二人平和な日常を
「ここはね、この式を使えばいいの」
「分かった、サンキュ」
「じゃあ、私はお昼を作ってるから分からないことがあったらききなさいよ」
「ああ」
とある休日、美琴は上条に課題を教えていた。
しばらく、上条のペンの音と美琴の鼻歌混じりに調理する音、
それ以外はとても静かであったが、二人は何かが満たされているようで何も不満は無い。
「もうお昼の用意ができたけど、そっちはどう?」
「ああ、こっちももう終わるから少し待ってくれ」
上条は言うと本当にあと少しだったのであろう。すぐに書き終わると机の上を片付け始める。
その後、すぐに美琴が料理を持ってくると二人は食事を始めた。
食後、上条は美琴を自分の近くに呼び寄せ、隣に座らせた。
「なあ、美琴」
「なあに?」
自分の方に頭を預けている美琴に、上条は謝罪を述べた。
「告白してから、課題とか補習のせいでろくにデートにも連れて行けない上に
勉強や食事に関して美琴に負担ばっかり掛けてすまないな」
すまなそうに謝った上条に美琴は抱きついて、答えた。
「恋人になる前は恋人になったらああしたい、こうしたいって言うのは有ったわよ。でも、気にしないで」
一息つくと美琴はさらに話す。
「こうして私が勉強を教えてあげたり、
私の作ったご飯をおいしいって、言って食べてくれるだけでいいの。
実際に恋人になってみるとこうしているだけで何か満たされていくの。
それがとても嬉しくて、しばらくはこのままでもいいかなって。
何よりも、当麻が私を頼ってくれることが嬉しいの」
「そうか、美琴がそれでいいなら」
二人はベットに背を預けしばらくするとどちらとも無く顔を近づけた。
☆
「はぁ、はぁ……」
美琴は目を覚ますと、そこは見慣れた自分の寮で、いつもと何も変わったところはない。
「な、なんて夢を見るのよ」
「でも、あの夢が現実になったらどれだけいいかな……」
そういいながらも顔が赤くなっていくのを自覚していた。
そして、この胸に満たされるような暖かい感覚に戸惑っていた。
「とうま……」
自然と言葉が出たがさすがに本人が居ないとはいえ
名前を言うのは恥ずかしかったらしく呟くとポフッと枕に顔を埋めた。
一方ここは上条宅、上条も同じような夢を見て目が覚めた。
「有り得ないだろ……」
「いつも俺にビリビリしてくるあいつが、恋人なんて……有り得るはずがない」
上条はそう否定していたがこの夢が現実になったらどんなのいいだろうかとも思い始めていた。
美琴はある決意をして、上条は美琴を意識し始める。
その夢が現実になるまであと少し。