見知らぬ記憶
「……ハァ……」
あの夢の結末を見ずに飛び起きてしまった上条だったが、それ以来眠れずにいた。寝てしまったら、あの夢の続きを見てしまいそうで……(それはそれで嬉しかったりするんだけど)……とは本人も気付かぬ“男”の本音だったりするのだが……とにかく、上条本人としてはその“夢”が妙にリアルだった事にショックを受けていた。
(今日も美琴は来るんだよな……。一体どんな顔して会えばいいんだよぉぉぉおおおおお……。あ、あ、あああああああああああんな夢見た後だからなぁ……)
(オレって、もしかして、本当は、美琴と……ああああああああああああああああああああああ~んなことや、こここここここここここここここここここここ~んなことを……)
(イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ…………嫌じゃないけど……!!!!!!……だからっっっじゃなくってぇ~~~~~~~~~~!!!!!!!!)
(たたたたたたたたたたたたたたたたたた確かに、上条さんだって普通の男の子ですからね。そーゆー気持ちがないと言ったらウソになりますよ……)
(……でも……今はまだ……早いと思うし……第一、オレも美琴も学生で、特に美琴は中学生で……子どもで……責任が……)
(だけど……夢に出て来た美琴……綺麗だったなぁ~~~~~~~~……)
などと思春期真っ只中な思考と妄想を繰り返しながら、夢に出て来た美琴を思い浮かべ口元をダラしなく開いて『ボーッ……』としていたら……(ヨダレが出てるぞ、オイ!by《天の声》)
『ビリリリリ ピリリリリ』
と、美琴からのいつものモーニングコールが入ってきた。
“ビクッ!!!”
ちょっと違う世界に行きかけていたため、ビックリして慌ててしまって携帯が手に付かない。ベッドから転がり落ちそうになりながら、何とか携帯を掴む。
「もっ、もしもしっ。みっ、美琴か!?」
『わっ!?ビックリした。どうしたの?今日はエラく早く出るじゃない?』
「い、いや……そ、その……ちょうど少し前に目が覚めちゃってさ……アハ、アハハハ……」
『……ヘンな当麻。でも、ちょっとはこのモーニングコールが効いてきたってコトかな?』
「そ、そう……かもな……」
『何れにせよ『早起きは三文の得』って昔から言うんだし、早起きがクセになって損はないと思うわよ』
「そ、そうだな……」
『……と、ところで……当麻……あ、あのね……』
「ン?……どうしたんだ、美琴?」
『……ゴメン!!!』
「な、何だよ!?どうしたんだ、いきなり!?」
『今朝はさ、どうしても外せない用事が入っちゃってたの。それを昨夜言うの忘れてて……だから……その……朝ご飯とお弁当を……作りに行けないの……ホントにゴメンなさい!!!』
「えっ!?……そ、そうか(内心「ホッ」)。……そ、ソイツは……残念だ……な……ハハ」
『……ちょっとぉ~、何笑ってんのよ……(むぅ~~~~~~~)私が行けないのがそんなに嬉しい訳?』
「えっ!?……ゎ、笑ってなんかいないぞ……うん、……そうか……残念だ……うん……」
『……ホント、ゴメンね。埋め合わせはちゃんとするから。特に今日の夜はサービスしちゃうね』
「えっ?えっ?えっ?(ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええ!!!!!!!!!!)い、いや……み、美琴……それはッ……ちょっと待てッ。……オレたちまだ学生だし……それにその、美琴は中学生だし……だからその……(ドキドキ)」
『ちょっと、当麻。何言ってるのよ?……まさかアンタ、何か隠し事してるんじゃないでしょうね!?』
「いえいえいえいえいえ、そそそそそそそそっそっそっそそそんな、みみみみみ美琴に隠し事なんて……ととととととととととんでもない!!」
『む~~~~~、でも、何か怪しい……』
「(ギクッ!!!)」
『(お姉様)あ、分かったわ、黒子。……何か釈然としないけど……まぁ、いいわ。ホントにゴメンね、当麻。だけど、私が行かないからって朝の勉強サボったり、朝食抜いたりしたらダメだからね!!』
「はいはい」
『返事は一回!』
「ハイッ!!!」
『んっ、ヨロしい。じゃあ当麻、ホントにゴメンね。……好きよ』
「あ、ああ、……お、オレもだ……」
『エヘヘ…嬉しい。…じゃあね』
「うん……『ピッ』……ハァ……」
横でその電話を耳をダンボ(死語、既に埋葬済み)にして聞いている黒子が、学園都市の【闇】よりもどす黒いオーラを纏っていた事は言うまでもない。
が、朝からお熱い二人はそんな事には全く気付いていない……気付くはずがない。
が、朝からお熱い二人はそんな事には全く気付いていない……気付くはずがない。