小ネタ
彼女を見かけるようになったのは一ヶ月ほど前。
黒くて長い髪に透き通るような白い肌の女の子。
私から見ても見惚れるぐらい美しい彼女は何故かいつもアイツと一緒にいた
まぁアイツは誰かが窮地に陥るとそれを救わずにはいられない変わり者だから
今回もなんだかんだあって、その子を助けることになり
それで一緒にいるのだろうと思っていた。
でもどうやらそれは勘違いだったみたいだ。
彼女はいつもアイツの隣にいる。
アイツはいつも彼女の隣にいる。
互いに手を繋ぎあい
互いに微笑みあいながら
二人は私の前を通り過ぎていく。
まるで私の存在に気が付かないかのように
「ちょ、ちょっとアンタ待ちなさいよ!」
「ん? なんだ誰かと思ったらビリビリじゃねえか。 どうした?」
何も考えずについ声をかけてしまった。
だが、話しかけておいて何にもないというのはおかしな話だから何か喋らなければ
「しょ、勝負しなさい! きょ、今日こそ決着つけてやるんだから!」
そして一瞬の間考えて出た答えがこの返答とは…
ワンパターンすぎて自分でも涙が出る
「勝負…か……わりぃ、今はそれどころじゃないんだ。また今度な」
「それどころじゃないって…ははーん。そこの人と遊ぶのに夢中で私なんか眼中にないってわけね」
自分の言葉で胸の中が苦しくなる。
私より隣の彼女を優先する。それは当然よね。
アイツだって二人きりの時間が欲しいに決まってるもの
私が割り込む隙なんてこれっぽっちも無い
「すまんな。この埋め合わせはいつかするから。じゃあまたなビリビリ」
そういって二人は私の前から消えようとする
私には去っていく二人をこれ以上この場にとどまらせる言葉を持たなかった。
「待って当麻くん。一度二人っきりでお話させてもらえないかしら」
凛としてそれでいて綺麗に響く声はアイツの隣から聞こえた。
「えっ! だけどそれは…」
「いいから。私、彼女とは一回お話しなくちゃいけないって思ってたの。当麻くんはここで待ってて。二人だけで話したいから」
「…お前がそういうんなら」
その言葉の後にトテトテと私の前に来る彼女
真正面から見ることで改めてその美しさに驚きを覚える。
まるで芸術品のような完成された姿は見る者に劣等感を与えずにはいられない
自分自身顔立ちや体形については胸以外はかなり整っている方だと思っていた分ダメージは大きかった
「初めまして。あなたがビリ…じゃなくって御坂美琴さんね」
「……今ビリビリって言いそうになったでしょ」
「ごめんなさい。わざとじゃないの。当麻があなたを呼ぶときいつもそう呼んでたから」
「……アイツのこと当麻って…なんていうか…すごく親しげに呼ぶんですね」
「ええ、当麻は私の命の恩人だもの。命の恩人を親しげに呼ぶのはいけないことなの?」
「いえ、そういうわけでは…」
何故だろう。彼女を目の前にすると変に萎縮してしまう。
それでも一つ分かったことがある。いや、やっぱりというべきか
彼女はアイツに何か危機的状況を打破してもらい、命まで救われたのだということが
それなら、私だって絶対能力進化実験を阻止する際にアイツに命を救われている。
そう。私と彼女の立場は一緒なのだ。
だから何も気負う必要はない。
でも…じゃあなんでだろう。
なんで彼女は当麻の隣にいて
なんで私は蚊帳の外なのだろうか