御坂美琴の暴走
「みーつけた♪」ギュッ
「み、み、み、み、み、御坂さん!?貴女様は一体何をしていらっしゃるのですかっっ!?」///
とある公園の自動販売機前で、ツンツン頭の高校生、上条当麻は悲鳴を上げた。
「なにって、アンタがいたから腕組んだだけなんだけど?」ギュッ
「な、な、な、な、なんで!?」(なんだこれ、しがみつかれてるから柔らかいものが上条さんの左腕に!)
「なんでって、アンタ、腕、組みたくないの?」キョトン
「御坂さんは組みたいんですか?」
「そりゃ、組みたいに決まってるでしょ。今まで我慢してたんだから」ギュッ
「そ、そうなの!?」(なにがあった?一体これはどういうこと!?)
「我慢する必要もなくなったし、今までの分、甘えさせてもらうんだから」ギュッ
「が、が、我慢する必要なくなったって、どういうことでしょうか?」///
「んー?彼氏に甘えるのって普通でしょ」ギュッ
「か、か、か、彼氏ぃっ!?」(どういうこと!?え?どういうこと?)
「そうよー。アンタはわたしの彼氏でしょー。うふふ」ギュッ
「いやちょっと待て御坂」
「なによ?」
「俺がいつ、お前の彼氏になったんだ?」
「は?」キョトン
「いや、上条さんにはそういった記憶がないんだけど…」
「…嘘、まさかまた記憶喪失…なの」
「いや、そうではないと思いますけど」
「やだ、やだよ。せっかく好きって言ってくれたのに…」グスッ
「……俺が告白したのか?」
「告白したのはわたしからだけど…アンタも好きって言ってくれた」グスッ
「いつ、どこで?」
「昨日の夕方、ここで」
「どんな風に?」
美琴は名残惜しそうに上条の左腕を離し、上条の正面に立った。
「こんな感じで、アンタの前に立って、…アンタが好き、って」///
「……」(なにこの可愛い娘)
「ね?本当に覚えてないの?」ウワメヅカイ
「御坂…」(真っ赤になって泣きそうな顔するなよ)
「…」///
「悪い、やっぱり俺にはそんな記憶はない」
「…っ」グスッ
「あー!もー!泣くな!」ギュッ
「ふぇっ!?」ビクッ
「そんな泣きそうな顔しないでくれ。ってか、お前の泣き顔は見たくない」ギュッ
「……」
「…あー、その、なんだ」ギュッ
「……」
「上条さん的にはだな、そういう記憶はないんだけどさ、さっきお前が再現してくれただろ?」
「…なにを?」
「その、告白?」
「…うん」
「それを聞いちまった以上、返事をしないといけないと思うわけですよ」
「…うん」
「あー、それでだな…」ポリポリ
「……」
「こういうのって顔を見て言うのがいいと思うんだけど、上条さんいっぱいいっぱいなんで、このまま言わせてもらう」
「……」///
「ってか、この体勢から判ると思うけど、その、よろしくお願いします」///
「……」///
「御坂さん?」
「……ふにゃあ」///
「零距離漏電!?」(よ、良かった。抱きしめてて)
幸い、抱き寄せていたため美琴にも上条にも電気が流れることはなかった。
―――――
「落ち着いたか?」
「……う、うん」///
ベンチに並んで座る美琴に、上条はそう声をかけた。
「やっぱ、ちょっと無理。手、握ってくれる?」
「了解」
美琴の左手の甲の上に上条は右手を乗せた。
「…こうじゃなくて、その、ちゃんと繋いで欲しいな」
「はいはい、わかりました」ギュッ
「…ありがと」/// ギュッ
手を握り返し、大きく息を吸い込んでから美琴は口を開く。
「…その、アンタは、わたしの彼氏でいい?」
「そのつもり、だけど?」
「良かった…」
「あはは。その、思い出したんだけど、わたし、アンタに告白してなかったかなーって…」
「は?」
「その、わたしの夢の中でアンタに告白して、好きだって言ってもらった、みたいな」
「ゆ、夢ぇ?」
「うん。夢。でも限りなく現実に近かったんだと思う。わたしの中では」
「……そっか」
「それでも、アンタは彼氏でいてくれる?」
縋るように美琴は上条を見る。
「夢、か」
「うん」
「御坂」
「…」
「顔を上げてくれないか?」
「…」
美琴がおずおずと見上げると、そこには優しい微笑を浮かべた上条の顔があった。
「御坂、好きだ」
「……え」
「俺もお前が好きだ」
「…あ」ジワッ
「だから、泣くな、泣かないでくださいお願いします!」
「しょうがない…じゃない。嬉し泣き、なんだから」グスッ
「嬉し泣きでも、俺はお前の泣き顔は見たくないんだって」
「…じゃあ、止めて」
両手で涙を拭ってから、美琴は上条を見上げ、静かに瞼を閉じた。
おしまい