とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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新約3巻☆上琴表紙記念




 ハワイへ到着して早々襲撃に遭った上条、美琴、一方通行、浜面、番外個体、黒夜たち一行。
 何とか難を逃れた彼らは現在レイヴィニアと一旦別れ、海を臨んだオープンカフェで一息ついている。

「……、お姉様?」

 コーヒーを飲んでいた番外個体が突然、海の方を眺めていた美琴に話しかけた。

「へ!? な、何かしら?」

 何故かビクッと肩を揺らし、奇妙な反応を返す美琴。
 期待通りの面白い反応に、番外個体はニヤリと笑う。

「我慢はよくないと思うけど? ミサカたちここにいるから行っておいでよ」
「え……あの、でも……」
「行きたいんでしょ? 見てればわかるよ」
「うぅっ……」

 番外個体の視線に耐えられなくなったのか、美琴はガタンと勢い良く席を立った。

「す、すぐ戻るからっ!」
「はーい。ゆっくりいってらっしゃーい☆」

 少し顔を赤くして浜辺の方へと駆けてゆく美琴を、番外個体が面白そうに見送る。
 その様子を見て、アメリカンサイズなサンドウィッチを頬張っていた上条は首を傾げた。

「何だありゃ?」
「ありゃ? じゃないよ。ほら、あなたも早く行って」

 番外個体が遠慮なくバシッと、サンドウィッチを頬張る上条の背中を叩く。
 
「うほっ!? い、いきなり何しやがる!」
「ほらほら早く。行った行った」

 むせる上条を気遣う事もせず、番外個体は上条を追い払うような仕草をする。
 さらに、そのやり取りを黙って見ていた一方通行までが上条に対して口を開いた。

「おい。それが惜しいンならテイクアウトしといてやるから、オマエはさっさと超電磁砲ンとこへ行け」
「ん? 何だよお前まで」

 キョトンとする上条に、一方通行は心底呆れた様子で溜め息をつく。

「な、何だよ……?」
「確かオマエが言ったンだよな? 超電磁砲は『魔術』についてまだ何も知らねェから心配だとか何とかよォ」
「っ! それは」
「にもかかわらず、いつまた襲われるかわからないこの状況でお姉様を一人放って置くなんて……案外あなたってこのミサカよりも鬼畜かもね☆」

 妖艶な笑みを浮かべた番外個体が、焦る上条に追い打ちをかける。
 そして、ここまで黙って成り行きを見ていた残る2人も、上条に冷たい視線を向けてきた。
 
「お前さすがに酷過ぎンじゃねェの?」
「師匠……見損なったぜ」
「うっ!?」

 一方通行からは呆れられ、番外個体には面白がられ、黒夜からは軽蔑され、浜面からは残念そうな目で見られ、

「す、すぐ戻る!!」

 鈍感な純情ボーイ上条は、慌てて美琴の後を追って浜辺へと向かった。


 そういう経緯があって現在、上条は美琴と一緒に浜辺を歩いていた。

「わぁ! やっぱりハワイは海が綺麗ねっ」
「お、おい。あんまり遠くまで行くなよ」

 嬉しそうに砂の上を歩く美琴を、上条が心配そうに見守る。

「なーにビクビクしてんのよ? せっかくのハワイなんだから、ちょっとは楽しまなきゃ!」
「そ、そうだよな。ハワイに来てるんだよな、俺たち……」

 無邪気に笑う美琴に、上条は少し表情を和らげる。
 同時に、この笑顔だけは何があっても最後まで守り通そうと改めて心に誓った。

「そうよ」

 そう言って楽しそうに微笑みながら歩いていた美琴は、数十メートル先を指差して急に立ち止まった。

「あれ? ねぇ、なんかあそこに人だかり出来てるみたい」
「ん? ああ、確かに」

 美琴の言う通り、前方30メートル程先にちょっとした人だかりが出来ていた。
 カメラなどの機材を持っている人が数人見えるので、取材か何かかもしれない。

「行ってみましょ」

 言うや否や駆けてゆく美琴を、上条が慌てて追う。
 人だかりに近付いてみると、報道関係の人が一人の男を取り囲んでいるのがわかった。

「んー。この人どこかで見た気がするけど……最近見た映画って何だっけな?」

 上条が首を傾げると、上条より少し前に立っていた美琴が勢い良く振り向いた。

「ば、馬鹿っ!! 映画俳優なんかじゃないわよ! この人はね……」

 思わぬ上条のおバカ発言に、思わず大きな声を出してしまった美琴。
 それによって、人だかりの注目が美琴と上条に集まった。

「Oh, you come from Japan, don’t you?」
「How cute she is! Is she your sister?」
「Do you come here by yourselves?」

 報道陣が口々にそんなことを言うが、当然英語なので上条には何が何だかさっぱりである。


 そんな中、報道陣に囲まれていた男が、とても友好的な笑みを浮かべて上条たちに話しかけてきた。驚くことに、流暢な日本語で。

「君たち、日本から来たのかい?」
「はい、そうです。お会い出来て光栄です、大統領」
「なっ!?」

 大統領という思わぬ単語に、上条が驚いて美琴の顔を見る。

「そうよ。この方はアメリカ合衆国大統領、ロベルト=カッツェ大統領。ほら、アンタもちゃんと挨拶しなさい」
「え? あ、そ、そうだよな……え、えーっと……初めまして」
「ちょ!? アンタいくらなんでもそれはないでしょ!?」
「だ、だって俺こういうの慣れてないっていうか……」

 英国王室ファミリーを相手にした男が今更何をといった感じではあるが、確かに上条は王室ファミリーの時もまともな挨拶をしていなかったりする。

「はっはっはっ! そんなことは別にいいさ。お嬢ちゃんもそんな固くなるこたぁないぞ」

 豪快に笑い、上条と美琴の肩に手を置くロベルト。
 彼は続けて言う。

「そうだ君たち。せっかくだから一緒に写真を撮ろうじゃないか!」
「え? そ、それは……」
「あ、写真は……」

 ロベルトの提案に2人して焦る美琴と上条。
大統領との写真となれば日本でも公開される可能性があるが、今の2人にとってそれはかなりマズイのだ。
 しかし、そんなこと知る由もないロベルトはさっさと報道陣に掛けあってしまう。

「ほら、あのカメラで撮ってもらうから笑って!」

 今更断れそうにない雰囲気に、2人は諦めてカメラを見る。
 上条はロベルトの右肩の前、美琴はロベルトの左肩の前に立った。のだが。

「ん? 君たちカップルじゃないのかい? 日本人はシャイと言うがそれじゃあダメだぞ? ソーレ!」
「「えっ!?」」

 まるでシンバルを叩き合わせるかのように、ロベルトが2人の背中を同時に押した。

「3, 2, 1!」

 カメラマンの声に合わせ、パシャっとシャッターが切られる。

「わっ!?」
「ふぇ!?」

 ロベルトに押されたままの勢いで、美琴は上条の腕の中にすっぽり収まってしまう。
 そのまま上条の腕の中で、美琴は茹でダコのように真っ赤になった。

「おーいいねいいね。それでこそ真のカップルというものだ! いやー若いっていいね。急に青春時代が恋しくなってきちゃったじゃないか」

 2人を初々しいカップルだと思っているロベルトは大変ご満悦だ。
 あごひげを撫でて、嬉しそうに頷いている。

「この写真はここの地元紙に載るらしいから君たちもチェックしとくんだぞ。またどこかで会えるといいな!」

 それだけを言い残し、ロベルトは報道陣と共に場所を移動してしまった。


 後には嵐が来て去っていたような、そんな静けさだけが残った。

「み、御坂サン? あ、あのこれは不可抗力であって……」
「ふにゃぁ」
「怒っては……いらっしゃらないのでせうか?」
「おおお怒ってにゃんか……」

 プシューという音が聞こえるほどに、逆上せ上った顔をしている美琴。
 何だか漏電してしまいそうな気がして、上条も美琴を離すに離せなくなっていた。

 そんな状態で固まっていると、何やら嬉しそうな少女の声が耳に届いた。

「ふーん。なるほどそういうことね」
「「っ!?」」

 その声に反応して、上条と美琴はパッと互いの身を離した。
 しかし、時すでに遅し。、声の主はニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべている。

「遅いから心配して様子見に来たんだけど、どうやらミサカお邪魔だったみたいだね。ゴメンねお姉様☆」
「ち、違うの! これはだ、大統領が……」
「そ、そう! これはあの大統領が……」
「大統領?」

 2人して頬を染めながら反論する様子に、番外個体が首を傾げる。

「どこにもそんなの見当たらないんだけど? 何、それって2人だけの隠語? もしかして子供には言えないような?」
「なっ!? そんなわけないでしょ!」
「どうしてそうなる!?」
「いやーさすがはお姉様。ミサカより胸は小さくても、やってることは大人なんだね。ミサカ見直しちゃったよ☆」

 ケラケラ笑う番外個体に、口をパクパクさせながら火花を散らし始める美琴。
 しかし、そんな火花ごときにビビってからかうのを止めるような番外個体ではない。

 結局その後、待ちくたびれた一方通行が様子を見に来るまで、番外個体にからかわれ続けた上条と美琴なのであった。
 当然、翌日の地方紙に載った写真をネタにまたからかわれたのは言うまでもない。




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