第2章 ②科学と魔術
「最優先ターゲットの幻想殺しをこんなに早く発見できるなんてついてるわ」
それは女の声だった。
しかし声の出所が分からない。
上条と美琴が訳が分からず辺りを警戒するように見渡していると、二人の前に突然一人の少女が現れた。
上条は少女に対して警戒するように身構えるが、よく見ると以前会ったことがある少女だった。
しかし声の出所が分からない。
上条と美琴が訳が分からず辺りを警戒するように見渡していると、二人の前に突然一人の少女が現れた。
上条は少女に対して警戒するように身構えるが、よく見ると以前会ったことがある少女だった。
「お姉さまー!!」
少女は上条と美琴の間に割り込むように美琴の腕に抱きつく。
「黒子!?」
「お姉さま、ここのところ黒子に全然構ってくれなくて寂しかったですの。
黒子のことを放っておいて、この殿方もとい類人猿と逢瀬を重ねてたなんて…
ハッ、まさか寮をお出になったのもこの類人猿が原因なんじゃ!?」
黒子のことを放っておいて、この殿方もとい類人猿と逢瀬を重ねてたなんて…
ハッ、まさか寮をお出になったのもこの類人猿が原因なんじゃ!?」
突如現れた少女…白井黒子は甘ったれるような声で美琴の肩に頬ずりしながら言った。
「ちょっ黒子、今はそれどころじゃ…」
美琴は直感からこの場を何か得体のしれない空気が包み込んでることを感じる。
そして次の瞬間…
そして次の瞬間…
「何だか余計な者までいるみたいだけど――ま、全部ぶっ殺しちまえば手っ取り早えか!!」
謎の女の声と共に突如として巨大な腕が現われ美琴と黒子を叩き付けるように腕を振るった。
「危ない!!」
上条は咄嗟に二人のことを突き飛ばし代わりに巨大な腕に叩き付けられ、その体は大きく吹き飛ぶ。
体を庇うように腕を交差して直接体に加わる衝撃を和らげたものの、
上条の両腕は折れるのではないかというくらい軋み、その一撃の重さは通常の人間と比較にならなかった。
飛びそうになる意識を押し止めて上条は謎の腕と対峙する。
美琴と黒子も黒子のテレポートにより謎の腕との距離を取っていた。
そしてまるで床から這い出るように謎の敵の正体が徐々に露になる。
それは石像だった。
しかし只の人形ではない。
身の丈4mを越す巨大な人の形を模した化け物だった。
体を庇うように腕を交差して直接体に加わる衝撃を和らげたものの、
上条の両腕は折れるのではないかというくらい軋み、その一撃の重さは通常の人間と比較にならなかった。
飛びそうになる意識を押し止めて上条は謎の腕と対峙する。
美琴と黒子も黒子のテレポートにより謎の腕との距離を取っていた。
そしてまるで床から這い出るように謎の敵の正体が徐々に露になる。
それは石像だった。
しかし只の人形ではない。
身の丈4mを越す巨大な人の形を模した化け物だった。
「な、何なんですの!?」
突如として現われた巨人に美琴も黒子も驚きを隠しきれない。
念動能力か何かで人形を組み立て操っている可能性も視野に入れたが、
少なくてもこれだけ大質量の物質をここまで精密に組み立て操る能力者の話など聞いたことがなかった。
そして一方の上条は敵の素性とまではいかないが、敵の使っている力が恐らく学園都市のものでないことには気付いていた。
魔術師…超能力とは違う異能を操る者達。
しかしその魔術師が自分を狙ってくるのかは理解できない。
アミューズメント施設内が突然現われた巨大な人形によってパニックに陥る中、上条は石像との距離を測りながら対処法を思案する。
敵が上条を狙っていると宣言した以上、下手に逃げると逃げた先が戦場になってしまう可能性がある。
客の避難が進んで一般人が殆どいなくなった今、ここから戦場を移すことは得策ではなかった。
念動能力か何かで人形を組み立て操っている可能性も視野に入れたが、
少なくてもこれだけ大質量の物質をここまで精密に組み立て操る能力者の話など聞いたことがなかった。
そして一方の上条は敵の素性とまではいかないが、敵の使っている力が恐らく学園都市のものでないことには気付いていた。
魔術師…超能力とは違う異能を操る者達。
しかしその魔術師が自分を狙ってくるのかは理解できない。
アミューズメント施設内が突然現われた巨大な人形によってパニックに陥る中、上条は石像との距離を測りながら対処法を思案する。
敵が上条を狙っていると宣言した以上、下手に逃げると逃げた先が戦場になってしまう可能性がある。
客の避難が進んで一般人が殆どいなくなった今、ここから戦場を移すことは得策ではなかった。
「白井、美琴を連れて今すぐここから離脱しろ!!
コイツは俺のことを最優先ターゲットと言った。
俺がここにいる限りは、美琴が狙われる可能性は低い」
コイツは俺のことを最優先ターゲットと言った。
俺がここにいる限りは、美琴が狙われる可能性は低い」
上条は黒子に向かって思い切り叫ぶ。
黒子は上条の言うことに従おうとするが、美琴がそれを拒絶した。
美琴は黒子に頼んで、上条の隣にテレポートする。
黒子は上条の言うことに従おうとするが、美琴がそれを拒絶した。
美琴は黒子に頼んで、上条の隣にテレポートする。
「ちょっと、勝手なこと言わないでよ!!
私が当麻一人を残して逃げるなんて本気で思ってるの!?」
私が当麻一人を残して逃げるなんて本気で思ってるの!?」
「でも美琴を危険な目に遭わせるわけには…」
「危険なんてこれからやろうとしていることを考えれば避けて通れないはずでしょ!!
それに当麻は前にちゃんと自分が一人じゃないことが分かったって言ったはずよ。
私と当麻は一心同体、何があっても私は当麻一人を危険の渦中に置き去りにするつもりはないわ!!」
それに当麻は前にちゃんと自分が一人じゃないことが分かったって言ったはずよ。
私と当麻は一心同体、何があっても私は当麻一人を危険の渦中に置き去りにするつもりはないわ!!」
「美琴…」
「それに冷静に考えてよ。
敵がコイツだけとは限らない、私が逃げた先にも刺客が現われるかもしれない。
何処にいたって危険なことに変わりはないわよ」
敵がコイツだけとは限らない、私が逃げた先にも刺客が現われるかもしれない。
何処にいたって危険なことに変わりはないわよ」
美琴の言う通りだった。
美琴を危険から遠ざけることばかりを考えて、状況を冷静に判断出来ていなかった。
美琴を危険から遠ざけることばかりを考えて、状況を冷静に判断出来ていなかった。
「…何があっても美琴のことは守ってみせる」
「うん、当麻はさっきも私のことを助けてくれた。
ありがとう」//
ありがとう」//
互いに見つめ合い無限で頷く上条と美琴。
そんな上条と美琴を見て黒子は…
そんな上条と美琴を見て黒子は…
(何なんですの、その絶対の信頼関係は!?
キィー、後で絶対に懲らしめてやりますわ!!)
キィー、後で絶対に懲らしめてやりますわ!!)
と一人、場にそぐわない考えを張り巡らせているのだった。
「それじゃあ、さっさと終わらせちゃいましょうか!!」
そう言うと、美琴はポケットの中から一枚のコインを取り出す。
黒子は美琴の勇姿が見れると顔を輝かせるが、上条はコインを使って何をしようとしているか見当がつかない。
実は記憶を失ってから美琴の放つレールガンを上条は見たことがなかった。
ただ話から美琴の必殺技が上条に効かなかったことだけは聞いている。
黒子は美琴の勇姿が見れると顔を輝かせるが、上条はコインを使って何をしようとしているか見当がつかない。
実は記憶を失ってから美琴の放つレールガンを上条は見たことがなかった。
ただ話から美琴の必殺技が上条に効かなかったことだけは聞いている。
「いっけぇーー!!」
美琴がコインを親指ではじき回転するコインが再び美琴の親指に乗った瞬間…オレンジの閃光が石像に向かって突き抜けた。
そしてワンテンポ遅れて凄まじい轟音が響き渡る。
石像の胴体には大きな穴が穿っており、石像の動きは止まっていた。
そしてワンテンポ遅れて凄まじい轟音が響き渡る。
石像の胴体には大きな穴が穿っており、石像の動きは止まっていた。
「…思ったよりも大したことなかったわね」
美琴は褒めてもらえると思い上条のほうを振り向くが、上条の顔はひどく青褪めたものだった。
「どうしたの?」
「いや、昔の上条さんはよく無事だったもんだと…」
上条の言葉を聞いた瞬間、美琴の全身から冷や汗が噴出す。
(そうだ、当麻にレールガンが効かなかったことを話してたんだった!?)
絶対能力進化の実験が終了したあの日…美琴が立ち塞がった上条に電撃を放って以来、美琴は上条に電撃を向けたことはなかった。
そしてもちろんこれからも大好きな上条に電撃を放つつもりは毛頭ない。
しかし昔の美琴は上条に対して一方的な暴力を振るっただけでなく、他者を見下すような酷い発言を平然と吐いていた。
今となっては理由もなしに誰かに向かって能力を使う気もないし、
大事な友達に教わった能力が優劣を決める材料でないという考えもしっかりと美琴の中に根付いている。
だが昔の自分のことを思い出すと、自分の性根の汚さが垣間見えた気がして美琴は自己嫌悪に陥る。
自分の本質を上条に見られた気がして、美琴は何よりも上条に嫌われることを恐れていた。
そしてもちろんこれからも大好きな上条に電撃を放つつもりは毛頭ない。
しかし昔の美琴は上条に対して一方的な暴力を振るっただけでなく、他者を見下すような酷い発言を平然と吐いていた。
今となっては理由もなしに誰かに向かって能力を使う気もないし、
大事な友達に教わった能力が優劣を決める材料でないという考えもしっかりと美琴の中に根付いている。
だが昔の自分のことを思い出すと、自分の性根の汚さが垣間見えた気がして美琴は自己嫌悪に陥る。
自分の本質を上条に見られた気がして、美琴は何よりも上条に嫌われることを恐れていた。
「あの、私…」
「大丈夫、正直昔の俺が美琴のことをどう思ってたかは分からないけど、
少なくても今の俺は美琴の優しさに惹かれて美琴のことが好きになったんだ。
だからそんな顔するな、せっかくの可愛い顔が台無しだぞ」
少なくても今の俺は美琴の優しさに惹かれて美琴のことが好きになったんだ。
だからそんな顔するな、せっかくの可愛い顔が台無しだぞ」
今にも泣き出しそうな顔をしている美琴の頭を撫でながら上条は言う。
しかしそう言った上条の顔色が今度は違った意味で豹変する。
美琴が何事かと思って上条の視線の先に目を向けると…
しかしそう言った上条の顔色が今度は違った意味で豹変する。
美琴が何事かと思って上条の視線の先に目を向けると…
「私を放ってほいてラブコメを繰り広げるのは構わないですけど、あんまり人を舐めてんじゃねえぞ!!」
女の声が響き渡ると石像に穿った穴はまるで最初から存在しなかったようにみるみる塞がっていく。
そして上条たちに向かって再び進撃を始めた。
美琴が自分のレールガンが何も効果を為さなかったことにショックを受けている中、上条は敢えて石像に向かって突撃する。
そして上条たちに向かって再び進撃を始めた。
美琴が自分のレールガンが何も効果を為さなかったことにショックを受けている中、上条は敢えて石像に向かって突撃する。
「何をしてるんですの!?
自殺行為ですわ!!」
自殺行為ですわ!!」
「…確かめなきゃならないことがある!!」
もし自分の勘…過去の経験による記憶のない知識がもたらす直感が正しければ上条たちに勝ち目はない。
それを確かめるためにも上条は石像に向かって接近していく。
飛んで火に入る夏の虫のように近付いてきた上条に向かって石像は巨大な右腕を振るった。
それを上条は自分から見て左手の方角に地面を蹴って大きく避ける。
そして地面叩きつけられた石像の右手に上条は自分の右手を触れるように添えた。
それを確かめるためにも上条は石像に向かって接近していく。
飛んで火に入る夏の虫のように近付いてきた上条に向かって石像は巨大な右腕を振るった。
それを上条は自分から見て左手の方角に地面を蹴って大きく避ける。
そして地面叩きつけられた石像の右手に上条は自分の右手を触れるように添えた。
「なっ、あの殿方は何をしたんですの!?」
上条が右手を添えただけで石像の全体に亀裂が走り、やがて石像は崩れ去ってしまった。
「…幻想殺し」
「幻想殺し!?」
「当麻の右手にはあらゆる能力を無効化する能力が備わってるの」
「では以前、私の能力が効かなかったのも?」
「うん、当麻の右手のせいだと思う」
しかし上条の右手が効いたとすると、あれは何らかの能力で作られたものということになる。
だが美琴はあのような能力を見たことも聞いたことすらない。
にも拘らず上条は初めから自分の右手が有効だと言うことを知っているようだった。
上条は何か美琴が知らない世界のことを知っている…
この事件を無事に乗り越えたら上条に聞かなければならないことが出来たようだ。
だが美琴はあのような能力を見たことも聞いたことすらない。
にも拘らず上条は初めから自分の右手が有効だと言うことを知っているようだった。
上条は何か美琴が知らない世界のことを知っている…
この事件を無事に乗り越えたら上条に聞かなければならないことが出来たようだ。
(ここまでは予想通り、問題は…)
上条の悪い予感を裏付けるように女の声が再び響き渡る。
「聞いてはいたけど本当に厄介な右手のようね、何かムカつくからひき肉になるまでぐちゃぐちゃに潰してやるか!!」
女の声がそう入った瞬間、再び地面から這い出るように石像が形を成していく。
「やっぱり、いくら倒しても再生するタイプか!?」
今の上条には赤髪の神父と共闘した記憶はあっても、対峙して戦った記憶はない。
しかしながら上条の知識の片隅に赤髪の神父が使った元を断たない限り無限に回復する火の巨人のことが残っていた。
知識というよりは記憶の残り香に近いものだったが、それが敵の魔術の特性を見極めるべく進んだ上条の行動指針になった。
そして結果として上条の予感が当たった今、上条たちの取るべき行動は限られていた。
しかしながら上条の知識の片隅に赤髪の神父が使った元を断たない限り無限に回復する火の巨人のことが残っていた。
知識というよりは記憶の残り香に近いものだったが、それが敵の魔術の特性を見極めるべく進んだ上条の行動指針になった。
そして結果として上条の予感が当たった今、上条たちの取るべき行動は限られていた。
(くそっ、敵の魔術師の正体が分からない以上いくら戦ってもジリ貧になるだけだ。
何か打開策は!?)
何か打開策は!?)
その時、上条の携帯の着信音が突然鳴った。
今は携帯に出るどころではないのだが、何故かこの着信がこの状況を打破する足がかりになるような気がした。
上条は石像から距離を取り携帯を開くとメールが一通届いていた。
メールの発信主はインデックスだった。
メールには長い本文と写真が一枚添えられていた。
今は携帯に出るどころではないのだが、何故かこの着信がこの状況を打破する足がかりになるような気がした。
上条は石像から距離を取り携帯を開くとメールが一通届いていた。
メールの発信主はインデックスだった。
メールには長い本文と写真が一枚添えられていた。
とうまへ
イギリス清教から学園都市に一人の魔術師が向かった。
彼女の名前はシェリー=クロムウェル。
詳しい動機は分からないがどうやら君のことを殺害する目的で動いているらしい。
僕は君が死のうがどうなろうが構わないのだけれど、君が死ぬとあの子が悲しむからね。
詳しい話は理解出来ないだろうから省略するけど、
彼女が使役するのはゴーレム…いわゆる土人形という奴だ。
人間ではなく天使を模すことで通常よりも強力な力を得ているらしい。
基本的にいくら打ち倒しても復活するのは僕の魔女狩りの王と同様だ。
ただし魔女狩りの王がルーン文字の書かれた触媒が弱点になるのに対し、
彼女のゴーレムが彼女の意識がある限りいくらでも復活する。
だから彼女のゴーレムを止めるには彼女の意識そのものを刈り取らなければならない。
君が現在どういう状況にいるかは分からないけど取り合えず彼女の写真を添付しておいた。
彼女を悲しませないためにも役に立てたまえ。
イギリス清教から学園都市に一人の魔術師が向かった。
彼女の名前はシェリー=クロムウェル。
詳しい動機は分からないがどうやら君のことを殺害する目的で動いているらしい。
僕は君が死のうがどうなろうが構わないのだけれど、君が死ぬとあの子が悲しむからね。
詳しい話は理解出来ないだろうから省略するけど、
彼女が使役するのはゴーレム…いわゆる土人形という奴だ。
人間ではなく天使を模すことで通常よりも強力な力を得ているらしい。
基本的にいくら打ち倒しても復活するのは僕の魔女狩りの王と同様だ。
ただし魔女狩りの王がルーン文字の書かれた触媒が弱点になるのに対し、
彼女のゴーレムが彼女の意識がある限りいくらでも復活する。
だから彼女のゴーレムを止めるには彼女の意識そのものを刈り取らなければならない。
君が現在どういう状況にいるかは分からないけど取り合えず彼女の写真を添付しておいた。
彼女を悲しませないためにも役に立てたまえ。
添付された写真には痛んだ金髪の髪に褐色の肌をした女性が写っていた。
上条はインデックスとステイルに心の中で感謝の言葉を述べ、美琴たちの場所へとゴーレムから距離を取る。
美琴は石像に向かって雷の槍を放ち続けているが、ゴーレムの体を少し削るだけですぐに修復されてしまう。
上条はインデックスとステイルに心の中で感謝の言葉を述べ、美琴たちの場所へとゴーレムから距離を取る。
美琴は石像に向かって雷の槍を放ち続けているが、ゴーレムの体を少し削るだけですぐに修復されてしまう。
「敵の正体が分かった、この写真の女だ」
上条は携帯の画面が二人に見えるように差し出す。
「恐らくこの女は学園都市の何処かに潜伏している。
コイツを見つけて叩けば、この石像も動きを…」
コイツを見つけて叩けば、この石像も動きを…」
上条がそう言い掛けた時、違和感を感じる。
上条がふと向けた視線の先に一人の女が立っていた。
遠目からではその顔を判別することは出来ない。
初めは逃げ遅れたアミューズメント施設の客の一人かと思ったが纏っている気配が何処か異質であった。
上条は無意識に美琴と黒子を庇うように二人の前に立つ。
上条がふと向けた視線の先に一人の女が立っていた。
遠目からではその顔を判別することは出来ない。
初めは逃げ遅れたアミューズメント施設の客の一人かと思ったが纏っている気配が何処か異質であった。
上条は無意識に美琴と黒子を庇うように二人の前に立つ。
「Intimus115」
女が一言そう言うと共に辺りに乾いた音が響き渡った。
(熱い…)
上条は脇腹に燃えるような熱を感じる。
その熱はやがて痛みとなり、上条の全身を今まで感じたことがない激痛が襲った。
その場に崩れ落ちる上条に向かって再び乾いた音を発する無機物が向けられる。
その熱はやがて痛みとなり、上条の全身を今まで感じたことがない激痛が襲った。
その場に崩れ落ちる上条に向かって再び乾いた音を発する無機物が向けられる。
「え?」
美琴は口でそう発しながらも、その対応は至って冷静だった。
再び上条に向けて発射された銃弾を磁力の壁を展開することによって防ぎきり、銃弾は上条に届くことなく地面へと転がる。
しかし冷静に対処しながらも心の中は何も考えられないほど空白で埋め尽くされていた。
再び上条に向けて発射された銃弾を磁力の壁を展開することによって防ぎきり、銃弾は上条に届くことなく地面へと転がる。
しかし冷静に対処しながらも心の中は何も考えられないほど空白で埋め尽くされていた。
「うーん、幻想殺しには下手に異能で責めるよりもこの手の武器のほうが有効って効いてたんだけど本当だったわね。
だが忌々しい超能力者が邪魔をしやがって、さっさと殺されやがれ糞野郎が!!」
だが忌々しい超能力者が邪魔をしやがって、さっさと殺されやがれ糞野郎が!!」
女は先ほど上条の携帯に写っていたシェリー=クロムウェルだった。
(まさか俺を確実に殺せるタイミングを見計らって潜伏してたのか?
どうしてそこまでして俺を…)
どうしてそこまでして俺を…)
上条が美琴の顔を見ると戦える精神状態ではないことが見て取れた。
自惚れでは無く自分が美琴の心の中の大部分を占めていることを上条は自覚している。
そしてこのままでは自分も含め全滅してしまう。
恐らく自分はもうまともに戦うことは出来ないだろう。
しかし美琴のためにもここで死ぬわけにはいかない。
この場を切り抜けるためにも美琴に立ち上がってもらう他なかった。
上条は言うことを利かない体に鞭を打ち、ヨロヨロとその場から立ち上がる。
しかし立ち上がったものの、そのまま地面に再び崩れ落ちそうになる上条の体を美琴が間一髪のところで支えた。
蒼白な顔をしている美琴に上条は残酷だと思いながらも、美琴を奮い立たせるために厳しい言葉を掛ける。
自惚れでは無く自分が美琴の心の中の大部分を占めていることを上条は自覚している。
そしてこのままでは自分も含め全滅してしまう。
恐らく自分はもうまともに戦うことは出来ないだろう。
しかし美琴のためにもここで死ぬわけにはいかない。
この場を切り抜けるためにも美琴に立ち上がってもらう他なかった。
上条は言うことを利かない体に鞭を打ち、ヨロヨロとその場から立ち上がる。
しかし立ち上がったものの、そのまま地面に再び崩れ落ちそうになる上条の体を美琴が間一髪のところで支えた。
蒼白な顔をしている美琴に上条は残酷だと思いながらも、美琴を奮い立たせるために厳しい言葉を掛ける。
「気持ちは分かるけど、この程度で参ってどうする?
一緒に戦うって決めた時から、もしかしたらこうなるかもしれないことは覚悟してただろ?
それに俺は簡単に死なない、でもいつまでもこの状態じゃ流石に拙い。
こういう言い方はなんだが、俺のためにもこの戦いを早く片付けてくれないか?」
一緒に戦うって決めた時から、もしかしたらこうなるかもしれないことは覚悟してただろ?
それに俺は簡単に死なない、でもいつまでもこの状態じゃ流石に拙い。
こういう言い方はなんだが、俺のためにもこの戦いを早く片付けてくれないか?」
今の美琴にとって上条は弱点であると同時に大きな起爆剤にも成り得る。
そして今の上条の言葉は美琴にとって大きな起爆剤となった。
美琴の顔にはみるみる闘気が漲っていき、美琴の表情は上条をこんな目に遭わせたシェリーへの敵意で溢れていた。
何となく先ほどのレールガンを見た後だと怒らせてはならないものを怒らせてしまった気分に上条は陥る。
そして今の上条の言葉は美琴にとって大きな起爆剤となった。
美琴の顔にはみるみる闘気が漲っていき、美琴の表情は上条をこんな目に遭わせたシェリーへの敵意で溢れていた。
何となく先ほどのレールガンを見た後だと怒らせてはならないものを怒らせてしまった気分に上条は陥る。
「アイツが俺を一発で仕留められなかったのは大きなミスだ。
アイツがのこのこ出てきた今なら…」
アイツがのこのこ出てきた今なら…」
それ以上は言われずとも美琴に伝わっていた。
現在、上条たちとシェリーは石像を挟むような形で対峙している。
しかしシェリーは知らなかった。
この場にはレベル5の電撃使いとレベル4の空間転移がいて、この二人の組み合わせがいかに強力かということを…
現在、上条たちとシェリーは石像を挟むような形で対峙している。
しかしシェリーは知らなかった。
この場にはレベル5の電撃使いとレベル4の空間転移がいて、この二人の組み合わせがいかに強力かということを…
結果として戦いの決着は一瞬でついた。
黒子の能力でシェリーの死角に移動した美琴がしばらく動けなくなるよう気絶する程度の電撃を放った、それだけのことだった。
気絶する前に最後の命令でゴーレムの動きを自動制御に移したものの、
それも上条の最後の力を振り絞った決死の突撃で無事に撃破することに成功するのだった。
しかし上条も美琴もシェリーが気絶する前に残した一言が耳に纏わりつくように残っていた。
黒子の能力でシェリーの死角に移動した美琴がしばらく動けなくなるよう気絶する程度の電撃を放った、それだけのことだった。
気絶する前に最後の命令でゴーレムの動きを自動制御に移したものの、
それも上条の最後の力を振り絞った決死の突撃で無事に撃破することに成功するのだった。
しかし上条も美琴もシェリーが気絶する前に残した一言が耳に纏わりつくように残っていた。
「幻想殺し、貴様さえいなければ世界は…」
彼女は何を言いたかったのだろう?
怪我の状態から上条を下手に動かすわけにいかない美琴は上条を太腿に乗せて膝枕している。
黒子はその様子を見てぶつくさと何かを呟いているが、上条と美琴の耳には入っていなかった。
ただ敵を撃破したもののシェリーの言葉が気になり、その顔には笑顔が戻っていなかった。
いつ目覚めるか分からないシェリーに警戒しつつ上条たちは騒ぎを聞きつけた警備員がやって来るの待っていた。
しかしいくら経っても警備員がやって来る気配はない。
このままでは上条の容態が悪化してしまうと、移動することを考えたその時…
怪我の状態から上条を下手に動かすわけにいかない美琴は上条を太腿に乗せて膝枕している。
黒子はその様子を見てぶつくさと何かを呟いているが、上条と美琴の耳には入っていなかった。
ただ敵を撃破したもののシェリーの言葉が気になり、その顔には笑顔が戻っていなかった。
いつ目覚めるか分からないシェリーに警戒しつつ上条たちは騒ぎを聞きつけた警備員がやって来るの待っていた。
しかしいくら経っても警備員がやって来る気配はない。
このままでは上条の容態が悪化してしまうと、移動することを考えたその時…
「ご苦労だったな」
気絶しているシェリーの横に突然二人の人影が現われる。
「悪いがこの女は色々と知りすぎた、こちらの方で処置させてもらう」
突然現われた人影が何を言いたいのか上条たちは理解出来ない。
「それとすぐに警備員が来る。
医療班も手配してあるから、今はその少年を動かさないほうがいい」
医療班も手配してあるから、今はその少年を動かさないほうがいい」
手配したと言っている事から学園都市の人間…しかも警備員に命令できる立場にある人間であることが窺い知れるが、
気を緩めるわけにはいかない。
そもそも上条と美琴が学園都市の上層部を相手取って戦おうとしているのだ。
しかし次に人影が放った言葉は上条と美琴に大きな衝撃を与える。
気を緩めるわけにはいかない。
そもそも上条と美琴が学園都市の上層部を相手取って戦おうとしているのだ。
しかし次に人影が放った言葉は上条と美琴に大きな衝撃を与える。
「君達の計画が上手くいくことを祈っているよ」
黒子には男が何を言いたいのか理解出来ない。
しかしながら上条と美琴は戸惑いを隠しきれなかった。
目の前の人物は自分達の計画を知っている?
学園都市の上の人間に現段階で計画を知られている段階で上条たちの置かれている状況は絶望的だ。
美琴は咄嗟に人影に向かって電撃を放つ構えを取る。
しかしながら上条と美琴は戸惑いを隠しきれなかった。
目の前の人物は自分達の計画を知っている?
学園都市の上の人間に現段階で計画を知られている段階で上条たちの置かれている状況は絶望的だ。
美琴は咄嗟に人影に向かって電撃を放つ構えを取る。
「…私達は君達の味方ではないが敵でもない。
強いて言うなら限りなく協力者に近い立場にある」
強いて言うなら限りなく協力者に近い立場にある」
「そんな言葉信じられると思ってるの!?」
「信じてくれるよう頼むしかない。
しかし君が実力行使に出るというのならこちらにも考えがある」
しかし君が実力行使に出るというのならこちらにも考えがある」
美琴と人影の間に緊張した空気が張り詰める中、上条が美琴を制するように言った。
「落ち着け、美琴。
…分かった、そっちの言い分を信じる。
それよりも、ソイツはどうなるんだ?」
…分かった、そっちの言い分を信じる。
それよりも、ソイツはどうなるんだ?」
上条はシェリーを指差して言った。
「然るべき処置をして、元いた組織に返す。
この返答じゃ不服かな?」
この返答じゃ不服かな?」
「…」
「ではこの女は預からせてもらう」
そう言って一人の人影がシェリーのことを抱きかかえると、一瞬にして二人の人影はシェリーと共にその場から消えるのだった。
やがて救助に訪れた警備員によって上条は応急処置を施されいつもの病院へと運ばれる。
そこで緊急手術を受け三日間の入院を余儀なくされた。
しかしながら銃撃を受けていたにも拘らず、警備員から職務質問などを受けるということは無かった。
それもあの謎の人影が何かしらの圧力を掛けているに違いない。
言い切れぬ不安に襲われる中、退院した上条を待っていたのは普段と変わらぬ日常だった。
そして上条にはある決断が迫られているのだった。
そこで緊急手術を受け三日間の入院を余儀なくされた。
しかしながら銃撃を受けていたにも拘らず、警備員から職務質問などを受けるということは無かった。
それもあの謎の人影が何かしらの圧力を掛けているに違いない。
言い切れぬ不安に襲われる中、退院した上条を待っていたのは普段と変わらぬ日常だった。
そして上条にはある決断が迫られているのだった。