とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part04

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匿名ユーザー

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上条は下駄箱で靴を取り出して、外靴と履き替える。
中靴は泥まみれで、汚かったが外靴は買い換えたばかりなのでとても綺麗だ。
ジロジロと奇異と蔑みの視線を浴びて自分の教室へ向かう。
大罪人とは同じ無能力者でも嫌い、そして差別するものなのだと。
たった三人の大罪人の1人と同じ学校だなんて、怖いと思うのも当然だろう。
上条は少し溜息をついて、教室のドアを開ける。
外とは違い、教室の中では皆が上条に挨拶をし、そして話しかけてくる。

「おう上条!訊いたぜ、御坂美琴の専属黒服学生になったんだろ?いいなー」
「給料貰えるんでしょ?上条くんの奢りで焼肉行こうよ!」
「おい、やめとけよ。上条は自分の為に金使えよ?でさ、余裕できたらクラス全員で焼肉行こうぜ?……お前は全く……金遣い荒いんだよ」
「う、うるさいなぁ化粧品を買ってたら自然に無くなるんですぅ」

少女は舌をベーッという風に出して、少年を呆れさせた。
良かった、いつも通りのクラスだと心を撫で下ろす上条。
担任の月詠小萌が出席簿を持って現れ、台が置かれた教壇から目から上の部分だけを出して、背伸びをしながら黒板に何かを書いていく。
カッカッカッというチョークの音が静かな教室に木霊する。
生徒たちはいつもとは異なるユニークで楽しげなハズの担任の醸し出す雰囲気に固唾を呑みながら、その木霊するチョークの音に耳を傾けていた。
クルッと踵を返した小萌はニッコリと生徒たちへ微笑み、そして黒板に大きく書かれた文字を指さした。

「上条ちゃんの専属黒服学生就任祝いとして、今日はシトルセルク地域へ焼肉屋にパーティーなのです!もちろん、上条ちゃんは先生の奢りですよー?」
「……小萌先生はいつも唐突なんだから、さぁ皆!行ける人はこのボードに署名しなさい!自腹だけど」
「……僕は行くでカミやん!」
「俺も行くにゃ―!」
「俺も!」
「あたしも!」

とクラスの大半がその上条就任祝いパーティーに参加し、放課後シトルセルク地域でも有名な焼肉店へ向かった。
シトルセルク地域とは無能力者地域とコーラスフラン地域と隣接している商業的施設が多い地域であり、その焼肉店は1人1500円という安さで様々な
サイドメニューも含めてオーダーバイキングとなっていた。
相当余裕の無い者以外は行けるだろう。

                           *

「ほう……?それで遅くなったと」
「すみません美琴様わたくしめも反省しておりますのでどうかお許しをォォォ!!!」
「許さん、黒子殺れ」
「わかりましたの」

黒子、と呼ばれたものは上条を片手で投げて、そしてコンクリートの壁に磔にされた。
数本の鉄矢が上条の制服を貫通しており、コンクリートに螺子の様に打ち込まれていた。
両足、両手の服が壁と縫い合わされていて、下手に身動きすると怪我をする可能性があった。

「くそっ、なんだこれ!?」
「わたくしの『空間移動』の能力ですの。これからどうぞよろしく、専属黒服学生様?」
「て、テメェ!こ、これどうに……って御坂さん!?どこに行くんですか!置いてきぼりにはしないでってそういうプレイなの?おーいおーい!」

上条はそれから二時間程外で時間厳守についての説明を嫌味ったらしく白井黒子に言い聞かされ、新人学生女中の佐天涙子に「うわぁ」とかなり引かれた
視線を向けられた上条だった。
そして早朝、学生女中の最低起床時間は5時30分であり、上条はその一時間前に起きて風呂場の掃除をしていた。
無駄に広い浴場を一時間かけて掃除し、そして学生女中達を起こし、白井黒子に言いつけられた調理師免許と理容師免許取得の為に30分だけ勉強するという



仕事をこなし、7時に御坂美琴を起こす。
そんな上条は昨日徹夜で縫った制服に腕を通し、誰もいない屋敷の鍵をしめて学校へ向かう。

「あれ、佐天さん。どうしたんだ」
「ああ、チーフ……。ちょっと転んで」
「それほど酷くないな。絆創膏……あったな。自分で貼れるか?」
「ありがとうございます」

昨晩、大雨が降ったのか地面はドロドロで、佐天のスカートは泥まみれになっていた。
上条は遅刻寸前だったが、何かを決意したというか思い立ったのか佐天の手を掴んで屋敷まで戻る。

「え?」
「さぁ、脱いで」
「へ?」
「だから、ドロドロだから洗うんだよ。少しっていうかかなり遅刻するけどいいだろ」
「ああ……じゃあ出てって下さい」

上条はポカーンと、口を大きく開いて「なんで?」と訊いた。
佐天は顔を真っ赤にして「見る気ですか!?」と叫んだ。そして学生鞄を上条の顎元にぶつけて脱衣所のドアをバン!と大きな音を立てて閉める。
いてて、と顎をさする上条は納得した様な表情を浮かべて脱衣所から聴こえてくる布がこすれる音を訊きながらその壁にもたれた。

「なぁ、悩み事でもあるのか」
「……どうしたんですかチーフ。急に」
「いや、今朝も思い悩んでただろ」

神妙な雰囲気になった屋敷。
佐天はふぅ、と一息おいてから上条にその心中を告白する。

「あのですね、実は罪人になったっていうのは嘘なんです。知り合いが大罪人になっちゃって。
それにあたしも関わってたんだけど、罪をかぶってくれて。
罪名は『国家反逆罪』ですよ?別に学園都市は国家でもなんでもないのに」
「……大罪人か。俺と同じだな」
「チーフも……大罪人?」
「ああ、有名な話だ。『第七学区内乱事件』で起こった『CTRR事件』。俺が起こしたんだ」
「史上最悪と言われてるアレですか。詳しい事は……解ってませんよね。アレってどういう事何ですか?」

佐天の問いには答えない。
着替え終わった佐天は少し暗い表情で脱衣所から出てくる。寝衣だ。
制服はすぐに洗濯機に入れて、急速に洗い始める。
佐天はコレ以上訊くのは少し失礼か、と考え違う話題を探していた。
彼女自身、『何故、御坂美琴の学生女中に志願したのかという問いは答えれない』訳なのだが。

「何か、喉乾いたな。お茶沸かすの忘れてたし……買ってくるわ!」
「はぁ、そうですか……」

上条は財布を持って、コンビニに向かう。
この時間帯だと自治団体に声をかけられそうだが……上条は大丈夫かと楽観的に見て走る。
その道中で、彼女を見た。御坂美琴。
しかし常盤台の生徒がこの時間帯にここに居るのだろうか?まだ9時過ぎとはいえ、この時間帯にはおかしい。
軍用ゴーグルを頭につけて、サブマシンガンを片手で持って辺りを見回していた。

「おい、御坂?」
「はい、なんでしょうか。とミサカは声をかけてきた見知らぬ少年に対し、警戒心を込めながら返事します」
「……御坂じゃ……無いのか」
「ミサカですが?」
「訳わかんねぇ、もしかして御坂の妹か何かか?」
「そうですね、といっても遺伝子レベルで同じですが」
「それにしても似てるなー、双子か?」

上条は舐め回す様に御坂の妹と言い張る少女を見る。

「おっと、もうこんな時間ですか。とミサカは時間に厳しい側面を見せながら目的地へ向かいます」
「?、何かするのか?」
「何って―――――廃棄処分ですよ」

意味が分からなかった。
しかしサブマシンガンを持ちながら、中央通りを徘徊するのはいかなるものか、と上条を呆れされる。
引きつった笑みを浮かべながら御坂妹を見送った上条はデジタル腕時計を見て焦りながら何も買わずに屋敷に戻る。

                                   *


「た、ただいまーっ」
「遅かったですね、もう乾いたんで行きますよ?チーフはどうするんですか」
「俺はもう今から行くのも面倒くさいし、このままサボるわ」
「そうですか、じゃあ」

上条は佐天の居なくなった屋敷の個室のソファーにダイブした。

「アレ……マジ誰だったんだ」



第三話 『廃棄処分される人形達』


上条は、目を大きく開いていた。今日は休日だ。しかし佐天涙子は補修、御坂美琴はゲコ太というカエルキャラクターを買い集めるとかで居なくなり、白井黒子は能力開発についての講習があるらしく上条は1人だった。

「……散歩でも行くか」

散歩なんて、超貧乏時代なら出来なかっただろう。御坂様々だな、と感謝しながら靴をはいて外に出る。
眩いばかりの光がコンクリートを反射して目に入ってくる。
眉をひそめながら歩き出す。
休日とはいえ、忙しい学生も多いらしく上条は呑気な表情で眺めながら大きな欠伸をした。
ふと、上条は『違和感』というか懐かしい感じがし、後ろを振り向いた。
軍用ゴーグルを頭に装着している少女は誰だ。御坂美琴だった。昨日の少女か?と悩んだが御坂美琴にしか見えない。
まさか娯楽地域のヲタクタウンまで軍用ゴーグルを買って行っていたのか、と上条は裏路地に消える御坂をこそこそと追いかけていく。
しばらくし、御坂は学園都市でも『選ばれた』研究所の裏口に入っていき、上条もまたその裏口から追う。

「……誰ですか?」
「見つかったか……?」

息を潜める。ガチャッと何かの音がして革靴の音を木霊させながら近付いて行く。
突然、ババババババ!!!と銃声がすると上条の隠れていたコンテナに衝撃が走る。
キュッ、と方向転換した音を上条は聞き取ると御坂じゃない誰かのサブマシンガンを蹴り飛ばす、が。吹き飛ばされたサブマシンガンは磁力により御坂ではない誰かの手に戻る。
そして銃弾を装弾し、再び上条目掛けて引き金を引く。
上条は異能を持つ人間じゃない。到底、銃弾を避けるスキルも止めるスキルも、弾き返すスキルもない。
となると隠れて、好機を探すしか無い。

「嘘だろ!?」

上条の肩に跳弾がかする。




「計算しています、とミサカはネットワークを駆使しながらあなたを処理します」
「ネットワーク、どういうって!危ないな……」
「甘いですね、とミサカはあなたの行動を嘲笑します」

鋭い蹴りが上条の腹部に突き刺さり、地面に膝をついて倒れる。
見下ろす形になったが、少女は上条を踏みつけてサブマシンガンを頭部へ向けた。
引き金を引けばこの少年は簡単に死ぬことになる。

「お前がッ!甘い!」

上条は少女の足に護衛用に渡されていた軍用ナイフを突き刺し、痛みに支配された少女の苦痛の表情を見ながらも左腕で少女の右頬を殴り飛ばす。
ゴリッ、という鈍い音が骨から聴こえ、少女はコンテナに体を打ち付けた。
少女の頭から軍用ゴーグルを外して、上条は片目で除く。中は電子線や磁力の流れなどを確認するモノで上条の周囲からも微弱な電磁波が観測された。
上条は更に奥底へ進んでいく。大きな空洞に出て、鉄製の階段のカツン、という音が響き渡る。
軍用ナイフと殺傷力の低いフリントロック式のゴム弾を持っていたが、使う機会はまだありそうだと固唾の呑んで先へ進む。
機械音がどこかからきこえてくる。
それに合わせてグチャ、ガッ、グショッと妙な音が聴こえてきた。上条はそこから漂う血臭に吐き出しそうになった。
唐突に、銃弾が上条の肩を貫く。

「おいおい、なんで一般人がこんな所にいるんだよ」
「……だ、誰だ……ッ」
「俺か、俺は木原数多っていうここで『お給料』を貰ってるしがない科学者(サラリーマン)だよ」


                                   *

「お前もあの中に入りたいのか?」
「……くっ」
「ああ、そうか。撃ったんだったな。血液不足だ、もうすぐ楽になれるぞ。あの中ではな、出来損ないの人形が廃棄処分されてる。
まずは毒ガスで殺し、大型のプレス機械で骨までグチャグチャにする。簡単だろ?本当はとある実験で使われるハズだったんだが」
「さ、さっき俺が。倒した奴は?」
「コンテナの周りで倒れてた奴か。10032号だった気がするわ、記念すべき10000体目の廃棄処分だ。来週には11000号まで処分する」
「……な、なんだそれは?アイツ、御坂に似てなかったか?」
「そりゃそうだろ、超電磁砲の体細胞で組み上げられた軍用クローンだ。だが、二年前の大規模予算修正で、軍用クローンは必要ないと判断されてな。
絶対能力者進化計画に使うつもりが、上の連中が決められた研究所しか使わないモンだから樹形図の設計図の使用許可は降りない。
アレが無かったら、どうしようもない。処分するしか道は無いな」
「クソ……ッ勝手なことしやがって」


上条の顔に血色は無かった。真っ青で今にも死にそうな。
肩からは血が垂れていて、致命傷では無いが放っておけば死んでしまう。
最後の力を振り絞って、ポケットからフリントロック式のゴム弾を取り出す。ある程度の衝撃を加えると電気が発生する仕組みだ。
しかし木原数多は動じない。白衣のポケットから拳銃を取り出して、上条の頭へ突きつける。

「フリントロックか、今時そんな珍しいモンがあるとはなァ」
「……木原数多、俺に協力しろ」
「……頭大丈夫か。お前、自分を撃った相手に協力を頼むなんてよ!!」
「お前は、この、現状に満足してない。違うか」
「大した洞察眼というか。仕方ねぇな、協力してやるよ幻想殺し(イマジンブレイカー)!」

互いに銃をしまう。上条は壁をつたってまずは病院へ向かおうとしていた。
木原数多はメモ帳に走り書きで書いたモノを上条に手渡し、手を振って未だ血生臭い廊下を歩いて行く。
上条は何度も意識を手放しそうになりながらも、一度訪れた事のある病院へ入っていく。
人は多く、上条の怪我を見ると人は絶句する。待ち時間はそれ程長くなかった。
上条は待合室でニヤニヤと笑う彼を睨みつけた。偶然か、二度と逢いたくなかった人物が目の前にいた。

「垣根帝督……」
「なんだ、前の様に帝督兄ちゃんって呼んでくれないのかよ」









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