小ネタ ファーストエイド
夏休みのある日。
「ふああ、今日も補習三昧でふこ…ん? …あれは御坂か?」
いつも通る公園で、しゃがんだ状態でいる何かしている常盤台のお嬢様を見かけた。
「~…っ」
「…にゃー」
「…と猫?……何やってんだあの二人、まるで壮絶な戦いをしているような表情だが…」
一人と一匹は対面して両者固まったように動かない。
「う~…っどうしよう…」
御坂は困っているようだった。
ふと、彼女が何か入ったビニール袋を持っているのに気がついた。
そのビニール袋には、どこかでみたことのあるような大手の薬局のマークがはいっていた。
確かその薬局は最近動物病院と提携して、動物の薬も売っていたような気がする。
「(あれは…薬か?)」
そして彼女と緊張した様子で対面している猫を見ると前足を隠すように座り込んでいて、怪我をしているようだった。
御坂はその猫にそっと手を伸ばすが、それに応じてびくりと震えてしまっている猫を見てすぐに手を引っ込めてしまう。
それをいまだに何度か繰り返していた。
そういえば前に、電撃使いは動物に触ることができないというような話を聞いたような気がする。
「あー……なるほど」
なぜ御坂が夏休みにこんなところにいるのか、なんてことはわからないが、
とりあえず彼女がしようとしてることは分かった。
つまるところは、薬を買ってきたはいいものの、猫に触ることができないの
で治療ができないでいる、といったところだろうか。
ならば、話は簡単だ。
「よ、御坂」
ぽん、と肩をたたくと、後姿だけでもわかるようにビクっとした後、御坂は、そっと振り向いた。
「!アンタっなんでこんなところに!!」
「まあ、いいから話は後だ。その猫、怪我してるんだろ?」
そういって、右手を御坂の頭に置く。
「ふえっ!?なああ?!ああ……うん」
頭に置かれた上条の手の感触に、一瞬顔を真っ赤にしてパニック状態に陥った御坂だったが、上条の言いたい
ことがわかったようで、落ち着いて御坂は目の前の猫を見据える。
「…-っ」
御坂がそっと猫に手を差し伸べる。
「…にゃー」
すると今度は怖がる様子もなく、猫は御坂の方に寄ってきた。
「わあー……っと」
一瞬感動しかけた御坂だが、気を取り直して猫の治療を始めた。
それをじっと上条は見届ける。
「……うん、これでよし!」
そういって御坂がはにかんで、猫の頭をやさしくなでる。
「にゃあ」
「お、終わったか?」
「うん……あのさ、…あ、ありがとって言ってるそばから人の頭をなで始めるなあ!!」
「いやあ、やさしい御坂たんが一生懸命猫の治療をしたのをみて、つい」
「たんいうな!ってかついって、絶対アンタからかってるでしょ!!」
「えー?そんなことありませんのことよー?」
「む、むかつく…」
「そういえば、なんでこんなところにいたんだ?可愛い飼育係の御坂たん」
「どうしってって…その…って…か、か、かわいっ!?…ふ…ふにゃ…」
「あ、猫になった」
「にゃあ…っじゃなくて!!ええと!そのあの!!……ああもう!…いろいろあんのよー!!」
そういうと、上条の手を振りほどいて御坂は光の速さで逃げて行った。
「いろいろ…?なんだったんだ、アイツ…まいっか」
上条は鞄を担ぎなおすと、歩きだす。
なんだかんだあったが、今日はいい日だったような気がする。
「御坂の可愛いとこもみれたし」
御坂が普段見せない笑顔で猫にはにかんだ時、不覚にもときめいてしまった。
御坂の,知らない一面をみることができ、嬉しかった。
…最終的にいつものビリビリに戻ったが…
「まあ、こんな日も、ありだよな」
そんな感じの一日。