とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part01

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匿名ユーザー

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<第一章>


俺はこの頃、ある夢を見ていた。

どこか見知らぬ町で俺はとある少女と出会い、その少女に一目惚れをし、すぐさま告白をした。
だがその少女はどこか浮かない顔をして、俺の前から消えてしまう。
その後、場面がころころと変わり、最後には少女が俺ではない誰かの手によって連れて行かれてしまうのを見る。
俺は大声を出してソイツの名前を叫んだが、少女には届かなかったらしい。振り向くことさえしてくれなかった。
そして追いかけて行こうとしても、その場所からは一歩も進めず、
物語の終わりには少女のことをすっかり忘れていしまう。

そんな夢を、ここ連続して嫌になる程見ていた上条も、今日に限って眠れない。


(こんな惰弱なままでいいのか、俺っ!明日にはアイツに告白するんだぞ…)
―――そう、夢ではない現実の上条にも思い人がいるのだ。

その少女の名前は御坂美琴。
学園都市における超能力者。それも第三位の『電撃使い(エレクトロマスター)』
肩書きは他にいくらでもあったのだが、共通の目的のためにそれら全てを放り出して、
最後の戦いまでずっと傍にいてくれた。


そんな彼女のことをいつの間にか好きになってしまい、ここのところは彼女に逢うだけで
その日どんなことがあっても、幸せな一日であったと思える程である。

そんな上条が今まで告白できなかったのには理由があった。
上条には不幸体質がある。その上、富も地位も学もなく不良高校生のレッテルを貼られている上条が、
何でもできて優秀な美琴のお荷物になることがどうしても我慢できなかったのだ。
そこに追い討ちをかけたのが、今回上条が見ている夢なのである。

(あぁ~~~、くそっ!もう寝る!絶対寝てやる!)

何とか気合いを入れなおした上条はその後、
枕に鼻を押さえつけて、深い眠りにつくことが出来た…


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(ここは…どこだ……)

気が付くと、俺以外何もない空間へと辿り着いた。
何もない、というよりは辺り一面が銀世界で、数メートル先すら見通せないような場所だった。

しばらく歩いていた上条の目の前に、一人の少女が現れた。
少女は泣いていた。何も残されていない、誰の目にも留まることのないこの空間で…

(…ひょっとして、--か?)

上条が知っているその人物には到底見えなかったが、確かに肩を震わせて今もまだ泣いているのは--であった。
呼びかけるのを躊躇っていた上条だが、彼女が誰かの手に引かれるようにして彼の前から消えていくのを見て
思わず叫んだ。

(--!待ってくれ…!俺を、一人にしないでくれ!)

叫んだつもりだったがやはり声にはならかった。
俺の眼に映っていたその世界は大きく揺れ動き、俺は浸食する闇に飲み込まれていった…

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ピピピ、ピピピ、ピピピ、ピ…

(…5時か)
セットしていた携帯のアラームが鳴る。おそらくハワイにいた時の時差の関係で、
いつもよりも早く起きてしまったようだった。
――最悪の朝が来てしまった。結局寝られたのはおよそ三時間程度であろう。
しかし、いつもの起床時刻よりも随分前に起きてしまった上条は、もう一度夢の中に行くことはできなかった。


午前7時。天気は曇りのち雨。運勢は勿論最悪。

「不幸だ……」

だが、今日決めてしまわないと駄目な予感がした。
だから俺は御坂に「聞かせたいことがある」という内容のメールをして、
いつもの自販機のある公園で待ち合わせすることにした。

…しかし、今日提出しなければ『留年ほぼ確定』という課題をすっかり忘れていたこともあり、
約束の30分後に公園に到着した上条だが、いまなお美琴の姿が見当たらないのである。
メールの返事こそもらっていないが、常磐台の朝は早いと聞いている。
先に行ってしまったのではないかと上条は無理矢理考え、公園をあとにするまいかどうか、
迷っているときに美琴がやって来た。



「おっす、御坂」
「…おっす」
「どうしたんだ?約束の時間はとっくにすぎてんぞ。お前らしくもない」
「…」

軽くいつも通りの挨拶をして、少し元気のない美琴を気遣って上条が声をかける。
しかし、美琴の返事は返ってこない。

…しばらく上条も黙り込んで通学路を歩いていると、美琴が喋り出した。

「いや~、昨日ちょっと運がつきすぎてね?
 商店街のくじ引きで三等のプレミアムゲコ太を三つも取っちゃったのよね~」

おそらくその事で、今日の運も使ってしまったな~
というのが、彼女に今日元気がなく、朝も遅刻ぎりぎりだった原因だろうと上条は推測した。

…彼女は『運』といった一種のオカルトに対してあまりこれまで関心を持てずにいたのだが
上条の右手、幻想殺しに関するオカルトに触れたことで急速に理解を深めていった。
この前はインデックスにも多分右手のことについて聞いていたのをちらりと見たので、上条はこう判断したのだ。



「それで、結局今日の運を神様から返してほしかったから、そのゲコ太を友人にあげちゃったのよ。
 あーあ、もったいないことしたなー」
「…ほぉう。ちなみにその友人というのは一体誰のことでございましょうか?」
「ひ・み・つ!…まあ嫉妬してるんなら、もう一個のやつもアンタにあげるけど、ねぇどうする?」
「ああ、はいはい。オマエがそんな簡単にあげちまうってことは、どうせたいしたことないんだろ?
 だったらいらねぇよ、んなの」
「…そう」

(なに言っちゃってんの俺ーーーーー!!!)
上条の心の叫びである。
本当は欲しい。凄く欲しい。だけど自分以外、もしかしたら男に、そんな大切なものを贈ってしまう
美琴の行動に若干いらっときてしまったのだ。
上条は昨日降った大雨でできた水溜りの水面を傘で大きく前にはね飛ばしている。
  ・
  ・
  ・
「…でもね、神様は応えてくれなかったみたい。昨日嫌な夢見ちゃったのよね」
「……あー俺もこの頃変なの見るんだよな。今朝も見たし」

上条として話題がそっち方面に行くのは、今朝見た夢の内容を思い出しかねないので
何とか阻止したいのだが、話題を振ろうとしてもがんじがらめになってしまうので会話が弾まなかったからだ。



「へぇー、ちなみにどんな夢なの?美琴様直々に評価してあげるわよ」
「オマエが俺の元から離れてしまう夢…………あっ」
「えっ」

…やっちまった。
夢の内容に触れない…触れない…と呪文のように唱えていたはずが、つい口に出てしまった。

しかし、言ってしまったのはしょうがない。嘘ではないのだ。

(…本当は夜景の綺麗なところとかで言いたかったんだが、仕方ねえ!こうなったら当たって砕けろだ!)
上条は大きく息を吸って、動揺している美琴の手を取り、大きな声ではっきりと伝える。

「御坂、俺はオマエが好きだ!こんな俺だが付き合ってくれ!」

即席の告白だが、正直な気持ちだった。ただそれだけあれば超えられる壁だと思っていた。
―――このときまでは。

「そ、そうなの…」
「ああ、もう一度言う。御坂、俺と付き合ってくr「危なぁ~~い!!!」…へっ?」


突如、大きな叫び声が聞こえたと思って振り返る。
そこに暴走した大型バイクが突っ切ってきた。

「くそっ……!!」
「避けて!!!」

ドン!……ガシャーーーン!

一瞬反応が遅れた上条を美琴が押し倒す。
その間に、バイクは隣の洋品店の窓ガラスに突っ込んだ。

――
―――



間一髪で助かった上条は、水溜りに飛び込んだ自分のことは後回しにして、
自分の上に覆いかぶさっている美琴の状態を確かめた。

「ふ~、間一髪だったな。ありがとうな、御坂。怪我とかしてねぇか?」
「…」

見た限りではどこにも怪我らしいところはない。
だから、取り敢えず安堵した上条は彼女が返事をするのを待っていた。

「なんで…」
「?何だ、御坂?」

声が小さく聞こえない。
きこえない。
キコエナイ。


「なんで、そんなに平然としてるのよ!!! あんた死にかけたのよ!
 アタシのことより…もっと自分のことを大切にしなさいよ!!!」


そう言い放つと、アイツは俺が起き上がるのを待たずに行ってしまった。
俺は夢と同様に呼び止めようとしても、アイツは振り返ってさえもくれなかった…。






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