想定外の邂逅[二つの世界]
~とある喫茶店にて~
上条は当初ぶらぶらと散策をしていたがトラブルに遭う気がしたので、今は適当な喫茶店に入って時間を潰している。
そしてあらかじめコンビニで購入しておいた漫画雑誌を取り出す。
(ちなみに立ち読みをすることもできたのだが、偶然入ったコンビニは雑誌棚を清掃していたので気が進まなかった)
そんな上条に声をかける人物が一人。
そしてあらかじめコンビニで購入しておいた漫画雑誌を取り出す。
(ちなみに立ち読みをすることもできたのだが、偶然入ったコンビニは雑誌棚を清掃していたので気が進まなかった)
そんな上条に声をかける人物が一人。
「にゃー。かみやんなんでここにいるんだにゃ?」
「土御門?」
そんなこんなで男二人、茶をしばくわけである。
「それで?あの中学生はいいのかにゃー?」
「中学生を強調して言うな」
自分が犯罪者であるかのような口ぶりに辟易。
なぜ周りには口の悪い人ばかりなのだろう。
なぜ周りには口の悪い人ばかりなのだろう。
「御坂はインデックスに用事があるんだとよ、って土御門?」
「どうしたんだにゃー。かみやん?」
土御門の格好に違和感を感じる。
相変わらずの奇抜なスタイルだが、耳にはイヤホンが。
相変わらずの奇抜なスタイルだが、耳にはイヤホンが。
「お前、音楽とか聞くタチだっけ?」
「いや、違うぜよ。あちら側と言えばわかるかにゃー?」
土御門は科学と魔術、二つの世界で暗躍する多重スパイだ。
学生でありながら同時にその道のプロでもある。
もっとも、普段からニャーニャー言ってるようなふざけた様子からは想像できないが。
学生でありながら同時にその道のプロでもある。
もっとも、普段からニャーニャー言ってるようなふざけた様子からは想像できないが。
「また何か厄介事を持ち込んで来たんじゃないだろうな?」
「それは無いにゃー」
「どういう意味だよ?」
「盗み聞きも立派な仕事だぜい」
また学園都市の外に飛ばされて、単独で魔王殿に潜入、そこの脳筋悪魔貴族を撃破しろと言われるのか。
そう考えていたが違うらしい。しかし盗聴とは物騒な物言いだ。
そう考えていたが違うらしい。しかし盗聴とは物騒な物言いだ。
「堂々と言うな。でもこんな騒がしい場所じゃ無理だろ」
「その通りなんだがにゃー」
「どうしたんだ?」
「あちらさん、盗聴を警戒している感じだからこの機材に意味は無くなってしまったにゃー」
イヤホンを外し、土御門はため息を吐く。
「おまけに直で聞こうにも向こうは特殊なレーダーも所持しているもんだから…」
「打つ手が無いと」
そういうことぜよ、と言って頼んであったコーヒーに口をつけた。
「だからやることも無くて、ここのメイドさんを見に来たのか?」
「ここの制服はメイドとは言わないぜい」
どうやらこだわりがあるらしい。
今度は土御門が上条の事情を尋ねる。
今度は土御門が上条の事情を尋ねる。
「かみやんは追い出されたクチかにゃー?」
「女の子同士の会話を邪魔するなってよ」
「どういうことかにゃ?」
「わからねーよ。ただ…」
「ただ?」
「もともとインデックスに用事はあったって言ってたから…」
どこか物思いにふけるように上条は答えた。
極僅かだが空気が張り詰めたことに彼は気付かない。
極僅かだが空気が張り詰めたことに彼は気付かない。
「単に気に入っただけじゃねーの?御坂は可愛いもの好きだし」
その言葉を聞いた土御門は激しく脱力した。
「土御門?どうしたんだ?」
「…なんでもない…にゃー」
あまりの気の抜けようにサングラスがずれている。
それを整えて土御門は呟く。
それを整えて土御門は呟く。
「かたや魔術の禁書目録、かたや科学の超電磁砲…か…」
だがその呟きは上条の耳には入らなかったらしい。
土御門の胸中を余所に物語は始まる―――――
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土御門の胸中を余所に物語は始まる―――――
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「具体的に言えば魔術の世界とあなたが見てきた当麻、ね」
第三次世界大戦が始まる前、日本の学園都市は自分らと同じような科学機関が海外にもあることを公表した。
そしてそこでは《魔術》と呼ばれる《超能力》を開発していることも。
だがそれはとても曖昧な情報に思える。なぜなら実際に彼を追いかけて、ロシアでその技術の一端の見てしまったから。
超能力は知らない人から見れば、まさに魔術に見えるかもしれない。しかしその力には科学として正当な理屈、理論がある。
ロシアで見てしまったアレらは決して科学と呼べる代物じゃない。私の知識が、経験がそう叫んでいた。
つまり《魔術》の存在は実、それが《科学》分野であることが虚、強引過ぎるが結論として間違ってはいないはず。
それにインデックスが関わっているかの根拠は無かった。けれど、今、この瞬間確信した。関連が有ると。
彼女はそのことは予想していなかったらしい。一瞬呆けて、瞳が警戒の色を帯びる。
そしてそこでは《魔術》と呼ばれる《超能力》を開発していることも。
だがそれはとても曖昧な情報に思える。なぜなら実際に彼を追いかけて、ロシアでその技術の一端の見てしまったから。
超能力は知らない人から見れば、まさに魔術に見えるかもしれない。しかしその力には科学として正当な理屈、理論がある。
ロシアで見てしまったアレらは決して科学と呼べる代物じゃない。私の知識が、経験がそう叫んでいた。
つまり《魔術》の存在は実、それが《科学》分野であることが虚、強引過ぎるが結論として間違ってはいないはず。
それにインデックスが関わっているかの根拠は無かった。けれど、今、この瞬間確信した。関連が有ると。
彼女はそのことは予想していなかったらしい。一瞬呆けて、瞳が警戒の色を帯びる。
「それを聞いて……短髪はどうするつもり?」
周囲の空気が変わった。
踏み込んではならない領域に足を突っ込んだ感覚がする。
先ほどまでとは残酷なまでに目付きが違う。
なにやら穏やかでないものを孕む圧力を、幼く見えるその容姿から放っているとは思いたくない。
彼女から発せられるソレはとても冷たく、鋭く、硬くて、そして怖い。
まるで子を守る母のようだ。
何を言おうが撥ね退ける、そんな強い意志を感じさせる瞳をしている。
本当に当麻が大切なのだろう。そしてそんなに危ない世界なのか。
インデックスの変わり様に気押されてしまう。
踏み込んではならない領域に足を突っ込んだ感覚がする。
先ほどまでとは残酷なまでに目付きが違う。
なにやら穏やかでないものを孕む圧力を、幼く見えるその容姿から放っているとは思いたくない。
彼女から発せられるソレはとても冷たく、鋭く、硬くて、そして怖い。
まるで子を守る母のようだ。
何を言おうが撥ね退ける、そんな強い意志を感じさせる瞳をしている。
本当に当麻が大切なのだろう。そしてそんなに危ない世界なのか。
インデックスの変わり様に気押されてしまう。
でも――
「インデックス…」
私は引けないし、今更引くつもりもない。
だから、私は募る想いをシスターに告白する。
だから、私は募る想いをシスターに告白する。
「当麻はいつも酷い怪我をして入院してるわよね?それを知ったときは心配したわ。またかっ…てね」
「でも…それがいつもの事だなんて知らなかった。命懸けの怪我なんて普通、滅多に起こることじゃないもの」
思い浮かぶのは、ボロボロになっても無理をしていた当麻。
「そのことを知ったのはアイツがイギリスに行く前の大怪我のとき」
「病院から抜け出しているところをね、偶然見つけたの。…もちろん止めたわよ」
結局は止められなかったけどね…と加える。
「なんでもっと頼ってくれないのかって言ったわ」
「ほら、他の人には頼れって言う割には自分のことは相談しないヤツでしょ?」
「けれど…きっと。アイツには関係ないのよね」
「頼る頼らないの問題じゃない。自分がそこへ行くことに意味を見出している」
それは彼の言葉を聞いて、彼の様子を見てきて、行きついた結論。
「当麻はいつだって当麻だから」
「上条当麻としての生き方がそこに在るから」
「私たちが縋りついて止めても、きっと変わらない。変えられない。そう思うの」
その在り方につい悲しくなって、泣きそうになってしまう。
声も上手く出せない、カップを取ってソレと一緒にこげ茶色の液体を呑み込む。
声も上手く出せない、カップを取ってソレと一緒にこげ茶色の液体を呑み込む。
「アイツがボロボロになるのを想像すると無力感に苛まれる」
「アイツが外に出ているのを知るたびに無事を願ってるばかりだった」
「でも…後悔したくないから…願うだけじゃダメだから…」
深呼吸。覚悟を言葉に変える。
「私だって戦える。超能力者としての力が無くても、この気持ちは変わらない」
借りを返す、助けられた恩がある、それは方便だ。
本当の意味でやりたいことじゃない。
本当の意味でやりたいことじゃない。
「私は当麻を守りたい。あのどうしようもないくらいにボンクラで優しい当麻を守りたい」
「だから知りたいの。当麻の戦う世界を」
でも気持ちだけでは守れない、それが現実。
そして失敗するわけにはいかない、リセットは出来ないのだから。
そして失敗するわけにはいかない、リセットは出来ないのだから。
だから――
「あなたの力を貸して欲しい。お願い、インデックス」
ここで断られるならば自分で調べるしかない。
今まで築いてきた全てを失うかもしれない。最悪、学園都市が敵に回ることも十分にありえる。
以前PDAで調べた内容からはわかっていたことだ。
でも、この選択に後悔は無い。きっと今まで過ごしてきた日常も帰ってこないだろう。
それでも譲れない想いが――――ここに在る。
今まで築いてきた全てを失うかもしれない。最悪、学園都市が敵に回ることも十分にありえる。
以前PDAで調べた内容からはわかっていたことだ。
でも、この選択に後悔は無い。きっと今まで過ごしてきた日常も帰ってこないだろう。
それでも譲れない想いが――――ここに在る。
「短髪は…」
沈黙が破られるがどうしても不安になる。
「ううん」
「みことは……わたしといっしょだね」
そこには柔らかく微笑む聖職者がいた。
「でも…不公平…なんだよ…」
「…え?」
我ながらマヌケな声だ。
「わたしの話だけじゃあ…不公平なんだよ」
「わたしだって、いつもいつもとうまと一緒にいるわけじゃないんだよっ」
「だから、だからぁ、わたしだってみことの話が聞きたいんだよぉっ」
矢継ぎ早に言葉を発するインデックス。様子がおかしい。
なにかマズイことを言ってしまったのか…終いには泣きじゃくり始めた。
衝動に駆られ彼女を抱きしめて、年相応の少女の様子に安心してしまう。
もしかしたら先ほどまでのインデックスはただの強がりで、なにかの拍子にその糸が切れてしまったのだろうか?
それでも私の無遠慮な頼みを許してくれた彼女に―――――
なにかマズイことを言ってしまったのか…終いには泣きじゃくり始めた。
衝動に駆られ彼女を抱きしめて、年相応の少女の様子に安心してしまう。
もしかしたら先ほどまでのインデックスはただの強がりで、なにかの拍子にその糸が切れてしまったのだろうか?
それでも私の無遠慮な頼みを許してくれた彼女に―――――
「ありがとう」
――――私は感謝を述べる。
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上条と土御門はあの後は取りとめのない会話で時間を潰していた。
そこで鳴る上条の携帯。どうやら用件は終わったようだ。
そこで鳴る上条の携帯。どうやら用件は終わったようだ。
「終わったのかにゃー?乙女の密談は?」
「そうみて―だな」
気になって仕方なかったので、早々に会計を済ませて帰宅しようとするも土御門に呼び止められた。
「なあ。かみやん」
「なんだよ」
夕刻、またの名を逢魔ヶ刻。
「かみやんはそれでいいのか?」
「どういう意味だ?」
それは、人と魔に魅入られた者の時間が交わる意。
「そのままの意味だ」
夕日が眩しくて表情はうかがえないが、彼が纏う空気には覚えがある。
それは魔術師、土御門元春としての顔。
それは魔術師、土御門元春としての顔。
「かみやんは頑張った。いろんなヤツを救った」
「でも、自分がやっている意味を全く理解していない。かみやんはいつか――」
「――裁かれる――」
「俺みたいな嘘つきは逃げても良い。だがお前は逃げるな」
「結果的にたくさんの人々を救ってしまったお前だけは―――逃げちゃいけない」
「それを忘れるな」
そう残して、魔術師は去った。全く意味がわからない。
裁かれる――と彼は言ったが、それは記憶喪失の事か?ならばインデックスと向き合えという意味か?
心を占める大量の疑問符に戸惑いながら上条は帰宅の路へと着く。
裁かれる――と彼は言ったが、それは記憶喪失の事か?ならばインデックスと向き合えという意味か?
心を占める大量の疑問符に戸惑いながら上条は帰宅の路へと着く。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ただいまー」
「「おかえりなさい」」
扉を開けると二人の少女が和気藹藹としている。
しかもなにやら上条に意味深な目を向けてニヤニヤしているのだ。物凄く居心地が悪い。
そんな雰囲気を打ち払うために、取りあえず聞いてみる。
しかもなにやら上条に意味深な目を向けてニヤニヤしているのだ。物凄く居心地が悪い。
そんな雰囲気を打ち払うために、取りあえず聞いてみる。
「それで?一体何の話をしていたんだ?」
「「べぇーつぅーにぃー」」
「(何なんですかこの団結っぷりは!?)」
上条さんは!上条さんは!と、とある変態の空間跳躍者と同様に悶えてしまう。
そんな様子を見た二人は上条に残虐な言葉を浴びせた。
そんな様子を見た二人は上条に残虐な言葉を浴びせた。
「当麻」「とうま」
「はい?」
「「気持ち悪い」んだよ」
この仕打ち。女の子から言われるとこれは傷つくだろう。嗚呼無情。
傷心上条を放置して美琴は立ち上がった。
傷心上条を放置して美琴は立ち上がった。
「さてっ」
「あれ?もう帰るのか?」
「門限だってあるしね」
「そうか……残念だな」
「あれだけ家に上げたがらなかったくせに」
しょうがないだろう、そう思って無意識のうちにインデックスに視線が移る。
「なにかな?とうまはわたしのせいって言いたいの?」
「イイエソンナコトハ…」
ナイデスヨ…と目を逸らす上条。
「とうまはいらないからみことがココに住めばいいんだよ」
「インデックスさん!?」
「それもいいかもね」
うんざりしてきてため息を吐きながら、玄関までついていき靴を履く。
「ここでいいわよ」
「却下だ。昼ごはんを作って貰った礼にもならないけど…このくらいはさせてくれ」
するとインデックスも見送りに来て、なにやら形容しがたい表情を浮かべていた。
「……みこと」
「どうしたの?インデックス」
どこか悩むように、それでも大切な何かを頼むように彼女は告げる。
「とうまのこと、よろしくなんだよ」
「うん。頑張る」
普通男女の事を考えれば逆なのだが、二人には通じるらしい。
「とうまは頑固で無鉄砲で甲斐性無しでポンコツだけど」
「…うん」
「みことにしか、お願いできないんだよ」
「……うん」
上条は自分がボロクソに言われていることにまたもや閉口。
「じゃあ。またねインデックス」
「うん。ばいばいみこと」
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「わたしとみことは……ちがう」
二人を送り出しわたしは虚空に呟く。
みことがとうまと共に部屋へ入ったときから嫌な予感はしていた。
わたしが見てきたみことは素直になれない女の子であり、彼へ恋慕の情を向けていることは知っている。
よって、二人っきりになった時もそれが本題になるだろうと思っていたのだ。
だが彼女は違うと言った。それはあくまで前座であり本題は先にあるのだと。
わからなかった、何が言いたいのか。そして口を開いて出た言葉が―――――
みことがとうまと共に部屋へ入ったときから嫌な予感はしていた。
わたしが見てきたみことは素直になれない女の子であり、彼へ恋慕の情を向けていることは知っている。
よって、二人っきりになった時もそれが本題になるだろうと思っていたのだ。
だが彼女は違うと言った。それはあくまで前座であり本題は先にあるのだと。
わからなかった、何が言いたいのか。そして口を開いて出た言葉が―――――
―――――魔術
一瞬理解できなかった。
それが理解できた時、目の前の能力者が識らない何かに思えて恐怖した。
能力者と魔術師は対極に位置する存在であり、お互いの無闇な接触は禁忌にあたる。
だから警戒した。敵意を向けた。必死に強がった。
それが理解できた時、目の前の能力者が識らない何かに思えて恐怖した。
能力者と魔術師は対極に位置する存在であり、お互いの無闇な接触は禁忌にあたる。
だから警戒した。敵意を向けた。必死に強がった。
だって―――
その得体の知れないモノがまた彼を何かに巻き込んでしまいそうで、怖かったのだ。
何と言われようが、何をされようが、教えるつもりはなかった。
何と言われようが、何をされようが、教えるつもりはなかった。
だって―――
そもそも魔術とは無縁の生活を送るはずだった少年を戦いに巻き込んだ元凶は――
――――わたしなんだから――――
その事実はたとえ誰に弁護されようとも変えられない。もちろん彼にも、だ。
元凶に嫌味ひとつ言わないで、だれかのために戦いに身を投じる。
右手を除けば彼はただの高校生に過ぎない。
特別な知識も無ければ、〈聖人〉のような身体能力があるわけでもない。
であれば何度も重傷を負うは必常。いや、生きているほうが異常だ。
彼にはもう傷ついて欲しくなかった。
恨んでもらっても良かった、それで彼が戦いを止めるなら。
言って欲しかった、もう戦いたくないと、傷を負うのは嫌だと。
しかし現実はどこまでも残酷で、より深いところまで彼を争いに誘っていく。
この連鎖がいつまで続くのかと絶望したことさえある。
そんなときだ、みことが来たのは。
彼女の言うことは“ほぼ”わたしと同じだった。
元凶に嫌味ひとつ言わないで、だれかのために戦いに身を投じる。
右手を除けば彼はただの高校生に過ぎない。
特別な知識も無ければ、〈聖人〉のような身体能力があるわけでもない。
であれば何度も重傷を負うは必常。いや、生きているほうが異常だ。
彼にはもう傷ついて欲しくなかった。
恨んでもらっても良かった、それで彼が戦いを止めるなら。
言って欲しかった、もう戦いたくないと、傷を負うのは嫌だと。
しかし現実はどこまでも残酷で、より深いところまで彼を争いに誘っていく。
この連鎖がいつまで続くのかと絶望したことさえある。
そんなときだ、みことが来たのは。
彼女の言うことは“ほぼ”わたしと同じだった。
(「当麻はいつだって当麻だから」)
(「上条当麻としての生き方がそこに在るから」)
(「私たちが縋りついて止めても、きっと変わらない。変えられない。そう思うの」)
わたしもそう思う。彼の生き方は変えられない。それだけの強い意志がある。
彼はそれで良いのかもしれない。
けれど、それが周囲の人にとってどれだけ悲しい生き方なのか、理解しているのだろうか?
戦いを遠ざけようにも、既に戻れない場所まで来ている。
彼はそれで良いのかもしれない。
けれど、それが周囲の人にとってどれだけ悲しい生き方なのか、理解しているのだろうか?
戦いを遠ざけようにも、既に戻れない場所まで来ている。
(どうすればいいのか…わからないんだよ…)
しかし――
(「――私だって戦える――」)
そう、彼女は言った。
(「――超能力者としての力が無くてもこの気持ちは変わらない――」)
それでも彼女は言った。
(「――私は当麻を守りたい。あのどうしようもないくらいにボンクラで優しい当麻を守りたい――」)
わたしと同じ結論に至りながら、それでも彼女はそう、言ったのだ。
(「――あなたの力を貸して欲しい。お願い、インデックス――」)
彼を守りたいと、騒乱の元凶であるわたしに助力を願った。
断るべきかもしれない。……でもこんな人をわたしは知っている。
魔術とか科学とかそんな垣根を簡単に飛び越えて、守りたい人のために真っ直ぐ言葉をぶつけてくる――そんな人を。
心が震える。理屈抜きに。そして思ってしまった。
断るべきかもしれない。……でもこんな人をわたしは知っている。
魔術とか科学とかそんな垣根を簡単に飛び越えて、守りたい人のために真っ直ぐ言葉をぶつけてくる――そんな人を。
心が震える。理屈抜きに。そして思ってしまった。
(みことなら…だいじょうぶ…かも)
そう、期待してしまったのだ。
「わたしとみことはちがう」
あのときは込み上げる涙を我慢していて強がって言ったが、どちらかと言えばあのボンクラに似ている。
「願うだけじゃダメだから……か…」
その通りかもしれない。では――
「わたしには何ができるんだろう?」
少女の問いを答える者は無く、しかし真摯に答えるように、そこには沈黙しかなかった。