第4章 ③大覇星祭を終えて
「えー、来場者数ナンバーズの結果、あなたの指定数字は一等賞、見事ドンピシャです!
賞品は北イタリア五泊七日のペア旅行、おめでとうございます!!」
賞品は北イタリア五泊七日のペア旅行、おめでとうございます!!」
実は上条当麻は口にするほど自分のことを不幸だとは思っていなかった。
確かに理不尽な目や遭うことや厄介ごとに巻き込まれることは数多くあった。
でも可愛らしい恋人と共に過ごし、暖かい両親に恵まれ、自分は幸福な人間だと気持ちが強かった。
しかしそれは人としての幸福であり、所謂ラッキー…幸運と呼ばれるものとは無縁だと思っていた。
確かに理不尽な目や遭うことや厄介ごとに巻き込まれることは数多くあった。
でも可愛らしい恋人と共に過ごし、暖かい両親に恵まれ、自分は幸福な人間だと気持ちが強かった。
しかしそれは人としての幸福であり、所謂ラッキー…幸運と呼ばれるものとは無縁だと思っていた。
「旅行に関しての詳しい日程、観光予定、必要書類などは全てこちらにありますので、後で目を通しておいてください。
なお質問がある場合は当女学院ではなく旅行代理店の方にお願いします」
なお質問がある場合は当女学院ではなく旅行代理店の方にお願いします」
自分に起こった幸運に上条が呆然とする中、上条に代わって美琴が受付の女子高生と最低限の事務的手続きを行っている。
「あのー、美琴さん。
これは一体どういう状況でせうか?」
これは一体どういう状況でせうか?」
「確かに私も信じられないけど、当麻と二人きりで旅行に行けるってことじゃない?」
「そっかー、美琴と二人きりで旅行か…
何か深く考えると余計な目に遭いそうだし、今は取り合えずこの幸運に感謝するか!!」
何か深く考えると余計な目に遭いそうだし、今は取り合えずこの幸運に感謝するか!!」
「うん!!」
こうして上条と美琴は北イタリアに旅行に出かけることになった。
これから語られるのは旅行に出掛けるまでの二日間で起こった物語の本筋には全く関係ないお話…
これから語られるのは旅行に出掛けるまでの二日間で起こった物語の本筋には全く関係ないお話…
「…私、持ってる私服が少ない」
上条と美琴は寮に帰ると早速旅行の準備に取り掛かっていた。
しかしその中で美琴は致命的なことに気付いてしまった。
常盤台は基本的に外出する際も制服を着用することが義務付けられている。
美琴は常盤台の寮を出て実はその気になれば自由に私服を着用することが出来るのだが、
下手に校則を破って処分を受けたり上条との生活が打ち切られても面白くないので素直に校則に従っていた。
だから持っている私服の数が同年代の女の子と比べても少ないのである。
今までは特に気にならなかったが旅行に出掛けるのに制服はあんまりである。
しかしその中で美琴は致命的なことに気付いてしまった。
常盤台は基本的に外出する際も制服を着用することが義務付けられている。
美琴は常盤台の寮を出て実はその気になれば自由に私服を着用することが出来るのだが、
下手に校則を破って処分を受けたり上条との生活が打ち切られても面白くないので素直に校則に従っていた。
だから持っている私服の数が同年代の女の子と比べても少ないのである。
今までは特に気にならなかったが旅行に出掛けるのに制服はあんまりである。
「うーん、それじゃあ服を買うついでに明日デートに出掛けるか?」
上条の提案に美琴は顔を輝かせる。
大覇星祭の間も上条と美琴はずっと一緒に過ごしていた。
ナイトパレードやフォークダンスなど楽しい時間も共有していた。
しかしながら、ナイトパレードもフォークダンスも良い所で後輩の邪魔が入ってしまっていた。
別に不満はないが美琴は何となく物足りない気分だったのだ。
これから旅行に出掛けるのだから十分だろとツッコミを入れたくなるが、上条から誘われただけで美琴は嬉しかった。
この時、美琴は感じ取っていたのかもしれない。
もうすぐ逆らうことの出来ない大きな嵐がやってくることを…
それはともかく美琴は幸せ一杯な気持ちで眠りに就き、いつものように翌朝になって上条を本能との戦いに陥れるのだった。
大覇星祭の間も上条と美琴はずっと一緒に過ごしていた。
ナイトパレードやフォークダンスなど楽しい時間も共有していた。
しかしながら、ナイトパレードもフォークダンスも良い所で後輩の邪魔が入ってしまっていた。
別に不満はないが美琴は何となく物足りない気分だったのだ。
これから旅行に出掛けるのだから十分だろとツッコミを入れたくなるが、上条から誘われただけで美琴は嬉しかった。
この時、美琴は感じ取っていたのかもしれない。
もうすぐ逆らうことの出来ない大きな嵐がやってくることを…
それはともかく美琴は幸せ一杯な気持ちで眠りに就き、いつものように翌朝になって上条を本能との戦いに陥れるのだった。
(でも、何でこんなことになってるのかな?)
美琴の目の前にはニコニコ顔の二人の少女が座っている。
隣では上条が女の子に囲まれて何処か居心地が悪そうな顔をしていた。
隣では上条が女の子に囲まれて何処か居心地が悪そうな顔をしていた。
「もう、御坂さんったら最近人付き合いが悪くて困ってたんですよ」
目の前のロングストレートで黒髪の少女…佐天は嘘を言っている。
確かに上条と付き合い始めて、上条と過ごす時間が美琴にとって大半になっていた。
しかしだからといって友達と過ごす時間が減ったわけでもなく、
上条との夕飯の買出しの時間までは目の前の佐天たちと一緒に過ごすことが殆どだった。
確かに上条と付き合い始めて、上条と過ごす時間が美琴にとって大半になっていた。
しかしだからといって友達と過ごす時間が減ったわけでもなく、
上条との夕飯の買出しの時間までは目の前の佐天たちと一緒に過ごすことが殆どだった。
「本当ですよ、御坂さん。
そろそろ巷で話題沸騰の彼氏さんの話を詳しく聞かせていただかないと」
そろそろ巷で話題沸騰の彼氏さんの話を詳しく聞かせていただかないと」
ショートヘアで頭に花飾りをつけている少女…初春も意地の悪い顔をしている。
(…これはもう逃げられない)
美琴は二人の友人から尋問されることを覚悟するのだった。
実は初対面の上条たちが自己紹介を終えると早速質問が飛び交う。
「それじゃあ早速一つ目の質問です。
上条さんは御坂さんのどんなところに惹かれたんですか?」
上条さんは御坂さんのどんなところに惹かれたんですか?」
(えっ、私にじゃなくて当麻にいきなり質問するの!?)
予想外の順番に美琴は思わず不意打ちを喰らってしまう。
「心が強くて優しいところかな?」
しかし一方の上条は特に気にした様子もなく即答してしまった。
これには美琴だけでなく質問した佐天も面食らってしまった。
これには美琴だけでなく質問した佐天も面食らってしまった。
「(全然照れた様子がない、これは思った以上に強敵かも…)
えっと、それじゃあ御坂さんは上条さんの何処が好きなんですか?」
えっと、それじゃあ御坂さんは上条さんの何処が好きなんですか?」
「…んぶ」
「えっ?」
「当麻の全部が好き」//
上条が恥ずかしがらずに自分の好きな場所を答えてくれたことに美琴も腹を括っていた。
ここで恥ずかしがって答えを濁してしまったりしたら、上条に失礼な気がした。
そして美琴は恥ずかしがりながらも、ありのままの気持ちを答える。
ここで恥ずかしがって答えを濁してしまったりしたら、上条に失礼な気がした。
そして美琴は恥ずかしがりながらも、ありのままの気持ちを答える。
(ちょっと、佐天さん!!
大覇星祭では初々しかったけど、この二人かなりのバカップルっですよ!!
このままじゃこちらが餌食になってしまうかも?)
大覇星祭では初々しかったけど、この二人かなりのバカップルっですよ!!
このままじゃこちらが餌食になってしまうかも?)
まったく臆面のない二人の答えに早くも初春はバカップルの餌食になる予感に捕らわれる。
弄るつもりで呼び止めたのに、このまま進んでしまっては面白くない。
弄るつもりで呼び止めたのに、このまま進んでしまっては面白くない。
「(取り合えずは質問を続けて様子を見るしかないでしょ!!)
…告白はどっちからしたんですか?」
…告白はどっちからしたんですか?」
「それは一応、当麻からなのかな?」//
「へー、レベル5の御坂さんに告白するなんて勇気があるんですね」
「人を好きになるのにレベルは関係ないだろ?
確かに美琴は俺なんかと比べて頭もいいし強いと思う。
でもレベルなんか関係なしに、俺は美琴のことを一人の女の子として支えて守ってあげたいと思ったんだ」
確かに美琴は俺なんかと比べて頭もいいし強いと思う。
でもレベルなんか関係なしに、俺は美琴のことを一人の女の子として支えて守ってあげたいと思ったんだ」
「(うーん、見た感じ御坂さんのべた惚れって感じがしたんだけど…)
御坂さんは上条さんに告白されてどう思ったんですか?」
御坂さんは上条さんに告白されてどう思ったんですか?」
「…私ね、ちょっと前まで簡単に拭いきれない闇の中にいたの」
「もしかして、しばらく姿が見えなかった時ですか?」
「…うん。
その時、私を救ってくれたのが当麻だった」
その時、私を救ってくれたのが当麻だった」
「そうだったんですか。
それじゃあ上条さんは御坂さんのヒーローってわけですね?」
それじゃあ上条さんは御坂さんのヒーローってわけですね?」
「うん」//
(佐天さん、やっぱり御坂さんも上条さんに相当惚れ込んでますよ)
(そ、そうみたいね)
「でも当麻が私を救ってくれた後も、私はちょっとある事情に首を突っ込もうとしてて…
だから当麻をそれ以上巻き込まないために私は当麻の優しさを否定するような酷いことを言った。
でも当麻はそんな私の心を見透かすように、私と一緒に重荷を背負って、一生私のことを傍で支え続けるって言ってくれたの」//
だから当麻をそれ以上巻き込まないために私は当麻の優しさを否定するような酷いことを言った。
でも当麻はそんな私の心を見透かすように、私と一緒に重荷を背負って、一生私のことを傍で支え続けるって言ってくれたの」//
「えっ、それって告白というよりプロポーズ!?」
「最初言った時は無自覚だったんだけどな。
でも今はその覚悟があるよ」
でも今はその覚悟があるよ」
「…嬉しかった。
私が当麻への気持ちに気付いたのは当麻がそう言ってくれる直前だったんだけど、その時には当麻が好きで仕方なかったから。
誰よりも頼りになって大好きな当麻が不安に押しつぶされそうな私の心を照らしてくれた。
だからね、今は当麻に支えてもらうだけじゃなくて当麻のことを支えあげたいと思ってる」
私が当麻への気持ちに気付いたのは当麻がそう言ってくれる直前だったんだけど、その時には当麻が好きで仕方なかったから。
誰よりも頼りになって大好きな当麻が不安に押しつぶされそうな私の心を照らしてくれた。
だからね、今は当麻に支えてもらうだけじゃなくて当麻のことを支えあげたいと思ってる」
(佐天さん、何だか口の中が甘くなってきました)
(奇遇ね、私もだよ)
恋人よりも一歩先の信頼関係にある上条と美琴の言葉は惚気というよりも覚悟を感じさせるものだった。
これ以上は何をやっても無駄だと気づいた佐天と初春は逃走モードに入る。
これ以上は何をやっても無駄だと気づいた佐天と初春は逃走モードに入る。
「えっと、お邪魔してすみませんでした。
デートの続き、楽しんでください」
デートの続き、楽しんでください」
そう言って佐天と初春は上条と美琴の二人を無理やり連れ込んだファミレスから退散する。
「何だったんだ?」
「さあ?」
後に残された上条と美琴はキョトンとしながらもデートの途中だったことに気がつく。
美琴の私服を買った二人は、そのまま楽しい一日を過ごす。
そして翌日、いよいよ二人は北イタリアに向けて出発するのだった。
美琴の私服を買った二人は、そのまま楽しい一日を過ごす。
そして翌日、いよいよ二人は北イタリアに向けて出発するのだった。