻撃された過去を振り返ってみたが、それは それで怖すぎたので心の中で思い出の箱をそっと閉じる。恥ずかしいからと言ってあれはいくらなんでも無い。  二人はそのままほとんど無言で歩き続ける。  聞こえるのは雪を踏みしめる靴の音と、傘に雪が降り積もる音だけ。  感じるのは外気の寒さと、お互いの温もりだけ。 美琴「あ、ここで良いわ」  気付くともう常盤台中学の学生寮の近くまで来ていた。  そこからは見えないが、今歩いている道を少し行って曲がると見えてくるはずだ。 上条「ん、もうちょい行っても良いんじゃねえの?」  人目を気にするにしてもあと50mくらいは行ける気がする。  雪は濡れ雪から粉雪に変わってきたので傘は要らないだろうが、単に出来るだけ長く一緒に居たかった。 美琴「常盤台中の学生寮なのよ?これ以上近づくと私と誰かが一緒に相合い傘してるってことくらい感知できる子居るわよ」 上条「…………………軍事基地か何かかよ」 美琴「んな可愛いもんじゃないでしょ」 上条「…………………………………」  そんな魔窟のトップに君臨する美琴が今自分の腕の中に居るというのは一体どういうことだろう。世の中不思議なこともあるものだ と、それよりさらに珍種である上条が思う。 上条「ま、なら仕方ないな」 美琴「うん」 上条「今日も色々酷い目にもあったけど、楽しかったよ。ありがとな、美琴」 美琴「………うん」 上条「じゃ、またな」 美琴「あ……えっとちょっと待って!」 上条「ん?」  帰るために回れ右をしかけた上条を美琴が止める。  しかし美琴は何も言わず、両手を前で絡めてもじもじするだけだった。 上条「何だ?」 美琴「え…………っと、あ、そうそう!携帯。アンタの携帯貸して。直した方が良いでしょ?連絡取れないのは困るし……」 上条「あ、ああそだな」  そう言って上条は美琴に携帯を渡すと、美琴はそれをいじり始めた。 上条「と言っても俺の場合は携帯に頼りすぎるのも危ない気がするなー。その携帯も中々タフだけど、いつ壊れるか分かんねえし………     お前の電話番号は控えておこうと思うけどさ、最終的にいざとなった時は自販機前で落ち合うってことでどうだ?」 美琴「んー。まぁ良いんじゃない?更にいざとなった時は私がアンタんちに直接行くわよ」 上条「それは何かと助かる。俺が寮に出向くのはまずいだろうし……」  前回は美琴が心配だったからとは言え、よくそんな魔窟に突入したものだと上条は思う。  知らぬが仏とはよく言ったものだ。 美琴「はい、完了。何だってそんなヘンテコな設定になってたのよ」 上条「んー?俺はいじったつもりねえんだけどな」  大方偶然どこかが壊れたか、寝てる間に偶然押してそうなったのだろう。上条にしてみればよくあることだ。 上条「とりあえずサンキュ。じゃな!」 美琴「あっ!………あの………さ……………」 上条「??」  再び呼び止められたが、美琴は先程と同じように、妙にもじもじするだけだった。  目線を下に落し、たまにチラチラ上条の顔を見て頬を赤らめている。 上条(………………………………………いやいや、まさか)  脳裏をチラッと横切ったその予想を振り払おうとする。 上条(……………無い無い。上条さんよ、それは酷すぎる妄想だぜ?)  美琴の表情は照れたようなものから、徐々に不満げに変わっていく。 上条(でも……………)  美琴にだけはその『自分にとって都合の良い予想』が通じるのである。  試しに鎌をかけてみることにした。 上条「まったく、しゃーねえな」  そう言って頭を掻きつつ一歩美琴へ近づく。 上条「目、閉じろよ」  そう言うと美琴は待ってましたとばかりに目を閉じ、少し上を向いた。 上条(ドンピシャですか美琴さんッーーーーーーー!!?)  上条の予想は大当たりしたようだった。どうやら美琴は『お別れのキス』を暗に求めていたらしい。 上条(いや、待て待て。だってここ、そこそこ人通りあるぞ!?恥ずかしいんじゃねえのかよ!!)  今の美琴の理屈としては『恥ずかしくてたまらないけど、アンタが求めるなら我慢するわよ。さっさとしなさい』である。  しかしそんな高度なことが解かるわけがない上条は混乱し、焦る。  美琴はじっとその体勢を変えないので、今更やめようだなんて言うことは出来ない。  雪が降るほど寒いのに汗がタラタラ流れてきた。 上条(………う、仕方ねえ!)  チュッ―――と、軽くおでこにキスをする。  美琴は目を開けると、半分嬉しそうな、半分不満そうなよく分からない顔を上条へ投げかける。 上条「お、俺だってこんなとこで恥ずかしいんですぞ姫」  視線を少し逸らして弁解した。  これは癖にさせちゃダメだと上条は固く心に誓う。  美琴に告白する覚悟はあったが、『外で中学生にキスしてる凄い人』として吹聴されるだけの覚悟は無い。  美琴はそれでやや諦めたと言うような顔をする。 美琴「私も、今日は楽しかった。また今度、あのゲーセン行きましょ。もっと凄いのもあるから」 上条「……………あれ以上ってそろそろ法に触れるだろ。ま、気が向いたらな」  とりあえず新作機種だけは頼まれても絶対しないだろうが。 美琴「それじゃ、またね。おやすみ……当麻」 上条「おう。おやすみ美琴」  今度こそ上条は来た道を戻る。  少しして振り返りたくなったが、何度も振り返ると美琴が帰りにくいかなと思い、ただ前を見て進む。  50メートルくらい歩いてそろそろ良いだろうとようやく振り向くと、しかし美琴はまだ上条を見ていた。 上条(ったく、風邪引くだろうが、早く帰れ!)  ジェスチャーで伝えると、満足したのかようやく美琴は上条と逆方向へ歩き出した。 上条(まるでまんま恋する女の子だな。キャラ変わりすぎだろ)  どちらが美琴の素の姿なのだろうか――――なんて、考えるまでもないだろう。  上条も再び自分の家目指して歩き出す。 上条「しかしまだ降んのかよ。すげぇ雪」  それでも不思議なことに寒いとは思わなかった。 ---- #navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/当麻と美琴の恋愛サイド/幸福の美琴サンタ)
---- #navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/当麻と美琴の恋愛サイド/幸福の美琴サンタ) 第7章 後"日"談その1 12/25 AM3:12 雪  上条が目を覚まして最初に見たのはいつもの天井だった。 上条(はは、またこの病院か、……………ッ!!?)  一瞬で色々な事を思いだしガバッ!と起き上がる。 上条「美琴………よ、良かった。夢落ちかと思った!」  美琴は椅子に座り、上条が寝ているベッドに上半身だけ預けて眠っていた。  上条は一瞬怖くなって嫌な汗がどっと吹き出すのを感じたが、それを見てやっと安心する。 美琴「むにゃ…………あ、起きたぁ?…………と、当麻」  上条は時計を見る。午前3時を少し回ったあたりだ。 上条「おい、良いのかよこんな時間まで」 美琴「……と、とと当麻のこと置いて帰れるわけないじゃない。私はと、当麻のこっ………ここ、こ恋人なんだから!!」  美琴は死ぬほど顔を赤くしながら無理矢理そっぽを向いて妙な単語を口走った。 上条「えーと……………、でもほら、誤魔化せるのは12時までって言ってなかったっけ」 美琴「………………アンタ、私にだけ恥ずかしい台詞言わせておいて全部無視するわけ?」 上条「……自分から言ったんだろ。何だ、俺にも言って欲しいのかよ?」 美琴「べ、別に言って欲しくなんか無いわよ馬鹿!!」 上条「うわっ!だから病室でビリビリすんな、っつかやらないんじゃなかったのか!!」 美琴「もう12時過ぎたから無効ですよーだ」 上条「あー。何だか俺、お前のこと嫌いになりそう」 美琴「ッ!!??や、やだ!それだけは絶対やだ!!」 上条「わー冗談です冗談!!だから泣くな―――――ってはい!ごめんなさい全面的に俺が悪かっただから今すぐその青白い     電撃をしまって下さいー!!!」  叫びながら土下座モードへ滑らかに移行する。 看護婦「ちょっと、上条さんうるさいですよ!毎度毎度、今何時だと思ってるんですか!!」  いきなりドカドカと恰幅の良い看護婦が乱入してきて、二人仲良く怒鳴られる。  『お前の方が声デカイだろ』なんてツッコミは出来ずに上条は土下座モードのまま平謝りを繰り返した。 看護婦「今回はいつもに比べて軽傷で済んだみたいなので、起きたのならもう帰っても良いですよ」  言外に『さっさと帰れ』と言われているような気がするが、とりあえずその点には素直に喜んでおく。  二人は帰りの準備を整えることにした。  制服やコートは生乾きだったが、文句は言っていられない。 上条「あ、これ……結局俺の言ったとおりになっちまったけど、どうする?洗って返すってことでいいか?」  美琴に借りた手袋とマフラーはもはや泥まみれになってしまっていた。特にマフラーは展望台でも付けていたので酷い有様だ。 原型を留めているだけで上条的にはまだ良い方だとは思ったが、借り物としては相当マズイだろう。 美琴「それもアンタあてに作ったものよ。アンタが持ってて良いわ」 上条「へ?」  上条はポカーンとする。 美琴「鈍感」 上条「あ、…………」  やっと上条は気付いて、気恥ずかしくて頬を染める。  ちなみに美琴は初めから汚れるのを見越していて、最終的には上条へと無理矢理押しつけるつもりだった。 上条「ん、待てよ?ってことはこの可愛いらしい猫の刺繍が入った手袋は俺向けなのか?」 美琴「…………何か文句あんの?」 上条「いいえ。ありません」  真実の口の前なら嘘ー!!!とか言われそうだったが、別にこのくらい良いだろう。 美琴「駄目になったら言ってちょうだい。直すから」 上条「………そりゃ、助かる」  『TOMA(はぁと)』と書いてあるマフラーや、猫の刺繍がされた手袋と共に当分過ごすことになるのかと思うと、正直素直 に喜べなかったが、さすがにそれは贅沢というものだろうか。 上条「準備できたか?」 美琴「ん、オッケー」  美琴はクマのぬいぐるみが入った紙袋を掲げて応じる。  それを見て上条は先に歩き出す。 上条「んじゃ行くぞー美琴」 美琴「え、………ナニナニ、もう一回言ってみ?」  上条の隣まで小走りで駆け寄り下から顔を覗き込む。 上条「行くぞー御坂」 美琴「………………アンタ、私をおちょくってるわけ?」 上条「いえいえまさかそんなって、あ、雪降ってる」 美琴「話逸らすな!ってうわ、大雪ね」  それも粉雪ならまだ良かったが、霙に近い濡れ雪だった。 上条「傘持ってねえぞ俺は」 美琴「あ、それ、持ってって良い傘じゃない?」  美琴が指差した先には大きめの傘立てがあり、『ご自由にどうぞ』と書かれた木の板が掛けられいた。恐らく忘れ物か何かだろう。  上条はその傘立ての中をよーく観察する。  残りの傘の数―――1本。  大きさ―――小さめ。  結論―――相合い傘。 上条「………………」 美琴「………………」 上条「はぁ。まぁそうなるよな」 美琴「何で嫌そうなのよ」 上条「お約束過ぎてげんなりしただけだ」  上条が傘をさし二人でそれに入る。時間帯のせいか人がまばらであるのが幸いだった。昼ならさすがに恥ずかしすぎる。  二人はとりあえず常盤台中学の学生寮近くまで行くことにした。 上条「こりゃ明日は電車止まるかもなー」 美琴「………そ、そうね」 上条「っておい、もっと近づけ濡れるじゃねえか」  傘がそれほど大きくないので二人で密着しないと肩がはみ出てしまう。  それなのに美琴は少しずつ上条から離れていってしまい、それを少しずつ上条が追う。  さっきから真っ直ぐ歩けていない。 上条(こういうのが色々積み重なって、俺は嫌われてると勘違いしてたような気がする……) 美琴「は………恥ずかしいんだからしょうがないでしょ!」  午前3時過ぎとは言え、さすがは若者ばかりの学園都市であった。ぱらぱらとだが先程から通行人とすれ違っている。  よく見ると美琴の頬が染まっていた。 上条(何だかこいつ……………)  上条はやっとそこで美琴の行動原理が一部理解できた気がした。 上条(って待てよ。つーことは、アレも……アレも……それにアレも恥ずかしかっただけか??)  これまでの二人の思い出で美琴の行動が理解不能だったシーンを漁ってみたら、『恥ずかしいから』で解けそうなパズルが そこそこ見つかった。  上条は美琴がどういう場合にどういう反応をして、どう考えるのかが無性に知りたくなってくる。試しに傘を右手から左手 に持ち替え、右手で美琴の肩を抱いて思い切り引き寄せてみる。 美琴「わっ、わわ!……い、いきなり何すんのよ!」  美琴の声が裏返り、顔がさらに赤くなる。。  正直上条もかなり恥ずかしいが、それを無視して美琴の反応を観察する。 上条「あ、あんま濡れると風邪引くだろ」 美琴「え、えっと、まぁ、そうね。その……アンタが言うなら、し、仕方にゃい……から……このままで、その………」  微妙に怒った様子でゴニョゴニョ言っているが、その口元は少しにやけている。 上条(……………もしかしてこいつって物凄く可愛い奴なんじゃ?)  そう考えると今までの美琴の行動が全て可愛い物に見えてくる。 上条(いや、いかんいかんぞ上条当麻!さすがにその思考はマズイ。勘違いかもしれないし、勘違いじゃなかったら俺が美琴に     溺れちまう………)  そうだ。こいつはいつもビリビリしてくる暴力女でもあるのだ。と考えて今まで攻撃された過去を振り返ってみたが、それは それで怖すぎたので心の中で思い出の箱をそっと閉じる。恥ずかしいからと言っていくらなんでもあれは無い。  二人はそのままほとんど無言で歩き続ける。  聞こえるのは雪を踏みしめる靴の音と、傘に雪が降り積もる音だけ。  感じるのは外気の寒さと、お互いの温もりだけ。 美琴「あ、ここで良いわ」  気付くともう常盤台中学の学生寮の近くまで来ていた。  そこからは見えないが、今歩いている道を少し行って曲がると見えてくるはずだ。 上条「ん、もうちょい行っても良いんじゃねえの?」  人目を気にするにしてもあと50mくらいは行ける気がする。  雪は濡れ雪から粉雪に変わってきたので傘は要らないだろうが、単に出来るだけ長く一緒に居たかった。 美琴「常盤台中の学生寮なのよ?これ以上近づくと私と誰かが一緒に相合い傘してるってことくらい感知できる子居るわよ」 上条「…………………軍事基地か何かかよ」 美琴「んな可愛いもんじゃないでしょ」 上条「…………………………………」  そんな魔窟のトップに君臨する美琴が今自分の腕の中に居るというのは一体どういうことだろう。世の中不思議なこともあるものだ と、それよりさらに珍種である上条が思う。 上条「ま、なら仕方ないな」 美琴「うん」 上条「今日も色々酷い目にもあったけど、楽しかったよ。ありがとな、美琴」 美琴「………うん」 上条「じゃ、またな」 美琴「あ……えっとちょっと待って!」 上条「ん?」  帰るために回れ右をしかけた上条を美琴が止める。  しかし美琴は何も言わず、両手を前で絡めてもじもじするだけだった。 上条「何だ?」 美琴「え…………っと、あ、そうそう!携帯。アンタの携帯貸して。直した方が良いでしょ?連絡取れないのは困るし……」 上条「あ、ああそだな」  そう言って上条は美琴に携帯を渡すと、美琴はそれをいじり始めた。 上条「と言っても俺の場合は携帯に頼りすぎるのも危ない気がするなー。その携帯も中々タフだけど、いつ壊れるか分かんねえし………     お前の電話番号は控えておこうと思うけどさ、最終的にいざとなった時は自販機前で落ち合うってことでどうだ?」 美琴「んー。まぁ良いんじゃない?更にいざとなった時は私がアンタんちに直接行くわよ」 上条「それは何かと助かる。俺が寮に出向くのはまずいだろうし……」  前回は美琴が心配だったからとは言え、よくそんな魔窟に突入したものだと上条は思う。  知らぬが仏とはよく言ったものだ。 美琴「はい、完了。何だってそんなヘンテコな設定になってたのよ」 上条「んー?俺はいじったつもりねえんだけどな」  大方偶然どこかが壊れたか、寝てる間に偶然押してそうなったのだろう。上条にしてみればよくあることだ。 上条「とりあえずサンキュ。じゃな!」 美琴「あっ!………あの………さ……………」 上条「??」  再び呼び止められたが、美琴は先程と同じように、妙にもじもじするだけだった。  目線を下に落し、たまにチラチラ上条の顔を見て頬を赤らめている。 上条(………………………………………いやいや、まさか)  脳裏をチラッと横切ったその予想を振り払おうとする。 上条(……………無い無い。上条さんよ、それは酷すぎる妄想だぜ?)  美琴の表情は照れたようなものから、徐々に不満げに変わっていく。 上条(でも……………)  美琴にだけはその『自分にとって都合の良い予想』が通じるのである。  試しに鎌をかけてみることにした。 上条「まったく、しゃーねえな」  そう言って頭を掻きつつ一歩美琴へ近づく。 上条「目、閉じろよ」  そう言うと美琴は待ってましたとばかりに目を閉じ、少し上を向いた。 上条(ドンピシャですか美琴さんッーーーーーーー!!?)  上条の予想は大当たりしたようだった。どうやら美琴は『お別れのキス』を暗に求めていたらしい。 上条(いや、待て待て。だってここ、そこそこ人通りあるぞ!?恥ずかしいんじゃねえのかよ!!)  今の美琴の理屈としては『恥ずかしくてたまらないけど、アンタが求めるなら我慢するわよ。さっさとしなさい』である。  しかしそんな高度なことが解かるわけがない上条は混乱し、焦る。  美琴はじっとその体勢を変えないので、今更やめようだなんて言うことは出来ない。  雪が降るほど寒いのに汗がタラタラ流れてきた。 上条(………う、仕方ねえ!)  チュッ―――と、軽くおでこにキスをする。  美琴は目を開けると、半分嬉しそうな、半分不満そうなよく分からない顔を上条へ投げかける。 上条「お、俺だってこんなとこで恥ずかしいんですぞ姫」  視線を少し逸らして弁解した。  これは癖にさせちゃダメだと上条は固く心に誓う。  美琴に告白する覚悟はあったが、『外で中学生にキスしてる凄い人』として吹聴されるだけの覚悟は無い。  美琴はそれでやや諦めたと言うような顔をする。 美琴「私も、今日は楽しかった。また今度、あのゲーセン行きましょ。もっと凄いのもあるから」 上条「……………あれ以上ってそろそろ法に触れるだろ。ま、気が向いたらな」  とりあえず新作機種だけは頼まれても絶対しないだろうが。 美琴「それじゃ、またね。おやすみ……当麻」 上条「おう。おやすみ美琴」  今度こそ上条は来た道を戻る。  少しして振り返りたくなったが、何度も振り返ると美琴が帰りにくいかなと思い、ただ前を見て進む。  50メートルくらい歩いてそろそろ良いだろうとようやく振り向くと、しかし美琴はまだ上条を見ていた。 上条(ったく、風邪引くだろうが、早く帰れ!)  ジェスチャーで伝えると、満足したのかようやく美琴は上条と逆方向へ歩き出した。 上条(まるでまんま恋する女の子だな。キャラ変わりすぎだろ)  どちらが美琴の素の姿なのだろうか――――なんて、考えるまでもないだろう。  上条も再び自分の家目指して歩き出す。 上条「しかしまだ降んのかよ。すげぇ雪」  それでも不思議なことに寒いとは思わなかった。 ---- #navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/当麻と美琴の恋愛サイド/幸福の美琴サンタ)

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