とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part10

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第3章 ③入院とこれから…


いつもの病室で上条はベッドに横になりながら窓の外を眺めていた。
ベッドの隣では美琴が上条のために林檎の皮を剥いている。
カエル顔の医者は呆れた顔で上条に治療を施しながら、もっと自分を大切にしなさいと上条に注意を促した。
上条は困った顔で頷くものの、恐らくこれからも世話になり続けるだろうことを確信していた。
つい先ほどまで上条と美琴を見張るように黒子もいたのだが上条と美琴が放つ熱い空気に中てられ、
トボトボと病室を出て行ったのだった。
そして美琴と二人きりになった上条は窓の外から美琴に視線を戻すと問いかけるように言った。

「なあ、美琴?」

「どうかした?」

「俺ってこのままでいいのかな?」

「…」

「俺は何よりも美琴のことが大事だ。
 でも何かあると必ずと言っていいほど首を突っ込んじまう。
 今回も偶々怪我をするだけで済んだけど、これから先も無事ですむとは限らない。
 少しは俺も美琴のために落ち着くべきなのかな?」

「…私はね、当麻が傍にいてくれなきゃ駄目になっちゃう。
 重い女って思われちゃかもしれないけど、私にとっては当麻が全てなの。
 当麻がもし居なくなったら生きていく自信がない。
 当麻を危険に巻き込もうとしてるのに矛盾してるよね」

「…」

「当麻もそういう意味じゃ矛盾の中にいるんだと思う。
 私が大事だって言っておきながら、私を残して危険な場所に行こうとするし…
 でも当麻には私にも自分にも嘘を吐いて欲しくない。
 だって当麻が自分の信念に真っ直ぐ従ったお陰で、私は今ここにいるんだもん」

「…そうだな」

「だからね、どんなに辛くても当麻を止めることは私には出来ない。
 その代わり必ず私のいる場所に帰ってきて」

「約束するよ、俺は美琴を一人にしない」

「…口だけじゃ駄目」

「そうだな」

上条は体を起こすと美琴の肩を両手で抱き寄せ唇を重ねる。
二人の口づけは約束の証…
絶対に守らなければならない約束がある時に唇を重ねるのが二人の恒例なっていた。
それはこの温もりを決して失わないための決意の現れでもある。
こうして二人は絆をさらに深めていくのだった。

そしてそんな二人の下に小さな乱入者が現れる。

「お姉さまもヒーローさんもラブラブ過ぎてまだ生まれたばかりのミサカには目の毒かもって、
 ミサカはミサカはそう言いつつも興味津々と言った様子で覗いてみる」

上条と美琴が声のした方を見ると病室の入り口から打ち止めが顔を覗かせていた。

「あっ、ミサカネットワークを遮断するのを忘れてた。
 うわー、祝福と嫉妬が混じった感情でネットワーク上が大変なことになってる!?」

そう言いながら両手をバタつかせてはしゃぐ打ち止めの頭にコツンと拳骨をする手があった。

「病院の中で走るなって言ってンだろォがよ。
 それに上条とオリジナルの邪魔をするよォな真似しやがって」

打ち止めに拳骨を食らわしたのは一方通行だった。
もちろん反射は切ってある。
例え不意打ちの可能性があろうとも通常時は能力を切っておく。
それが一方通行なりの一つのけじめの着け方だった。

「また怪我しやがったンだってなァ。
 流石ヒーローと言いてェところだが、てめェを心配する人間は山ほどいやがるンだァ。
 少しは自重しやがれェ」

「サンキューな、心配してくれて」

「べ、別に俺が心配してるとは言ってねェだろォが!!」

「男のツンデレは見苦しいかもって、ミサカはミサカは苦言をあなたに呈してみる」

「誰がツンデレだ!?」

こうして見ていると一方通行も打ち止めも仲のいい兄妹にしか見えない。
しかしその関係は歪なものだ。
一万人ものクローンを殺した男とそのクローンの一人である少女。
二人の関係は言葉で表せるようなものではなかった。



「ったくアンタらは少し緊張感ってもんを持ちなさいよね。
 …それで私が居る時にわざわざアンタが顔を出したってことは何か話があるのよね?」

「…あァ」

美琴の質問に対して一方通行は短めに返事をする。

「あのね、お姉さま。
 ミサカは他の妹達より一足先に退院できることになったんだけど…」

「ええ、先生から聞いてるわ。
 一緒に暮らすよう頼まれてるもの」

「ミサカはお姉さまとも一緒に暮らしたいんだけど…
 出来れば、この人と一緒に暮らしたいの!!」

「…本気で言ってるのね?」

「うん」

「打ち止めは自分とコイツの関係を本当に分かってる?」

「ミサカもこの人がしたことが許されないことは分かってる。
 でもヒーローさんが教えてくれたように、死んでいったミサカとミサカは別人なの。
 そしてこのミサカを助けてくれたのは他でもないこの人で…」

「…そうね、死んでいった妹達と打ち止めは確かに別人。
 例えミサカネットワークがあろうとも、あなた達は別々の…たった一つの命を持ってるの。
 そのことがちゃんと分かってるなら私からは何も言わない。
 だって打ち止めは私の可愛い妹だけど、私の所有物というわけじゃないもの。
 自分の意思でコイツに助けてもらったことに感謝して支えてあげたいなら、打ち止めのしたいようにしなさい」

「お姉さま!!」

「俺は救いよォがねェ屑だ。
 これから一生かけても妹達に頭を上げることは出来ねェだろォ…
 そして前にお前が言ったよォに、本当ォに謝らなきゃいけねェ相手はもォこの世にいねェ。
 だけどアイツらに少しでも報いる方法ォがあるとすれば、今生きている妹達を守ってやるくらいしかねェと思ってる。
 それにこのガキと共に暮らすってことは今の俺には許されねェくらい甘いことだってことも分かってるつもりだァ」

「確かにアンタにとっては甘すぎる選択だと思う。
 正直どの面して言ってるのって感じよ。
 だけどさっきも言ったけど私に打ち止めの気持ちを押さえつける権利はない。
 …だから私がアンタに望むのは二つだけ。
 アンタが殺した妹達…アンタの犯した罪から目を逸らさずに、前に進みなさい。
 そしてアンタを慕ってくれている打ち止めを裏切るようなことだけは絶対にしない。
 それだけよ」

一方通行は美琴の言葉に黙って頷く。
そうして一方通行は前に向かって一歩を踏み出した。
その一歩は一方通行にとってこれから先、決して揺らぐことがない確かなものなるのだった。
それから時は少し流れ学園都市では大覇星祭が開催された。
今の上条にとって初めての大覇星祭は恋人である美琴と過ごす思い出深いものになる。
上条家・御坂家、両家を巻き込んだ熱い体育祭が始まろうとしていた。







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