とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part03

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-③上条の御見舞い-


「ちくしょう…なんでこんなことに……」
上条は現在の時刻を携帯で確認しつつ病院に走る
時刻は夕刻を過ぎ、月が昇ってしまった
「それもこれも筋肉猛獣の所為だー!!」
と叫び、今日を振り返る上条

朝、上条は昨晩の美琴の電話で一睡も出来なかった
「悪夢で眠れねーよりましか…」
そう呟き上条は起き上がり布団を干す
朝食は作る気にも食う気にならず、早々に学校に向け出発する上条
「学校行けば放課後は小萌先生が補習組んでんだろうな……」
出発していつもの公園あたりで上条は肩をがっくりと落としながらそう呟く
その後も平穏に歩いて学校に向かった

学校に着き上条は眠い目を擦りながらも授業を全うした
「やっと終った…ってか一時限目でこれってやばくないか……」
しかし、上条の不安はこれ一つではなかった…クラスの女子数名からは正体不明(期待)の眼差しを
そして男子からはからかう様な眼差しを向けられている
「多分あれだ…昨日の土御門のチェーンメールの所為だ……絶対そうだ」
本日その土御門と青髪ピアス、吹寄、姫神は何故か揃って風邪でお休みだ
そしてもう一つの不安、それは…
「おいっ! そこ上条!! ボーっとすんな!!!」
小萌先生も休みというか俺が休んだ辺りから風邪が流行だしていたらしく、今日一日の授業担当の先生がフルで休み
そして……あの筋肉猛獣こと災誤先生が今日一日自習監督を務めることになったのだ…不幸だ

上条はその後、居眠りなどをに犯して放課後に校庭整備を命じられる羽目になったのだ
そして月が昇るまで筋肉猛獣の監修の元、校庭整備をさせられていた上条だった

意識を今に戻す上条は一つ心配していることを呟く
「あー、美琴泣いてねえよな…いや、いくらなんでも泣きはしない……よな?」
不安だが昨日の約束を早々に破りかけている上条は今の予測が当たっている気がしてならない
それでも上条は駆ける、どんなに遅くなっても会いに行く…そう約束したから
上条はその想いだけで今は全速力で前に進んでいる気がした

□ □ □

病室の室内を照らす夕焼けの日差しが月光の光に変わっても想い人は来ない
「わかってはいるんです、当麻さんにも事情があって来れない日があることくらい…
それでも、約束した日が会えないって…少し悲しいな」
病室で美琴はそう呟き、窓の外を見る…街の建物には明かりが灯り、空は黒く月と一部の星だけが光を放つ

そんな少し寂しい夜空を見ていたがコツコツという何かが叩かれる音が聞こえ、そちらを見る
そこには窓を叩く上条の姿、美琴は心臓が跳ねるような喜びを感じ目に涙が溜まってくる
嬉し泣き…と言えばいいのか
上条はそれを見て慌てている様子だが美琴自身は気付かない、美琴は窓を開ける
「当麻さん、ここ何階だと思ってるんですかっ!」
開口一番、最大の疑問をぶつける美琴
「ん? 3階だろ…あと木登ればここの部屋は届くし問題ないだろ」
と上条はさして気にすることなく木から開けた窓に足をかけ、入ってくる
「で…だ、美琴…遅れて本当に申し訳ない…」
美琴がベッドに腰掛、上条はそれに対峙し謝る…暗い顔をしているのは先程の涙が原因だろう
「いいですよ当麻さん、こうして会いに来てくれましたし…うれしいです」
そう言って美琴は上条に微笑み、頬を赤くし続けてこう言った
「当麻さん…無理なお願いがあるんですけど我が侭を一つ聞いてくれませんか?」
なんだろう? と上条は思ったが
「ああ、いいぞ…遅れたお詫びに何でも聞いてやる」
といかにも上条らしい答えを返す

「私の……恋人…になってもらえませんか?」

上条は硬直し、美琴は真赤になる
「えっと、美琴…さん? そのお誘いは大変嬉しいのですが、それはフリでしょうかそれとも本気なのでしょうか…」
以前に恋人ごっこをしたので念のための確認なのかもしれないと意外と美琴は冷静に判断する
「だ、ダメですか? …私じゃ当麻さんの恋人にはしてもらえませんか?」
しかし口に出して言えたのは冷静とは反対の焦りの入り混じった言葉

「いや、ダメじゃないです…むしろ上条さんとしては万々歳なのですが…
記憶喪失の内から恋人になるのは…と上条さんは少し思うわけで…」
と上条は了承してくれる反応を示すがどうやら今はダメとも言いたいようだ
「当麻さん…あのですね、私は当麻さんのことが好きになりました
 出会って数日しか経っていないのにこの気持ちになるのは変だと思いますか?」
美琴は上条にそう問う

「私は今の気持ちに気づいてからなんだかとても落ち着けなくて、心地良いんです…
 もしかしたら記憶喪失以前もこういう気持ちだったのかな…なんて思えたんです」
そう言って美琴は一息つき
「と言っても…事実として本当にそうだったかはわからないんですけど……でも、でもですね…
本気で私と付き合ってくれませんか? 記憶が戻るまで仮の恋人でもいいです、ですからお願いします!」
と続けた…必死に、そして泣きそうな顔で

「なんて…顔してんだよ、そんな顔されたら断れねーじゃねーか」
その様な顔の美琴を見て上条は優しくそう言った、そして嬉しそうに…そして恥ずかしそうにこう続けた
「俺でいいなら…こちらこそよろしくおねがいします」
こうして夜、病院に不法侵入をした上条当麻に御坂美琴という彼女が出来た

その後、実は無音で作動していた防犯システムにより上条が警備員に連れて行かれそうになるのはもう少し後の話

□ □ □

翌日、上条は美琴の病室で目が覚めた…時刻は7時ちょっと前
「俺、なんでここに…ってそうか昨日の夜…」
上条は思い出す、警備員に必死に美琴が説明してくれたため連行は避けられた上条であったが帰ろうとした時に
「今晩は私の近くにいてくれませんか?」
と少し震えて美琴が言うので上条はずっとベッドの横にパイプ椅子を持って頭を撫でてやっていたのだ

回想が終わり顔を上げるとまだぐっすりと眠っている美琴の顔が目に映る
「やっぱり…可愛いよな、美琴は……」
と上条は言って美琴の頭を優しく撫でる
そうすると美琴は気持ち良さそうな顔をして「う、ん…むにゃむにゃ」と猫の様に身をよじる
「そういえば…俺達恋人同士になったんだっけ…」
上条は恥ずかしそうにそう呟き
「実感わかねー」と小さく笑う
そうしてしばらく美琴の寝顔を優しく見ているのであった

それから時間が経ち7時半前に美琴が目を覚ました
「あれ、当麻さん…ふぁ……おはようございまふ」
まだ眠そうでトロンとした目をしている美琴
「よっ、やっと起きたか」
そう言って上条はニカッと美琴に笑いかける
「あ、お待たせしました…」
上条の笑顔を見て照れたかのように顔を赤くする美琴
「うんうん、やっぱり…」
「やっぱり…なんですか?」
「あー…いや、なんでもない」
「変な当麻さん、ふふっ」
少し赤くなって「なんでもない」そういった上条を見て美琴も笑みを浮かべる

□ □ □

「でさ…記憶喪失の美琴に聞くのもなんだが……恋人ってなにするんだ?」
「うーん、知識としては食事やデートだと思うんですけど…」
上条はあの後、学校に向かい夕方に改めて病室を訪れて話をしていたのだがこういう話になり
「でも、今の私は外にあまり出ないほうが良いですよね……」
そう言った時の美琴の少し残念そうな顔を見てこれはなんとかならないか…と思った
そして、面会時間終了という時間まで話をしていたので美琴には先程「また明日な」と言って病室を出た

だが上条は玄関ホールに向わずに病院内を歩いている…ある人物を探しているのだ、が
「あれ? 上条さん、面会時間はもうすぐ終わりですけどどうしたんですか?」
と急に声をかけられ上条は振り返る
「あ、ども…ってそうだ、あの先生ってどこにいますか?」
そこには上条と美琴の担当であった看護婦、丁度良いと思い上条はカエル顔の医者の居場所を聞く
「ああ、あの先生ですか…確か今、あそこの休憩室でコーヒーを買ってたと思いますよ」
そう言って看護婦は少し先の休憩室のところを指差し「それじゃあね上条さん」と言って行ってしまった

「ふぅ…で何か用かな?」
上条が休憩室に顔を出すと「わかってるよ」とでも言うかのような言葉をいきなりかけられる
「なんでわかるんですか…、まあいいですけど…美琴に外出許可を貰えませんか?」
「いいよ」
と上条の質問に即答のカエル顔の医者
「はやっ! ってかいいんですか!? そんな簡単に出して!」
「君はどっちがいいんだい…」
上条はツッコミを速攻で入れたが結果、カエル顔の医者に半眼でおいおいと見られることになる

「いや、外出できるのは嬉しいんですけど……なんというかあっさりしてて」
そうだ、今までの経験上何かしらありすぎてこうあっさりいくと不気味でしょうがない
「まあ、君が言うのはわかるよ、それに条件があるからね……条件は君が一緒にいることだ、いいね?」
「あ、は…はい、それはいいですけど…外出の理由はないんですか? それに…回復しますよね…美琴の記憶…」
と歯切れが悪い上条にカエル顔の医者は
「言っておくけど、記憶喪失が治るには時間がかかるものだからね、あまり気にしない事だよ」
そう言ってカエル顔の医者は持っていたコーヒーを一気に飲み干し上条の肩を軽く叩く
「あと、理由だけど病院内にずっといて回復を待つよりも外に出て色々体験した方が戻り易いかもしれないからね」
そしてカエル顔の医者は休憩室から出て行った

上条はカエル顔の医者が出て行ったのを見て自分は玄関ホールへと向って行く…すると
「ちょっといい加減にして下さいませんの! いるんですの? いないんですの! はっきりして下さいまし!!」
と聞き覚えのある声が聞こえてきたのでそちらを向く
そこには面倒くさそうに受付を閉めようとしている看護婦とその看護婦にギャーギャーと言っている白井の姿
「………何してんだ? アイツ…」
上条はそう呟いていた
「ん? ってあなたは!」
その呟きが聞こえていたらしい白井は看護婦に向けていたであろう鬼のような形相を上条に向ける
そして、これはチャンスと思ったのか看護婦は受付を閉めて猛ダッシュで立ち去った

「………はやっ、ってこっちもそれどころじゃねえ!」
上条は看護婦さんのスピードを見て唖然としていたが白井が迫ってきている事に気付き叫び、逃げる
「逃げるんじゃないっですの!」
「だったらせめてその顔をやめろ! それに金属矢もしまえー!!」
と叫び病院から離れて行く二人を見つめる二人の少女が居た事を上条は知る由もないし、白井はすっかり忘れていた

恐怖の空間移動追いかけっこに突入した結果……上条はもちろん逃げ切った、が
この時ある人物が上条を追跡していた事を上条はまだ知らないのであった

□ □ □

「あー、やっと自宅に帰って来れましたか…」
上条は自分の家に着き玄関にへたり込む…、するとコンコンと控えめなノック音が聞こえた
…だれだろ?「はーい、ちょっとまってください」カチャ
ドアを開けるとそこには長髪の髪に白い花の髪飾りをつけた少女が立っていた
「………えっと、どちらさまですか?」
「私、佐天涙子っていいます、御坂さんの事についてお聞きしに来ました」
上条は観念した…自宅にまで来られた以上、逃げる事は無理に等しい
「はぁ…仕方ない、説明するから中へどうぞ…」
上条は仕方なしにそのまま部屋の中へ佐天を招く

「……………と言う訳だ、俺は…後悔してる、一緒にいた俺の方が美琴を守らなきゃいけなかったのに…」
上条はお茶を出し佐天に事故とその後をすべて話した
「…………わかりました、これは白井さんには内緒にしておきます…で、上条さんもう一人呼んでもいいですか?」
「は?」と上条が首を傾げているとコンコンと再びノック音が聞こえた
上条が動く前に佐天が玄関に走りドアを開け招き入れたのは遠くから見れば頭が花瓶のようになっている少女だ
「私も御坂さんの友人の初春飾利です、上条さん私も一緒にお話に加わってもよろしいですか?」
と聞いてきたがここまでくれば加わらない方がおかしいだろう
「ああ」
上条はそう言って立ち上がり、初春の分のお茶を淹れて再び座る

「で…上条さん、一つ確認しておきたいんですけど」
「なんだ?」
佐天の真剣な顔と言葉に首を傾げる上条
「上条さんって御坂さんのことが好きなんですか?」
「なんだ、そんなことかそりゃ好きだぞ……あ」
あまりの真剣な表情になにか重大なことを聞かれると思っていたのであった上条だが…
予想外に別角度の話にポロっと本音がこぼれ、二人の少女を見ると顔を赤くしてしてやったりの笑みを浮べている
「なるほど、なるほど、上条さんは御坂さんが好きなんですね…で恋人なんですか?」
「いや…これ以上は言えないと言うか…」
「白井さんにばらしますよ」
佐天の質問に顔を背け解答拒否をする上条に初春が脅しをかける
「ちょ、初春黒っ!」
「拒否権無しかよっ!」
各々の反応を返す二人に初春は
「利用できるものは利用するんですよ、佐天さん」
と変なスイッチが入った初春を見て佐天は
「あー、上条さん…私、初春止められないんで覚悟決めてください…」
「はぁ……不幸だ」
それから上条は初春に聞きだせる情報をすべて引き出されるのであった…

□ □ □

その後、夜道を歩く三人
「それにしても記憶喪失なのに御坂さんから告白してくるなんてなんかすごいですよね」
佐天が上条にそう言ってくる

「俺としてはそれを受けちまって本当に良かったのかどうかまだわからないんだがな…
でも、俺も嬉しかったな…告白されて前も同じ気持ちだったかもなんて言われたからな」
上条は照れ隠しのように天を仰ぎ、頬を掻く
「でも、記憶喪失が早く治ってほしいですよね…」
「ああ…」
初春の心配に上条は短くそう答えた

「上条さんも身体に気をつけてくださいよ、今御坂さんを支えられるのは上条さんだけなんですから」
「わかってる…ありがとな、二人とも…美琴もこんな友人を持ってすげー幸せ者だな」
上条は初春と佐天に美琴の代わりに感謝の言葉を告げる
「それじゃ、上条さんはもっと幸せなんじゃないですか~?」
「そうですよね~、御坂さんに告白されるくらいですし」
と初春と佐天にからかわれるのであった

「あ、それじゃここまででいいですよ私達すぐそこですから」
と、佐天が言い、上条は
「そうか? それじゃ気をつけて帰れよ」
「「はーい」」
二人は元気にそう言うと上条に振り返り手を振って去っていった
二人が見えなくなるまで上条は見送るとある場所に向けて歩を進める

□ □ □

とある公園
上条はベンチに腰掛てヤシの実サイダーを一口飲む
「美琴にこれ買ってってやるかな…」
そう言ってさらに一口飲む
「やっぱり、出かけるなら早いうちがいいよな…今日は金曜だし明日行くか…」
携帯を取り出し、上条は美琴にかける
ピリリリ、ピリリリリ…カチャ
「もしもし、美琴?」
「どうしたの、当麻」
ほぼワンコールで出てくれた美琴
「先生には許可貰ってあるからさ…明日一緒にデートしないか?」
「え、いいの? 行く行く! 絶対行くよ、当麻」
美琴はすごく嬉しそうな声で答えてくれた
「そうか、それなら明日朝迎えに行くから今日は早めに寝るんだぞ」
と上条はそう言ってまた一口喉を潤すためにサイダーを飲む

「はーい、それじゃ当麻おやすみ」
「ぶふっ! ごほごほっ…いや、もう寝るのかよ…」
まさかこんなに早く寝ようとするとは思わなかった上条は吹いた
「うん♪ だって明日寝坊したくないんだもん」
「そ、そうか…それじゃあな」
携帯を切り、残りのサイダーを一気に飲み干す

「さて、俺も明日の準備をしねーとな…」
上条はベンチから立ち上がり、缶を自動販売機横のゴミ箱に投げ捨てる…
カンッと音が鳴って投げた缶はゴミ箱のふちに当たって地面に落ち、転がって行く
「はぁ…直に捨てた方がよかったか…」

上条は素直に缶を拾いに歩き出し…ある人物がそこにいることに気付く
「あれ? 青髪ピアス…か?」
そう、本日も学校を熱で休んでいたはずの青髪ピアスがそこにいた
「カ、カミやんが…女の子とデートの約束をしとったなんて…まさか、あのチェーンメールはほんまやったんか…」
そう呟いてフラフラとどこかへ歩いて行ってしまった

「おーい…って行っちまったか、大丈夫かアイツ…」
と上条は頭を傾げたが「まあいいか」とスッパリと忘れる事にし、缶をゴミ箱に捨て帰路につく

上条は知らない、この時の青髪ピアスが何をするのか…
そして上条と美琴のデートがどのようになってしまうのか……
だが、デートがどうなるかは本日上条がどれだけ頑張って調べて計画を練るかにかかっているのだ


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