とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ ささやき…えいしょう…いのり…ねんじろ!



「……元気にしてた?」
一人の少女の声が白い病室に響き渡る。
目の前には一人の少年。だが彼からは何の返事もない。
病室のベッドの上で目をつむったまま、ただ眠っているだけだった。

外を見ると桜が満開だった。春風に煽られ花びらが散っていく。
それを見て、少女はあれから半年もの時間が過ぎていたことに気付いた。

――絶対能力進化―
樹形図の設計者が算出したプランに従い、
「二万通りの戦闘環境で量産能力者を二万回殺害する」という
正気の沙汰とは思えない実験。
その実験を止めるべく、とある無能力者の少年が立ち向かっていったあの日から、
半年もの時間が過ぎている。

そのおかげでプランは見直され、実験は凍結された。

しかし、少女にとっては事件はまだ終わってはいない。

秋風が吹き抜けようとも、雪が降ろうとも。
大覇星祭が行われようが、一端覧祭で学園都市が賑わおうが。
彼女には全く持って関係ない話だった。

彼のいない世界など、灯りのついていない暗闇と同じだったから。


白い病室では、電子音が鳴り響いている。
彼の生体情報をモニターするための心電図や脳波計の規則的な音だ。
その音は、この半年の間乱れることもなく鳴り続けている。
それは彼が生きている証拠だった。

だが、それは生物として生きているというだけのこと。
彼が彼として生きているということでは決してない。
少女は、この規則正しい音が嫌いだった。
彼が目覚めないことの証明のような気がして。
何か乱れた音がしたとき、彼は目を覚ますような気がするから。
彼女はその音を鳴るべく聞かないように、
彼自身が発するものを漏らさないように意識を集中させ、
静かに口を開く。

「今日学校でね……」

彼女が半年間、毎日欠かさず行ってきたことだった。
それは彼に今日会ったことを報告すること。
どんな雨の日でも、雪の日でも、彼女自身がけがを負ったときでさえ、
それは欠かすことはなかった。

そして、必ず最後にこう告げる。

「ねぇ当麻。私の話の感想、早く聞かせてね」


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