とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とある姫と勇者のRPG 2



「この城、結構広いですね」
「そうでございますわね。迷ってしまいそうです」

神裂とオルソラは今『仮想世界』の中にいた。今回のゲームは計4人を外部からのゲスト、という形で招いている。その内の2人である彼女たちは普段とは全く異なる服装で城の中を歩いていた。

オルソラは城にいてもおかしくはない、メイドの格好をしていた。あの幻想が入り混じったものではなく本職の人が着ている物と同じものだ。最初は気恥ずかしかったが、次第に慣れて今ではそつなく着こなしていた。オルソラのようなメイド。

…………………………………。

……………よくない?

「少し恥ずかしいですね、この服…」
「そうでございますか?とっても似合っていらっしゃいますよ」
「そ、そうですか…?」

その隣を気恥ずかしそうに歩く神裂は少し、というか相当に手の込んだ服を着ていた。イラストやゲーム、アニメや漫画などで着物をワイルドと言うか斬新と言うか無理やりロック風にしたと言うか、そんな感じでアレンジしたものがあるだろう。それをさらに左右非対称にしたものを着ていた。

今は七天七刀は手元にはない。人一人分のスペースしかないあのカプセルに入りきらなかったのだ。その代わりと言うのか、腰の後ろには帯に差しこむように少し長めの2本の刀がバツ印を作るようにあった。

オルソラの役は見てそのままメイドである。神裂の役柄は武器が示すように剣士。片方の服装は世界観的には大いにミスマッチだが。

「大きな扉でございますね~」
「さすがにこれは大きすぎます…」

高さは2階建ての家くらいありそうで、扉の幅もまたその家の最も長い辺を持ってきた感じがする。そして彼女たちが歩いてきた廊下はその扉の縦横を一回り大きくしたほどに巨大な廊下だった。

「きゃ…!?」

その規格外な大きさに少しげんなりしながらも神裂は扉を押しあける。けれど見た目からは想像もつかない軽さで、重いと思い込んで相当に力を入れていた彼女はつんのめり、ギャグ漫画よろしく顔面から地面へダイブした。

「ぅ~…。恥ずかしいです………」
「大丈夫でございますか?」

顔面を打った痛みは我慢が出来るが、まさか自分があんなギャグ漫画みたいな事をすると夢にも思っていなかった神裂は、顔を真っ赤にしてちょっぴり涙目になっていた。鼻頭を押さえて―お決まりだ―顔をあげると見なれた人が度肝を抜く服装で見知らぬ人達といた。

「か…神裂?それに、オルソラ?」
「何だァ?また三下の女か?テメェ超電磁砲以外に何人手ェ出してンだ?」
「人聞きの悪い事言うな!!ていうか御坂にも手出してねぇよ!!出したら死んじまうだろ!!」
「あァ?」

さも意外な事を聞いたような表情になる一方通行と「お姉さまも大変だなぁ」と言いたげな打ち止めの表情。二人の言いたい事を纏めると「さっさと手出しちまえよ。むしろ一緒に大人の階段でも登ってやがれ」と、この辺りか。

その光景にあっけにとられていた、否、正確に言えば放心状態に近いか。ともかく、その状態でもないと上条の格好を真正面から平然と見据えるのは無理だろう。当然、二人には彼らの声は一切耳に届いていない。

顔を赤くしてちょっぴり涙目になっていた神裂もオルソラもそんな状態でありながら、体が無意識に腹筋に全力を注ぎこんでいた。しかし、ついに限界を突破した。

「アッハハハハハ!!」

建宮や天草式の皆がこの光景を見たらどう思うだろうか。あの神裂が、それこそ年頃の少女のように腹を抱えて目じりに涙を浮かべて笑っている。いつも微笑むような、そんな小さい笑顔しか見た事がなかった上条は、笑われているにも関わらず「そんな風にも笑えるんだな、お前」と、どこか安心したような表情で言っていた。

「っ!?すすすいません!取り乱してしまいましたっ」

先ほどとは違う意味で顔を赤くする神裂に上条は何の気になしに、世間話でもするように言った。

「いや、気にすんなって。お前がそうやって笑うの初めて見たしな。やっぱ女の子は笑顔でなきゃ。そういう顔の方が可愛いぞ」
「かっかわっ…!?」

ボンっ。と神裂は顔を瞬間的に真っ赤にして煙を出す。前髪を軽くいじいじといじくり回していた。

「またテメェは…。ンな事言うからフラグ建築士だとか言われてンだろうが…」
「でもって自覚はないんだよね。それって一番厄介だよねぇ。ってミサカはミサカはお手上げポーズをしてみる」

超電磁砲も大変だなと思っている彼らのぼやきは3人に届く前に風に消えた。

「……っ!…っ!」

そんな神裂の隣ではオルソラがあまり大声で笑うのは失礼だと思っているのか、口元を手で押さえていたけれども体を揺らすほどに笑っていた。こちらも目じりに涙を浮かべていた。そう言えば、オルソラもここまで笑ったのを見るのは初めてかもしれない。

「オルソラもそんな風に笑うの初めて見たな~。たまにはそんな風に笑わないとな。上条さんもそんなオルソラ見れるのは嬉しいし」
「お前のせいで笑ってるンだけどな」
「言うなっ」

そしてそう言われたオルソラはピタッと笑うのをやめ次第に顔を赤くしていく。そして両手で顔を挟み込み照れたような表情になる。ぱっと見恋する少女。

フラグ建築能力はどれだけもの凄い服装をしていても何の影響もない事がここに証明された。

「そ、そんな事言われたのは、初めてなのでございますなのですよ…」

いきなり恥ずかしい事を面と向かって言われてせいで口調が安定しなくなる。

そんな風にさせた当人は「神裂にオルソラ、どうかしたのか?」とか何と言ってた。その隣では結構本気で、やれやれと呆れた雰囲気を出す二人がいた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


一方、神裂たちと同様、ゲスト扱いでこのゲームに参加した二人は行くあてもないがとりあえず、この手のゲームの定番であろう、宿屋へ向かうことにした。

その片方、ギネスに間違いなく乗る長さの髪を持った少女にも見える女性はキョロキョロと周りを楽しそうに、時には物珍しそうに忙しそうに見ていた。おのぼりさん状態だ。

「最大主教、そんな子供のようにキョロキョロしないでください」
「だってすごく楽しき世界よ?楽しまずとこは損なるのよ!」
「いやまぁ、僕だってそれなりに楽しんでますけど…」

ゲストの一人、ステイルは確かめる程度に街並みを見まわした。見た感じは中世ヨーロッパに近いものがあるが、そのどれもがその時代にはない建築様式だったり今現在でも見られないそれであったりと、要は何でもありな町だった。

「この国は本当に僕たちの文化が好きなようですね」
「それは当然のことなるのよ。西洋人(私たち)が東洋に神秘を見出したるように、東洋人(彼ら)は西洋に幻想を求めたるのよ。ゲームとは幻想(ファンタジー)なりけるのだから」
「幻想、ねぇ…。それ以前に僕はあなたの格好が幻想ならよかったですよ…」
「失礼ね。似合ひたらずとでも言いたきなのかしら?」
「…、それ以前の問題だということに気付かないんですか?」

彼女はイギリス清教トップ最大主教の地位にいるローラ=スチュアートで間違いない。この服装を見た瞬間、他人の空似であって欲しいと思ったが、残念ながら間違いなく彼女だった。

ゴスロリ。略さずに言うとゴシックロリータ。ちなみに学園都市製。それとメイドを混ぜた、幻想の産物の格好を彼女はしていた。派手さその他諸々は当社比6割増し―アレイスター調べ―なせいで、それこそ100メートルはおろか200メートル、もしかしたら500メートル離れても見間違えない事は間違いない。ちなみにセットと思しき傘まで差しています。

「ん~、確かに町の景観とは合わざる装束ね」

違う断じて違う殊更に違う。ステイルは軽く頭を抱えた。

ゲスト扱いの4人の中でもローラだけは扱いが違う。もともと4人は上条たちとは違う場所でカプセルに入っている。また少しだが話を聞かされているので、一般参加者とは違い彼らの知らない事も知っている。

それはともかく、彼女は参加者全員に割り当てられる役柄が科せられていない。そのおかげで役柄に縛られることもなく、本当にこの世界を自由に動く事が出来る。ステイルのように役柄を割り振られている者は、定期的にゲームの方から「~のミッションをクリアして次のステップへ」といった指示が来る。

また役柄によって強制的に服装が決まるこの世界にあって、ローラだけは服装を自由に選ぶことが出来ていた。つまり、彼女がゴスロリメイドを着ているのは紛れもなく彼女の意志、ということだ。

「そうじゃなくて、何故よりにもよってその衣装なんですか…。もっとマシなのがあったでしょうに…」
「おかしきかしら?日本といふ国はこういふ文化があらざりしかしら?」
「大方土御門の奴に聞いたんでしょうけど、間違ってもその考えを日本の全てに当てはめないでください。日本はそこまでおかしな国ではありません」

残念ステイル。最近の日本にはこんな恰好した人がいるところにはいるのだ。場所を間違えれば痛い人にしか見えないけれども。

後で土御門の奴をウェルダンにしてやろう。ひっそり決意するステイル。そんなステイルに宛てられた役は騎士。

全体は服だが、腕や足、動きを邪魔しない程度には金属も使っており服と鎧の中間とも言える、軽鎧の出で立ちだ。服の色は黒なのに、鎧の色が薄い藍色なだけで普段とは正反対のような格好に見える。

騎士という役柄なだけに彼は腰には両刃の剣を佩いていた。腰の後ろには防御用のソードブレイカーと呼ばれる武器破壊に特化した短剣があった。

とはいえ、騎士という役柄でありながら彼自身は剣を使うつもりはなかった。使えない事もないが得意という訳でもない。素直に炎を操った方がいい。

「おや?彼女は確か…」

ゴスロリメイドと歩いていると正面から同じ顔をした少女が二人近付いてきた。片方は服装からして魔法使いですと言いたげで、もう片方は防御力皆無の鎧でコスプレとしか思えない格好をしていた。御坂美琴と彼女の妹だった。

魔術師も身分と所属さえ明らかなら一般人と同じ簡単な審査で学園都市に入れる程度に平和な昨今、ステイルは割と頻繁にインデックスに会いに来ていた。おかげで最近では「同じ組織の人」という薄い関係から「中のいい友達」の関係にまでなっていた。閑話休題(それはともかく)。

彼女に会うということは当然、好む好まざる―いや好んでいないとはっきり言える―にかかわらず上条に会う事が多い。そしてその度に見るのが、上条が目の前の少女のどちらかに追いまわされている姿だ。

「ん…?確かアイツと時々一緒にいた…」

向こうもこちらに気づいたようで―というか誰でも嫌でも目が行く―、互いに自ずと近付いていた。そして互いに手の届く距離にまで近付いて会話が始まる。近付いてみてわかったが、コスプレの格好をした方が追いかけ回していた少女だろう。近くで見ると受ける印象が全然違う。

「やぁ、また会ったね。とはいっても、お互い顔しか知らないけどね」
「そうね。アイツと時々一緒にいた、っていう風にしか覚えてないけど」
「その程度の認識で構わないよ。もともと彼に会いに来てたわけじゃないし。それよりも、彼氏は一緒じゃないのかい?」
「かかかか彼氏!?」
「おや、違ったのかな?僕が見た感じだとあれは痴話喧嘩に見えたんだけど」
「ちちちち痴話喧嘩!?」

ステイルの言葉に顔を真っ赤にしてどっかに行きかける美琴の後ろから、御坂妹が倒れそうな彼女を支えながらステイルを見上げる。

「お姉さまの知り合いの方ですか?とミサカは首が疲れるのを感じます」
「間接的だけどね。と、すまない。どこか座る場所を探そうか」
「こらステイル!私の紹介が抜けたりなのよ!!」
「なんですか?この痛いゴスロリメイドは?と、ミサカは若干引きながら問いかけます」
「いっ…!?」

とうとう現地(本場)の人に言われ絶句するローラをよそにステイルが代わりに彼女を紹介する。しかしどう紹介しよう。知り合い、という紹介が一番無難で当たり障りがないか。こんな少女が魔術サイドの事を知っている訳はないだろうし。…、単に詳しく紹介するのが面倒なだけだが。

「彼女はローラ=スチュアート。僕の知り合いといったところさ。少々、共通の知り合いの日本人に何かと遊ばれている人だよ」
「その馬鹿みたいな口調もそのせいですか?とミサカは倒れそうなお姉さまを支えながら問いかけます」
「ばっ…!?」
「そうだね。最近では英語までこの馬鹿口調になっているから困ったものでね」

彼女の馬鹿口調を毎日のように聞いていればちょっとやそっとのおかしな口調ではひるみもしない程度には、ステイルは鍛えられていた。鍛えられたいと思った事は一度もないが。

そしてステイルを知らず内に鍛えていた当人は馬鹿みたいな口調と言われて、どうにも止め刺された感じだった。なんか力なくステイルをまるで壁のように扱い凭れていた。

「それより座れる場所を探そうか。彼女を支え続けるのは大変だろう?」
「そちらも大変そうですし、そうしましょう。と、ミサカは周りを見渡します」

二人で辺りを見渡す。そして当然と言うべきか、ステイルが先に座れそうな場所を見つけた。酒屋、というよりはレストランのようなものだろう。外から見た雰囲気ではそんな感じだ。幸い今いる場所からすぐ近くだ。

ステイルと御坂妹はそれぞれ隣にぐったりしている―理由は違うが―二人を座らせる。

「ところで、君のお姉さんは本当に上条当麻の彼女じゃないのかい?」
「残念ながらまだ片思い状態です。と、ミサカはあなたは慧眼の持ち主ですか?と、ミサカは逆に問いかけます」
「ん?ああ、さっきの事か。何でか上条当麻は僕に愚痴を言ってきてね。そのどれもが惚気にしか聞こえなくて」

何が悲しくてそんな話を聞かなくてはいけないのか。土御門辺りに愚痴を言わない理由はなんとなくわかるが、最初はそう思っていた。けれど最近ではステイルもローラへの不満や愚痴を上条にぶちまけていた。何気に仲良くなっている二人である。


『聞いてくれよステイル!!』
『またか…。僕は君のストレス発散の場ではないんだけど?』
『今日もまた勉強を教えてもらったんだけどさ』
『それより中学生に教えてもらっている自分にそろそろ疑問を感じたらどうだい?』
『いいんだよ、アイツだから。それよりも、ちょーっと間違えただけで電撃撃つんだぞ!?』
『大方、君が何度も同じ問題で間違えているからじゃないのかい?』
『ぐっ…!そうなんだけども!だからって電撃は普通ぶっ放さないだろ!?俺が防ぐのがちょっとでも遅かったら家の家電全滅なんだぞ!!』
『前にも言ったけど、それなら場所を変えたらいいだろう。図書館とか、彼女の部屋とか』
『あと他にも!ちょっと手が触れただけでもこれまた電撃ぶっ放してくんだよ!!こっちは女の子の手に触れてドキドキなわけですよ!そこに別のドキドキなんていらないんですよ!』
『…、もう僕の言葉は届いていないみたいだね』
『そこでちょっとアイツもドキドキしたような照れたような表情をしてくれてもいいじゃん!?そうすればもっと平和な毎日になると上条さんは踏んでいるんですよ!』
『あーそーかい』


と、上条の愚痴の一部を抜粋するとこんな感じになる。最初はステイルも適当に付き合うのだが、後半は全部聞き流していい加減な相づちを打っているだけになる。言っている方はすっきりするだろうが、聞かされる方はたまったもんじゃない。

「あなたもそうなのですか。と、ミサカは仲間を見つけたような視線を送ります」

美琴も美琴で上条に関する愚痴は全部妹へ言っていた。黒子は問答無用で除外。話しているうちに暴走するのが火を見るより明らかだ。初春に言えばからかわれることは間違いない。佐天も同じ理由で除外。となると、心おきなく話せるのは御坂妹だけとなる。


『ちょっと聞いてよ!』
『お姉さま、最近愚痴を言う頻度が高くなってませんか?とミサカは聞き返します』
『アイツってば今日も女の子と歩いてたのよ!?しかも前とは違う人よ!?』
『聞いてませんねこの野郎。と、ミサカはいいとも風な相づちで済ませる事をここに宣言します』
『前はアイツと同じくらいの背の巨乳の人よ!アイツらったら街中で喧嘩なんかしてんのよ!?最後に頭突き食らっていい気味だと思ったけどね!』
『そーですねー。とミサカは観客のノリで答えます』
『でもって今日はシスターと歩いてたのよ!あのチビッ子シスターじゃないわよ!こっちももの凄い巨乳の人!アイツはそんなに巨乳が好きなの!?』
『そーですねー。と、ミサカはおざなりに答えます』
『私がスルーされるのってぺったんこだからなの!?そのくせアイツから話しかけてくることもあるし!!なんなのよもう!!』
『そーですねー。と、ミサカはテキトーに答えます』
『大体!アイツを見ただけでドキドキしたり手が触れただけで顔が赤くなったりアイツに会えないと調子が狂うのもなんか気に食わないのよ!!』
『もう付き合っちゃえよお前ら。と、ミサカは投げやりに答えます』
『なっ…!?つっ…!?』
『おや、ここだけは聞こえてましたか。と、ミサカはそれはお姉さまの内心の表れではないかと推測します』
『ち違うわよ!!誰があんな奴と…!あんな奴と…付き合うなんて………あんな奴と…………付き合いたい…なんて、思って……ないわよ…………………』
『後半がよく聞こえません。と、ミサカはそれでも何を言っているか何となく予想がつきます』

と、美琴の愚痴の一部を抜粋してみた。こちらは上条と違い最初から既にフルスロットルで御坂妹の相づちを聞いている事はほとんどない。彼女が顔を赤くしてしどろもどろになっている姿はとても愛くるしいのだろうが、その話を聞いているこちらとしては相当来るものがある。

「お互い大変なんだね。僕としてはさっさとくっ付いてくれれば愚痴がなくなりそうでいいんだけど」
「いえ、そうなったらなったで今度は純粋な惚気話が待っていますよ。と、ミサカは遠くないであろう未来を想像します」
「それもまた、嫌だね…」

彼らが進展しようがしまいがステイルと御坂妹が愚痴―ほぼ惚気―を聞かされることは変わらない。

「そのとても愉快げな話をもっと聞きたきに思うのよ!」

そこに突然復活したローラが話に入ってきた。美琴はまだ、というか二人のさっきの話を聞いてオーバーヒートを起こしていた。

「ようやく復活しましたか、ローラ」
「恋の話は世界共通なりけるのよ!」

こうやってみると本当にそこらへんの少女と大差ない。この手の話が好きなとこも合わせて。まぁ、楽しんでいるのならそれでいいか。ステイルはウキウキとしている上司を眺めながら話に適当に参加した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


皆服装が変わっている中、自分だけ変わっていない事にちょっぴり寂しさを感じているインデックスはそれでものんきに教会の中で姫神と小萌と話していた。

さっきから鳴っている教会の鐘が意外とうるさい。

「つまりですね。このゲームの参加者は『ベストな状態』でゲームに参加しているんですね。他は現実そのままなのですよー」

小萌の言う『ベストな状態』というのは読んで字の如くだ。怪我をしていようが風邪をひいていようが、この『仮想世界』においては健康体となる。それだけだ。この『仮想世界』だけの何かを得られるとかそういう事は一切ない。

「ところで、何で私の服は変わってないのかな?」

要はいつも通りだということに気付いたインデックスは自分だけ服装が変わっていない事を小萌に聞くも、その答えは姫神からすぐに返ってきた。

「多分。開発した人があなたの服をゲームに登録してたから」
「おそらくそうでしょうねー。シスターちゃんの服は良くも悪くも目立つから仕方ないのですよー。多分、他にもシスター役になっている人が居れば同じ服かもなのですよー」
「えー!つまんないー!!私もあいさやこもえみたいにこすぷれーってのしてみたいんだよー!」
「だから!これはコスプレじゃないです!!」

このゲーム、いかえれば大人数がコスプレ会場で騒いでるようなものだ。この『仮想世界』において、一般人が普通に暮らしていれば見た事のない衣装をしている人だらけだ。

「それより、シスターちゃんの役はなんです?」
「見た目のままかも。でも一応聞いとく」
「ふっふーん!シスターなんだよ!天にまします我らが父に使える神聖な役なんだよ!」
「そう言ってる人は。暴飲暴食シスター。特定人物に噛みつく傾向あり」
「むー!それは全部とうまが悪いんだもん!」
「多分。彼はそれを聞いたら反論すると思う」

するだろう。間違いなくするだろう。彼のせいではない事で彼は頭を何度も噛み砕かれそうになっている。例えば、テレビの録画が出来ないとか―リモコンやデッキを壊したのは美琴―、夕飯が遅いとか―冷蔵庫を空にしたのはインデックス―、朝ごはんがないとか―目ざまし壊したのはスフィンクス―etc.。

そのつけが全部回ってくるあたりがさすがとしか言いようがない。

「あいさとこもえは何役なの?」
「聞いて驚くのですよ!私はこの街のリーダー役なのです!」
「中身はともかく。ロリっ子がリーダー。不安しかない」
「失礼なのですよ姫神ちゃん!私は立派な大人の女性なのですよ!」

このロリ外見とのギャップに驚くことは間違いない。しかし、小萌先生がこの街のリーダーだということには確かに不安しかない。魔物(モンスター)に襲われようものならすぐに壊滅しそうな気がする。

「あいさは?」
「私は戦士。ふふん。魔法使いからジョブチェンジ」
「あいさが戦士……。なんかうまく想像できないかも…」

パーティーの壁役になることも多いし攻撃力が高いというのがゲームでの戦士の扱いだが、姫神がその役に出来るとはとても思えない。強いて言うならジョブチェンジする前のものか、回復役の僧侶だろう。それで後半になると常にベンチなんだろうなぁ、とかそんな感じの位置っぽい気がする。

「あ、手紙だ」

そこに役柄を知らせてきた時と同じ紙がインデクッスと姫神に上から落ちてきた。小萌先生には落ちてこなかった。それが少し気になりながらも彼女たちは手紙に目を通していく。

『パーティーを組もう。5人まで組めるぞ。組みたい人が見つかったらその人の肩を4回叩こう!』

との事。試しにインデックスは隣の姫神の肩を4回叩いてみる。すると二人の右手に白のブレスレットが現れた。

「おー!肩を叩いたらブレスレットが出てきたんだよ!」
「これが仲間の印だと思う。小萌はどうだろう」

今度は姫神が小萌の肩を4回叩いてみる。しかしブレスレットは現れない。インデックスが叩いてみても何も変わらない。

「先生はダメみたいですねー」
「街のリーダーは仲間にできない。当然と言えば当然」

町長や村長を仲間にして引き連れ回すような事はよほどぶっ飛んだゲームでもない限りはない。王子とか王女を仲間にして引き連れ回す事は多いけれども。町長はダメで王子様は大丈夫。その差がちょっと気になる。

「先生はいいですから、仲間になってくれる人探してきたらどうですか?」
「うん!行こ!あいさー!」
「わっ。急に引っ張らないで」
「ついでにとうまも探すんだよー!」
「ついで扱いなのね。彼は」

姫神を引きずる勢いで教会から出ていくインデックス。その光景をまるで母親のようにやれやれといった感じで眺める小萌先生の姿は姉を見送る妹の姿に見えたそうな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「だから!アイツはそんなんじゃないの!!ムカつく奴なんだってば!!」
「しかれど、そんなに顔を真っ赤にしたりせば説得力がなきことよ?」
「愛い奴じゃのぉ。顔を赤くして。と、ミサカは老人っぽく言ってみます」
「だぁかぁらぁ!!そうじゃないんだってばぁ!!」

復活した美琴はローラと御坂妹に遊ばれていた。好きな男はどんな奴なのか。どこが好きなったのか。どんなきっかけで会ったのか。いつから好きになったのか。思いつく限りは聞いていたと思う。

とくにローラが激しかった。こういう話をするのが初めての彼女は、自分が楽に恋を出来る立場ではないからこそ、他人の恋の話を聞いて疑似体験したいのだろう。すごく楽しそうな顔をしている。イギリスにいたころは見た事がない顔だ。

(この人が外見の通りに振る舞える世界になったのはいい事、かな)

と、教会の鐘が鳴り響く中ステイルは和やかに思っているが本音は違う。科学・魔術両陣営が平和な今。ローラを学園都市に置き去りにしても特に問題はないんじゃないかとステイルは思っている。そうすれば彼女に振り回されることも、やたらと仕事を回されることもないだろう。すごく快適な生活が待っている気がする。

(けど、騒がしい人がいなくなるとそれはそれでさびしいって話を聞いた事があるし)

それにローラが学園都市で大人しくしているとは思えない。第一、そんなことになったらインデックスに会うたびに彼女がセットになるかもしれない。というか何か問題を起こしそうで怖い。むしろ本音はこっちだ。

まぁ今はそれはいいか。と、思考を戻し手元の手紙に視線をやる。美琴と御坂妹にも届いているのだが、彼女たちは気付いていない。テーブルに置かれっぱなしだった。

(最大主教に届いていないという事は、これがミッションって奴かな)

手紙を開け中を検める。中には仲間を作れとあった。5人までらしい。

「あ~、話を切るようで悪いんだけど、いいかな?」
「っ!?うん!いいわよ!なに!?」

二人の質問攻めに追いつめられていた美琴は、ステイルの言葉を速攻で渡りに船とばかりにその言葉をレシーブしローラと御坂妹の追撃を封じる。

それにローラと御坂妹が悔しそうに舌打ちするのをステイルは確かに聞いた。しかし美琴が早くと続きを催促してきた。軽くため息を吐き彼はつづけた。

「じゃあ双子の君たちはまず手紙を読んでくれ。多分これもミッションの一つだ」
「手紙?……あ、これね」
「ローラさんのは?と、ミサカは首をかしげます」
「彼女は特別でね。気にしないでいいよ」

御坂妹に適当に返す。大して書かれていないので二人はすぐに読み終わり、そしてすぐに行動に移す。美琴が御坂妹の肩を4回叩くと右手にオレンジのブレスレットが現れた。

「へ~、こういう事かぁ」
「このオレンジのブレスレットが仲間の印ですね。と、ミサカは右手を見つめながら言います」
「で、多分だけど仲間を5人集めるとまた新しいミッションが届くはずだよ」
「あ、そういやアンタも入る?」
「僕かい?入れてくれると嬉しいかな」

そう言うと御坂妹がステイルの肩を叩く。すると彼にも彼女たちと同じ腕輪が現れた。そしてローラが座っているのに傘を差しながらステイルのブレスレットを見ながら聞いた。

「それって、私も付くかしら?」
「貴女は無理だと思いますよ、ローラ」
「試してみればわかるわよ」

美琴がローラの肩を叩くも意外にも彼女の左手に同じブレスレットが現れる。左手に現れた以外は何も変わらない。それが気になった美琴がそのブレスレットを見ながら呟いた。

「何で左手なのかしら?」
「特別ゲストと一般参加者の違いでは?と、ミサカは推測します」
「多分そうじゃないかな」
「ステイル?なんかどうでも好さそうなる感じね?」
「いえ?そう言う訳ではないですよ?」

とは言っているものの実際はどうでもいい。ローラの事だ。好き勝手に動く事には違いないだろう。そして僕がそれの後始末をするんだろうなぁ。と、決して低くない可能性の未来を思い浮かべ、まだ何もやっていないのに倦怠感がステイルを徐々に満たし始めている。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


魔王の城の無意味に広い部屋の中、魔王と使い魔とお姫様はゲスト2人からこのゲームの事の説明を聞いていた。ついでに自分たちの疑問をぶつけたが、お姫様の格好の事だけは返ってこなかった。

「なるほどねェ。だから俺は何ともねェンだな」
「って最強の魔王じゃねぇか。クリアできんのか?このゲーム」
「その時はあなたの出番だよ!ってミサカはミサカはあなたを指さしてみる!」
「俺!?」
「そういやァ、テメェには仮があったなァ…」
「怖いからそんな『ニヤァ』みたいに笑わないで!?」

裾を地面に擦りながら魔王様から距離を取るお姫様をよそに、神裂は残っていた説明を続けた。オルソラが「あ、裾が!気をつけなくてはだめでございますよ!」と言っていたが、とくに誰も反応しなかった。

「一方通行、でしたか?魔王役のあなたは他のプレイヤーの行動を見る事が出来るんです」
「へェ?どうやンだ?」
「まずはこの中の誰かを仲間にしてください」

魔王にももちろん仲間は作れる。方法も同じだ。正確には仲間、というカテゴリーではなく下僕というカテゴリーだが。そして魔王のみその人数の制限がない。100人の下僕を作る事も可能だ。ぶっちゃけ、勇者1人対魔王軍団という事も出来なくはない。一方通行が魔王か勇者なら仲間なんていらない気がビシバシするが。

それは置いといて、そこでふと思った疑問。試しに一方通行は上条の肩を叩いてみる。

「あ?」
「へ?」

魔王とお姫様の声が重なる。二人の右手に黒のブレスレットが現れた。お姫様、魔王サイド入り。何故だ。奇跡の対戦カード。勇者対お姫様実現か。ただの痴話喧嘩な気もするけども気にしない。

「ちょっと待て。何で仲間になンだ?」
「姫役は元々魔王サイドなのでございますよ。そのお姫様を救い出してゲームはクリア。との事らしいです」

オルソラ曰く、このゲームは魔王を倒すのが最終目的ではなくお姫様を救出するのがクリア条件なのだそうだ。そしてそれを阻止するのが魔王とその下僕。結局は魔王と戦うのだが、上手く立ちまわれば戦わずクリアも可能らしい。

それを適当に聞き流し一方通行は神裂に説明を促した。

「ふゥん。で、さっきのはどうやンだ?」
「あ、はい。そのブレスレットを指で撫でてください。そうすると目の前に画面が映し出されるらしいです」
「撫でればいいンだな」

つい、と腕のブレスレットを撫でると離れたところに巨大な画面が現れて色々な人間が映し出されていた。簡単なイメージとしては、監視カメラの映像を全て映している感じか。

「うわぁ!すごい人数がいるねぇ!ってミサカはミサカは知ってる人がいないか探してみたり!」
「で、三下ァ?どれがお前の女じゃないンだ?」
「聞き方おかしくない!?俺の女なんて1人もいねぇっての!!」
「あ、ステイルさんでございます」
「ですね。あの赤毛は間違いありませんね。最大主教もいますし」
「一緒にいるのはお姉さま!ってミサカはミサカはついでに10032号の姿も発見!」
「オイ三下ァ、テメェの本命がいるぞー」
「だからさっきからおかしくない!?」
「いつも痴話喧嘩してるじゃねェか」
『本命…?痴話喧嘩…?』

美琴の姿を見つけた一方通行の上条への『本命』と『痴話喧嘩』という単語に神裂とオルソラがなんか怪しい空気を醸し出し始める。

「あれ…?神裂さんにオルソラさん…?なんかちょっと怖いでございますよ…?」
「いえ、本命とはどういう事が少し聞きたいだけでございますよ?」
「ええ、そうですよ。痴話喧嘩、という事も少し聞きたいだけです。話していただけますね…?」

なんか黒いオーラを出す神裂とオルソラに、いつの間にか部屋の隅っこまで追いつめられて小動物のように小さくなっている上条。それを使い魔は興味心身に眺めているのに対し、さして興味なさげな魔王様は画面を眺めているだけだった。

「わお。これが修羅場って奴?ってミサカはミサカは興味津々!」
「まァ、他人のは見てる分には楽しいらしいぞ」

打ち止めはわくわくと見ているが、一方通行はなんとなしに目の前の画面を眺めていた。画面に映っている人たちの大半は既にそれぞれの色のブレスレットを身に着けていた。

(ってことは何か?こいつら全部ぶっ飛ばさねェと終わンねェって事か?)

魔王様はそのめんどくささにげんなりしていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


正面に映る画面には心なしか表情を真面目なものにしているローラが映し出されていた。その背景には超電磁砲や赤毛の男にクローンの少女もいるが瑣末な事だ。

『一体何の用なりけるのかしら、アレイスター?』
「少し大変な事態かもしれない」
「いえーい。ちゃんと見えてるかにゃー?」
『土御門?何故にあなたがそこにあるかしら?』
「そこは気にしちゃいけないぜよ」

土御門の現在の仕事は学園都市と魔術側の情報の橋渡し役だ。他にも色々働いているが、平和な今、危険な事はほとんどない。要は両組織の便利屋みたいな事をしている。

そしてその土御門が手に持ちローラに見えるようにしているのはアレイスターに見せた物とは中身は違うが同じものだ。

『っ!?これは…!』
「見ての通りだ。学園都市にとってはどうでもいいことだが、君たちには大変な事だろう?」
「こりゃちょっとばかしヤバいですたい。なんか対策はあるのかにゃ?」
『無き事もなけれど…。とても難しきことね…』

魔術側も現代社会で生きていく限りどうあがいても金は必要だ。お布施や日本では教会での結婚式などで稼いで間に合っているが、金というのはいくらあっても困るものではない。

現在、学園都市の中で魔術側は商売をしていた。教会を建てたり宗教学の講師をやったりと。ちなみに学園都市側もイギリス清教の勢力内で遊園地を開園していたりする。

『きるぐまーの売り上げが下がりたりなんて…』
「ついでにゲコ太の売り上げも落ちてるんだにゃー」

きるぐまーはイギリス清教『必要悪の教会』、とりわけローラが力を入れている物で主に学園都市で販売されている。対してゲコ太は学園都市に主に売られているが、現在はイギリスを中心に地域限定版として向こうでも販売されている。意外な事にイギリスではゲコ太は人気があるらしい。

『あんなカエルもどきなんてどうでもよき事なのよ』
「ほう…?では、きるぐまーの販売は打ち切らせてもらう方向でいいかな…?」
『だったらゲコ太の販売は取りやむるわよ…?』
「そちらがゲコ太を愚弄しただろう…?」
『あなただってきるぐまーを馬鹿にしたでしょう…?』

学園都市統括理事対最大主教。世界を二分しかねない二人の対決だ。画面越しとはいえ、ローラからも得も言われぬ緊張感を感じる。アレイスターのいる部屋の中、気の弱いものなら10分で胃に穴が開きそうな緊張感が満たされていた。

その中身はファンシーなぬいぐるみの売れ行きだけど。なんというか、平和だ。

「まぁまぁ、二人とも落ち着くんだにゃー」

そこに緊張感とは無縁の軽い調子でサングラスを直しながら土御門が割って入った。

「互いにフォローをすればいい話だけぜよ。ローラが改善案を出してアレイスターがそれを実行すればいいですたい。ほら、簡単だにゃー」

アレイスターには改善案がない。けれどローラにはそれがある。ローラにはそれを実行する手段がない。けれどアレイスターにはそれがある。

「…、仕方あるまい」
『そうね…。後で案をやりておくわ』

そう言って映像が消える。残ったのは何かやりきれない思いを抱えたアレイスターと、どうフォローしようか悩んでいる土御門だった。

(大体平和すぎるぜよ…。ちょっと前までいつ戦争になってもおかしくない関係だったのに今ではファンシーなぬいぐるみで戦争危機って……。いや、平和はいいもんだけど、緊張感ってものがにゃ~…)

そんな風に思っている土御門の背後でいつもと同じ露出癖でもあるんじゃないかって感じのする少女が、一人の女性を連れてきた。すぐに少女は消える。

眼鏡をかけてスーツを着込んだ比較的背の高い女性だ。コツコツとヒールを鳴らしてアレイスターの前に歩み寄っていく。土御門の知らない人間だ。ここにいるという事はアレイスターが呼んだのだろうが、一体何のために。

(一体何者だ…?)

目の前に立っている女性に土御門は戦慄していた。自分は魔術も使えなければ能力も使えない。それでも裏の世界で生きていくために鍛えられるものは何でも鍛えた。今では神裂にでさえ気配を察知させない程だ。また標的の気配は寸分狂わずとらえる事も出来る。その自分が、一切気配を感じる事が出来ない。

アレイスターがここに呼んだ人間だということに土御門はひそかに安心していた。ひどく冷静に、土御門はこの女性には勝てないと察した。戦おうと思う事すら出来ない。

「中々に奇妙な部屋と姿だな」
「初めて来た者は皆そう言うよ」
「それで、学園都市統括理事殿はご立腹のように見受けられるが?」
「それに答える必要ないと思うが?」

初めて口を開いた女性はあのアレイスターに臆するどころか対等、あるいは強気に言い放っていた。そしてアレイスターもそれを気にした風もなくいつも通りだった。

(怖いもの知らずもいいとこだにゃー…)

世界広しと言えどアレイスター相手に強気で話せる人間はもしかしたらこの人だけな気がする。

「それより、アンタは一体どこの誰ですたい?」
「ん?ああ。私か。とある学校の関係者。とだけ言っておこうか」
「学校?」

学校の関係者という立場とアレイスターがどこでどう繋がるのか皆目見当がつかない。思考をフル回転させてどうにか結び付けようとするがどう頑張っても繋がらない。という事で素直にアレイスターに聞いてみよう。

「何の事はない。私が呼んだだけだが?」
「なぜですたい?」
「その内わかる事だよ」

これ以上聞いても同じ答えしか返ってこないだろう。気にはなるが、どうせ自分もここでゲームの成り行きを見ているつもりだからいずれはわかる。

「それより…」
「っ!?」

女性が口を開いた。それだけで土御門の全身から嫌な汗が噴き出した。心臓の鼓動も明らかに早くなっている。

「君はいささか年上に対する敬意というものが足りない気がするな」
「は、はい…?」
「他校の生徒にまで口出しする事はないが、礼儀は別だ」
「お手柔らかに頼むよ」
「ならば一撃で終わらせよう」
「アレイスター!?何を言っている!?」

体を軽く慣らすように揺らし女性は徐々に土御門に歩み寄っていく。けれど土御門の体は動かない。動かせない。蛇に睨まれた蛙。それを土御門は身を持ってその意味を理解した。

「そう怯えるな。首を刈るだけだ」
「にゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!?????」

その日、何も聞こえないはずの窓のないビルから気持ちの悪い男の撫で声の悲鳴が聞こえてきたそうな。


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