小ネタ 部屋でのんびり?
ザアァァァァァ…
「雨止まないわねー…」
「今日は一日止まないって天気予報で言ってたからなぁ」
本日の天気は大雨。どしゃ降り。傘をさしても5分で濡れ鼠。
「とは言ってもこんなどしゃ降りじゃ買い物も行けないじゃない…
せめて少しでいいから弱まってくれればいいのに」
「そうだなー…っていうか美琴、流石に重い」
上条はベッドにうつ伏せに寝転がり、雑誌を読んでいる。
「年頃の女の子に向かって『重い』って何よ!馬鹿!」
美琴はその上条の上に寝転がり、肩の所から顔を出して一緒に雑誌を読んでいる。
「馬鹿って…流石の上条さんも長時間背中に乗られたら堪えますよ?」
「いいじゃない、このベッド狭いんだから。それに私もそれ読みたいんだから」
「…美琴さん、さっきまでこれ読んでましたよね?」
「………うん」
「はぁ…」
「…」「…」
ごろん 「あっ…」
上条は雑誌を読むのを止め、不意に横向きに体勢を変えて、美琴を背中からずり落とした。
特に抵抗もなく落とされた美琴は、そのまま仰向けになってぼーっと天井を見つめている。
ザアァァァァァ…
雨は先程と勢いを変えずに降り続いている。
「退屈、だなぁ…当麻ー、お腹空いたー」
「あー…確かに腹減ったな。もう昼だもんな」
「なんか作ってー」
「俺が作るの?」
「うん」
「……まったくこのワガママ電撃姫は…」
「えーっと、とりあえずこのテレビから壊せばいいのかしら?」
「ごめんなさい!すぐに昼食の準備をいたしますので家電へのビリビリは勘弁してください!」
笑顔で家電を人質にとる美琴に謝りつつ、大慌てで台所へ向かう上条。
「んー、あるものでなにかパパッと…チャーハンでいいかな。
美琴ー、テーブルの上拭いて食器運んどいてー」
「おっけー」
~十数分後~
「「いただきまーす」」
二人同時に食べ始める…と思いきや美琴はスプーンを手に取らず、上条のほうを向き、目を瞑って口を開けて待っている。
「(これはもしや……あーんのポーズか…よろしい、ならばその幻想を…ぶち殺す!)」
上条は美琴の皿にある空のスプーンを手に取り、そのまま美琴の口に突っ込む。
「はむ…ん!ちょっと!ちゃんとやりなさいよ!」
「はっはっは、そう毎回食べさせてもらえると思ったら大間違いだ!」
「くっ…仕返ししてやる…!」
「上条さんはいつでも相手になりますよー」
「その言葉、覚えてなさいよ…」
「はいはい、ほら早くしないと美琴の分まで食っちまうぞ?」
いつの間にか自分の分を完食した上条は、そのまま美琴の皿に手を伸ばす。
「あ、ちょっと!」
美琴が制止する間も無く美琴の皿を手に取った上条は、自分のスプーンで
「ほれ、あーん」
「へ!?あ、あーん…あむっ………不意打ちは卑怯よ…」
「かわいいかわいい美琴姫の弱点はお見通しですよ?」
「ううう……」
………………………………
「「ごちそーさま!」」
「当麻が準備したから片付けは私がやるわね」
「おう、じゃあ頼むわー」
と、美琴は食器を片付けに台所へ行き、
上条は特にすることもないので、ベッドに寝転がり、雑誌を広げて先程の続きを読み始めた。
「(くそぅ…どうやったら当麻をぎゃふんと言わせられるかしら…
色仕掛けは…ダメなのよね…アイツの理性ハンパないし……)」
「片付け終わったわよー……って、寝てるわね…」
満腹でベッドに寝転がれば、人間誰しも眠くなるのは当然だろう。
その例に漏れず、上条も読みかけの雑誌はそのままに、ぐっすりと眠っていた。
「(人の気も知らずに気持ちよさそうに寝ちゃって…顔にラクガキでもしてやろうかしら……あ、そうだ!」
と、美琴は何かを思い出し、自分のバッグを漁り始める。
「あったあった!」
取り出したのは整髪用のワックス。
「(いつかあのツンツン頭をいじくりたいと思ってたのよねー。うふふふ…)」
ニヤリと笑って美琴は作業に取り掛かる。上条が起きる気配は無い。
「………想像以上に…固いわね当麻の髪…」
「よしできた!まずはスタンダードに七三分けよね。…えーっと写メ写メっと…」
ピロリン♪と携帯で写真を撮り、まずは打ち止めに送信する。
打ち止めから妹達へとMNWを通じて写真が流出し、街中で妹達に会うたびに笑われる上条の姿を想像し、
美琴は腹を抱えて、でも上条を起こさないように声を殺して大笑いしている。
「まだ起きないわよね…?次はオールバックにでもしてみようかしら」
と、上条の髪形をオールバックにして撮影。
「今度は…初春さんと佐天さんに送ろうかな?あの二人ならきっと当麻をいじくりまわしてくれるはず…」
次のお茶会にコイツ連れてってみようかしら、と、二人にいじくられて困る上条を想像し、美琴はまた無言で笑う。
流石に上条もその気配を感じ、起きてしまった。
「あ、おはよ、当麻…ぷっ…」
「(寝てる間になんかイタズラしたなコイツ……まぁロクなイタズラじゃないだろう…)」
「く…くくっ…ど、どうかした…?」
上条は、寝起きの頭をフル回転させて美琴の様子を観察する。
「とりあえず美琴、その左手で後ろに隠してるものをこっちに出せ」
「あ、ばれた?はいこれ」
「整髪用ワックスと櫛…髪か…」
「うん。それにしてもアンタの髪手強かったわよ」
「そうかい、そりゃよかっ…ん?」
「…?どしたの?」
「美琴…お前…携帯…」
「へ?携帯?」
「……撮ったな?」
「う、うん…」
「誰に送った?」
「…………」
「だ・れ・に・お・く・っ・た?」
「…打ち止めと初春さんと佐天さん…」
「うおおおおおおおおおおお前えええええええええええええ!!」
「そ、そんなにうろたえることないじゃない。たかが面白髪型の写真よ?」
「その面白髪型写真があいつ等の手に渡ったら何が起きるかわからないだろうが!」
「アンタが笑われるだけよ。ほら、もう3時も過ぎたし、夕飯の買い物行きましょ。
さっきより雨足も弱まってるから外出るなら今がチャンスだし」
「…この髪型で外に出ろと?」
「待っててあげるからシャワー浴びてきたら?」
半泣きで風呂場へ行き、ワックスを落として出てきた上条の髪を美琴が丁寧に乾かし、
また雨足が強くならないうちに、二人で仲良く買い物に出かけた。
余談だが、打ち止めに送信された写真は、黄泉川を経由で小萌へと晒され、
次の登校日に、小萌が上条を見るたびに吹き出すのを怪しんだ某おでこに追及され、
上条の面白髪型写真はクラス中へと晒されることとなる…のはまた別のお話。
(終)