とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part07

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生き方、在り方、考え方[ふたりの道]


~とある帰り道~

帰り道。意外にも上条と美琴の間を沈黙が支配していた。

「(どうしたんだ?美琴のヤツ?)」

話しかけても会話が続かない。
しかし彼女は無理をしている様子はない。ただ何か考えている、そんな感じ。
部屋を出てからずっとコレだ。正直に言って気まずい事この上ない。
そういえば、インデックスとの別れ際のやり取りが妙に気にかかる。

「なあ。美琴」「ねえ。当麻」

意を決して尋ねようとするも被ってしまった。

「先にどうぞ…」

「うん…」

取りあえず先に促す。

「ちょっと付き合って欲しいところがあるんだけど…」

「門限はいいのかよ?」

「まだ大丈夫」

嘘だと思う。
時節は冬。冬至を過ぎたとはいえ、一ヶ月も経っていないので暗くなるのは早い。
そんな状況で学生が外を徘徊することに教師は快く思わないはず。
実際はどうかわからないが、門限より早めの帰宅を通達されているだろう。

「………わかったよ」

「ありがとう」

しかし、彼女の雰囲気から察するに大切なことかもしれない。
瞳には決意が宿っている。先ほどまでの沈黙はこの時の為か。

「どこまで行くんだ?」

「あの場所」

「あの場所?」

「行けば分かるから」

もともとそこが目的地だったのか、はたまた偶然なのか、方向転換はしない。
美琴の足は“あの場所”へ向かう。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


そこは街の中心部から離れた鉄橋。
夜の帳は下りていて、もう真っ暗だ。
街灯は無く光源は街と月のみ。
そのわずかな灯りの役目を果たすはずの月は雲に隠れていた。

「当麻は覚えてる?この場所の事」

「ああ」

手すりに両手をついて、少女は昔語りをするかのように上条に問うた。
回想する。あの時の出来事を。
あまりに弱く、脆く、希薄な様子で少女はかつてそこにいた。
誰にも助けを求めようとせず、強く在ろうしていた。

「あの時は本当に助かった。まるで漫画に出てくるヒーローよね?」

「困ってる人を何処からかやってきて解決しちゃう、そんな英雄」

今はどうだろうか。
年相応に笑い、友達と語り合い、日常を過ごす少女。

「別にそんなつもりじゃねーよ」

「助けたいと思った。だから頑張った。それだけの話だろ?」

上条は無能力者だ。そんな大層な者じゃない。
守りたい人がいて、助けたい人がいる。それだけで戦う理由になる。

「そうよね。でも、ありがとう」

「よせって」

感謝なんていらない。それが欲しくて戦うわけじゃない。
助けたいと思って、助けることができて、その結果で十分。
他になにもいらない。

「昔話をするためにここに来たのかよ?」

つい照れくさくなって茶化してしまう。
でも本当に良かったと思えるのだ。
なぜなら此処に一つの事実が確かに在るのだから。
上条当麻として生き抜いてきたことが決して無駄ではない、そんな事実が。
これからまた何かに巻き込まれたとしても戦える。
また少女の笑顔がまた曇ってしまったなら、その笑顔を守るために、きっと。

「当麻は後悔してないの?」

「ボロボロになって、挙句の果てに記憶まで失って…それでも……」

これが本題なのだろうか?突然変わってしまった話題に戸惑ってしまったが…

「ああ」

断言する。そんなことを言うために頑張ってきたわけではない。
誰かのせいにするつもりなんて無い。この道はいつも自分で、自分の意志で常に選んできたことだ。
だから後悔なんてしない。


「そう…あくまで、そう言うのね………」


少女が振り向いた。


雲に隠れた月が顔をのぞかせる。


月の光が彼女の容貌を照らしだす。


その光景はどこか神秘的で、まるで、そう、御伽噺。


「当麻に助けられてね、今ではこう思うの……」


その瞳に映る色は――――――怒り、そして哀しみ。


救われた少女は救ってくれた英雄に告げる。


「当麻を巻き込むんじゃなかった。私自身でなんとかするべきだった」


予想だにして無かった、言葉。


「救われたはずなのに―――――――――


救われたはずの少女は救ってくれたはずの英雄に告げる。







  ―――――――――――――――――死ぬほど不幸だよ」







目の前の少女が  誰だったか


涙を宿した少女が  何だったか


守ると誓った少女が  何を言ったか  わからなかった


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