とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part03

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第3話『パーティ開始!』


 再び現在に戻ってホテルの一室。
 上条と美琴はベッドではなく2人用ソファに腰掛けていた。

 実は2人もさっき気づいたのだがこのホテルの部屋は2つに別れていた。
 今上条と美琴がいるのはベッドの置いてあった部屋ではなくその奥の部屋だ。
 奥といっても8畳~10畳ほどの広い洋室でテレビやらパソコンやらいろいろ置いてある。

 移動した理由だがベッドには洗面所で眠っていた4人の女の子達を寝かせるためだ。

 黒子と番外個体はなんだか幸せそうだったので毛布をかけて浴槽に放置しっぱなしだ。

 ちなみに浜面はというと上条が洗面所に放り込んだ。

 そして今2人がどういう状況かというと

(ち、近い!もんのすごく近いって!!肩当たってるし!!!)

 それくらい美琴と上条の距離は近かった。
 普通に座れば肩が当たることなどないのだがなぜか上条が少し美琴寄りに座っているので肩が当たるのだ。
 しかも今こっちの部屋には上条と美琴の2人っきり。
 おかげで美琴の心拍数はハンパないくらい上昇していた。

(そりゃベッドで寝てたときはもっと密着してたけどさ…あれは寝ぼけてたし……)

 しかし今ははっきりと意識がある。上条がすぐ隣にいるということがはっきり認識できる。
 美琴はただ上条の隣に座るということがすっごい嬉しかったが同時にすっごく恥ずかしく感じた。

 そのためさっきから雑念だらけで中々続きが思い出せなくなっている。

「御坂?それで……どうなったんだ?」
「え!?え~と……とりあえずアンタが挨拶するとこまで思い返したわ。」
「……挨拶は忘れてもらってもいいんだけど……」
「アンタすっごい緊張してたでしょ。」
「う、うるせーよ!!思い出したくないこと思い出させんな!」

 どうやら上条にとって始まりの挨拶は思い出したくない出来事らしい。

「いいじゃないのそれくらい。」
「よくねぇよ…あーもう……忘れようとしてたのに思い出しちまったじゃねーか……」

 すると上条は力が抜けたようにコテン、と美琴のほうにもたれかかってきた。

「ッッッ!!??!?ちょちょちょ!アンタなんで急に……!?」
「なんでって……何が?」
「だ、だからなんで急にもたれかかってきてんのよ!!」
「え……御坂にもたれたかったから。……ダメ?」

上条は美琴にもたれかかったままそう答えた。

「う…ダ、ダメじゃない。」

 上条に『ダメ?』と聞かれたら美琴は『ダメじゃない』と返事するしかできない。というか美琴としてはもたれてほしい。

 美琴は気持ちよさそうにもたれかかってくる上条にドキドキしていた。
 上条の頭は美琴の肩にのせられツンツンの髪が美琴の顔に少し当たる。内心パニックものである。

(何これどーなってんのよ!なんで!?ってコイツ私にもたれたかったって言ったわよね……そういえばさっき寝てたときも私の頭なでてたし……ソファに座ろうって言いだしたのもコイツからだし…なんかおかしくない?いつものコイツと違うような……)

 美琴は先ほどからの上条の行動に疑問を感じていた。何かがおかしい。
 もたれてくることなどはいつもの鈍感な上条なら気にせずにやりそうな行動だが何か違和感があった。
 しかし美琴は少し考えたのち

(……ま、幸せだから別にいいかな…)

 気にすることを完全に止めた。
 まるで今の状況は恋人同士、正直美琴はずっとこのままでいたかった。
 思わず表情にでてしまうので上条とは顔を合わせられない。

「それでもうこれ以上は思い出せないのか?……ってなんでそっち向いてんの?」
「それは気にしないで!!え、えと……それでえーと……確か緊張した様子のアンタがでてきて……」
「…それ何度も言われると俺も舞台裏とかも思い出しちまうな……」


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 先ほど美琴が思い出していた時より時間は数十分さかのぼる。

 ここは7番会場舞台裏、小道具や予備のマイク、資材などが置かれているところだ。
 舞台裏といってももちろん暖房設備は完備している。
 そんな舞台裏の小さめのイスに今回のパーティの主役、不幸少年上条当麻が座っていた。

 が、様子がいつもと違う。
 上条は想像を絶するくらい緊張していた。
 先ほど1度舞台裏から会場を見渡したのだがそこには何百という人がいたからだ。

上条「な、なんでこんな大規模なことになってんだ……」

 というのも本当はクラスメイト&小萌先生だけで行うつもりだったからだ。
 ところが青髪ピアスの『女の子をもっとたくさん呼んで盛大にやろやー!』という発言からおかしくなった。
 その発言を真に受けた土御門が学園都市にいる知り合いを全員誘おうと提案しさらにはステイルと神裂を通じてイギリス清教もパーティーに誘ったのだ。
 そこからどんどん話が広がっていき今に至るのである。

上条「おい土御門……なんでこんなに簡単に学園都市に魔術師達が入れたんだよ……」

土御門「それは気にするな。さあ上やん始めるぜよ。俺が呼んだら舞台に出てきて挨拶をするんだにゃー。」

 そう言うと土御門は照明係りに何か合図をし舞台へと出て行った。
 それと同時に会場がやや静かになった。

上条「この人数の前で挨拶するのか……不幸だ…」

エリザード「不幸不幸言ってんじゃないよ!こんなにアンタのために人が集まってくれてるんだから。よし、じゃあまずは私が行ってくるからね。」

 それだけ言ってエリザードは舞台上へと出て行った。その数秒後会場内からは驚きの声が聞こえてきた。

上条「……まあ…確かに今のは正論か……で、あと問題は御坂だよな……」

 今上条には挨拶以外にも不安があった。
 それは今の言葉通り今日このパーティに美琴が来ているかどうか、ということだ。

上条「御坂とはロシアから帰ってきてから全然話せてないしな…今日来てくれてると話せるからいいんだけど…」

 実は上条は美琴とのみ未だまともに話せていない。

 上条はロシアの海で引き上げられ学園都市に戻ってくる前に魔術サイドの人と、戻って来てからは科学サイドの人と短いながらだいたい一通り話しを交わしていた。
 だが美琴とは常盤台の寮でのあの一件があり、また美琴が上条を避けていたこともありまともな会話はできていない。

上条「常盤台の寮に行った時は白井がすぐに御坂を回収しちまったからなー…」

 上条としてはロシアまで来てもらったお礼や心配をかけたということで謝罪もしたいので是非とも会って話がしたい。

 と、あれこれ考えているうちに上条の出番がやってきた。

上条「はぁ……まあみんな俺のためにきてくれてるんだし……頑張るか。」

 そう独りつぶやいて上条は座っていたイスから立ち上がり舞台へと足を進める。
 と、舞台から戻って来たエリザードがすれ違い様に

エリザード「私が盛り上げといたから後は頑張んな。」

上条「う、うっす!!」

 元気よく返事したつもりが少し声が裏返った。

 そして上条が一歩分舞台に姿を出すと大きな歓声と拍手が沸き起こった。
 眩しいくらいの光に照らされ舞台の真ん中まで進むと拍手は一段と大きくなる。
 上条は改めて舞台上から会場内を見渡したが、見渡す限り人で埋め尽くされている。舞台裏から見たときよりはるかに多く感じた。

土御門「それでは上やん!開始の挨拶をよろしく頼むぜい!」

 それだけ言って土御門は舞台裏へと引っ込んでいった。
 舞台上に一人取り残された上条は緊張がMAXになる。

上条「あ~……っと……今日はわざわざワタクシ上条当麻のためにお集りいただきまことにありがとうございまふ。」


 緊張のあまり当初考えていた挨拶より馬鹿丁寧になった上噛んだ。
 会場からは若干の笑いが生まれ上条の顔は真っ赤になる。
 やらかしたと思い、頭の中が真っ白になりかけるがとりあえず落ちきを取り戻そうと深呼吸を何度か行った。
 心拍数も少し下がり、顔の赤さが元に戻るのがわかるくらい落ち着き挨拶を続ける。

上条「みんなのおかげで無事帰ってくることができました!それに俺のためにこんなに多くの人が集まってくれるとは……素直に嬉しいです。まあ挨拶を長々と言っても退屈だと思うので早速始めたいと思います!」

 そういうと上条はマイクの横の机に置いてあるグラスを手に取る。入っているのは当然ジュースだ。
 それを見た会場のみんなもテーブルの上に用意されていたグラスを手にする。

上条「じゃあ……みんな心配かけてごめん!でもってありがとう!!乾杯!!!」

 上条の合図とともに全員が乾杯する。
 こうして大歓声の中、『上条当麻帰還記念祭』という大規模なパーティーが始まった。


 ◇ ◇ ◇


 パーティが始まると参加者達はそれぞれ行動を始める。
 隣の人と雑談するもの、初めて知り合った者同士挨拶するもの、早速料理を食べるもの、何もせずただ座っているもの、ナンパするもの、
 そんな中一番多く見られた行動、それは上条に話しかけようとすることだった。

 もちろん美琴もその1人。
 上条が挨拶を終え舞台からおりてくるのを見ると美琴はすぐさま上条の元へと走った。黒子に何か言われたような気がしたがそんなこと一切気にしない。
 ここに来るまでの心配事は消えさり、一刻も早く上条と話したいという想いがあふれた。
 もうこの想いは止まらない。

 だがさすがは世界的ヒーロー、上条に話しかけようとしている人の数はハンパなく多い。
 さらに上条をよく知らない人が近くで一目見ようと集まってきている人がいるため余計に数が増えている。
 まるで上条は有名人のようだった。

美琴(うわっ……人多っ……これじゃアイツが見えないじゃないの……)

 美琴はそこそこ後ろの方の席に座っていたため少し出遅れていた。

 それでもなんとか人ごみをかき分けてようやく上条の姿をとらえた。
 話しかけられる距離までもう数メートル。だが上条は美琴に気づいていない。

美琴(もう……ちょい……!!ってあれは……)

 するとここで上条の側にはインデックスがいることがわかり、それが美琴の嫉妬心をかき立てる。
 自分も早くその位置に行きたい、そんな思いから思わず周りの人々に対して電撃を使いそうにもなる。
 そんな中一人の少女がインデックスを押しのけ上条の背中に飛びついた。


???「上条当麻ー!!あなたなんで私には話しかけずにイギリスを去ったのですか!?他の人とは話してたくせに!!」

美琴「えッッ!!?」

 そう言って上条に飛びついたのは……

上条「レ、レッサー!?ちょ、離れ……」

レッサー「忘れたとは言わせませんよ、ロシアで共に過ごした情熱的な日々を!」

 ピキッ。
 美琴の足は止まり何か頭で音がした気がする。

上条「そんな日々送ってねえよ!誤解招くような発言はやめろって言ったでしょーが!!」

 上条の首に腕を巻き付け背中にぶら下がるレッサーを必死に引きはがそうとしていると

???「上条当麻ぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!昔年の恨みじゃあああああ!!!」

上条「おふっう!!!」

 上条は後ろからキックをくらった。
 叫びながら上条にドロップキックを食らわしたのは黒子……ではない。

 そのキックの衝撃でレッサーは上条から離れ、吹っ飛んだ上条は誰かの胸にきれいに突撃する。
 まるで予定していたかのような一連の動作だった。

美琴「なッッッ!!??!?あ・の・バ・カ・は……」

 それを見た美琴は帯電を始める。
 上条が突撃したその相手とは運び屋オリアナ=トムソン、金髪で巨乳の持ち主である。

オリアナ「あ~ら坊や、こんなところで積極的ね。お姉さんといいことしたいの?」

上条「い、いやちがっ、違う、違いますぅ!!おい誰だよ蹴ったの!!」

 上条は勢いよくオリアナから離れ蹴られた方向を振り返る。そこには腕組みしたフロリスが立っていた。

上条「お前か!!なんでいきなり蹴るんだよ!!」

フロリス「アンタが悪いんでしょうが!!あのとき私の話も聞かずに強引に私に抱きついて川に飛び込もうとしやがって!仕返しよ、仕返し!!」

上条「あ、あれは川が浅いって知らなかったから……つーかお前も誤解を招くような言い方止めろ!!」

 すでにまねいていた。
 帯電が強くなる美琴の周りには人がいなくなり始めている。

 すると美琴の周りとは対象に上条の周りにはさらにどんどん人が集まってきた。
 しかも女の子ばかり。見たことある子からない子まで様々だ。

 しばらくは呆然とその状況を見ていたがもう限界。美琴は上条めがけて勢いよく電撃の槍を投げつけた。


 ◇ ◇ ◇


建宮「おーう上条!久しぶりなのよ!そして相変わらずの女たらしっぷりなのよな。」

 依然としてフロリスと言い合いをしている上条に天草式十字凄教の建宮斎字が声をかけてきた。
 相変わらずの格好でやはり首から小型の扇風機をいくつも下げている。
 だが流石にフランベルジェは持っていない。

フロリス「あのね、私はコイツにたらされてなんかいないわよ?」

インデックス「そ、そうだよ。私もたらされてなんかないんだよ!!」

レッサー「……インデックス、あなたあやしいですね。」

上条「ていうかたらされてって日本語なんか変じゃね?それに建宮、上条さんは女たらしなどではありませんよ……?」

建宮「そんなことより上条!お前に会わせたい人がいるのよな!おーい!!もう来てもいいのよな。」

 建宮はやたら機嫌がいいようでにやにやしながら後ろの人ごみからその人の手招きしている。

 会わせたい人、上条にはもちろんそれが誰かわからない。
 俺の知らない人か?などと思ったが次の瞬間上条の目には衝撃が飛び込んで来た。

上条「ッッッ!!??!?」

五和「か、上条さん……お久しぶりです……」

 それは顔を真っ赤にした五和。
 衝撃なのはその格好、なんとあの大精霊チラメイドを着ているではないか!!

上条「ちょ、い、いつ、五和……さん?……その格好は……?」

五和「あ、いや、せっかくの…パーティーだから……」

 その服はパーティだからって着る服じゃない、上条は全力でそう思った。
 ここでふと五和が出て来た方向をよく見てみると建宮以外の天草式メンバーがおり、何かを応援しているように見える。

上条「あいつらがやらせたのか……ん?」

オルソラ「上条さん、お久しぶりでございますよ。」

 今度上条の元に姿を見せたのはイギリス清教のオルソラ=アクィナス、相変わらずの笑顔だ。
 何も問題はないと思われたが

上条「………え?」

オルソラ「どうしたのでございますか?」

上条「どうしたのでございますか?じゃねぇよ!!なんでお前までそんな服着てるでせうか!!?」

 オルソラの服装はいつもの修道服ではなかった。大女神ゴスメイドだ。
 胸の部分でとんでもないことになっている。

オルソラ「なぜって……久しぶりに上条さんにお会いできると思ったからでございますよ?イギリスで会って以来お会いしていませんでしたから。」

上条「え……それ「おいこらオルソラァ!!」って……」

 上条がオルソラの言葉から何かに気づきそうになっているところに怒った様子のシェリー=クロムウェルが登場。

シェリー「アンタなんでそれ着てるんだよ!!絶対に着るなって言っただろうが!!どこで着替えたんだよ!!」

 周りの人を押しのけてオルソラの元へやってきた。
 だがオルソラはシェリーのことなどスルーして笑顔のまま五和と火花を散らし合っている。
 というか『着るな』って言うくらいなら持ってこさせないでほしいと上条は思った。

 さらに

???「ちょ、本気で止めてください!!ぶった切りますよ!?」

???「まーいいじゃないの、こんなチャンスこれからはないと思いけるけど?」

 何か大きめの声がしたかと思えば人ごみが一気に騒がしくなった。

上条(今度はなんだ?もう嫌な予感しかしねぇな……)

 その予感は的中する。
 人ごみの中から1人の女性が押し出され上条の目の前に姿を現した。

 メイドだ。しかしただのメイドとは格が違う。

上条「…………神裂…その格好は………」

神裂「ち、ちち違いますよ!?今回は私が自分から着たのではなくてですね、このバカがさっき魔術で無理矢理……」

建宮「……ま、まさかここで女教皇様がこの格好で来るとは…予想外なのよ!!」

 そう、あの伝説の『堕天使エロメイド』だ。いろんな部分がいろいろとハンパない。

ローラ「ちょっと神裂!上司に向かってバカはとはどういう「うっさい!!!」……」

神裂「テメェは黙っとけ!!後で絶対斬る!!って、そういうわけで着たくてきたわけじゃないですからね!?ほんとですよ!?」

 神裂は結構キレていた。素で怖い、と上条は感じた。

 それにしてもこのありえないような状況に上条は困っていた。

上条(め、目のやり場に困る……)

 全国の男子が聞いたらぶち切れるような困り事だ。
 だがなんたって目の前には堕天使エロメイド、大精霊チラメイド、大女神ゴスメイドの3大メイドが集結しているのだ。
 特に胸、嫌でもそこに目がいってしまっている。

???「……アナタはさっきからどこを見てやがるんですか?」

上条「へ?ど、どこってどこも見てませんよ!?」

 急にツッコまれたことに上条の心拍数は急上昇、心臓がバクバク聞こえる中、声のしたほうを見てみる。
 そこには見覚えのある赤髪を三つ編みにした少女が立っていた。

上条「アニェーゼかよ……驚かせんな…」

 その少女とは元ローマ正教で今はイギリス清教の傘下に入っているアニェーゼ=サンクティス。
 五和とオルソラと違い着ている服はいつも通りのミニスカート並に短い修道服だ。

アニェーゼ「何も驚かすつもりはなかったんですがね、その反応を見る限り図星なんですね。正直に言っちまってください。」

上条「ッ!?正直に言うも何もそんなこと紳士上条さんにありえるわけないのでございますよ!?」

インデックス「とうま……あやしいんだよ…」

フロリス「ほんとサイッテーなやつね。」

レッサー「ええ、さすがにひどいですね。」

上条「お前ら口々に何言ってんだ!そ、それでアニェーゼ、何か用なのか?」

 4人にモロに指摘され焦りを隠しきれていない。
 五和とオルソラと神裂も話を聞いていたようで五和はすこし顔を赤くして、オルソラはニコニコしながら、神裂は何かぶつぶつつぶやいてこちらをジーっと見ていたので上条は強引に話を切り替えた。
 するとアニェーゼは表情を変え少し顔を赤くした。

アニェーゼ「え、いや、その用というかですね、せっかくのパーティなんですし、声をかけてみようかなと……」

上条「?どうした?」

 何やらその質問には答えにくいようでアニェーゼの声はだんだん小さくなっていき、後半は聞こえるかどうかがあやしかった。
 アニェーゼが上条に声をかけた理由は明白だが鈍感な上条が気づくわけもない。

 ここでふと上条は右側がなにやら別で騒がしいことに気づき目線をやると

上条「ん……ってぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

 電撃が飛んできていた。上条は超反応で右手を突き出し電撃をかき消した。
 フロリスが上条を蹴ったことにより周りにはスペースができていたので周りに被害はでなかったが騒然とする。

 こんな電撃を放ってくるやつは1人しか思い浮かばない。

上条「御坂……だよな?あいつ来てくれてたのか……」

 上条は電撃が飛んで来た方向を見たがすでにそこには誰もいなかった。
 辺りには焦げくさい臭いだけが残っている。

神裂「……最大主教?服こげてますよ?」

ローラ「え?……ッ!!?ちょ、神裂!こげてるっていうか燃えたりけているのよ!水!水!!無視しないでお願いだから水!!」


 ◇


レッサー「それにしてもフロリス……上条当麻に抱きつかれたって本当ですか?」

フロリス「本当よ!!こいつもう1回蹴ってやろうかしら!」

レッサー「他の人が聞いたら羨ましがられますよ。競争率かなり高いんですから。」

フロリス「え……それマジ……?こいつって…もてるの?」

レッサー「大マジですしびっくりするくらいもてます。」

 それを聞いたフロリスは上条に目をやる。

フロリス(そういやこいつ……あの電車では私を助けるために川へ飛んだのよね……)

 フロリスに見られていることに気がついた上条はまた蹴られてはたまらんと思いこちらに敵意はないですよー、と笑顔を見せる。
 これが決定打となりフロリスは顔を赤くする。

 上条当麻、フラグメーカーと呼ばれる彼はここに新たにフラグをたてた。
 もちろんこのことは上条も美琴も知る余地はない。


 ◇ ◇ ◇


美琴「全くなんなのよあの馬鹿は!!」

 美琴は怒りが収まらないまま目的もなく会場内を歩き回っていた。
 上条の元へ走って行った時に黒子たちとははぐれてしまっているため今は1人だ。
 まあ元の席に戻れば多分いるだろう。

美琴「せっかく久しぶりに話そうと思ったのに……他の女の子とばかり話しちゃってさ……」

 美琴は立ち止まると小さくつぶやいた。本当は上条とちゃんと話がしたかったのにこんなことになってしまって残念で仕方がない。

 ここでふと横の丸いテーブルを見ると高校生くらいの男女がいた。
 少年は茶髪で女の子はピンクのジャージを着ている。

滝壺「はまづら、これおいしいよ。」

浜面「お、くれるのか!ありがとな滝壺!」

 仲のよいカップルのようだ。
 さらにその横では1人の少年がきわどい着物姿の女の子にひっぱられていた。

???「ね~女王様とか王女様を見に行きましょうよ~半蔵様!こんなチャンスないですよ?」

半蔵「いや俺はいいから!俺はさっき愛穂さんを見つけたからそっちへ行きたいんだよ!郭、お前はフレメアと行ってこい!!」

郭「嫌です、私は半蔵様と行きたいんです!ほら早く!」

半蔵「おい、引っ張るなそんなに!それに浜面!お前も見てないで止めてくれよ!」

 こちらはカップルではなさそうだが美琴から見れば実に楽しそうだった。郭という女の子のような態度で上条に接したいとさえ思った。

 美琴はこの2組の男女の姿をついつい自分と上条に置き換えて想像しまう。
 もし上条とあの2人のような関係になれたらどれほど幸せだろうか。
 自分で想像する幸せを遥かに超える幸せに違いない。

美琴(私もいつかアイツとあんなふうに……なれたらいいな……………あ)

 ここで美琴はあることに気づいた。

 まずい、上条がとられる。
 さっきの女の子たちを見てわかったが今日は鈍感な上条の気を引こうとしているのかかなり積極的だ。
 このままでは上条がとられかねない。
 もし万が一上条が自分以外の誰かと付き合ってしまったら今のカップルのようなことができなくなってしまう。

美琴「や、やばい、アイツの周りには可愛い子とか胸の大きい女の子しかいないし……」

 本気で美琴は焦り始めた。
 このままではいけない、もう1度上条とちゃんと話をしよう。
 電撃など放たずに素直に、そう考えた美琴は再び上条の元へと向かう―――――


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