とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part04

最終更新:

NwQ12Pw0Fw

- view
だれでも歓迎! 編集


-④上条の計画-

「で…なんの用だ、お前ら…」
早朝、叩き起こされた上条の部屋の前には四人の少年・少女の姿が
「ちょこっとお邪魔するぜい、カミやん」
「そうやでカミやん、ボクらはちょっとだけカミやんにお話があるだけなんやから~」
「だから、黙って貴様は私達を部屋の中に入れろ」
「上条君、抵抗は……無駄」
ああ、これはもうこの台詞だろ…不幸だぁぁ!!!!!!!

結局上条はその四人を部屋にあげる事にした
上条はテレビの前に座り、それと向かい合うように姫神と吹寄がベッドに腰掛、左右に土御門と青髪ピアス
「で、カミやん…今日は誰とデートなのかにゃ?」
土御門は直球で上条に聞いてきた、聞かれた本人上条当麻は土御門を見たまま硬直
………はい? と上条は笑顔のまま首を傾げ、ギギギギッという錆びたロボットの様に青髪ピアスの方を向く
青髪ピアスは目を逸らせ口笛を吹き始める、その顔には大粒の汗

「己が言ったんか! 己がぁぁぁ!!!」
と上条は顔から火が出るかのように真赤にして青髪ピアスの胸倉をいきなり掴むとガクガクと思いっきり揺する
「ちょ、お、おおおお落ち着くんや~カミ…やん~、そ、そんな振り回さんといて~ボク熱下がったばっかりや~」
青髪ピアスはそう言うが上条には聞こえていない
「ちょっと落ち着つけカミやん、流石にこのままだと青髪ピアスが可哀想だから言うがバラしたのは俺だぜい」
その一言に青ピを投げ捨てた上条はギロッと視線を土御門に移したところで吹寄に思いっきりぶん殴られた

「今はその様な小さな問題を気にしているのではないのだ上条
女の敵である貴様が好きになる女性とはどのような人物か…非常に興味があるのでな…さっさと話せ」
となぜがブチ切れ、不敵に、不気味に笑っている吹寄
「だ・か・ら! いつ俺が女の敵になったんだよ!」
噛付く上条
「本人に自覚なし、やっぱり上条君は鈍感…」
「姫神…お前までそんなことを…」
唯一味方だと思われた姫神にまでそう言われ上条はそう呟く

「でも…安心して。私は命の恩人のあなたのデートがうまくいくように祈ってる」
そう言って姫神は軽く微笑む
「まったくだにゃー、カミやん…少なくともここにはカミやんを応援している四人が揃ったんだぜい」
「そうだ上条、さっさとどこの誰かを吐け」
「そうやでカミやん、はよう言ったって~な」
その言葉に上条は
「お前ら…ありがとう」
上条はまんまとこの4人の計画に乗り始めるのであった

□ □ □

上条は今病院に向け歩いている
その背後にはサポートとして例の四人
実はこの四人月曜のネタを取りに来たというのと、純粋に上条の好きな奴って? という好奇心だけで集まっている
「にしてもだぜい、まさか常盤台の超電磁砲…って出任せじゃないのかにゃー」
「でも、クラスの女の子から上条君よく常盤台の子と一緒にいるところを見るって聞いた」
「なに! あのカミやんにそんな情報が…そんなズルイやん…」
「うるさい、そこのバカ…それよりもちゃんと後をつけるぞ」
この状況だ、声は抑えている為に上条までは聞こえないがそのうち上条のデートに何らかの支障は出るかもしれない

一方そんな事を知らない上条は美琴とのデートという事で心臓をバクバクいわせながら歩いている
「はぁ…朝からなんか不幸だったが、これだけは美琴とのデートだけは神様…どうか失敗させないでくれ」
と既に神頼みの領域に達している上条の精神はもはや試合前からグロッキー状態
その理由だが上条は昨晩遅くまで、デートをどうしようかと悩みに悩んだ末眠りこけてしまったからだ
「本当に美琴には申し訳ない…行き当たりばったりだが、なんとか楽しんでもらおう」
上条はそう思い大きく溜息をつくが、先程までのブラックな気分を払拭する為にこんな事を言う
「その為にはまず、俺がしっかりしなきゃな」

サポート陣
「なあ、カミやんはなに一人でぶくつさ言ってるんだにゃ?」
「そんなものしるか」
土御門の疑問も吹寄にかかれば一言で片付いてしまうが
「でも、気になるぜよ」
と一度気にするときりがない
「私とて同じだが知る手段がないだろ」
ついには吹寄もその様なことを言う
「それなら簡単、コレで聞けばいい」
「それだめやろ、姫神さん…」
青髪ピアスが脱力してつっ込んだ理由は姫神がコレと言って携帯電話を出したからだ
ちなみに言い忘れていたがこの四人、サポート陣とされているが実は上条の許可は貰っていない
朝方はっきりと「ついてくんなっ!」と断られているのだが…まあ、それはいいだろう

「お、あれがカミやんとデートする…ん? どこかで見たことがあるような気がするんだにゃー」
「………あっ! あの娘、夏にカミやんに突撃して来た娘や」
と今年の夏休み最終日の事を思い出す土御門と青髪ピアス
「………興が削がれた、私は帰る」
上条がその超電磁砲の少女と楽しそうにしているのを見て吹寄はそう言う
「ちょっと待つんだにゃー!! ここで吹寄に帰られるとカミやんに対抗できる人物がいなくなるんだぜい」
「ボク等を見捨てないでくれ~」
吹寄は帰ろうとするが土御門と青髪ピアスはその脚にしがみついてそれを阻止する
「黙れバカ共! 帰るといったら帰……」バッ
騒ぎに反応したのか上条が振り返った為に3人は隠れる
「あ、危なかったにゃー」
「これってこっそり帰れば問題ないだろうから、私はこれで帰るぞ」
「帰らせると思うて」バキッ
なんでボクだけー!と青髪ピアスは吹寄に思いっきり殴られ叫ぶことになる
しかし、結局姫神の説得により吹寄も最後まで見届けるという事になった

それからしばらくして上条と常盤台の超電磁砲は公園に入っていった
「うーん、カミやんってば公園とは渋い選択だぜい」
「私としてはとてもいいと思う」
評価を述べる姫神と土御門
「私としてはもう帰りたいんだが…」
と愚痴を漏らす吹寄
「…………」
喋らぬボロ雑巾と化しているのは青髪ピアス、その理由は吹寄を引き止めるストッパーの役割を果たした為だ
まあ、このサポート陣はしばらく放置しても問題ないだろう…

□ □ □

上条は病院の近くまで来るとある人物がいるのに気付く
「おっす、待たせちまったか?」
その人物は本日デートの約束をしている御坂美琴本人だ
「ううん、さっき出てきたところだから…ねえ、それよりも早くいこっ?」
上条を下から覗き込む様に尋ねてくるとても可愛い仕草の美琴
「あ、ああ…そういえばその服どうしたんだ?」
「ん? これのこと?」
上条は入院していた美琴が私服を持っているのが不思議であったので聞いてみたところ
「これ、妹さんが貸してくれたんですよ」
「なんだ、そうだったのか」
納得する上条だが、御坂妹っていつも常盤台の制服だよな?と思うのであったがそれはつっ込まないことにする

「そ・れ・よ・り…当麻、早く行こーよー」
美琴は記憶を失ってから「…だと思います」とか「…ですよね?」など丁寧語を喋っていたが
昨日の電話からデートという事で嬉しさのあまり若干子供っぽい喋り方になったりしている
「ああ、わかった…ほら」
ほら…そう言って上条は右手を差し出す
「??? どうしたの当麻」
首を傾げ、どうしたの?と聞いてくる美琴
「あーもうっ!」
そう言って上条は美琴の手を握る
「あ、え…」ポンッ
小爆発して顔が赤くなる美琴
「こういうことだよ、まあ…恋人なんだし良いだろ?」
「う、うん♪ えへへ~」ブンブン
繋いだ手をブンブン振り回す美琴
上条も恥ずかしげながらとても嬉しそうにしている…が何か声が聞こえた気がして振り返るが気のせいだった様だ

それからそのまま上条と美琴はいつもの公園に向かうのであった
ただ、いつもの…と言っても記憶喪失の美琴は初めてである
「ここの公園ってさ、人もあまり来ないし静かで良いところだろ?」
上条は公園の中を歩きながらそんなことを言う
「うん、あ…当麻、喉…渇いた」
「そっか…ならあそこで飲み物買うか、そこのベンチでちょっと休んでてくれ」
そう言って上条は帯電回し蹴りを美琴に食らわされている可哀想なボロ自販機に行きヤシの実サイダーを購入する
そして美琴が待っているであろうベンチに行くと何故か美琴は寝ていた

「ありゃ…寝ちまってる、ってかそこまで疲れるはずはないよな」
上条は知らない、この少女が昨晩早く寝ると言って電話を切った後も目が冴えて眠れず朝まで起きていたことを
「すー、すー、うぅ…うん」
気持ち良さそうにしている美琴を起す事にためらいを感じた上条は起きるまで待つか…そう思うのであった
「やっぱり、美琴は可愛いな…」
健やかな寝顔を見て上条は呟き、美琴の頭を撫でる
「うん、とうま…くすぐったい……よ」
と寝言なのか実際に起きて言っているのかわからない様な事を言う
「うわ……マジで抱きしめ…ってなに言ってんだ俺はっ!」
今言いかけたことに途中で気付き小さく叫ぶ上条
「ん…あれ? 当麻…さん? わたし何をしてたんでしたっけ…病院じゃないみたいですし」
そんな叫びで起きてしまったのか美琴が目を覚ました、ただし少し寝ぼけている様で現状を理解していない
「ああ、デートの途中だよ、気持ち良さそうに寝てたから…寝顔も可愛かったぞ」
上条はそう笑いながら言う
「か、可愛いだなんて…そんな、あ…せっかくのデートの途中なのに寝ちゃってゴメンなさい」
美琴は申し訳なさそうにそう言ってくるのだが
「別に気にすんな、ほらこれでも飲んでもうちょっとゆっくりしてようぜ」
上条はそう言い、多少ぬるくなったヤシの実サイダーを美琴に手渡す
「ごくっ、ごくっ、ごくっ…ぷはー」
そんな上条は変わらぬペースで飲む

「うん、当麻、これ美味しいです」
「そりゃ、記憶無くす前も結構美琴飲んでたしな、本当に好きな味なんじゃないか?」
美琴の感想に上条はそう言い返すがある変化に気付く、美琴が丁寧語に戻っているが上条の事を当麻と言ったのだ
「当麻、この後ってどこに行くんですか?」
「なあ、美琴…別に丁寧語じゃなくて良いぞ?」
目を合わせないようにそっぽを向き、上条はそんな事を言う
「あ、うん、わかったよ当麻」
「それで…これからなんだが…」
上条はちょっと声を詰まらせる、それはこれからの事を計画してないからであるわけで
そんな時に電話が鳴る…
「うおっ! び、びっくりした…誰だよ……って小萌先生? 悪い、美琴ちょっと電話出るな?」
急に鳴った電話で驚いた上条だったが担任からの電話という事で無視はできず美琴に断って電話に出る
「あ、もしもし小萌先生? どうしたんですか…今日土曜日ですよ」
『上条ちゃん、実はですね…私もすっかり忘れていたのですが上条ちゃんが休んだ時にちょっとだけ重要なテストがあったのですよ、それが明日朝一の提出期限だったのですよ…それで今学校まで来てくれませんか?』
悪夢のような小萌先生の一言に携帯を落としそうになる上条
「あ、えっとはい…わかりました…ちなみに、それ出さないとどうなります?」
そして上条は恐る恐る聞いてみる
『んー、多分来年度も一年生をやってもらう事になりますね~』
と、小萌先生からの恐怖の一言…
「い、行きますっ! 絶対行くんでちょっと待っていてください!」
『はいはーい、それではセンセーは学校で待ってるので早めに来るんですよ~』
と言って電話を切る

「ハァ…本当にすまない美琴…これから学校に行かなきゃならねえ…」
申し訳なさそうに上条は美琴に謝るが
「大丈夫だよ当麻、私もついて行くから向こうで待ってる」
笑顔で許してくれる美琴
「ありがとな、それじゃ行くか」
二人は上条の学校に向かって歩いて行くのであった

サポート陣
「「「ハァァァ…」」」
潰れている青髪ピアス以外は大きな溜息をつく
「上条君…なんというか、うん不幸」
「上条め、欠席が多いから大事な所でこんな風になるんだ」
「それにしてもベストなタイミングでよくもまあ不幸が発動するんだにゃー」
と三者三様の反応、姫神は呆れ顔になり、吹寄は自業自得だと腕を組み、土御門は上条の不幸に改めて感心する
「土御門…これで追跡は厳しくなるぞ」
帰っていいか? と言いたげな吹寄に土御門は
「カミやんがテストをやってる間にあの常盤台の超電磁砲に問い詰めてやろうぜい? カミやんを好きかどうか」
ニヤリと土御門は笑って言う
「…土御門、その面がムカつくから殴っていいか?」
「ちょ、吹寄それには納得が……って、か、勘弁」バキッボカッ
「土御門君…大丈夫?」
「姫神ー!!! 見てないで助けてにゃー!!!」
「それは無理」
「殺生にゃー!!!!」
二人が去った公園に響く絶叫、それはサポート陣の二人目がボロ雑巾になった合図だった

□ □ □

とある高校にて
「あーあ…せっかくのデートだったのにな」
現在高校の中の食堂で美琴は紅茶を飲んでいる
「それはすみませんでしたよ…でもでも、これも上条ちゃんの為なのですよ」
正面の席にいるのは月詠小萌という上条の担任の先生
なぜテスト中の上条の元にいないのかというと

――――――――――――――

数分前 職員室前
「それじゃあ上条ちゃん、これからテストを始めるんですけど準備は良いですか?」
「あ、はい…、それじゃ美琴ちょっとあっちの食堂で待っててくれるか?」
「うん、わかったよ当麻」
と話していたのだが…
ドスドスドスドスッ、といった足音が聞こえ皆振り返る…そこには筋肉猛獣こと災誤先生がいらっしゃった
「上条、貴様のテスト監督はこのワシが行う」
「……はぁ?」ガンッ
「はぁ、じゃない! はい、だろうが」
「イテテテテ……暴力反対です」
「それじゃ、災誤先生、監督お願いしますね、それじゃ美琴さんは私が食堂まで案内するのですよ」
「そ、そんな…小萌先生見捨てないでー!」
「うるさいぞ上条!」
……という具合だったのだ

――――――――――――――――――――

「それにしても美琴さんはどこの高校生なのですか?」
多分物腰の落ち着き具合とかから小萌には高校生と判断されたが
「えっと、常盤台中学…らしいんですけど」
と、小萌に聞かれた美琴はおぼろげながら上条に聞いた事を思い出しながら答える
「もしかして…常盤台中学のレベル5、超電磁砲の御坂美琴さんなのですか?」
「はい、確かに私は御坂美琴ですけど…それがどうかしましたか?」
………? ここで小萌はふと気がついた、どうも目の前にいる少女からはなにか要領を得られないと
「……美琴さんもなにか今厄介ごとを抱えているのですか?」
小萌は聞いてしまった…いつもいつも上条の周りには厄介事を抱えている人物が集まって来るのを知っているから
「………他言無用でお願いできますか?」
「…わかりましたですよ」
美琴が話しても大丈夫だと思うまで時間はかからなかった、ここに来るまでに小萌先生について色々聞いたから
「今、実は私記憶喪失なんです…それでも当麻は私のこと前と変わらずかはわかりませんけど普通に接してくれて」
と美琴は嬉しそうに話をする、一通り話を聞いて小萌はこう言った
「はぁ…やっぱり上条ちゃんは上条ちゃんですねー」
少し残念そうな小萌を見て不思議に思う美琴であったがそこに災誤先生が入って来たので続きは聞けなかった
「月詠先生、テストが終りましたんで後は頼みました」
「あ、わかりましたーそれじゃ美琴さん、ここで上条ちゃんを待ってるんですよー」
と小さな先生は駆けて行ってしまった

すると小萌先生が行ってから少ししてある人物達が入ってくる
金髪サングラスの少年、青髪の長身ピアスの少年、おでこを強調する黒髪長髪の少女、幸の薄そうな黒髪長髪の少女
「あのー……どちらさまですか?」
その四人組は美琴の前まで来ると立ち止まり、まじまじと顔をうかがってくる
「ああ、気にする事はないぜい御坂さん、俺らはカミやんの友人だからにゃー」
と金髪サングラスの少年(何故かあちこちに打撲の跡)が言うと
「そうやで~、しかしカミやんも不幸やなあ…こんな可愛い彼女を置いて補習なんて……あ」バキボキッドカッ
関西弁の青髪の人(ボロボロの容姿は金髪の人と同じ)は美琴の事を上条の彼女と言い粉砕される
「すまないな、このバカの事は記憶の片鱗から追い出してくれて構わない…私は吹寄制理、よろしく」
青髪の男を葬った黒髪の人は苦笑いを浮かべながらも優しく話しかけてくる
「あ、はい…よろしくお願いします」
美琴は詰まりながらも挨拶を交わすが、この人には逆らわない方がいいなと思う
「私は姫神、姫神愛沙…よろしく」
もう一人の印象の薄い黒髪の人も先程の人と同じで優しい笑顔で話しかけてくれる
「よろしくお願いします」
二度目の挨拶はしっかり言えた

挨拶を交わしてから吹寄は転がっている青い物体と、金髪サングラスの人を紹介し終え
「さてっと、上条からは君の事を朝方に無理矢理聞いたわけだけど…、本当に彼女かな?」
と急に真剣になった吹寄は聞いてくる
「……はい、デートは今日初めてですけど当麻さんの彼女をやらせてもらっています」
と美琴は言う、実際には無理矢理とか聞いてこの人たちホントに当麻の友人? と思ったりしたがそれは言わない
「うーん、ならしっかり手綱は放さない方がいいんだにゃー、カミやんを好きな女子は沢山いるんだぜい?」
土御門は言う、本当の事だが美琴は記憶喪失の為に嘘かどうかわからない
「そ、そうなんですか?」
「そう、意外にというか上条君の性格の所為」
と言う姫神はハァと額に手を当てている
「そういうわけだから…カミやんのこと放すんじゃないにゃー」
笑いながら茶化す金髪サングラスの人
「そうそう、そうだ…相談用に私達の連絡先教えておくわね? 危ないからコイツ以外で」
吹寄がそう言うとコイツと指された青い物体を見て美琴は乾いた笑みを漏らす

連絡先の交換も終わり(やはり青髪ピアスは除外されていた)、あの四人は帰っていった
「なんかあの人たち当麻をからかいに来たのかな? それとも私の心配?」
と結論は実は出なかった、四人は上条をバカにしながらも美琴の事を応援していったのだから
「それにしても…当麻遅いな…」
美琴は小萌が呼ばれて行ってから既に一時間が経とうとしている事に気付いた
「うぅ…お昼になっちゃうよ…」
せっかく楽しみにしていたデートも出来る時間が残り数時間になってしまい落ち込む美琴
時間ももったいないので上条が来るまで先ほど貰った三人のアドレスに編集で特徴を書いていく
意味合いとしては暇つぶし、よりは気分転換の方が合っているのだが今はとにかく気分を紛らわす

土御門さん、金髪サングラスで語尾はにゃーを多用する。当麻のお隣さん。
吹寄さん、黒髪長髪のお姐さんみたいな人、当麻のことを敵視してるみたいだけどすごくいい人。
姫神さん、黒髪長髪で少し大人しい大和撫子みたいな人、ちょっと不思議な人かも。

と適当な様なまともな様な事を書く美琴
「…はぁ、当麻……」
携帯片手につっぷする美琴だが上条が一向に来る気配がない為、若干泣きたくなってくる

□ □ □

上条は小萌と美琴と別れてから災誤先生のゴリラ教室もといスパルタ監督を受けていた
「はぁ…美琴なにやってんだろうか……」
溜息を吐きつつ顔を上げるとむさっ苦しいゴリラの顔…
「なんでこんなことに……」
「うるさいぞ上条、息抜きに受けの練習でもやるか?」
とぶつぶつ言っていた上条に災誤は最悪の提案をする
「い、いえ…遠慮しときます」
「ならさっさとテストを終らせろ、ワシだって暇ではないんだからな」
{くそ…暇じゃねえなら受けるなよ…}
と、こっそり毒づく上条だが
「ん? 何か言ったか?」
「なんも言ってないっす」
……地獄耳かよ

そんなこんなで2時間のテストを終え
「それじゃ、小萌先生を呼んで来るからな…少し休んでろ」
そう言って災誤は教室を出て行った
「はぁぁぁ…疲れた・・・」
上条は机につっぷする
頭をフル回転させるテストと災誤先生のストレス監督の為、予想以上に疲れそのままウトウトして落ちる上条
「………ちゃーん、・・・…うちゃん! 上条ちゃん!」
「ふぁ、ふぁい!」
誰かに叫ばれて上条は返事をしながら飛び起きる
「あ、あれ? 俺…寝てました?」
「もう爆睡ですよ上条ちゃん…一時間くらいは寝てましたよ」
上条はダラダラと嫌な汗をかく
「も、もしかして小萌先生は一時間起こし続けてたんですか…」
「そうですよ、あ、早く美琴さんの元に行って上げるのですよ」
「わ、わかりました!! 小萌先生、ありがとうございましたー!!!」
上条はそう叫ぶとダッシュで教室を出ていく
「まったく若いっていいですねー」
その教室には少ししょんぼりしている小萌先生がいたとかいないとか…

廊下を駆ける上条が視界にある人物を捕らえる
「お前なんでここにいるんだよっ!」
「おーカミやんか、いやーあんなに可愛い彼女がいてカミやんが次に不幸って言ったらぶっ飛ばすところだにゃー」
とワザとらしく土御門が言う
「つーか…まさかあいつらもいるとかって言うんじゃねえだろうな…」
上条は嫌な予感がしてキョロキョロと周りを見渡す
「いや、あいつらは先に帰したにゃー、というか帰ったぜい」
「ふぅ…」
落ち着く上条だが
「あ、でもしっかりとカミやんの彼女とは話していったぜい」
………上条は悟った、月曜学校にきたら俺は死ぬと
「ま、そういう事でカミやん、早く言った方が良いぜい、彼女が寂しそうだったにゃー、それじゃ」ダッ
と言って土御門は走り去っていった

その後、少し上条は色んなことを頭で考えていた為にショートしていたが数分でこちらに戻ってくる
「はっ…あれ? 土御門? …夢だったのか?」
と一部飛んでしまっていたがご愛嬌
「って、やべえ…待ってろ美琴ー!!」
上条は走り出した

食堂までの直線上に入った上条はより力を込めて走る、そこには速く美琴に会うという目的しかない…
あと少しで食堂に突撃、という時に入り口から美琴が出てきた
ドンッ 「きゃ」「うおっ」 二人は衝突し
ふに…チュ…上条の右手は美琴の胸へ、そして二人の唇は重なる

…………しばしの沈黙
身を離す二人、両者は顔を赤くしうつむいている
「わ、悪いっ美琴!」
上条はこの重い空気をブチ破る為に謝り土下座に移行する
「ふ…」
「ふ?」
「ふ、ふふざけんじゃないわょ……お、おおおお女の子の胸触るなななんて…アンタは…」
あれ? なんか、美琴がオカシイ?
「な、なあ美琴…大丈夫か?」
「み、美琴っ! あ、あああああアンタ、ふ…ふにゃー」プシュー
ヘナヘナ…と力なく倒れる美琴
「お、おいっ! 美琴大丈夫か、美琴! 美琴っ!」
上条は倒れて気を失っている美琴を担ぎカエル顔の医者の元へ走る

□ □ □

「う~ん…あれ? 私、なにしてたんだっけ…確かアイツの買い物に付き合ってトラックが…ってアイツはっ!」
美琴は記憶を取り戻していたが、記憶を失ってからの数日間の記憶は失われていた
ちなみに、本日の午前中のことも既に美琴の中には記憶として残ってはいなかった
時刻はもう既に月が昇っている頃……部屋には美琴一人

この状況から見て美琴は自分は助かったと理解できるが上条がどうなったかわからない
それはそうであろう、気になる男子がトラックに巻き込まれそうになっている所で記憶が途切れているのだから
「アイツは…どうなったの…」
ここにそれを答えてくれる人物はいない、美琴はベッドから降りて病室から出る
「ナースセンターに行けば何かわかるわよね…」
どうやらここはいつもアイツが怪我をすれば運ばれてくる病院らしいので幸いにもナースセンターの場所はわかる
しかし、そのナースセンターには不幸にも誰もいなかった、どうやら見回りなどで出ているようだ
「はぁ…、ったくこうなったら手当たり次第に探すしかないわね…」
そう呟き美琴は迷惑にならない程度に走りながらこのフロアの病室を調べていく

結果、それらしき病室は見当たらず自分が最初いた病室に戻る美琴…
頭の中はすでに上条の事でいっぱいだ、アイツは無事なのか・・・怪我をしているならどの程度の怪我なのか…と
今はどうしても先が見えないので美琴は明日の朝一で聞こうと思い、しぶしぶ病室のドアを開ける
「よお、みこ…御坂、もう起きて平気なのか? どこか具合悪いところはないか?」
そこには今まで心配していた上条の姿
「お、おいっ…どうした、どこか痛むのか?」
上条は美琴のそばに寄って来る
「う、ううん、いや元気そうだから安心しただけよ…大丈夫」
そう、上条が寄って来た理由は美琴の涙
「はぁ…身体に異常がないなら一安心かな、あーそうそう、みこ…御坂…今日は何曜日か知ってるか?」
「え? 何曜日って…金曜なんじゃないの? だってアンタの買い物に付き合ったのって木曜のタイムセール…」
そこまで言って上条が少し悲しげな顔をしている事に気付いた美琴
「どうしたのよ? そんな悲しい顔して」
「あ、いや…別になんでもねえよ、ほらもう夜も遅いし良い子は寝た、寝た」
そう言って上条は病室から出て行った
「何よ…まったく、あーもう、イライラするわね…でも、無事でよかった…」
そう呟き美琴はベッドに潜り込み夢の中へ落ちていくのであった

□ □ □

「なんか、気絶する前の美琴…記憶を無くす前の美琴みたいで…現状を理解出来てないみたいでした」
「それは、記憶喪失の後の記憶が無くなってしまったのかもしれないね…」
ここは数時間前、美琴が運び込まれてすぐの診察室
「そんなことってあるんですか…」
上条は不安であった、今までの想いはどうすればいいのか分からずにいる

「そうだね、記憶喪失の治り方にも色々あってね
 一つ、記憶喪失が治っても以前、以後の記憶が保たれるもの
 二つ、記憶が一生元に戻らず、以後の記憶だけで生きていくもの
 三つ、記憶が戻っても以後の方の記憶が欠落し、以前の記憶からまた始めなおすもの
 彼女の場合は三つ目かな…残念だけど」
とカエル顔の医者は目を伏せ、上条の肩に手を置く

「それじゃ、以後の記憶はもうわからないんですか? 美琴は…」
「うーん、ごくごく稀に記憶喪失の間の記憶を取り戻す人もいるみたいだけどね…こればかりは断定できないね」
それは希望と絶望の折半であり、上条は
「………わかりました、それじゃあ失礼します…ありがとうございました」
そう言ってフラフラと診察室から出て行ってしまったのだ
「まったく、神様というのもあれだね…」
カエル顔の医者は天井に呟く、残酷なマネをするものだ…と

それから時間は経ち
「ここでこんなことしててもしょうがないよな…」
上条は日も落ちたというのに病院の屋上から街を眺めている
思い出すのはここ数日、互いに名前を言いあう仲になり終いには恋人になった
それでもその記憶はもう美琴の中には無い…
「インデックスもこんな気持ちだったのかもなあ…」
そんな風に呟くが上条はここである一つの事を決める
「もし、美琴が覚えてない様なら…以前のように接しよう、そんでもって…この気持ちは忘れよう……」
悲しい選択、今思いつける最善の案はこれだけだった
そして上条は美琴の病室に向い、ドアの前に立つ
「覚悟を決めろ…俺……ふぅ」ガラッ
中に入る上条であった……がそこはもぬけの空
慌ててどこかへ行った様な痕跡がある為にすでに上条は嫌な予感がしてくる
そこへもう一度ドアが開く音
「よお、みこ…御坂、もう起きて平気なのか? どこか具合悪いところはないか?」
そこには愛しの美琴の姿
「お、おいっ…どうした、どこか痛むのか?」
しかし、声をかけた途端に頬を伝う一粒の雫…上条は慌てて美琴に駆け寄る
「う、ううん、いや元気そうだから安心しただけよ…大丈夫」
泣きながらも美琴はそう言ってくれた、どうやら痛みはないらしい…むしろ心配して泣いてくれたようだ
「はぁ…身体に異常がないなら一安心かな、あーそうそう、みこ…御坂…今日は何曜日か知ってるか?」
そう、上条は記憶の欠落を確かめる為に美琴に聞く事にした
「え? 何曜日って…金曜なんじゃないの? だってアンタの買い物に付き合ったのって木曜のタイムセール…」
金曜と聞いた瞬間上条は身を引き裂かれるような感覚に襲われた
「どうしたのよ? そんな悲しい顔して」
それを見逃さなかった美琴が心配して聞いてくる
「あ、いや…別になんでもねえよ、ほらもう夜も遅いし良い子は寝た、寝た」
誤魔化しを含め上条はそんな風に言い美琴の病室を後にする

「やっぱり…忘れてるか……またな、御坂…」


ウィキ募集バナー