小ネタ
美琴「ちょろっと」
上条「げっ、ビリビリ」
美琴「誰がビリビリよ! 私には――。このパターンはもういいわ」 ハァ
上条「溜息を吐くと幸せが逃げるぞ」
美琴「アンタに言われたくないわよ。とにかく、私と宝探しに付き合いなさい!」
上条「はい?」
美琴「宝というのは少し語弊があるわね。ツチノコって知ってる?」
上条「何かの本で読んだな。UFOの親戚だろ、そんなもん信じてんのか」
美琴「正直、眉唾なんだけど。最近になって学園都市で目撃されてるらしいの」
上条「ばかばかしい。カミジョーさんはそんな子ども騙しに釣られませんことよ」
美琴「懸賞金がついてるとしても?」
上条「えっ」
美琴「懸けたのはこの街の情報誌で、賞金は一〇万円。金額的にはジョーク企画みたいね」
上条「取り分が半分でも、三か月分の食費が……」
美琴「私はアンタと、じゃなくて、正体を突き止めたいだけ。お金は要らないわ」
上条「マジで?」
美琴「眉唾モノなのは確かだけど、科学の街だからこその信憑性もあると思わない?」
上条「たとえば遺伝子操作、か。人手が必要だったら白井とかにも声を掛けてるよな」
美琴「一緒に探すのはアンタだけよ。私も超能力者として求められてるイメージを裏切れないし」
上条「俺はいいのかよ。ま、そういうノリは嫌いじゃねぇけど」
美琴「じゃあ承諾ってことで。えっと、それでね、右手の力も貸して欲しいの」
上条「? ああ、AIMなんたらを打ち消さねぇと、猫みたく逃げられちまうか」
美琴「捜索の間、私と手を繋いでて。し、仕方ないわよね! 事情があるんだからっ」
上条「」
上条「――何でカミジョーさんはペットショップに居るんでしょう? 幻想殺しもこき使われて」
美琴「まずはリサーチよ。ツチノコの正体は、在来の蛇や蜥蜴の誤認という説があるの」
上条「そのあたりの在来種を取り扱ってねぇかって?」
美琴「そういうこと!」
上条「とか言いつつ、さっきから小動物のコーナーで足が止まってるじゃねーか」
美琴「♪」
美琴「ふう、癒されたー」
上条「ご満足いただけたようで何よりです」
美琴「アンタは不満そうね」
上条「手を繋いでるせいで落ち着かねぇんだよ。人目が気になって、髭面の店員がイエティに見える」
美琴「感謝してるわよ。ツチノコ探しもちゃんとするから」
上条「頼みますよ、御坂センセ」
上条「――って、今度はデパートのふれあい動物広場かよ」
美琴「とりあえず情報を整理しようと思って。場所はどこでもいいじゃない」
上条「犬の前足を取りながら言われてもなぁ。俺の右手……」
美琴「学園都市は人工の街よ。緑地が残されてるのは、山岳地帯の第二十一学区だけ」
上条「目撃情報があるんだろ? 現場はそこなのか」
美琴「ううん。学生の目撃が多くて、ほとんどがここ第七学区ね。その辺の公園とか」
上条「ええと? つまり昔から生息してる野生種とは思えねぇわけだ」
美琴「ショップの取り扱いを見る限り、逃げ出したペットの線も可能性が低いわ」
上条「確かに爬虫類の類は少なかったな。よほどの物好き以外、飼ったりしねぇか」
美琴「友だちに一人居るけどね……。そもそも飼育環境を整えられる学生が稀なのよ」
上条「マニアックな分、管理が徹底されてて、逃がして放置のケースはまず有り得ねぇと」
美琴「在来種の見間違えじゃ面白くないし、悪くない傾向だと考えましょ」
上条「目撃情報そのものは信頼できるのか?」
美琴「不特定多数の報告が挙がってる以上、少なくとも『何か』が存在するのは本当じゃないかしら」
上条「そいや最初に遺伝子操作とか疑ってたな」
美琴「管理の面ではペットより厳重そうだけど。学園都市である理由を考えたら想像しちゃうわね」
上条「ま、後は現場を当たるしかねぇだろ。そろそろ犬も放してやれよ。二本足が様になってきてる」
美琴「えへー」
上条「――だから、どうして猫カフェなんだよ」
美琴「腹が減っては何とやら。私の奢りよ。収穫があるとは限らないし、今日のお礼ってことで」
上条「俺の利き腕は御坂に占有されてて、食事もままならないんですが。離していいか?」
美琴「猫が逃げちゃうじゃない。し、しょうがないわね。ほら、あーん」
上条「」
美琴「あーん」
美琴「どう? ペットがメインの喫茶店にしては美味しいでしょ」
上条「味なんてわからねーよ。カミジョーさんのパーソナルリアリティはボロボロです」
美琴「そこまで照れないでよ。私だって恥ずかしいんだから」
上条「だったらやるなよ! 畜生、純粋な男心を弄びやがって……。猫の尻尾って二本だっけ?」
美琴「重症ね。いいから立って! いよいよ現場を捜索するわよ」
上条「うう」
上条「――あの、御坂さん?」
美琴「なに」
上条「公園に着いてみれば、子どもがラジコンで遊んでて。デザインがどう見ても」
美琴「ツチノコね。流行りのアニメ番組かしら。賞金を懸けた情報誌って、ローカル局の系列だったような」
上条「体のいい宣伝じゃねーか!」
美琴「知らないわよ! 気づかなかったのはアンタも同じでしょ」
上条「結局こういうオチかよ。せっかくの休日が振り回されて終わっちまった」 フコウダ
美琴「そんなに凹まないでよ。私としては収穫がなくもなかったけど」
上条「まあ俺も冗談半分だったしな。動物と触れ合えて、嬉しそうな御坂を見れただけでよしとするか」
美琴「一日、女の子と手を繋いでた役得は?」
上条「罰ゲームの間違いだろ」
美琴「言ってくれるじゃない。だったら帰り道も付き合ってもらえる?」
上条「いやもう勘弁してください。慣れてねぇんだって」
美琴「情けないわね。そのままじゃ彼女なんて作れないわよ」
上条「彼女か……。はは、俺にとってはそれこそUMAみたいなもんだ」
美琴「案外、身近なところに存在してるんだけどね」
上条「どういう意味だよ。っておい急に引っ張るな!」
美琴「何でもないっ。たまには振り回される立場になって考えなさい!」
おわり