小ネタ 魔術・科学闘争史 第一章 第二条
上条当麻が世を去った。
享年76
世界を救おうと立ち上がった男
魔術と科学の間で苦しみ続けた少女
たった一人の少女のために世界を敵に回した女
誰よりも世の不条理を憎んだ人間
それらと向き合い続けた彼は、最後まで人々のために働き続けた。
彼の死後、ベニート・ブゾーニや木原円周など、反上条派ともいえる勢力の活動が活発化する。
しかし、
「まったく、あの馬鹿はいつも勝手に先に行くんだから」
上条当麻の最愛の妻、上条美琴が彼の事業を引き継ぐことで状況は変わる。
「お姉さま、準備はよろしいですか?」
「黒子、……お互い年をとったわね」
「あらあら、お姉さま、年齢はとるものではなく、重ねるものでしてよ?」
「ふふっ、相変わらずね。それじゃあ、行きましょうか」
上条当麻の「魔術・科学の壁をなくす」という夢は、彼女の尽力により上条当麻の死後、一週間でイギリス清教最大主教のインデックス、学園都市統括理事長の一方通行との間で共同声明が発せられ叶った(8.4共同声明)
これは、今日の状況に大きく影響している。
そして、この声明が発せられた直後、上条美琴もまた、夫の後を追うように他界する。
そして、彼女の死を皮切りに、前出のインデックス、一方通行をはじめ、浜面仕上やフィアンマといった、この時代を象徴する人間が次々と世を去った。
あの夫婦の人生がひとつの歴史の転換期であった証拠である。
『さて、一面の青空に地平線まで続く草原、寝っ転がりたいところだけど……』
上条美琴を語る際に欠かせないものがもうひとつある。
『アイツはどこにいるのやら、探す身にもなれってのよねー』
彼女が中学一年から記した日記だ(上条美琴記)
『おっ!! 見つけた見つけた!!』
これには当時の状況がことこまかに記されてあり、歴史的資料として重要なものである。
『ごめ~~~ん!! 待った~~~??』
しかし、彼女の心理も完全に表記されているため、読者は素直になれない彼女に対し、どうしても苦笑してしまう。
また、彼女が高校生になってからは上条当麻との睦まじいやり取りがその大半を占める。
『待った~って言ってんでしょうが無視すんなやコラーーーー!!!』
彼女たちの仲睦まじい様子から
「当麻の無反応」……あまりにも鈍感な様
「美琴視線」……「痘痕も笑窪」と同義
「上琴の仲」……「鴛鴦夫婦」と同義
などの言葉が生まれた。
『ぐふっ!!! お前、愛しの旦那との再開がタックルってどうよ?』
『アンタが無視するから悪いのよ!!!』
一方で、彼女や上条当麻の活躍は昔話として親から子に伝えられ、少年少女に夢と希望を与え続けている。
『まあいいや、それじゃあ行こうか、美琴』
『……うん!!』
この伝記は数千年の時を経た今でも強い輝きを放ち続けている
《上条美琴伝 完》