生き方、在り方、考え方[ふたりの道]
~とある帰り道~
帰り道。意外にも上条と美琴の間を沈黙が支配していた。
「(どうしたんだ?美琴のヤツ?)」
話しかけても会話が続かない。
しかし彼女は無理をしている様子はない。ただ何か考えている、そんな感じ。
部屋を出てからずっとコレだ。正直に言って気まずい事この上ない。
そういえば、インデックスとの別れ際のやり取りが妙に気にかかる。
しかし彼女は無理をしている様子はない。ただ何か考えている、そんな感じ。
部屋を出てからずっとコレだ。正直に言って気まずい事この上ない。
そういえば、インデックスとの別れ際のやり取りが妙に気にかかる。
「なあ。美琴」「ねえ。当麻」
意を決して尋ねようとするも被ってしまった。
「先にどうぞ…」
「うん…」
取りあえず先に促す。
「ちょっと付き合って欲しいところがあるんだけど…」
「門限はいいのかよ?」
「まだ大丈夫」
嘘だと思う。
時節は冬。冬至を過ぎたとはいえ、一ヶ月も経っていないので暗くなるのは早い。
そんな状況で学生が外を徘徊することに教師は快く思わないはず。
実際はどうかわからないが、門限より早めの帰宅を通達されているだろう。
時節は冬。冬至を過ぎたとはいえ、一ヶ月も経っていないので暗くなるのは早い。
そんな状況で学生が外を徘徊することに教師は快く思わないはず。
実際はどうかわからないが、門限より早めの帰宅を通達されているだろう。
「………わかったよ」
「ありがとう」
しかし、彼女の雰囲気から察するに大切なことかもしれない。
瞳には決意が宿っている。先ほどまでの沈黙はこの時の為か。
瞳には決意が宿っている。先ほどまでの沈黙はこの時の為か。
「どこまで行くんだ?」
「あの場所」
「あの場所?」
「行けば分かるから」
もともとそこが目的地だったのか、はたまた偶然なのか、方向転換はしない。
美琴の足は“あの場所”へ向かう。
美琴の足は“あの場所”へ向かう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そこは街の中心部から離れた鉄橋。
夜の帳は下りていて、もう真っ暗だ。
街灯は無く光源は街と月のみ。
そのわずかな灯りの役目を果たすはずの月は雲に隠れていた。
夜の帳は下りていて、もう真っ暗だ。
街灯は無く光源は街と月のみ。
そのわずかな灯りの役目を果たすはずの月は雲に隠れていた。
「当麻は覚えてる?この場所の事」
「ああ」
手すりに両手をついて、少女は昔語りをするかのように上条に問うた。
回想する。あの時の出来事を。
あまりに弱く、脆く、希薄な様子で少女はかつてそこにいた。
誰にも助けを求めようとせず、強く在ろうしていた。
回想する。あの時の出来事を。
あまりに弱く、脆く、希薄な様子で少女はかつてそこにいた。
誰にも助けを求めようとせず、強く在ろうしていた。
「あの時は本当に助かった。まるで漫画に出てくるヒーローよね?」
「困ってる人を何処からかやってきて解決しちゃう、そんな英雄」
今はどうだろうか。
年相応に笑い、友達と語り合い、日常を過ごす少女。
年相応に笑い、友達と語り合い、日常を過ごす少女。
「別にそんなつもりじゃねーよ」
「助けたいと思った。だから頑張った。それだけの話だろ?」
上条は無能力者だ。そんな大層な者じゃない。
守りたい人がいて、助けたい人がいる。それだけで戦う理由になる。
守りたい人がいて、助けたい人がいる。それだけで戦う理由になる。
「そうよね。でも、ありがとう」
「よせって」
感謝なんていらない。それが欲しくて戦うわけじゃない。
助けたいと思って、助けることができて、その結果で十分。
他になにもいらない。
助けたいと思って、助けることができて、その結果で十分。
他になにもいらない。
「昔話をするためにここに来たのかよ?」
つい照れくさくなって茶化してしまう。
でも本当に良かったと思えるのだ。
なぜなら此処に一つの事実が確かに在るのだから。
上条当麻として生き抜いてきたことが決して無駄ではない、そんな事実が。
これからまた何かに巻き込まれたとしても戦える。
また少女の笑顔がまた曇ってしまったなら、その笑顔を守るために、きっと。
でも本当に良かったと思えるのだ。
なぜなら此処に一つの事実が確かに在るのだから。
上条当麻として生き抜いてきたことが決して無駄ではない、そんな事実が。
これからまた何かに巻き込まれたとしても戦える。
また少女の笑顔がまた曇ってしまったなら、その笑顔を守るために、きっと。
「当麻は後悔してないの?」
「ボロボロになって、挙句の果てに記憶まで失って…それでも……」
これが本題なのだろうか?突然変わってしまった話題に戸惑ってしまったが…
「ああ」
断言する。そんなことを言うために頑張ってきたわけではない。
誰かのせいにするつもりなんて無い。この道はいつも自分で、自分の意志で常に選んできたことだ。
だから後悔なんてしない。
誰かのせいにするつもりなんて無い。この道はいつも自分で、自分の意志で常に選んできたことだ。
だから後悔なんてしない。
「そう…あくまで、そう言うのね………」
少女が振り向いた。
雲に隠れた月が顔をのぞかせる。
月の光が彼女の容貌を照らしだす。
その光景はどこか神秘的で、まるで、そう、御伽噺。
「当麻に助けられてね、今ではこう思うの……」
その瞳に映る色は――――――怒り、そして哀しみ。
救われた少女は救ってくれた英雄に告げる。
「当麻を巻き込むんじゃなかった。私自身でなんとかするべきだった」
予想だにして無かった、言葉。
「救われたはずなのに―――――――――
救われたはずの少女は救ってくれたはずの英雄に告げる。
―――――――――――――――――死ぬほど不幸だよ」
目の前の少女が 誰だったか
涙を宿した少女が 何だったか
守ると誓った少女が 何を言ったか わからなかった