とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part07

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第2章 ③決断と信頼と…


「ただいまー」

上条は三日ぶりとなる我が家に足を踏み入れる。
すると同居もとい同棲している恋人の美琴が隣からおかえりと声を掛ける。
入院している三日間、美琴は学校がある時間以外は付きっ切りで上条の看病をしていた。
看病といっても腕のいいカエル顔の医者のおかげで別段不便はなかったのだが、美琴はとにかく上条の世話を焼きたがった。
それはもう上条と美琴を二人きりにさせないために
上条の見舞いという名の監視に常に来ていた黒子が顔ドラムするほど甲斐甲斐しいものだった。
そして美琴や黒子がいない間の時間、上条は基本的に打ち止めと遊んでいることが殆どだった。
打ち止めくらいの年頃の少女が何をして遊ぶのか上条は分からなかったが、やっていたのは所謂ママゴトだった。
一方通行も病院に顔を出していることが多かったので三人で登場人物を演じることになる。
一方通行がママゴトというのはどう考えても無理があったのだが、一方通行は基本的に人との接し方を知らない。
それ故にどうやって妹達に償えばいいのかも分からない。
それはとても寂しいことだと思う。
でも一方通行は少しずつだが自分を変えようと努力を続けていた。
それとママゴトに付き合うことは少し違うぞと上条は心の中で少しツッコミながらも
不器用な優しさを見せ始めた一方通行の変化を上条は好意的に捉えていた。
入院中、上条は一方通行と二人きりで話す機会が何回かあった。
一方通行はその能力ゆえに周りから疎まれ、過酷な実験を強いられる孤独な日々を送っていた。
今の上条は覚えていないが、それは昔の上条の過去に通じるものがあった。
その過去が一方通行がしてきたことの言い訳になるわけではない。
しかし一方通行も歪んだ学園都市の被害者の一人といえるかもしれなかった。
だから上条は一方通行が道に迷った時は導いてあげようと思っていた。
別に自分が一方通行より優れているからと考えたわけではない。
良い方向に向かって変わり始めた一方通行だが、その根本にあるものは未だ不安定だ。
自分が常に正しいとは思わないが一方通行の添え木になるくらいは出来るかもしれない。
だから退院した後も偶に会う約束を上条は一方通行と交わしたのだった。

そして無事に我が家に帰ってきた上条はというと何故か正座をさせられていた。

「あのー、美琴さん。
 何故に上条さんは正座させられてるんでしょうか?」

「本当はもっと早く聞きたかったんだけど、あの石人形って超能力じゃないわよね?」

ギクッ

「でも当麻はまるで右手が最初から効くことが分かっているように、あの石人形に向かっていった。
 さて問題です。
 当麻君は何か美琴センセーに隠し事をしている、○か×か?」

「ば…」

上条がそう言い掛けると共に美琴の髪の毛の先に蒼い電撃が帯電する。

「ひぃっ」

「…冗談よ」

そう言うと、美琴は帯電していた電撃を収める。

「…でも隠し事はやめて。
 確かにこの間は当麻を守りきることは出来なかったけど、それでも私は…」

上条が美琴の顔を見つめると、その瞳には涙が浮かんでいた。
美琴は上条が銃弾で倒れたのを自分のせいと責めていた。
美琴は電磁波によるレーダーで常に辺りを警戒しておくことが出来る。
しかしながらシェリーの接近に気付かずに上条を銃弾から救うことが出来なかった。
今回は偶々無事だったが当たり所が悪かった可能性を考えると、美琴は震えを止めることが出来なかった。
そして上条は立ち上がると、今も両腕を抱えて震える美琴のことを優しく抱きしめる。
美琴は強い、しかし上条のことが絡むと途端に弱くなる。
それは上条に何処か完全に依存している故なのだが、それは仕方ないと上条は思う。
あれだけの悪夢の中にいたのだ、自惚れではなく美琴にとって一番大事な存在である自分に何かあったら美琴は完全に壊れるだろう。
そして上条も美琴に何かあったらと思うだけで震えが止まらなくなる。
それは周りから見たら互いに依存しすぎている歪な関係だと思うかもしれない。
しかしながら本当に互いを大事に想っているからこそ生まれた関係だと言うことも出来る。
だから上条は決断しなければならない。
美琴を危険に巻き込むか、それとも何かあった時に美琴が壊れてしまうのを防ぐかを…



「…俺は怖いんだ、美琴を危険に巻き込むのが。
 本当は学園都市に喧嘩を売るのだって思い留まって欲しいくらいだ。
 でも美琴は優しいから、絶対に計画を止めないことも分かってる。
 だから俺は美琴のことを傍で支えることを決断した」

上条は美琴を抱きしめながら自分の胸中を吐露するように言う。

「でも今回の件は、完全に俺がターゲットにされていた。
 だから無関係な美琴を巻き込んでいいか分からないんだ」

「でも!!」

「分かってる。
 俺が美琴を傍で支えたいと思ってるのと同じように、美琴が俺のことを想ってくれてるのは…」

「…うん」

美琴は返事をして上条のことを力を入れて抱きしめ返す。

「俺はさ、美琴がいなきゃ駄目なんだよ。
 最初は支えてあげたいって気持ちが強かった。
 でも今は美琴のことが愛おしくて仕方ないんだ、美琴に何かあったらと思うと震えが止まらなくなるくらい…」

「私も同じだよ、私の知らないところで当麻に何かあったら…」

そう言うと美琴の体はカタカタと震え始める。
上条は美琴の震えが止まるように美琴を抱きしめる手に力を入れる。

「…俺はこれから残酷な決断をする。
 俺は最低な男だ、一番大事な女を自分の都合に巻き込もうっていうんだから…」

「当麻は最低なんかじゃない。
 私と当麻は一心同体だから、一人だけじゃ生きられない。
 だから私は何があっても当麻に付いて行く」

「美琴…」

そして上条は語り始める。
科学の街である学園都市と正反対の世界に位置するオカルトの世界の異能…魔術について。

「魔術…」

「信じられないか?」

「自分で言うのもなんだけど、私はガチガチの科学脳だから今までオカルトなんて信じたことはなかった。
 でも実際に超能力とは違う力を見たわけだし…
 それに単純って思われるかもしれないけど当麻の言うことだもん、信じるしかないじゃない」

「今回の件で、何で俺が狙われたかは分からない。
 記憶を失う前の俺なら何か知ってるのかもしれないが…」

何処か焦燥感に駆られている様子の恋人の顔に手を添えて美琴は言う。

「当麻も不安なんだね。
 でも当麻が常に私の傍にいてくれるように、私も必ず当麻の傍にいる。
 だから一人で気負わないで、私が当麻のことを支えるから」

「…ありがとうな、美琴がいてくれて本当に良かった」

「それはこっちのセリフよ。
 ありがとう、いつも私のことを傍で支えてくれて」

上条と美琴は互いの顔を見つめ合い、自然と互いの唇を重ねあった。
初めての口づけを交わした二人は何処かソワソワとしながらも、
その日の残りの時間は互いの温もりを確かめ合うように体を寄せ合って過ごした。
そして初めて美琴がやって来た日と同じように二人は手を繋いで眠る。
しかしやはり初日と同じように美琴が上条の布団に潜り込んできて、上条は本能との激しい戦いに臨むことになるのだった。
だが平穏な日々は中々続かない。
それからたった数日後、上条と美琴は学園都市内でインデックスとは違う一人のシスターと出会うことになる。
学園都市への不法侵入者である彼女を巡って二つの組織、そして学園都市の治安部隊まで巻き込んだ波乱が起ころうとしていた。
誰が味方で誰が敵かの判断が混迷を極める中、一人のシスターと一冊の魔道書を巡っての激闘が始まる。








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