とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part10

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匿名ユーザー

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『私は美久』『では美玖で』『じゃあ私は美来』『なら美紅にする』『えっと美繰は』『まだいないから大丈夫』『美空もまだいいよね』『美がいいけど未玖で我慢する』

『ナニやってんのよ』

『せっかくだから漢字でなんて書くか39のみんなで振り割してんの』

『アンタらね』

『いいじゃない、それくらい』

『いずれ固有名は必要になるんだし』

『目くじら立てなくても』

『んんん、じゃ、32でミニ、ミツ……サニー』

『嫉妬ね』

『がぉー』

『はいはい、吠えない10032号』

『それより10039号からの依頼は?』

『入国記録は無いわね』

『でも、空港の監視カメラにそれらしい人物の映像はあったわ』

『日付は?』

『3日前』

『3日前か、その後の足取りは』

『もちろん追ってる』

『どうも2人で行動しているらしいわ』

『2人?』

『そう』

『どういうことかしらね?』

『あー、黒子からの報告では一昨日以前にもボヤ騒ぎがあったって』

『あら、10032号が復活してきたわ』

『そう言うのは早く報告しなさいよ10032号』

『なんかやっぱり当たりがキツくない?』

『ふっ』

『ふってナニよ!ふって』

『そこまで!』

『どうしたの?』

『見つけた!!』

『どこ?すぐに10039号に連絡を』

『もう連絡済みよ』




廃墟になっていた建物が炎をあげていた。

ステイルと土御門は離れている場所からその様子を眺めている。

「あれが本命だったんじゃないのかい」

「そうにゃー、あそこが逆手にみれば一番怪しかったにゃー」

最初に目星を付けていた研究施設は悉く外されていた。それを逆手にとり、可能性が低い施設こそがアジトの確率が高いと見て二人はここへ来た。きてみればこの通り炎をあげている光景。

「どうなってんだかにゃー」

「微かに魔力の残り火があるようだね」

「証拠隠滅にしちゃあ派手だぜい」

建物そのものまで燃やしては人目につく。あらぬ疑惑まで呼び寄せかねない、証拠隠滅の方法としては下策だ。

「追っていた組織の輪郭はわからないのかい?」

「『STUDY』を隠れ蓑にした一派、ということは分かってる」

「『STUDY』?」

「学園都市の闇、暗部の一組織。8月の末に潰滅してるにゃー、
学園都市の暗部としては稚拙、学生のサークルレベル、その割には規模が大きかったにゃー、スタディコーポレーションなんつう企業を立ち上げてたぜい」

「なるほどね、その『STUDY』のスポンサーが」

「今回の黒幕たい」

その判断に狂いがなかった証拠が目の前で燃え上がる炎。




次の手段はスタディコーポレーションに関係していた人物を調べ直接締め上げることになる。

しかし、それは追求する側では当然のルート、される側でも予想し得るルート。この炎は自分達を疑ってくれと言っているようなもの。

「土御門、そいつ等が犯人なのか?」

「恐らくな」

ステイルは身を硬くした。

「しかしだ。この炎を見ているだけで色々な予想がたてれるぜい」

「それは?」

「一つは時間稼ぎに証拠を処分して逃げを打とうとしている」

「ふーん」

「一つ、『STUDY』のバックに責任を押し付けようとしているかもにゃー、トカゲの尻尾切りだ」

「他には?」

「実験に失敗して暴走した可能性もあるぜい」

「ようするに」

「ステイルは犯人じゃないにゃー、カミやん」

ステイルと土御門の背後に上条とミサカミコトがいた。途中から土御門に質問を投げ掛けたのは上条であった。

「それでステイルは何で学園都市に来てるんだ?魔術師絡みってのは分かるぜ、それなら土御門が隠し立てする必要はねーよな?」

「悪かった」

「土御門、どうしてステイルと一緒にいる事を言ってくれなかったんだ」

「ステイルの沽券に関わる問題だったんでな、カミやんの事情も分かってたんだが間に立つオレからは言えなかったんだ」

「ステイルの沽券に関わる?それは」

「僕の責任さ、そこの彼女が傷つく事になった遠因は僕がルーンの回収を怠ったからだよ。まさかね、魔術師でもない人間に僕の魔術の解析はおろか再現までされるとは思わなくてね、油断だよ」

「カミやん、ステイルを殴って気が済むんなら」

「俺は、いいさ。俺より御坂が」

「『私』ならこう言うでしょうね、銃で撃たれたからって銃を作ったメーカーを責めるのかって」

「それはそれで十分責めてるんじゃないのかい!」

「とりあえず、犯人は魔術師じゃなくて学園都市の人間ってことね」

「そうにゃー、どうやって魔術を使ってるか未だに分からないがな」

「拒絶反応をどうやって克服しているかってことか?」

「まあな」

「でもよ、開発を受けてない人間なら可能なんだろ」

「そう簡単なもんなら魔術を秘匿する必要もないぜい、能力者でなくても一般人が魔術を使用したら変調をきたす、悪くすれば精神崩壊だっておこりえる。そして魔術師が魔術師たり得るのは」

「何がどうあったとしても成し遂げたい目的があること」

「そうだカミやん、魔術を使える絶対条件ではないが、それだけの意思の強さが無ければ魔術は身につかない」

「それだけの意思が僕の魔術を真似た人間にあったのかだね」

「ちょっといいかしら?」

「なんだい、えーと」

「とりあえずミクと呼んで、その魔術かしら?の使用条件は?」

この中で魔術に関する知識がないミサカミコトが質問する。

「使用条件か、詳しい事は話せないぜよ?」

「構わないわ」

「なら、まず生命力を魔力に変換する、儀式なり魔法陣で魔術を発動させるってのが基本にゃー」

「その過程で今言っていた拒絶反応が起こるわけね」

拒絶反応が起こる理由はわからずとも、その結果さえ今は理解できれば良いとミサカミコトは納得して置くことにした。

「あとは霊装といった最初から使う魔術を設定した道具もあるぜい」

続けて土御門が話す。

「じゃあステイルのルーンっていうのも霊装?それだったらその魔力?に変換する技術さえ」

それなら魔力に変換する過程をクリアーさえできれば魔術を使用できることになる。

「ところがどっこいそういう訳にもいかないにゃー」

「うん、僕のルーンは同じ魔術を発動させる道具でも霊装ではなく何と言ったら君に分かりやすいかな?」

「霊装が最初からプログラムされてスイッチを押すだけの物で、ステイルのはプログラミングしながら使う物ってところかにゃー」

「ふーん、それだけ聞くと霊装の方が使い勝手が良さそうね」

「それは……そうだけど、応用力は僕の方がうえさ、組み合わせ次第で色々な魔術を使用出来る」

「炎の魔術に偏ってるけどにゃー」

「扱いはルーンの方が難しいという事ね」

「ステイルの名誉を重んじるとそういうことかにゃー?」

「土御門、そこで何で疑問符が混じる?」

「ステイルって凄かったんだな」

「君も今更なんだい?」

上条の合いの手にステイルは呆れた声を出し、

「話しを戻すわよ、とにかく今回の犯人は何らかの方法で魔力を生み出し、扱いの難しいルーンの魔術を使用することに成功したってことね」

「そうなるのかな」

ミサカミコトのまとめに無念そうに答える。



「そこで一つ聞きたいんだけど、魔力は人間以外でも生成できる?」

「どういう意味かにゃー」

「『私』は『STUDY』について多少知ってるわ」

「そういや超電磁砲が『STUDY』の壊滅に関わったんだったな、『STUDY』がやろうとしたことは……まさか!」

土御門も調べ始めてから『STUDY』の目的については分かっていた。しかし土御門が理解していたのは能力者とは別の方法論を追求しようとしていた、ということだった。

「ケミカロイド」

そして、『STUDY』が生み出した異端。

「ケミカロイド? ミク、なんだそれ?」

「化学的組成で造られた人間」

「化学的に?そんなもんができんのか?」

「『STUDY』は造ったわ、造ったのは人工的に能力を生み出す道具としてだったけどね」

「そんなことがあったのか」

能力者とは別の方法論を求めながら行きついたのは結局、能力を生むための人造人間。


「ミクちゃんの予想として次は魔術を生み出すケミカロイドを造ったってことかにゃー」

土御門はそれが関係してくるとは思わなかった。

「ええ、可能ならね。『STUDY』は能力者に頼らない方法を模索してたから、有富達を援助していた人も同じことを考えていたかも」

能力者として製造しなければ良いだけ、という視点が無かったかもしれない。

「可能性は高そうぜよ、その線で当たってみるか」

「しかし、ここが燃えてる理由はまだ分からないな」

ステイルが言う。土御門にはそのパズルの解答が見えかけていた。

「ああ、それはミクちゃんの予想が正しいとしたらだが……仮説を立てたうちの暴走のケースかもにゃー」

「暴走?」

「魔術を吐き出すためだけに造られたとしたら、いずれ制御が効かなくなる、それを支える意志が無いからにゃー」

「じゃあ土御門、あの中で燃えてるって言うのか、そのケミカロイドは?」

「それはまだ分からんぜよ、どうだステイル?」

「自らの身を燃やしているようには見えないね」

暴走し魔力を吐き出し続けているなら、燃え盛る建物なかに痕跡ぐらい見えてもおかしく無い。

「だったら、そのケミカロイドは何処に行ったんだ?」

「カミやん、それはこれからだぜい、持ち去られたならまだいい、最悪なケースは当て所もなく徘徊してるかもってことぜよ」

土御門が視線を動かす、上条もそれにつられ同じ方向を見る。そこには夜に包まれながらも燃え盛る炎に照らされた街並みが不吉に見えた。






「余裕ね」

「力の差は見えてるのではないかな」

「まあね、でもそれぐらいで挫けたりはしない」

「ほう」

「アイツは自分のことを無能力者だと言った。ええ、そうね右手のそれも手首から先にしか、あの異能を消してしまう不思議はないもの。だと、いうのにあの馬鹿は助けたい、それだけの理由でどうしようもない巨大な敵に立ち向かおうとするのよ」

「彼のことだね」

「そうよ、あのバカよ。つい最近まで手伝ってくれの一言も言ってくれなかったあのバカ!一人で行ってしまうようなあのバカ!アイツの傍らにいるためには絶望的な差がなんだって言うの!」

「それが嘆き悲しみ立ち上がれない絶望が待っていても?」

「ならない!そんな事にはならない!!」

「では、教えてあげよう」

「……は?」

「教えてあげても良い、と言ったはずだが」

「檻を開ける鍵の在り処を教えてくれるってわけ?」

「教えてもそれが可能であるかが問題なだけだ」

「手の届かないところに在るとでも」

「今の君は小さい」

「え、小さい?」

「本来の数十分の一の欠片にしか過ぎない」

「どういう」

「死ぬはずだった君をここに繋ぎ止めたのは何かな」

「それは」

「彼への思い」

「うっ」

「伝えたい言葉、それらが君を繋ぎ止めた。しかし、それも良し悪しだ、その思いを守りたいがために小さな殻に封じこもった」

「それが今、私の周りに拡がっている世界」

「そう、君の思いは執着と言い換えることもできる。それが核となった思考体だ、今の君は。その小さな核であっても世界をコップの中の水に例えると、水の中にいれたら僅かに溶け出す、世界を君の色に染める事が出来る。しかしより濃い存在である私がその中に在ることによって君は核のままだ」

「私は自ら閉じこもり、アンタに抑え込まれている」

「どうすれば良いか解るかな」

「閉じこもるのを辞め、世界に認識を拡げる?」

「正解」

「でも」

「耳をすませば良い、目を開けば良い、心を開くと良い。まずは聞こえないかな」

「聞こえ、えっ?……これ、歌?」

「少し悲しい音色が混ざっているようだ、それを隠し君に帰って来て欲しいと願う歌」

「この声は……あのシスターの」

「彼女にとって大事な人、その者が君の不在を嘆く、だから君に届かせようと彼女は歌っている」








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