とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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夢のあと

二人平和な日常を」の続き


 美琴はあの夢を見てから気分が落ち着いた後、今日は休日の為何をしようかと考えていた。
いつもなら一も二もなくアイツこと上条当麻を探しに出るのだが、
あの夢を見た後、平常心で向き合えるとは思えずにいた。

「でも、会いたいな」

 もうこの想いは誤魔化せない。だから、素直になろうと考え、何時もより服装などを丹念にチェックして
いつもの通り上条を探しに出かけた。

 街に出て、上条が何時も出没する辺りまで来るとそわそわし始めた。
この感覚はいつもとは違い、上条に会う楽しみと、素直に感情を出せるかという不安が
一緒くたになったような美琴自身どう処理していいか分からない感覚であった。

「おかしなところはないわよね」

 とりあえず落ち着くためにショーウインドウのガラスを鏡代わりに髪型を再度チェックしていると、

「御坂、こんなところで何やってんだ?」
「ふぇっ!?」

 真後ろから声を掛けられ振り向くとそこには上条当麻が立っていた。

「ア、アア、アンタ……」
「おわっ、危ないな。何するんだ御坂」

 いきなりのことに美琴は半ばパニック状態になり何時も無視されたときのように、電撃を放ってしまった。
しかし、上条のほうももう慣れたもので何時ものように右手で電撃を打ち消した。

(ああ、またやってしまった。何で素直になれないのよ……)

 自分の素直になれない性格になんだか悲しくなってしまう美琴であった。

(不幸だ。やっぱりあの夢は所詮、夢だって事なんだな)

 美琴の反応に上条は内心落胆していた。上条の方もあの夢をみて美琴のことを意識しだしていた。
部屋の中で考えていても仕方ないと思いとりあえず、気分転換と朝食を食べるために外へと出ていた。
そこで、美琴を見つけ、声を掛けてみたのだが結果はいきなり電撃を放たれたからだった。

(ここで、また言い合いになって追い掛け回されるのか)

 と予想していたが、予想は覆され、

「あ、あの、ごめんなさい」

 なんと美琴の方から謝罪の言葉が出てきたのである。上条は予想外のことに驚いた。

「まあ、今度からは気をつけてくれよ。さっきのは流石に危なかったんだからな」
「ごめんなさい」

 落ち込んだ声で、そして、悲しそうな表情で再度、謝罪の言葉を述べる美琴がなんだか放って置けなく、

「なあ、これから暇か?」

 と、いつの間にかそんな言葉が口をついて出ていた。

「暇よ」
「じゃあさ、俺はファミレスに行くんだが一緒に来るか? その後で、どこかに遊びにいかねえか?」
「うん、行く!!」

 このいきなりの誘いに驚いた美琴だったが、嬉しい誘いだったので笑顔で即答した。
鳴いたカラスがもう笑った。そう表現するのが妥当だろうか。
そんなことを考えつつ、その笑顔に今まで美琴に感じたことのない胸の高鳴りを実感していた。

 近くのファミレスに着き、二人はメニューを眺めていた。

「俺はモーニングセットするが、御坂は何にするんだ」
「……私もそれでいいわよ」

 メニューの中のある一点をしばらく眺めていた。そこには恋人セットと書かれていて、
ひとつのグラスに、ストローが二本はもちろんのこと食べさせあいをさせるためであろう、
フォークやナイフが一セットしかないと言う代物だった。

(まだ、恋人同士でないのにこれは流石に注文できないわ)

 そう思い美琴は結局は上条と同じものを注文した。
後に恋人同士になったときにこのメニューを注文し、二人は恥ずかしがりながらも、
しっかりと、残さずに食べたのはまた別の話である。
さらにそれを初春や佐天に見られていて後日、冷やかされるのもさらに別の話である。

 共に食事を食べ終え、一息つきながら上条は切り出した。

「これからどこに行きたい?」
「アンタ……そっちから誘ってきたんだからそれぐらい考えておきなさいよ」

 何も考えていなかった上条にジト目で睨みつつも、そりゃ、誘ってくれたのは嬉しいけどさと、
上条に聞こえない程小さな声で呟いた。

「あんな悲しそうな顔をされてほっとけなかったんだよ。だから、深く考えずに誘っちまったんだよ」

 悪かったなと上条は言い訳し、少しの間が空いた。美琴はその言葉に嬉しくなり、上条に聞いてみた。

「ねえ、それって、私の事を気にしてくれたの?」

 上条の方に体を乗り出し顔を赤くした美琴に言われ鼓動が早くなりそれを紛らわすように、

「ああもう、そんなことよりどこに行きたいんだ」

 と、美琴にどこに行くかを聞いた。

「とりあえず、近くのゲームセンターかしら」

 意見を出してみたのだが、上条は申し訳なさそうに、

「あの~、上条さんとしましてはあまりお金のかからないところがよかったりしますが……」
「お金のことなら気にしなくていいわよ。全部私が出してあげるから」
「いやいや、こっちから誘っておいて、全部払ってもらうっていうのは流石に心苦しいものが……」

 二人はあれこれと言い合い結局のところ割り勘でと言うことで、
このファミレスの近くにあるゲームセンターに行くことに決まり、
そこに着くまで上条と一緒にいれることにテンションが上がった美琴が腕に抱きついて引っ張っていき、

(や、やわらかい感触が、やばい、やばい……)

 その感触に変な気分に成り掛けたのは上条だけの秘密であり、

(なんて大胆なことをしちゃったりしてるのよ)

 着いてからそのことに気づき上条からは見えなかったが、顔が真っ赤になっていたのは美琴だけの秘密である。

ゲームセンターに着いてから二人はこれでもかと言うほど遊び倒した。
レーシングゲームでは、白熱した展開となり惜しくも上条は敗れて悔しがり、
格闘ゲームでは、一進一退の攻防にギャラリーが沸き、
またシューティングゲームでは二人の息の合ったコンビネーションでゲームをクリアし、
最後にクレーンゲームでは、上条はクマのぬいぐるみをゲットしてそれを美琴にプレゼントし、喜ばれたり、
楽しいひと時を過ごした。


「もうこんな時間か」
「そうね。時間があっという間に過ぎた感じがするわ」
「ああ、それは同感だ」

 外に出てみると、綺麗な夕焼けが上条たちを照らしていた。

「時間も時間だしもうそろそろ帰ろうか」
「うん」

 ゲームセンターを後にして、帰り道、公園の何時もの自販機の前に来ると美琴が上条を呼び止めた。

「あのっ……」
「どうした?」

 美琴は緊張した面持ちで告白しようとしたが、そこで、もし断られてしまったら、
今までの関係が壊れてしまうのではないかと言う恐怖が美琴を襲う。
だから、

「ううん、なんでもない」

 と、言葉を濁すしか無なくそこで会話が途切れた。しばらくの沈黙の後、

「そうか。今日は楽しかったぞ」
「うん、私も楽しかった」
「またね」
「ああ、またな」

 二人は言葉少なに別れの言葉を告げると互いに帰路に着いた。
美琴は途中で振り返り去っていく小さくなっていく上条の背を眺めながら、

「……いくじなし」
「本当に私のいくじなし」

クマのぬいぐるみをキュッと抱きしめポツリと呟いた言葉は闇夜に消えていった。


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