とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とある魔術の夢旅人 1



「上条さんは藩士なので、今日は年貢を納めに行くのですよ」

「え、何?」

いつもの公園のいつもの自販機の前で、目の前を行き過ぎようとするツンツン頭の少年に声をかけた一人の少女。
常盤台中学2年、Lv.5のエレクトロマスター、超電磁砲こと御坂美琴は、少年の思わぬ返答に戸惑った。

「藩士?年貢?」
「ええ、そうですよ。上条さんはどうバカですからね。」
「どうバカ?」
「おうよ。日々の経費を削って、食いモンも減らして、やっと今日年貢を納めることができるんだぜっ!」
「ちょっと、アンタ。何か悪いものでも拾い食いしたの?」
「…食ってねえよ。つうかしらねぇのか?木曜どうでしょうって番組…」
「え?何それ…。そういえば初春さんと佐天さんから聞いたような…」
「毎週木曜日の深夜にやってるバラエティ番組だぜ。それがもう面白いのなんのって」
「へぇ、そうなんだ。で、藩士とか年貢とか、どうバカって何のことよ?」
「藩士やどうバカってのはその番組のファンの呼び方で、年貢ってのはその番組DVDを予約に行くことなのさ。今から角のコンビニで予約するんだ。だから、じゃ、な!」
「あっ、ちょっと待ちなさい!」

彼女が追いかけたのは、上条当麻。その右手に「幻想殺し」の特殊能力を宿すLv.0であり、御坂美琴の想い人たる高校1年生。

「もう待ちなさいッたら!」(ビリビリビリ!!!)
「ひッ!?」(バシューーン)
「ちょっ!あぶねぇじゃないか!!…わかった、わかったから。そんな怖い顔するなって。この際、腹を割って話そう…」
「もう…。(!えっ!!ドキッ)…腹を割って話すって?…(やりすぎた…のかな……)」

「上条さんはいつもはかた号不幸行きに乗ってますからね。常に初陣のダメ人間なんですよ」

「………アンタ、何訳のわかんないこと言ってんのよ…。(ふぅ、ドキッとしたじゃないの、もう…)」
「だからさ、今からDVDの予約に行くんだって。貧乏な上条さんは必死の思いでこの金を貯めて来たんだからな」
「じゃ、私も一緒につきあってあげるからさ。…(ハッ!)…って、そんなヘンな意味じゃないんだからねッ!!/// …いや、うちの寮は部屋にテレビないし、深夜番組なんて見ないけど…。でも初春さんや佐天さんとの話題に必要だし、知っておいて損は無いなってことよ(当麻が、どんなの見てるのか知りたいし…)」
「おう、じゃ、今度DVD貸してやるよ。なにせ、知る人ぞ知るっていう番組なんだけど人気あるんだぜ」
「そうなんだ。そんなに面白い?」
「面白いのなんのって、とにかく見ればわかるよ。…って、え?調整中?あれ?」

コンビニまで来たものの、予約機にはベッタリと「調整中」の貼り紙が。

「不幸だー」



「ううう、ちくしょう。これまでの苦労が水の泡だ…」
「ねぇ、予約って、ここでしか出来ないの?」
「いや、そんなこと無いんだが、いつも通る道だとここしか知らねぇしな」
「じゃ、向こうの通りにもたしかあったわね。アンタの通り道からかなりそれるけど…」
「しゃぁねぇか。じゃそっち行くか…。ん、なんで御坂が俺の通り道知ってるんだ?」
「え、いやその(あわわ…)、いつもアンタとはこのあたりでしか見かけたことないから。(ドキドキ)そうかなって…(よく後をつけてたって言えない…)」
「ああ、そうか。よしならこれから時間とれるか?ちょっとそこまで…つきあわねぇか」
「(!!それって…もしかして…デートの…カァーッ)えっ、まぁ今日は特に用事もないし(ドキドキ)…。しょうがないから特別につきあってあげるわよ(///ホントは今日も待ってたのよ…)」
「よし、じゃ、行くか。トローリー!」
「………… バカじゃないの」
「お、御坂も知ってんじゃん」
「???」

次のコンビニへ向かう途中、上条は熱く美琴に番組の魅力を語り続けるの…だが、

「どうでしょうってのはな、やはりO泉さんが~~  ミスターは~~ ふじやんの~~ うれしーと~~」
「でなやっぱり一番なのは~~ パイ食わねぇか~ ここをキャンプ地とする~~」

当の美琴はそんな上条の話など全く耳に入っておらず、ただ顔を赤らめつつ、彼の顔をただボーっと見つめながらついていくだけであった。

(もう、当麻ったらそんなに熱く語っちゃって…。そんなきらきらした笑顔を見せ付けられたら私…、それだけで幸せか…も…。当麻と一緒に楽しく過せたら…。ああ、もう……。うふ…、うふ…、うふふふふ……)

「おお、ここだな。よし着いた…って、あれ?御坂…?」
「ふにゃ~~~~」

とある魔術の夢旅人 2



「よし、今度は大丈夫だ。予約予約…っと」

アリガトウゴザイマシター

「御坂、おかげで助かったぜ。無事予約も出来たしな。」
「よかったじゃない。私のおかげよね。感謝しなさいよ。」
「へへぇ。御坂様のおかげで、上条さんは一生どうでしょうしますよ。」
「(えへへ、私も一生当麻していたい…。当麻も一生私のこと…)///」
「実はもう1つ御坂に頼みがあるんだが、いいかな」
「(ビクッ)…何よ。まだあるの?言ってみなさいよ(アセッ)」
「上条さんの周りはいつも、風と寒さと匂いと危険が一杯な訳じゃないですか。」
「というか、アンタはいつも自分から突っ込んで行くのでしょうが」
「それでだな、この予約券を御坂、お前に預かってもらえないかな」
「えっ?」
「いや俺の不幸体質で、もし落としたりなくしたりしたら大変だしな。俺の命から3番目に大切なものだし」
「なんで私がそんなこと…って3番目って何よ。2番目は何なのよ。というかこんなのがなんでそんなに大切なのよ」
「いやいやいや、もう自然とハンガーストライキな生活してるとさぁ、どうしてもそんな感じになっちまうんだよ。
 俺にとっては本当に大事なんだぜ…」
「あ~わかった、わかったから(私、当麻にお願いされちゃった…)///」
「よし、じゃぁ、今から何かお礼するよ」
「え、じゃ、それなら…」

と言いかけてコンビニを出た二人の背後から声が掛かる。

「「あ、御坂さん!」」
「ん!あら、初春さんと佐天さんじゃない。どうしたの?こんなところで」

声をかけてきたのは初春 飾利と佐天涙子の2人。

「どうもー、これから初春と2人でちょっとカラオケでもいこうかって言ってたんです」
「あら、上条さんもご一緒でしたか? ちょっとお邪魔だったかしら」
「あああ、い、いや初春さん。そんなんじゃないから/// 気にしなくていいのよ」
「やあ、初春さんに佐天さん。ん、そういや今日は白井はどうしたんだ?」
「白井さんなら今日は支部で残業ですよ。もうたぁくさん書類をお願いしてきたので。てへっ」
「(初春さん…黒いよ)」
「そうだ、お邪魔でなければ御坂さんも上条さんも一緒にカラオケ行きませんか?」
「えっいや、私達はこれから(う~~、何で邪魔するのよぉ)…」
「よしっ、今日は気分がいいから、上条さんもカラオケ参加しちゃおうかな。どうだ、御坂も。たまにはいいんじゃねぇか?」
「…初春さんと佐天さんなら全く構わないわよ。(ちぇっ、しょうがないか…)」


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近くのカラオケボックスにて

「そういえばお二人は、なぜあのコンビニにいらしたんですか?」

歌の合間のおやつタイム。
特製大盛りスペシャルパフェを食べながら、初春が聞いてきた。

「ああ、上条さんは今日年貢を納めてきたんですよ」
「え、もしかして上条さんて藩士なんですか?」

すかさず食いつく佐天。

「上条さんはどれが一番好きですか?」
「俺はやっぱりサイコロシリーズかな」
「へぇー。初春は原付東日本…だっけ」
「やっぱり『ギアいじったっけ ロー入っちゃって もうウィリーさ』なんて最高ですよね」

わいわいと盛り上がる3人から取り残されてしまった美琴。関係ないという素振りを見せつつ、曲名リストを1人寂しくめくっていく。

「(寂しい…。私はこの話題に入れないんだ…。聞いてても何の事だかわかんないし。アイツは私のことなんか見てないし…
こんな思いするのだったら来なきゃよかった…)」

美琴の思考はネガティブにベクトル変換しつつあった…

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「よしっ、こうなったら上条さんは歌うですよ。御坂も一緒に歌わないか?」

と言いつつ曲名コードを入力していく。

「え?私?」
「おう、俺の今一番好きな歌さ」
「(当麻の一番好きな歌…)」

モニター上の曲名…『1/6の夢旅人』

「え、知らないわよ。こんな歌」
「いいからいいから。そこじゃモニターうまく見えないだろ。歌えなくてもいいから、俺の横へ来いよ」

意識するかのように、わざと距離を開いていたのを、たちまち手を取られ、身体を密着させ…

「ちょっ、なっ…(カァーッ)」
「佐天さんも初春さんも、藩士なら歌えるよね」
「もちろん」
「もちろんですわ」
「よしみんなで歌うぞ」
「………」

まわる まわるよ 地球は まわる
何も無かった 頃から同じように
いつも いつでも 飛び出せるように
ダイスのように 転がっていたいから

「(この歌詞…)」

歌を知らない美琴は、半ば冷ややかに、モニター上の歌詞を見ている。

泣きたくなるような時も 君に会いに行きたくなっても
強がるだけ 今は何も 何もわからない

「(なんか…)」

世界じゅうを 僕らの涙で埋め尽くして
やりきれない こんな思いが 今日の雨を降らせても
新しい朝が いつものように始まる
そんな風に そんな風に 僕は生きたいんだ

「(いい感じかも)」

一人きりでは できない事も
タフな笑顔の 仲間となら乗りきれる
たどり着いたら そこがスタート
ゴールを決める  余裕なんて今はない

{(え…)」

誰かを愛することが 何かを信じつづけることが
なにより今 この体を 支えてくれるんだ

「(!!)」

世界じゅうを 僕らの涙で埋め尽くして
疲れきった足元から すべて凍り尽くしても
いつの日にか 南風がまた歌いだす
そんな風に そんな風に 僕は笑いたいんだ

世界じゅうを 僕らの涙で埋め尽くして
やりきれない こんな思いが 今日の雨を降らせても
新しい朝が いつものように始まる
そんな風に そんな風に 僕は生きたいんだ
生きていきたいんだ

「(当麻の事…歌ってるみたいに…)」
「(それに夢中で歌ってる当麻の顔…なんか素敵…)」

「(ハッ!!)」

気が付けば、上条当麻の右手は、御坂美琴の右肩を抱えていた。

「(私も…一緒に…当麻と一緒に歌いたい!)」

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「…ねぇ、で、さ。アンタ、私へのお礼はどうなったのよ!」
「ああ、わりぃ御坂。つい調子乗っちゃって。今度また、な!」
「わかったわよ。じゃぁ次は私の言うことに従うのねっ!」
「しかしあれからあの曲、10回も繰り返すとはな…」
「いいじゃない。なんか気に入ったんだから」
「へぇ、御坂もいよいよどうバカってか」
「んー、なんでアタシは藩士じゃなくてどうバカなのよ。ゴラァ!!」
「ひっ…いや、上条さんは決してそんなつもりじゃ…」
「うるさーーーい!!!!」

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それからまもなく、アイツの姿は学園都市から消えた…

ロシアの雪原の中で…

そしてあの巨大な要塞の中で…

最後に見たアイツは…

上条当麻は…

「まだやらなければならないことがある」

私の伸ばした手を振り払い、そう言って行ってしまった…

バカ…バカ…バカバカバカァァァァ……………

こうなると知っていたら、無理矢理にでもつかまえておくんだった…

私はね、まだアンタに言いたい事がたくさんあるのよ…

あの時、私の右肩に置かれた手の温もり…

まだ忘れられないんだからぁ…

あの日の約束…

まだ残ってるんだからね…

私とその周りの世界を守るって約束はどうするのよッ!!

当麻の大バカ野郎のスットコドッコイ!!!!


もう…知らない………

だから…………帰ってきて…………お願い…………信じてるから…………

あの時の歌のように……………

「誰かを愛することが 何かを信じつづけることが
なにより今 この体を 支えてくれるんだ」

そう。私、信じてるから。

当麻を信じてるから…

だから…負けない。

当麻の帰ってくるところは…

私の所だと…信じてるから。



そうだ、当麻から預かってた予約券。

DVD、ちゃんと受け取ってきたから。

帰ってきたら、一緒に見ようね。

だから…………………………………

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「ねぇ、何か忘れてない?」
「え?後なんかあったっけ?」
「アンタ、私に預けたものあるんじゃなかったっけ?」
「えーと…、あ、DVD予約券!あれ、発売後一ヶ月以内に取りに行かないと…」
「もう。ちゃんと貰ってきてあるわよ」
「おお、さすがは俺の美琴タンだぁ」
「当たり前じゃないの。私が当麻との約束、忘れるなんて絶対無いに決まってるじゃない」

「そうだよな。なんせ、俺の美琴は、俺の命の次に大切な人なんだからな」

「え?それって、2番…目?1番…じゃないって…こと?」

「1番は俺の命。でないと俺は、御坂美琴と、その周りの世界を守るなんて約束、守れないもんな」

「(!)…そうね、私も…当麻の命が1番大事かな。でないと私と、私の周りの世界を守ってもらうこと出来ないもの」

「ねぇ、当麻、私、信じてるから。これから何があっても負けないからね。貴方の命を守るためなら…私も…」

「美琴…」

---------------------------------------------- THE END----------


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