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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/当麻と美琴の恋愛サイド/帰省/家族)

美琴「あっれー? ママ、短パンは持ってきてくれなかったの?」

 リビングの隣にある和室で、美鈴が持ってきた荷物を適当にチェックしていた美琴は母に向かって不満そうに尋ねた。

美鈴「持って来なかったけど。 ていうか美琴ちゃんったらいつまであんな物穿くつもりなのよ。 さすがにもう十四歳でしょ?」
美琴「い、いいじゃん別に勝手でしょ! 暖かいし動きやすいんだモン」
美鈴「せっかく常盤台の制服はスカートが短いんだから、『もうちょっとでパンツ見えちゃいそうかも~!?』って辺りを攻めた
    方が色気が出て彼もグッと来ると思うんだけどなーん」
美琴「だから何の話よ! 誰に何を見せるってのよ頭おかしいんじゃないの!?」
美鈴「まあ美琴ちゃんの場合はその下着の方がまた問題なんだけど。 ……あ、そういえばその彼はどこに居るの?」
美琴「え、アイツならまだ二階……………ってだーから違うっつーの!! もー!!」

 美琴は先程想像した通りのニヤニヤ美鈴を無視して荷物のチェックを再開する。
 ややあってリビングと和室を繋ぐ襖がスッと開かれた。

詩菜「あらあら。 何だか楽しそうですね」
美鈴「あはは、大体うちはいつもこんな感じです」
詩菜「ふふ。 私も今度息子をからかってみようかしら。 ちょっと反応が見てみたい気もするわ」
美琴「………………」

 それを聞いた美琴が半分無意識にその場面を想像する。


詩菜『あらあら。 当麻さんは美琴さんのことが好きで好きでたまらないのかしら?』
当麻『ち、違う違います違うんです!! み、美琴はあくまでよく喧嘩する友達であって、別に好きとかとかそういう対象じゃ
    決してないというか、そもそもアイツまだガキじゃねえか!』
詩菜『あら、嫌いなの?』
当麻『き、…………嫌いでは、ない、けど』
詩菜『顔が真っ赤よ?』
当麻『ぐッ……』
詩菜『それに喧嘩するほど仲が良いとも言うし、あなた達の年なんて一歳半くらいの違いしか無いわ。 全然根拠になってない
    じゃないの。 母さん怒らないから正直に話してみなさいな。 好きなのよね? 美鈴さんと仲良くしてるのもそのためなの
    よね?』
当麻『だ、だから違うんだってばーーーーーー!!!』


美琴(これは………………、かなり見てみたいかも)
美鈴「美琴ちゃん、何ニヤケてんの?」
美琴「ふぇぇっ!!? に、ニヤケてなんかないわよそれアンタでしょアンタ!」
詩菜「あらあら。 何か楽しい事でもあったのかしら」
美琴「い、いえ。 全然、そんな……何も……」

 美琴はゴニョゴニョ言いながら既にほとんどチェックしてしまった荷物を再び漁り始める。

美鈴「乙女は大変ね~」

 美鈴は手を頬に当てウンウンと頷く。 何を納得しているのかは不明。

詩菜「ん? あらいやだもうこんな時間なのね。 乙姫ちゃんは起きたかしら?」
美琴「あ、わた、私見てきます!」

 容赦ない美鈴のからかい攻撃を上条当麻の母親に見られるという状況に居たたまれなくなった美琴は、素速く立ち上がり部屋
を出て行こうとする。
 しかしそれを詩菜が呼び止めた。

詩菜「あ、美琴さん待って。 時間も時間だし、お昼寝が長くなっても夜眠れなくなるだけだから、もし眠っていても起こして
    もらえないかしら」
美琴「分かりました」
詩菜「悪いわね、お願いします」

 美琴は頷くと小走りで出て行き廊下の反対側に位置する折返し階段を駆け上がる。

当麻「どわっ!!」
美琴「うわっ!!」

 しかしそれを半分上ったところで、上から降りてきた上条と出会い頭にぶつかってしまった。
 体格差があるので自ずと美琴がよろける。

当麻「あぶねっ!」

 咄嗟に上条は美琴の体を両手で掴む、というか抱きしめるという行為に出る。

美琴「うひゃっ!!」

 美琴は突然上条に抱きしめられ、さらに上条の顔が自分の顔の僅か数センチ先まで迫った事で一気に慌て、顔が強張る。
そして体の方は逆に力が抜けてしまった。 いつもの症状が出そうになる。
 上条が腕を解くとすぐに幻想殺しである右手を両手でガッシリ掴んだ。

当麻「(お、おいマジか、ふにゃーなのか?)」

 美琴はコクコクと頷く。

美鈴「美琴ちゃーん? どうかしたー?」

 美琴の短い叫び声に気付いた美鈴は大きな声で尋ねながら徐々に階段へと近づいてくる。

当麻(ヤバイヤバイヤバイ!!)

 右手で美琴のどこかに触れておかなければならないという状況で他の人に見られるのは非常によろしくない。
 これは隠れるしかないだろう。

当麻「な、何でもないデース!!」
美鈴「あや? 当麻君?」

 上条は左腕で美琴のウエストを抱くと階段を駆け上がり、洋室へと突進しドアを閉める。

当麻「(み、御坂さん早く、早く落ち着いてください!! 深呼吸でも瞑想でも何でも良いから!!)」
美琴「(わーバカ!! 顔近い顔近いから顔近いってば!! あと腰の腕も離してよ!!)」

 両者テンパってお互い訳の分からない事になっていた。
 今美鈴が階段を上ってきたらほとんどゲームオーバーだろう。
 それを想像して二人はより一層慌てる――――

 結局美琴が落ち着くのに八分以上も掛かってしまった。
 美鈴はどうやら階段を上ってこなかったようだが、いつ「遅いわねー、二人とも何やってんの?」とか言いつつドアを
開けられるか気が気じゃなくて、二人は心労で疲れ果ててしまう。
 とは言っても早く乙姫を起こさないと怪しまれるので休む間もなく隣の和室へと入る。
 乙姫はゲコ太のぬいぐるみを抱きしめたまま嬉しそうな表情で眠っていた。 顔をゲコ太に押しつけているのでお互いの
頬がムニュッと潰れている。
 疲れていたはずの美琴は、しかしそれを見て顔を綻ばせてしまう。

美琴「うんうん。 そうよね、普通ゲコ太を前にしたらこうなっちゃうわよね」
当麻「そうだよな。 こうなるよな。 抱き心地良いからなコレ」
美琴「ん?」
当麻「え?」

 美琴は隣からおかしな同意の言葉が聞こえてきたのを不審に思いそちらを見ると、さらに不審な事に上条の顔も綻んでいた。
 上条がゲコ太好きだなんていうのは聞いた覚えがない。

美琴「そういえば、アンタ何でこれ持ってきたの?」
当麻「何でって…………お前の策略にはまったんですけど見事に」
美琴「策略?」
当麻「え、あれ?」
美琴「私が預けたのは、部屋に置いておくとこの子が黒子に襲われるからよ? 私の匂いがどーとか言ってさ、どんな変態行為に
    使われるか分かったもんじゃないし。 それに持って帰るにはぬいぐるみ二つはかさばるしね」
当麻「………………………」
美琴「で、策略って何の事?」

 上条はゆっくりと視線を前に戻すと、布団へと一歩踏み出した。

当麻「………乙姫ー。 おい起きろー。 お兄ちゃんが起こしに来てやったぞー」
美琴「まーたスルー? まあ後でも良いけどさ……」
当麻「起きろーおーきーろー。 起きないとほっぺたプニプニするぞー。 うお、やらけぇ!」
乙姫「んーあと二時間ー」
当麻「日が暮れるぞそれ。 初詣行くんじゃないのかー?」
乙姫「いーくー」
当麻「んじゃさっさと起きて下で着替えなさい。 それにあんま寝ると夜寝れなくなるぞ」
乙姫「んーだっこー」
当麻「幼稚園児かお前は! ………美琴さん、だっこだそうですお願いします」

 上条は後ろで棒立ちしている美琴を拝む。

美琴「へっ、何で私よ?」
当麻「お前…………いや、んじゃあ俺がやるか」
美琴「う、や、やるわよ。 って起きたじゃん」
当麻「お、」

 上条が振り返ると乙姫は布団の上でペタンとアヒル座りをしながら目を擦っていた。

乙姫「ふわーあ。 お兄ちゃん着替えるって何? 別にこのままでも良いけど」
美琴「うちの母が乙姫ちゃんに着物あげるって。 あれ、聞いてない?」
乙姫「あ! 今思い出した」
当麻「下で待ってるってよ」

 三人は階下で談笑しながら待っている母親達の元へ向かった。


 ◆


 約四十分後。

当麻(それで、俺はいつまで正座してれば良いんでせうか)

 上条はリビングの和室へと繋がる襖の前で正座をしていた。
 「着付けしてくるから、当麻さんは少し待っていて下さいね」「そうそう、可愛くてびっくりしちゃうかもしれないから正座
でもして精神を落ち着けておくことをお勧めするわよ」などと母親連中に言われたからであるのだが、

当麻(いやまあ、律儀に正座する必要はねえんだけど)

 しかし先程から襖の向こうでは女性四人のかしましくも楽しげで、かつ妄想を掻き立てられるかのような会話が聞こえてきて、
どうにもそわそわと落ち着かない。 結局自然に正座してしまうのだった。
 例えば、

美鈴「んー、美琴ちゃんはまだまだねえ。 栄養は足りてるだろうし遺伝子的にも悪くないはずなのに何がいけないのかしら」
美琴「ど、どこ触ってんのよ、余計なお世話!」
乙姫「美鈴お姉ちゃんはすっごくおっきーよね。 いーなー。 うわっ、柔らかい、それに何このボリューム。 お、重い!」
美鈴「ふふ。 そーでしょー。 って言ってもあまり大っきいと着物は似合わないけどね」
美琴「嫌みにしか聞こえないんだけど……」

 とか、

美鈴「じゃーん」
乙姫「おおー、どっちもすごい可愛い!!」
美琴「また買ったの? 前のでも良かったのに」
美鈴「(しーっ!! 静かに。 後でたっぷり驚かせましょ)」
乙姫「(う、うん)」
詩菜「あらあら。 美鈴さんこんな高そうなの本当にもらっちゃって良いんですか? さすがに悪い気がするわ」
美鈴「いーんですいーんです。 美琴ちゃんのお下がりで申し訳ないけど、どうせもうこの子は着られないですから」
美琴「ん、ところで着るのは私達だけ?」
美鈴「うん。 面倒だしね」
美琴「………ああ、あのヤローが居ないからか」
美鈴「そーよあのバカヤローが居ないからよ。 全くちくしょー」

 とか、

美鈴「まーた我が娘はそんな下着を………。 乙姫ちゃんの方が遥かに大人じゃない…………」
美琴「悪かったわね……」
乙姫「えっと私はそんな………趣味は人それぞれだと、思うし………えっと。 ね、ねえ詩菜さん?」
詩菜「独特な感性を持ってるのね美琴さんは。 さすが高位能力者だわ」
美琴「自覚はしてるからお願いみんな放っておいて頂戴。 大体にして人に見せるもんじゃないし自由でいいじゃん」
美鈴「………? …………、………!!」
美琴「なな、何よそのジェスチャー!? 見せないってば。 わー馬鹿開けようとすんな!!」

 とか、

詩菜「あらあら。 さすが若いとお化粧のノリが良いわね」
美琴「へ、そうなの?」
乙姫「私もよく分かんない」
美鈴「そーよ二人とも。 そりゃもう腹立たしい程にピチピチお肌よ。 努力もせずに良い物持ってるってのに何て無自覚なの
    かしら。 一度もったいないお化けにでも祟られるべきじゃない?」
詩菜「ふふ、そうですね。 美琴さん、お化粧はあまりしない?」
美琴「一応校則ですから……」
美鈴「美琴ちゃん、校則っていうのは破るためにあるのよ?」
美琴「うちの学校はばれるとペナルティが面倒なのよ。 前に話したでしょ」
乙姫「破るってとこは否定しないんだ……。それにしても美琴さん凄い、さらに可愛くなってる」
美琴「ありがと。 でも乙姫ちゃんだって可愛いわよ?」
詩菜「あらあら。 二人とも若いから簡単にしかしてないんだけど、やっぱり元が良いと映えるわね」

 などなど、たまに隣に上条当麻が居る事なんか忘れてるんじゃないだろうか? と思えるような際どい会話も飛び出して
きて、心を思い切り翻弄されている次第だ。
 サウンドオンリーなところがまた煮え切らず、かえって煩悩を刺激されてしまったりする。
 そんな悶々とした長い長い時間が過ぎ、時計の長針が一回転するかどうかというくらいでようやく「よっし完成ー」という
声が聞こえた。

当麻「はあ、やっと終わったのか。 女の身支度ってのはほんとなげーな」

 実は二人分の着付けと考えるとこれでも早い方だったが、上条の感覚からはそうは思えない。
 一応座布団に座っていたのに、普段からよく正座するわけでもない上条の足はもう痺れきっていて、感覚が半分以上無く
なっていた。

美鈴「んふふ。 おまたせー、ってずっと正座してたの?」

 美鈴は襖を少しだけ開けて上条に微笑む。
 そして二枚ある襖の内、上条から見てまず左側を開けた。

当麻「おお……」

 上条は思わず感嘆の声をあげる。
 そこには落ち着いた赤を基本色にした振袖を纏い、ベリーショートの癖っ毛をきちんと整え、大きな白い花飾りを付けた乙姫が
はにかみつつ立っていた。

乙姫「どうかな? お兄ちゃん」

 そのセリフと上目遣い攻撃に、自分には妹属性なんて無いと信じてる上条でも一瞬クラッとする。
 土御門なら上着を破り雄叫びを上げて喜びそうなレベルであろう。

当麻「わ、私は兄としてあなたを誇りに思います」

 思わず英語の直訳文みたいなセリフになってしまう。

乙姫「何それ? えへへ」
詩菜「本当に可愛いわよ乙姫ちゃん。 ほら、こっち向いてー」
乙姫「いえーい!」

 いつの間にかデジタルカメラを構えていた詩菜がピースでポーズを決める乙姫の写真を三枚程度撮る。

美鈴「さて……んふ、んふふふふふ。 当麻くーん、こっち見て見てーん♪」
当麻「ん?」
美鈴「はーい、んふ、開けまーす♪」

 美鈴は上条から見て右側の襖をズバッ!と勢いよく開けた。

当麻「……………………………………」

 何とも恐ろしい事に、上条当麻は、これまでの人生において幾度目かの『天使の発見』をしてしまう。

美琴「コラ母、別にそんな仰々しい振りは要らないっつの! …………って、な、ななな何よ?」
当麻「……………………………………」
美鈴「さあ当麻君♪ これ、ここ見てここ。 裾の所、コスモスよこれ。 しかも赤! そしてここ、袖の所、この柄はライラックね、
    しかも何と紫!! 極めつけはここ、帯の所!!」
美琴「え、これもしかして花水木?」
美鈴「正解♪」
美琴「あああ、あ、アンタは一体私に何てものを着せてるのよー!!?」
美鈴「あっははははは、だってだって、今の美琴ちゃんにピッタリすぎなの見つけたんだもの。 大丈夫よ大丈夫、多分当麻君
    分からないから」
美琴「そう言う問題じゃ………ってちょっとアンタ、まじまじと見過ぎでしょ!!」
当麻「……………………………………」
美琴「えっと、あれ? も、もしかして、やっぱ変、かな? 私がこういうきちんとしたもの着るの」
当麻「……………………………………」
美琴「何とか言いなさいよ!!」
当麻「……………………………………」
美琴「おーーーい?? 起きてる??」

 ここで上条が邂逅してしまった天使、『御坂美琴』について、彼の視点から簡単にではあるが説明しておきたいと思う。
 ソレは髪に似合った明るいオレンジを基本色にした振袖を着ていた。 振袖やその帯にはふんだんに可憐な花柄が取り入れ
られ、場所によっては薄い青や赤、ピンクや白や紫などとも言えるかもしれない。 袖は地面に付きそうなほど長く、ソレが
体の前で手を絡めモジモジする度にゆらゆらと動く。 その動きは上条の心をリズミカルに鷲掴みにした。
 ソレは元々短かった髪をきちんと結い、薄桃色の小さな花がたくさん付いた簪《かんざし》を付けていた。 いつもと髪型
が違うため新鮮で、ソレが誰であるか気付くのに一拍必要である。 ただし、気付く前より気付いた後の方が自分の鼓動は
高まるだろう。
 ソレは言われなければ分からない程度の薄化粧をしていた。 元から整った若々しい顔が更に整えられ、まるで生きた人形
に思えるようなゾッとする程の美しさに仕上がっている。 しかし、普段より眉や睫毛がハッキリ見え、唇には紅を注している
ため表情の変化が読み取りやすく、ソレに魂が存在していることを認識させられる。 ちなみに頬が朱くなっているのは単に
照れているだけのようだ。
 ソレは足にはきちんと足袋を穿き、爪には薄くマニキュアをしていて、もう全身完全装備である。
 ソレの表情は、始めはムスッと怒ったように頬を膨らませていて、その後絶叫し、次に恥ずかしそうにモジモジしつつ頬を
染め、かと思えば眉を下げて困ったような、哀しそうな顔をし、もう一度怒った感じに変わってから最後には心配そうな様子
をした。 表情を変える度にいつもより若干紅い唇が踊り、思わずその感触を思い出して全身を身震いさせてしまう。
 ソレは――――

詩菜「あらあら。 当麻さんったら」
乙姫「お兄ちゃーんどうしちゃったの?」
美鈴「うおっし私ってばグッジョブ!! ………と言ってもここまで効くとは思わなかったけど」
美琴「え、何?? どういうこと??」

 未だによく分かっていない美琴は試しに軽くビリビリを放ってみる。

美琴「うわ、無意識で防がれた!?」

 上条はボーッとしたまま右手を前に出し、再び何事もなかったかのようにそれを下ろす。

当麻(つまり美しいとか可愛いとかそう言う次元ではなく………人間より上位の世界に………今まで見たどの天使よりも………、
    いや、これ以上はもっと近づいて見てみないと分からねえな)
美琴「え、何?」

 上条はおもむろに立ち上がろうとした。
 だが、

当麻「う、わっ足がッ!?」

 足が限界まで痺れていたので感覚もなく、思うように動いてくれない。

当麻「とっ、ととアブッ!」
美琴「な、わ、ちょっと何、ぐぇ!?」

 前屈みのままよろけて前方へ突っ込む。 立ち上がる前に上条は美琴を凝視していたわけで、もちろん行き着く先もそちらである。
 上条は、着物のおかげでいつもの瞬発力を生かせない美琴の腰へと見事にタックルしてしまった。
 幸い美琴が倒れた場所には座布団が合ったので怪我はなかったが、体勢としてはこの状況において最悪なものの一つに違い無い。

美琴「ど、どどどき、どきなさいよ!!」
当麻「あ、も、申し訳ありません天使さん………………………」

 上条は畳に手と膝を付いて、倒れた美琴に覆い被さっていた。
 その上まだ『天使を魅ている』ようである。

美鈴「うはー、当麻君ってば何気に大胆なのね。 しかもこの期に及んでまだ観察するって………」
詩菜「はあ、誰に似たのかしら。 お恥ずかしい限りだわ」

 とか何とか言いつつ詩菜はパシャリと記念写真を撮った。 アルバム行き決定である。

乙姫「お兄ちゃんそれはさすがにマズイって」

 上条は口では目の前の天使に謝ったが全く動こうとする様子はなく、ジィーーッと穴が開くほど美琴を凝視している。
 仕方なく乙姫が上条の体を後ろから引っぱる。

美琴「だだ、だからそんな真面目な目で見んなってのよ馬鹿ー!!」

 美琴は徐々にふにゃふにゃになりそうになる体からどうにか最後の力を振り絞り上条にアッパーを放つ。

当麻「ぐえ!!」

 そしてそれが綺麗に上条の顎に入った。 美琴は狙っていなかったが、乙姫との見事な連携プレイで上条当麻を打ち倒した。
 結果、腕の力も抜けてしまった上条は体ごと美琴に覆い被さってしまう。

美琴「ちょっ、ちょちょちょちょちょっ、え? だ、駄目、駄目ぇぇええ!!」
当麻「ふにゃー」
乙姫「もーおにーちゃーん!!」
詩菜「はぁぁー。 本当に誰に似たのかしら」

 詩菜の大きな溜息が部屋に響いた。


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