とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part12

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第4章 ②未来を見据えて


昼食の時間になり両親達と合流した上条と美琴は外で一緒に食事を取っているとマスコミに騒がれる可能性が高かったので、
上条と美琴が住む部屋に移動して昼食を食べることになった。

「ここが美琴ちゃんと当麻君の愛の巣ってわけね!!
 うん、如何にも学生が一緒に暮らしてますって感じが漂ってきていい感じ!!」

「ちょっ、愛の巣って、当麻と私はまだ健全なお付き合いしか…」

「えー、一緒に暮らしてるのに!?
 当麻君、美琴ちゃんってそんなに魅力ないかしら?
 そりゃ確かに胸はお世辞にも大きいとは言えないけど…」

「そこで俺に振る!?
 っていうかその振り方はないでしょ!!」

「あらあら、当麻さんったら。
 当麻さんは目の前にこんな可愛らしい彼女がいるのに手も出せない甲斐性なしのかしら?」

「アンタらの基準がおかしい!!
 俺達はまだ学生で、しかも美琴はまだ中学生!!」

「「でも私達の時には…」」

声を揃えて不思議そうにする母親達に上条は項垂れながらも、
母親達に変な倫理観を植えてしまった原因であろう二人を上条はジト目で見つめる。

「母さんは昔から可愛らしくて、つい…」

「当麻君、誤解しちゃいけない。
 家の場合は誘ってきたのは美鈴からで…」

あまり両親のリアルな話は聞きたくない上条はそこで話を打ち切ることにした。
美琴に至っては、当麻との赤ちゃん…ふにゃー、とあらぬ方向に妄想が進んでしまっている。
上条は両親達を部屋の中に促し、冷蔵庫の中から冷えた麦茶を取り出すのだった。

「すみません、部屋が狭くて…
 それに床に座っていただくような形になってしまって」

上条は両親達…特に旅掛と美鈴に申し訳なさそうに言った。
元々部屋に招く予定もなかったので座布団なども人数分は用意してなかった。

「いや、気にしなくて構わないよ。
 それにしても午前中の当麻君と美琴ちゃんの画は素晴らしかったな。
 ドリンクの間接キスだけで顔を真っ赤にしてしちゃって」

「でも間接キスだけで顔を真っ赤にするなんて、キスもまだってわけじゃないわよね?」

「キ、キスくらいは」//

「美琴、完全に誘導されてるぞ!?
 美鈴さんもあんまりからかわないでくださいよ」

「あらあら、当麻さん。
 親が子のことを全て知りたいと思うのは当たり前ですよ」

「そうそう、それでキスはどっちからしたの?」

「それは自然とそういう雰囲気になって…」

「キャー、それっていいムードになったってことでしょ?
 良かったわね、それだったらファーストキスが一生の思い出になったんじゃない?
 私達の時なんて…」

母親達は上条の言葉を聞き入れる気は全くないらしい。
項垂れる上条の肩に、気にするな、と言ったように父親達が手を置くのだった。



「当麻さん、美琴さん、お口に合ったかしら?」

詩菜と美鈴が一緒に作ってきた弁当を囲みながら、詩菜は上条と美琴に尋ねた。

「はい、とっても美味しいです!!」

「当麻さんは?」

「…ああ、凄く美味いよ」

しかしそう言う上条の顔は何処か優れないものだった。

「当麻、どうかしたのか?」

刀夜は浮かない顔の上条を心配するように覗き込んで尋ねる。

「いや、別に心配されるようなことじゃないよ。
 ただ、記憶がなくなっても体が覚えてることって本当にあるんだなって…」

上条の言葉にその場にいた全員は顔を見合わせる。

「この弁当を食べてると、どれが母さんが作ったもので、どれが美鈴さんが作ったものかハッキリ分かる。
 美鈴さんの料理は普段から美琴が作ってくれる料理と同じ食べなれた感じがして…
 そして母さんの料理は凄く心が温まる懐かしい味がするんだ」

「…当麻さん」

「不思議だよな、本当はこうやって皆と一緒にいるのは俺じゃなかった筈で…
 そして居なくなったはずの昔の俺が、こういった感じで時々顔を出すんだ。
 そうすると父さんと母さんは今の俺を受け入れてくれたけど、何だか俺がここに居てもいいのかなって少し疑問に思っちまってさ」

「…刀夜さん、詩菜さん、私がこれからとても残酷なことを言います。
 許していただけますか?」

「…ああ、この馬鹿息子の目を覚ましてやって欲しい。
 それは美琴さんにしか出来ないことだ」

美琴は刀夜の言葉に頷くと、上条の方に向き直り上条の目を見据える。

「美琴?」

そして美琴は上条の頬に思い切り平手打ちを喰らわせた。
乾いた音が部屋に響き渡り、上条は目を丸くしている。

「記憶を失って不安になるのは分かる。
 でもね、当麻が自分に対して卑屈になることは許さない。
 だって今の私がいるのは、他ならぬ今の当麻のお陰なんだから。
 多分ね、昔のアンタも私のことを助けることはしてくれたと思う。
 だけど私のことを支えてくれるようなことまでは、きっとしてくれなかった。
 多分過去のことも関係あるんだろうけど、昔のアンタは誰かを助けたら自己満足してしまうような奴だった。
 だからどうしても関係が一方通行にしかならない。
 でも今の当麻は救ってそこで終わりじゃないの、そこから一緒に光に向かって歩んでくれる。
 私知ってるんだよ、当麻が隠れてあの天草式の女の子とメールしてるのを…」

「うっ、それは…」

「嫉妬してないって言えば嘘になるけど、当麻が浮気なんてしないことは分かってる。
 あの子は私から見ても相当弱ってた、だから少しでも元気付けるようにメールしてるんでしょ?」

「…はい、その通りです」

「そんなこと隠さなくたっていいのに、本当に馬鹿なんだから…」

「ゴメン」

「ううん、謝らないで。
 私はそんな優しい当麻が大好きなんだから」

「美琴…」

「今の当麻だからこそ、私は笑って当麻の傍にいることが出来る。
 今の当麻は昔のアンタに劣ることなんて何一つない、だからもっと自分に自信を持って!!」



美琴は上条から刀夜と詩菜に向き直ると二人に頭を下げた。

「すみません、分かったような口を聞いてしまって…」

すると刀夜と詩菜は美琴に微笑みかけながら言った。

「いいえ、美琴さんの仰っていたことは恐らく当たっています。
 あの子は過去の出来事から自分の幸せに無頓着というか、何処か幸せを諦めている部分がありました。
 だから美琴さんの言う通り、他の人の幸せも本当に分かってあげることが出来なかったんでしょう。
 美琴さん、今の当麻さんは美琴さんを幸せにできていますか?」

「はい、私は当麻さんと一緒にいられてこれ以上ないくらい幸せです!!」

「全くこんなに想ってくれている恋人がいるのにウジウジと…
 当麻が自分のことをどう思おうとも、お前は紛れもない私達の息子だ。
 そして詳しい話は分からないが、美琴さんを救ったのも今の当麻なんだろう?
 今の私達じゃ当麻の悩みを支えきることは出来ないかもしれない。
 でももし自分に対する信頼が揺るぎかけたら隣にいる美琴さんを見ろ。
 美琴さんの存在は今の当麻に対する勲章であり支えだ。
 自分の守るべきものと自分自身を見失わずに、迷いながらでもいい、前へ進め!!
 美琴さんが当麻を横で支えるように、私と母さんは後ろから当麻を支えるから」

「ああ!!」

上条は思わず目に浮かんだ涙を拭って、力強く頷く。
過去の自分と今の自分を比べるのはこれで終わりだ。
これから自分は真の意味で上条当麻として未来に向かって歩んでいく。
そして自分は一人じゃない、愛しい恋人と大切な両親がいる。
この日、自我をしっかりと確立した上条は一人の人間として新たな一歩を踏み出すのだった。








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