「上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/3スレ目ログ/3-658」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/3スレ目ログ/3-658 - (2010/02/07 (日) 10:45:51) の編集履歴(バックアップ)




「御坂…!」

上条は御坂との距離を一気に縮めた。もともと反対の歩道と言っても上条と御坂の距離は10メートルとなかったのですぐに近づけた。
空は晴れているが曇っているようにも見える。気温は低く、湿度はまるで、これから誰かが泣くからあえて低くなっているような感じだ。
少し息が上がり、緊張と後悔の念からか、わずかに頭痛になった。かみちぎった唇がめちゃくちゃ痛い。
御坂は少し戸惑った様子で上条から一歩下がり、手を口にそえ、目を左右に泳がし始めた。上条が息を整えている間に意を決したよ
うに、早口で、でも透き通っていて聞きやすい声が発せられた。

「…昨日はごめんねー なんていうか気の迷いってやつ? アンタと気まずくなるのも嫌だから、昨日のことはきれいさっぱり忘れてー…」

今の上条にはわかる。御坂は今にも慟哭しそうなのをこらえている。上条と目を合わせていない。上条の胸らへんを虚ろにみている。

「…」

舌が渇いているな、と呑気に思った。だが実際には、先程かみちぎった唇から相当な量の血を出血をしており、とろーと舌はしたたっていた。
明らかに強がっているのが上条にも伝わる。今の御坂はわずかに声が震えていたし、体は支えがないかのように不安定に動いていた。

「…やめろよ…」

少し間をおいて上条は、申し訳なさそうに言った。御坂は悲しそうな顔で、

「……何を?フラれた私にはもうアンタに近ずく権利すらないっていうの?」

御坂から何か黒いものが出てきたのを上条は肌で感じ取った。おそらく昨日からこのことを危惧していたのだろう。そう考えた時、バカじゃねーの?と思った。
自然と御坂が言ったことを否定していた。

「そうじゃねーよ!!」

「……」

まるで御坂は死人に口なしと言わんばかりの沈黙ぶりだ。さっきまで告白されて浮かれ頂点だった自分を殺してやりたい。死ね死ね、と。

「…」

「…」

「…」

「…」

一分くらいだったろうか。黙って見つめあっていたのは。本当は5分だったかもしれない。30秒だったかもしれない。

先に沈黙を破ったのは意外なことに御坂のほうだった。

「…さっき考え事をしていたわ…」

「…」

上条は黙って聞くことにした。というよりも結局のところ、まだ考えがまとまっておらず、何をすればいいかわからない、という理由もあった。御坂はまるで
糾弾され、国を追われ、プライドも、体裁も何も持っていない空虚な声音で、

「というか妄想ね その妄想の中では全てがうまくいくの アンタがよくわからないやつに殺されそうになった時、アンタのことを私がかばうの 間抜けにやめてーとかに言いながらね 
私は死んじゃうんだけど アンタが私にね ありがとう ありがとう っていってくれるの そんなことを何度も考えていたわ…」

その言葉は寂しく唄っている山猫を連想させた。
本当は愛してほしいのだろう。
本当はそんなこと唄いたくないのだろう。
でもされが無理だと思っているから。せめて少しでも上条の近くにいるために苦痛と慟哭を無理やり押さえて唄っているのだろう。

「…っ」

御坂は震えながら、大きく息をすった。上条は御坂を見た。御坂はボロボロの雑巾が不思議とキレイな水を出すような感じになっていた。…泣いていた

「…で…も…ね… 100回…か…ば…って… 100回死…ん…で… …100回…ありがとう…って言…わ…れても…ね 一度も…ぅ…ね…」

「…」

「ヒック…一度…も…ね…アンタ、好…き…って…言って…く…れ…ぅ…なくて…っ……やっぱり…私じゃ…アンタに…ふさわしく…ない…って…」

(やめてくれ…)

心の中で再度呟いた。本当の、本当に何をやっていたんだ俺は、と。自分を殺してやりたい。いっそ、その妄想の中で100回罵られ、100回死んで、100回死体を
晒されたほうが今の自分にはふさわしい。
と御坂は今迄抱えていた不満を一気に吐き出すように、悲しげに、

「…私…アンタ…の…こ…と…好…き…なのに素直…に…なれなくて…ぅ…したくないこと…ばかりしちゃって…どうして…私なのかな…?…私だけなの…?
こんな…思いをしてるのは ヒック…フラれて…でもあきらめきれなくて…好きで好きなのに、 もう…なに…もわ……かん…ない…よ…」

もう上条も見てられないくらいのおお泣きだ。しかも心が痛むことに、それでも声を何とか抑えようとしている。もらい泣きしてしまいそうだ。
だが泣いて何になる?バカが、と自虐的に上条は思った。

ふと、冷たい風がやさしく吹いた。



自然と体が御坂のほうに動いていた。ゆっくりと。でも確かな足取りで。まるで生まれたばかりの仔馬が初めて草原を思いっきり走るようなスピードで。
言葉にするのがめんどくさい。伝えたい。御坂に。この世にひとつしかないこの肉体で。この心で。直接、伝えたかった。自分が何を思っているのかを。
そのすべてを。

力はそんなに強くはなかったと思う。それでも御坂を粉々に壊してしまいそうで怖かった。





上条は美琴を抱きしめ、キスをしていた。




「…ぁ…」

声をもらしたのは御坂のほうだ。
正直、かなり下手で稚拙なキスだ。ただ唇と唇が触れるだけ。それでも上条は頬を赤らめた。上条は目を閉じている。閉じているので、美琴が今、どんな
顔をしているかわからない。人形みたいにおとなしかった。ただ抱きしめたその体は細く、儚く、柔らかかった。でもそれがまるで歪んでいて、間違っていて、よくできた人形に
一人遊びをしているような、極悪非道の悪魔がボロボロの天使を陵辱しているような錯覚さえ覚えさせた。
上条は目を開けた。…やっぱり、美琴の表情はさっきより絶望の色が濃くなっていた。

「…や…め…て…」

10秒くらい。キスをしていたのは。上条はもう少しこのままでいたかった。もしかしたらこんなに長い10秒は生まれて初めてかもしれない。けれど終わって
しまえばなんてことない、普通の10秒だった。御坂が俺を突き放すまでは。

「…やめ…て… な…ん…で… なんでこんなこと…するの?」

答えられない。頭が思ったことについてこれない。本能?哀れみ?虚無?それとも俺が理性でこうしたかったのか…考えがまとまらない。

「…何…? 私を…哀れんでるの…? フラれた私に…最後の…御褒美…?……それとも…好きでも…ないのに、好きでいてくれ…ってエゴイズム?」

「そんなわけねぇーだろ!!」

さっきから同じことようなしか言えない自分にいい加減腹が立ってきた。

だから

本能のまま、ありのまま、何も考えず、ただこれから自分が言う言葉に全ての運命を、あり方を、自らを、服従させることにした。迷いはなかった。ただ、
不安だった。自分が何を言うか。何を考えているのか。ちゃんと言えるかが。

すぅと大きく息を吸い、




「好きだからに決まってんだろ!!お前のことが!!!」




出てきた言葉は思っていたより短く、単純だった。   でも   うん   そうだった。

もう一度御坂に近づき、抱きしめキスをした。さっきより深く、御坂のことを求めた。やり方がよくわからない。御坂はまた人形のようにおとなしい。
ただ上条のへたくそなそれに反応するだけの永久機関のようだった。 でも、もうわかったから。もう人形だっていい。なんでもいい。
それがあの御坂なら。

だから



(愛してる…)


頭がようやく、想いについてきたみたいだ。無意識にお互いの体が障害に思えるほど強く一つになりたいと思った。

もっと好きって言える、そんな気がした。


目安箱バナー