第6章 帰省1日目 縁日
携帯で調べた大ざっぱな地図を参考にして出店がある方向にトボトボと歩いていた美琴が上条に発見されたのはそれから
約七分後の事である。 もっと正確に言うと、先に見つけたのは能力によってある程度遠くからでも上条の位置を捕捉できる
美琴の方であったが、先に駆け寄ってきたのが上条の方であった。
プチラッシュ時の駅構内にも匹敵するような群衆の中、数メートル先も満足に見渡せない状況で、幻想殺ししか持たない
無能力者の上条が一体どうやって美琴の姿を見つける事ができたのか、なんて尋ねるほど美琴は無粋ではない。
約七分後の事である。 もっと正確に言うと、先に見つけたのは能力によってある程度遠くからでも上条の位置を捕捉できる
美琴の方であったが、先に駆け寄ってきたのが上条の方であった。
プチラッシュ時の駅構内にも匹敵するような群衆の中、数メートル先も満足に見渡せない状況で、幻想殺ししか持たない
無能力者の上条が一体どうやって美琴の姿を見つける事ができたのか、なんて尋ねるほど美琴は無粋ではない。
当麻「やーほんとごめんですよ。 ついいつもの癖で全力逃走しちまいました」
美琴「それより何で電話に出ないわけ?」
美琴「それより何で電話に出ないわけ?」
代わりにいきなりキッと睨んでやる。
当麻「悪い悪い。 出ようとしたら怖い顔したおじちゃん達にぶつかったりなんかして、その方達が大層お怒りになって」
美琴「あーはいはい、もういいわよいつも通りって事ねご愁傷様。 ちょっとパンフ貸して」
当麻「ほい」
美琴「あーはいはい、もういいわよいつも通りって事ねご愁傷様。 ちょっとパンフ貸して」
当麻「ほい」
とりあえずさっきの神社でのやり取りはお互い暗黙の内に無かった事として扱う事になった。
正月からそんな暗い話をしてもしょうがないし、元々あの話題をあからさまに出すのは二人にとってタブーみたいな雰囲気
が以前からあるのだ。 美琴はあの夜の出来事を思い出すと無性に恥ずかしくなるし、上条はそもそも自分の中の深い部分を
好んでさらけ出すような性格ではない。
美琴はパンフレットに載っている地図を覗き込む。 地図は簡単に略されたイラストのようなものであったが、神社自体が
そもそも三次元的に張り巡らせられているので、美琴が先程見ていた携帯の平面地図よりはよっぽど分かりやすい。
正月からそんな暗い話をしてもしょうがないし、元々あの話題をあからさまに出すのは二人にとってタブーみたいな雰囲気
が以前からあるのだ。 美琴はあの夜の出来事を思い出すと無性に恥ずかしくなるし、上条はそもそも自分の中の深い部分を
好んでさらけ出すような性格ではない。
美琴はパンフレットに載っている地図を覗き込む。 地図は簡単に略されたイラストのようなものであったが、神社自体が
そもそも三次元的に張り巡らせられているので、美琴が先程見ていた携帯の平面地図よりはよっぽど分かりやすい。
美琴「さっきメール来たんだけど、三人が居るのはここの反対側みたいね」
当麻「そういやあの神社も結構遠かったからな。 それで俺達は普通に店でも見ていけば良いの? それとも合流するか?」
美琴「うんにゃ。 『一周して疲れたから私達は暖かいところに座って温かいものでも食べてるわよん。 だから二人でゆっくり
しといで(はぁと×3)』だってさ」
当麻「………気を遣われてるのかもしれねーけど、何だろーこの素直に喜べないモヤモヤした感じは」
美琴「まーもうこの際あんな奴無視して気楽に楽しんじゃった方が勝ちなんじゃないかしら?」
当麻「そういやあの神社も結構遠かったからな。 それで俺達は普通に店でも見ていけば良いの? それとも合流するか?」
美琴「うんにゃ。 『一周して疲れたから私達は暖かいところに座って温かいものでも食べてるわよん。 だから二人でゆっくり
しといで(はぁと×3)』だってさ」
当麻「………気を遣われてるのかもしれねーけど、何だろーこの素直に喜べないモヤモヤした感じは」
美琴「まーもうこの際あんな奴無視して気楽に楽しんじゃった方が勝ちなんじゃないかしら?」
自分に言い聞かせるように少しだけテンションを上げて言うと、美琴は上条の横に並び距離を詰め、周囲には出来るだけ
ばれないように、自然体のままそーっと自分の指を上条の指へと絡めた。 最初は羽根を掴むように優しく、だけど隙間を
完全に埋めるべく徐々に指を熱く這わせてくるようなその掴み方に、思わず上条の背筋がピンと伸びる。
ばれないように、自然体のままそーっと自分の指を上条の指へと絡めた。 最初は羽根を掴むように優しく、だけど隙間を
完全に埋めるべく徐々に指を熱く這わせてくるようなその掴み方に、思わず上条の背筋がピンと伸びる。
当麻「ちょっ、こんな物凄い人混みの中でか? 上条さん的には結構ハードル高めですよ?」
美琴「こうしてしっかり捕まえておかないと、アンタまたどっか遠く行っちゃうでしょ?」
当麻「………………」
美琴「こうしてしっかり捕まえておかないと、アンタまたどっか遠く行っちゃうでしょ?」
当麻「………………」
実際にはいつだったかのように無理矢理振り払う事は可能なので、この行為自体に物理的な拘束力はほとんど無いのだが、
上条に対しては精神的な枷として十分に機能する。 一応『彼氏として』ならば先程の美琴の言い分が分からないでもなく、
それにより後ろめたさを多少なりとも感じている上条は、そういう事を言われてしまうと逆らう余地がないのである。
そしてもちろん美琴はそれを解かってやっている。
上条に対しては精神的な枷として十分に機能する。 一応『彼氏として』ならば先程の美琴の言い分が分からないでもなく、
それにより後ろめたさを多少なりとも感じている上条は、そういう事を言われてしまうと逆らう余地がないのである。
そしてもちろん美琴はそれを解かってやっている。
当麻「お前、ずるいだろそれ」
美琴「誤魔化したうえに勝手に逃げ出して私を長い間独りぼっちにした罰よ」
美琴「誤魔化したうえに勝手に逃げ出して私を長い間独りぼっちにした罰よ」
どうにか捻り出した抗議も嬉しそうな笑顔の美琴に一秒で却下された。
美琴にこんな格好でそんな顔をされてしまってはもう振り払う理由なんてどこにも残っていない。 恥ずかしさからか緊張からか
上条の体は内側から熱くなり、鼓動だっていつも以上にふざけたリズムを刻んでいるが、甘んじて受け入れるしかないようだ。
美琴にこんな格好でそんな顔をされてしまってはもう振り払う理由なんてどこにも残っていない。 恥ずかしさからか緊張からか
上条の体は内側から熱くなり、鼓動だっていつも以上にふざけたリズムを刻んでいるが、甘んじて受け入れるしかないようだ。
当麻「よ、よーっし。 そっちがその気なら上条さんだって開き直ってやりますぞ!!」
そう言って美琴の腰にでも手を回せば格好良く優位に立てたのかもしれないが、残念ながら今の彼には手をわざと強く握り返す
くらいで精一杯だった。 それ以上は自分の方がおかしくなってしまいそうである。
上条はそんな自分のガキっぽさが若干嫌になったが、その程度でも美琴の肩がピクンと跳ねたのを見て少しだけ可笑しくなった。
恥ずかしさもお互いに共感できるなら悦びに変わる。 自分達は確かにこういう行為に対してはまだまだ初々しいが、今はそれでも
良いと楽しめるようにもなる。
くらいで精一杯だった。 それ以上は自分の方がおかしくなってしまいそうである。
上条はそんな自分のガキっぽさが若干嫌になったが、その程度でも美琴の肩がピクンと跳ねたのを見て少しだけ可笑しくなった。
恥ずかしさもお互いに共感できるなら悦びに変わる。 自分達は確かにこういう行為に対してはまだまだ初々しいが、今はそれでも
良いと楽しめるようにもなる。
美琴「……あそーだ、縁日で勝負でもしちゃう?」
美琴は思いついたと言うより話題を探して捻り出したという感じで上条に話し掛けた。
当麻「また勝負か。 縁日っつっても外だから大したもん出て無いだろ?」
科学技術が進んでいて、学生も多い学園都市の屋台と比べてしまうと、外のものはどうしても見劣りしてしまう。 そんな
もので勝負しても面白くないだろう。
もので勝負しても面白くないだろう。
当麻「しかもほら、能力者って遊べない屋台多いし、あとお金ももったいない」
能力を使えば高価な景品だって簡単に取れてしまう。 もちろんそんなズルをしたら警察沙汰(正確には強制送還されるので
アンチスキル沙汰)なのだが、特に学園都市の外でこっそり能力を使い荒稼ぎする学生が後を絶たない。 だから屋台によって
は『能力禁止』と注意書きがあったり、学生証提示義務がある所や、そもそも能力者を完全お断りしている店もあったりする。
無能力者的には何とも理不尽な話であるが、外においては無能力者とて能力者の扱いを受けるのだ。 もちろん上条も例外
ではない。
アンチスキル沙汰)なのだが、特に学園都市の外でこっそり能力を使い荒稼ぎする学生が後を絶たない。 だから屋台によって
は『能力禁止』と注意書きがあったり、学生証提示義務がある所や、そもそも能力者を完全お断りしている店もあったりする。
無能力者的には何とも理不尽な話であるが、外においては無能力者とて能力者の扱いを受けるのだ。 もちろん上条も例外
ではない。
美琴「まあそれもそうね。 勝負は学園都市内の縁日にお預けか。 ……ってそういえばアンタお年玉は?」
当麻「まだもらってねえけど、どちみち別途使い道が決まってるからそもそも使う気ねーよ」
美琴「ふーん。 使い道って何?」
当麻「……秘密」
当麻「まだもらってねえけど、どちみち別途使い道が決まってるからそもそも使う気ねーよ」
美琴「ふーん。 使い道って何?」
当麻「……秘密」
上条は無表情のまま視線を斜め上に逸らす。
美琴「アンタまさか入院費に充てるとか寒い事言うんじゃないでしょうね? じゃなければ女絡みとか!? アンタが隠すんだから
そのどっちかだと思うんだけど」
そのどっちかだと思うんだけど」
美琴は顎に手を当て少し考える素振りをする。
当麻「どういうイメージだよそれ。 お前の中での俺は年がら年中女に振り回されつつ病院送りされてる人なのか!?」
美琴「え、どっか違う?」
当麻「違う………………たぶん。 ほ、ほら一応勉強とかもしてるし……………ってとにかく、用途は一部防寒用に使う以外は
今は秘密。 そのうち答え教えるから気にしなくていい。 ジッとしてると寒いしさっさと行こうぜ?」
美琴「え、どっか違う?」
当麻「違う………………たぶん。 ほ、ほら一応勉強とかもしてるし……………ってとにかく、用途は一部防寒用に使う以外は
今は秘密。 そのうち答え教えるから気にしなくていい。 ジッとしてると寒いしさっさと行こうぜ?」
上条は平静を装ったまま美琴を引っ張っていく。 それにつられて美琴もカラコロと石畳に音を鳴らしつついつもより小股で
歩き出した。
歩き出した。
美琴「(ちょ、分かったからあんま引っ張らないでよ。 繋いでる手見えるじゃない!)」
既に辺りは薄暗い時間帯なのに、5メートル程度の幅の道脇に屋台が連なる一帯だけボヤーッと明るい。 まるでそこだけ現世
から浮いているような不思議な情景が二人を出迎える。
から浮いているような不思議な情景が二人を出迎える。
二人はごく普通に縁日を楽しむ事にした。
◆
――――――お面
当麻「御坂のお嬢ちゃん、チラチラ見るなら素直に選べば良いんじゃねーの? ほら、ケロヨンもあるみたいだぞ」
既に美琴の趣味をある程度把握している上条は、優しく生暖かい心でその背中を押してやった。
美琴「なっ、ななな何の事かしら? ああ、あれ? あのお面屋の事ね…………………………………………」
当麻「……………………………………??」
美琴「……………………別に私は欲しいだなんて思ってないわよ」
当麻「何だよ今の間、絶対見てただろ!? 話の流れで誤魔化しながら完全に凝視してただろ素直になれって!」
美琴「し、しつこいわね。 何よ、まさかとは思うけどそんなに私の華麗なお面姿が見たいっての?」
当麻「あっはは、それはさすがにありえねー」
当麻「……………………………………??」
美琴「……………………別に私は欲しいだなんて思ってないわよ」
当麻「何だよ今の間、絶対見てただろ!? 話の流れで誤魔化しながら完全に凝視してただろ素直になれって!」
美琴「し、しつこいわね。 何よ、まさかとは思うけどそんなに私の華麗なお面姿が見たいっての?」
当麻「あっはは、それはさすがにありえねー」
着飾った美琴が可愛く見えるのは確かだが、いくら何でもさすがにカエルのお面を付けたくらいで胸キュンするほど自分は
単純野郎でもお面フェチ野郎でもないはず、と上条は思う。
単純野郎でもお面フェチ野郎でもないはず、と上条は思う。
美琴「あははは…………そうよね。 私だって解かってるわよそんくらい。 あんなお面付けて喜んでいいのなんてせいぜい
小6までだろうし、アンタだってそんなもの被った女と手繋いで歩きたくないわよねー………………………はぁ」
小6までだろうし、アンタだってそんなもの被った女と手繋いで歩きたくないわよねー………………………はぁ」
美琴は残念そうに肩を落としズーンと暗くなってしまった。
自覚はあったのに、自分の趣味が特殊である事を改めて確認して悲しくなったらしい。
自覚はあったのに、自分の趣味が特殊である事を改めて確認して悲しくなったらしい。
当麻(小学6年生でも若干アウトな気が………って話は置いといて)
仕方ないので上条は内心溜息を付きつつも一応無理矢理取り繕ってみる。
しょんぼりしている美琴を見ていても面白くない。
しょんぼりしている美琴を見ていても面白くない。
当麻「いやでもほら、今は縁日だし中学生くらいまでは少しくらい弾けてもギリギリセーフなんじゃねーかな。 大体にして、
お前がそんな人目を気にするだなんてらしくないぞ? もっと傍若無人に笑顔振り撒いて自然にしてろよ」
美琴「それ、フォローしてるつもり? まあどちらにせよ買わないわよ。 ケロヨンは持ってるし」
当麻「…何だそうなのか」
お前がそんな人目を気にするだなんてらしくないぞ? もっと傍若無人に笑顔振り撒いて自然にしてろよ」
美琴「それ、フォローしてるつもり? まあどちらにせよ買わないわよ。 ケロヨンは持ってるし」
当麻「…何だそうなのか」
上条は少しほっとして止めた足を再び動かし出す。 すると間もなくしてピョン子のお面を被った五歳くらいの女の子が目
に飛び込んできた。 その子の来た方向を見ると先程の屋台より品揃えの多い別のお面屋がある。
一瞬だけ躊躇ってから、未だケロヨンお面に後ろ髪引かれてる美琴に確認をとる事にした。
に飛び込んできた。 その子の来た方向を見ると先程の屋台より品揃えの多い別のお面屋がある。
一瞬だけ躊躇ってから、未だケロヨンお面に後ろ髪引かれてる美琴に確認をとる事にした。
当麻「んっと、あっちの方の屋台にはピョン子のお面もあるみたいだけど、それも持ってんのか?」
その瞬間、美琴はグリッ! と怖いほど首を超高速で回転させ上条の指差す方を向き、僅かコンマ5秒でピョン子を視認し、
さらにそのコンマ5秒後には全力で駆けだしていた。 しかも短距離走でスタートダッシュするような綺麗なフォームで。
その際二人の繋いだ手は固く握られたままだったので、上条の体は文字通り引きずられることになった。
さらにそのコンマ5秒後には全力で駆けだしていた。 しかも短距離走でスタートダッシュするような綺麗なフォームで。
その際二人の繋いだ手は固く握られたままだったので、上条の体は文字通り引きずられることになった。
当麻「ッぐぁぁあああ!! う、腕が、腕が千切れ……」
美琴「ぴょ、ピョン子のお面なんてレア物初めて見た!! ……し、新作なのかしら!? すいませんすいません、これ三つ!!」
美琴「ぴょ、ピョン子のお面なんてレア物初めて見た!! ……し、新作なのかしら!? すいませんすいません、これ三つ!!」
美琴は震える声で屋台の男性に要求し、上条の手を離すと、腕にぶら下げていた小さなバッグから何やら緑色の財布を取り出して
支払いを終える。
上条は肩が外れるかと思える速度で強引に引っ張った美琴に文句を言おうとしたが、ピョン子お面を手に入れた彼女はあまりにも
純真な笑顔でそれを眺めていたので、結局毒気を抜かれてしまった。 代わりに呆れた顔でそれを眺める。
支払いを終える。
上条は肩が外れるかと思える速度で強引に引っ張った美琴に文句を言おうとしたが、ピョン子お面を手に入れた彼女はあまりにも
純真な笑顔でそれを眺めていたので、結局毒気を抜かれてしまった。 代わりに呆れた顔でそれを眺める。
当麻「結局買うんじゃねーか。 つか三つもどうするんだ? 観賞用、保存用、布教用にでもするつもりか?」
美琴「観賞用、保存用、アンタに被せて楽しむ用」
当麻「……………………………………」
美琴「ふふ、うふふふひひ」
美琴「観賞用、保存用、アンタに被せて楽しむ用」
当麻「……………………………………」
美琴「ふふ、うふふふひひ」
こういう状態の輩には逆らっちゃいけないが、構っても面倒臭いだけだ。 そう思った上条はそっと早歩きでその場から離れる。
アレを被せられる口実を与えてしまいかねないのでダッシュで逃げることはしない。
アレを被せられる口実を与えてしまいかねないのでダッシュで逃げることはしない。
当麻「ってオイコラ馬鹿!! 無理矢理被せようとすんじゃねえ!!」
しかし美琴は駆け引きなんてものを全てすっ飛ばしいきなり強硬手段に出た。
上条が禍々しい気配を感じてバッと振り向くと、美琴がお面の一つを持って上条の頭に被せようと飛びかかろうとしていたのだ。
上条はそれをすんでの所で避ける。 何もない空間へ輪っか状に引き伸ばされたお面のゴム紐が美琴の両手と共に振り下ろされる。
ちなみに彼女は既に観賞用と保存用、二つ重ねて横に被っていた。
上条が禍々しい気配を感じてバッと振り向くと、美琴がお面の一つを持って上条の頭に被せようと飛びかかろうとしていたのだ。
上条はそれをすんでの所で避ける。 何もない空間へ輪っか状に引き伸ばされたお面のゴム紐が美琴の両手と共に振り下ろされる。
ちなみに彼女は既に観賞用と保存用、二つ重ねて横に被っていた。
美琴「ほら縁日だし、高校生だって全然セーフだと思うわよ? というかセーフとかアウトとかもうどうでも良い事だわ!!
ふっふふ…ピョン子を被ったアンタ…ふふふ。 想像するだけで何かこう、とても胸が高まる感じがする……………
ひょっとしてこれが『萌え』って奴かしらね?」
ふっふふ…ピョン子を被ったアンタ…ふふふ。 想像するだけで何かこう、とても胸が高まる感じがする……………
ひょっとしてこれが『萌え』って奴かしらね?」
美琴はお面とそのゴム紐を持ってジリ…ジリ…と上条と間合いを詰める。
もちろん狙うは上条のツンツン頭。
もちろん狙うは上条のツンツン頭。
当麻「お、俺なんかに萌えなくていいから!! ニュアンスは合ってるけど全然嬉しくねーつかこえー! それに二人でお揃いのお面
だなんて絶対に笑いの的だろ!? 美鈴さんに見られたら何て言われるか分かったもんじゃねーぞ!?」
美琴「良いモン。 もうほとんどバレ切ってるんだから。 それよりも今最重要なのはお面よお面! 『ピョン子、オン、アンタ』よ!!
他は吹けば飛ぶような些末な問題に過ぎないわ」
当麻「うわコイツ開き直りやがった! んなもん俺は付けねえぞ。 男子高校生として何か大切な物を失う気がする………………、
つかお前正気か? さっきから息荒くない? ちょっと、怖いぞホントに。 そんなにまでして俺に被せたいのかよ特殊な
趣味か何かですかー!?」
だなんて絶対に笑いの的だろ!? 美鈴さんに見られたら何て言われるか分かったもんじゃねーぞ!?」
美琴「良いモン。 もうほとんどバレ切ってるんだから。 それよりも今最重要なのはお面よお面! 『ピョン子、オン、アンタ』よ!!
他は吹けば飛ぶような些末な問題に過ぎないわ」
当麻「うわコイツ開き直りやがった! んなもん俺は付けねえぞ。 男子高校生として何か大切な物を失う気がする………………、
つかお前正気か? さっきから息荒くない? ちょっと、怖いぞホントに。 そんなにまでして俺に被せたいのかよ特殊な
趣味か何かですかー!?」
すると美琴は唐突に構えを解き、フッと哀愁漂わせる表情で視線を横に逸らした。
当麻「お、分かってもらえました?」
美琴「何かね、お面付けたら、アンタは遠くに行かないんじゃないかって気がしてさ」
当麻「………意味わかんねえし卑怯だしどうしようもねーからそれ!! あの手この手かよ!? 俺の罪悪感を返せー!!」
美琴「ほら、想像してみなさいよ。 ピョン子被って女の子助けるだなんて恥ずかしすぎてできないでしょ? 一体全体どこの
売れない面白仮面ヒーローよ。 まるでチビっ子達が空き地でやるようなごっこ遊び………………みたいな………………
ふ、ふふっ、あれ、ちょっと待って、それはそれで有りじゃないかしら?」
美琴「何かね、お面付けたら、アンタは遠くに行かないんじゃないかって気がしてさ」
当麻「………意味わかんねえし卑怯だしどうしようもねーからそれ!! あの手この手かよ!? 俺の罪悪感を返せー!!」
美琴「ほら、想像してみなさいよ。 ピョン子被って女の子助けるだなんて恥ずかしすぎてできないでしょ? 一体全体どこの
売れない面白仮面ヒーローよ。 まるでチビっ子達が空き地でやるようなごっこ遊び………………みたいな………………
ふ、ふふっ、あれ、ちょっと待って、それはそれで有りじゃないかしら?」
美琴はついピョン子のお面を被りマントを羽織った上条が自分のピンチに駆けつけるシーンを想像してしまい、中空を見て
ニヤリと両方の口端をつり上げる。
ニヤリと両方の口端をつり上げる。
当麻「お前自分の願望が口からこぼれてるぞ。 全然これっぽっちも『有り』じゃねーよ」
美琴「ハッ!? って違うそうじゃなくて! ………とにかくそういう特殊効果があるのよこの装備品。 分かったらさっさと装備
しなさい! アイテムは装備しないと意味ないって常識でしょ?」
当麻「そのアイテム呪われてるから!! それに格好付けなくたってピョン子お面は十分恥ずかしいっつの!! 大体お前もさっき
恥ずかしいみたいな事言ってたじゃねーか!?」
美琴「アンタがセーフだっつったんだからセーフよ。 まあちょっとは恥ずかしいけど、二人で被るからぜーんぜん平気」
当麻「おいマジですか? 二人でってどう考えても恥ずかしさ倍増だろ!? ってしかも俺に被せること前提で話してるし、なにが
なんでも俺に被せなきゃ気が済まないのかよ!?」
美琴「ぐだぐだとうっさいわねー。 優柔不断な男は嫌われるわよ? さっさと付けるのか被るのかハッキリしなさい。 そもそも
減るもんじゃないし別に良いじゃん」
当麻「減るって! 精神的に減るって!! 俺に拒否権は無いんですか何のメリットも無いってのに!!」
美琴「メリット? んー、そうね……………じゃあ、交換条件に私にも何か被らせる? または何かを着せるとか、それじゃ駄目
かしら?」
当麻「……ダメじゃない!! 喜んで被らせて頂きます!!」
美琴「ハッ!? って違うそうじゃなくて! ………とにかくそういう特殊効果があるのよこの装備品。 分かったらさっさと装備
しなさい! アイテムは装備しないと意味ないって常識でしょ?」
当麻「そのアイテム呪われてるから!! それに格好付けなくたってピョン子お面は十分恥ずかしいっつの!! 大体お前もさっき
恥ずかしいみたいな事言ってたじゃねーか!?」
美琴「アンタがセーフだっつったんだからセーフよ。 まあちょっとは恥ずかしいけど、二人で被るからぜーんぜん平気」
当麻「おいマジですか? 二人でってどう考えても恥ずかしさ倍増だろ!? ってしかも俺に被せること前提で話してるし、なにが
なんでも俺に被せなきゃ気が済まないのかよ!?」
美琴「ぐだぐだとうっさいわねー。 優柔不断な男は嫌われるわよ? さっさと付けるのか被るのかハッキリしなさい。 そもそも
減るもんじゃないし別に良いじゃん」
当麻「減るって! 精神的に減るって!! 俺に拒否権は無いんですか何のメリットも無いってのに!!」
美琴「メリット? んー、そうね……………じゃあ、交換条件に私にも何か被らせる? または何かを着せるとか、それじゃ駄目
かしら?」
当麻「……ダメじゃない!! 喜んで被らせて頂きます!!」
上条は神妙な顔で了承した。 約1秒ほど彼の脳内で激しい葛藤が生じ、結果美琴のコスプレが勝ったらしい。
しかしその反応に今度は美琴の方が若干引く。
しかしその反応に今度は美琴の方が若干引く。
美琴「ちょ、えっとあの、着ると言っても変な服とかはダメだからね?」
当麻「分かってます」
美琴「ほ、ホラ、薄いのとか下着っぽいのとか体の一部を強調したのとか」
当麻「分かってますよろしくお願いします!!」
美琴「ていうかアンタ、コスプレ趣味とかあったわけ?」
当麻「………………たぶん、人並み程度には」
当麻「分かってます」
美琴「ほ、ホラ、薄いのとか下着っぽいのとか体の一部を強調したのとか」
当麻「分かってますよろしくお願いします!!」
美琴「ていうかアンタ、コスプレ趣味とかあったわけ?」
当麻「………………たぶん、人並み程度には」
ただしサンプルの中に土御門と青髪ピアスが入っているため正確さは保証できない。
美琴「わ、わわ分かったわよ良いわよ。 とにかく交渉成立ね」
上条は頷くと、美琴からピョン子お面を一つ受け取った。
一度盛大に溜息を付いてから、それを顔に付ける。
心の中で何か大切な物が崩れ落ちていく音が聞こえたが、一方で別の何かを得られる事が確定しているのでその痛みは少ない。
というかむしろ充足感すら感じた。 心の一部が『ああ、こうして俺たち子供は汚い大人への階段を上っていくんだなぁ』と嘆い
たりしていたが、甘い蜜には敵わない。 すぐにそんな事は消え去り『さて何を着せようかぐへへへ』と心が躍りそうになる。
一度盛大に溜息を付いてから、それを顔に付ける。
心の中で何か大切な物が崩れ落ちていく音が聞こえたが、一方で別の何かを得られる事が確定しているのでその痛みは少ない。
というかむしろ充足感すら感じた。 心の一部が『ああ、こうして俺たち子供は汚い大人への階段を上っていくんだなぁ』と嘆い
たりしていたが、甘い蜜には敵わない。 すぐにそんな事は消え去り『さて何を着せようかぐへへへ』と心が躍りそうになる。
当麻「って前見づらっ! 子供用な上に薄暗いから当たり前か。 これ横にしても良いよな?」
そう言ってお面を頭の横に移動する――――――と、美琴が消えていた。
当麻(いや違う!)
突然、上条の胸あたりに猛烈な勢いで何かがぶつかる。 腰の入った見事なタックルだ。
もしそれを予感していなければ恐らく上条は倒されていた事だろう。
もしそれを予感していなければ恐らく上条は倒されていた事だろう。
当麻「おい、お前な……」
上条は未だ押される力に耐えながら体を仰け反らせつつ下を見ると、美琴が自分の体に抱き付き胸に顔を埋めてスリスリと
頬ずりをしていた。
頬ずりをしていた。
美琴「へへ☆ ふへへ☆☆ えへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへーーー☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆」
御坂美琴、完全崩壊。
大好きな物二つが合体した事で頭のネジが飛んだようだった。
こんな姿は間違っても彼女の知り合いには見せられないだろう。
大好きな物二つが合体した事で頭のネジが飛んだようだった。
こんな姿は間違っても彼女の知り合いには見せられないだろう。
当麻「……………………外します」
美琴「わーダメェーーー!!! ご、ごめんやめる正気に戻る。 ちゃんと普通にするからそのまま、そのままで居てよ!! ね?
あとついでに写真撮らせてー!!」
当麻「分かった分かったから器用に満面の笑みのまま悲しそうな顔で懇願するな!! 不気味だから」
美琴「わーダメェーーー!!! ご、ごめんやめる正気に戻る。 ちゃんと普通にするからそのまま、そのままで居てよ!! ね?
あとついでに写真撮らせてー!!」
当麻「分かった分かったから器用に満面の笑みのまま悲しそうな顔で懇願するな!! 不気味だから」
一瞬瞳が完全にハート型になっているように幻視させるほど美琴の表情は大変な事になっていた。
上条は仕方なく外しかけたお面を付け直す。
美琴に数十枚写真を撮られるが、上条はもうそれに言及するのも面倒だった。 好きにさせておくのが吉だろう。
上条は仕方なく外しかけたお面を付け直す。
美琴に数十枚写真を撮られるが、上条はもうそれに言及するのも面倒だった。 好きにさせておくのが吉だろう。
当麻「なんつーか、ホントに大丈夫なのか?」
美琴「大丈夫大丈夫。 魅力度が普段の5割増しよ!!」
当麻「いや…………『お前が』なんだけど、まあいいか」
美琴「大丈夫大丈夫。 魅力度が普段の5割増しよ!!」
当麻「いや…………『お前が』なんだけど、まあいいか」
美琴は熱い手で再び上条の手を固く握り、終いにはよく分からない鼻歌まで歌い始めた。
当麻「はぁ」
上条はその様子を見てあからさまにげんなりする。
しかしそれと同時に、隣で嬉しそうに跳ねる頭を見ていると妙に自分の顔まで綻ぶのを感じるのだった。
しかしそれと同時に、隣で嬉しそうに跳ねる頭を見ていると妙に自分の顔まで綻ぶのを感じるのだった。
――――――お化け屋敷
他の屋台の数倍はある面積に、デザインが二昔くらい前のおどろおどろしい看板。 それよりさらに古風なマイクパフォー
マンスに、キャー!! という叫び声。 そんな光景が徐々に見えてくる。
その大きな存在感に二人も一瞥をくれてはやるが、もちろん入る事はなくスルーした。
両者の年齢や性格を鑑みると、こんなもので大はしゃぎするにはさすがに無理があるだろう。 どちらかというと二人の
日常の方がスリルや恐怖に満ちている。
マンスに、キャー!! という叫び声。 そんな光景が徐々に見えてくる。
その大きな存在感に二人も一瞥をくれてはやるが、もちろん入る事はなくスルーした。
両者の年齢や性格を鑑みると、こんなもので大はしゃぎするにはさすがに無理があるだろう。 どちらかというと二人の
日常の方がスリルや恐怖に満ちている。
美琴「これはこれで風物詩的な趣もあるのかもしれないけど、学園都市内のテーマパークにある奴なんかと比べちゃうと
どうしても子供騙しって感じが否めないのよね」
当麻「へえ、入った事あんの? その学園都市の方」
美琴「黒子に連れられてちょっとね。 あの子SF的なギミックが好きだから感心しきりだったわよ。 最新のホログラフとか、
ロボット工学を生かした動く死体の人形とか、血なまぐさい匂いを調合して演出に使ったりとか、あと嘘かホントか
AIM拡散力場を利用して能力者の恐怖を与えたりってのもあったっけ………。 さすがにあの子は感心してばかりじゃ
なくてもうちょっと素直に怖がってあげても良い気がしたけど」
どうしても子供騙しって感じが否めないのよね」
当麻「へえ、入った事あんの? その学園都市の方」
美琴「黒子に連れられてちょっとね。 あの子SF的なギミックが好きだから感心しきりだったわよ。 最新のホログラフとか、
ロボット工学を生かした動く死体の人形とか、血なまぐさい匂いを調合して演出に使ったりとか、あと嘘かホントか
AIM拡散力場を利用して能力者の恐怖を与えたりってのもあったっけ………。 さすがにあの子は感心してばかりじゃ
なくてもうちょっと素直に怖がってあげても良い気がしたけど」
もちろん始めの方で黒子は怖がる振りをして美琴に抱き付いこうとしたのだが、さすがにその企みはバレバレで、直ぐに
美琴から鋭い肘鉄を一撃食らったわけである。 その後の黒子は様々なギミックを冷静に分析する解説員と化していた。
美琴から鋭い肘鉄を一撃食らったわけである。 その後の黒子は様々なギミックを冷静に分析する解説員と化していた。
当麻「美琴は怖くなかったのか?」
美琴「私がそんな人間に見える?」
当麻「………いんや、お前が『きゃー怖いー!!』って叫んでるとこなんかこれっぽっちも想像できねえ」
美琴「私がそんな人間に見える?」
当麻「………いんや、お前が『きゃー怖いー!!』って叫んでるとこなんかこれっぽっちも想像できねえ」
そもそも化物が出てきたところで美琴ならほとんど返り討ちにしてしまうだろう。 怖がる理由が無い。
美琴「もちろん言わないわよ、っつーかこの年でそんな台詞吐くのは半分以上演技でしょ? あんなの可愛く見られたいだけか、
単なるノリなんだから。 女の子に対して甘い夢見んなよー」
当麻「んー、でも人によって何かしら怖い物はあるんじゃねーかな」
美琴「私は無いわよ?」
当麻「……またまたーそんなご謙遜を」
美琴「何その目、信用しなさいよ」
当麻「いやいやー、隠さなくても良いぞ? お前変なところでお子様チックだから何かしらあるだろ絶対」
美琴「無いっつってんの。 お化け屋敷もたまにビクッて驚くだけで怖い訳じゃないし、スプラッタ系も別に好きじゃないけど
怖いってほどじゃない。 そもそも本物だったらいざ知らず、あんなの作り物でしょ」
当麻「ふーん…………じゃあ例えば本物の幽霊が出たとしたら?」
美琴「幽霊なんて居る訳無いじゃん!」
当麻「……………………ん?」
単なるノリなんだから。 女の子に対して甘い夢見んなよー」
当麻「んー、でも人によって何かしら怖い物はあるんじゃねーかな」
美琴「私は無いわよ?」
当麻「……またまたーそんなご謙遜を」
美琴「何その目、信用しなさいよ」
当麻「いやいやー、隠さなくても良いぞ? お前変なところでお子様チックだから何かしらあるだろ絶対」
美琴「無いっつってんの。 お化け屋敷もたまにビクッて驚くだけで怖い訳じゃないし、スプラッタ系も別に好きじゃないけど
怖いってほどじゃない。 そもそも本物だったらいざ知らず、あんなの作り物でしょ」
当麻「ふーん…………じゃあ例えば本物の幽霊が出たとしたら?」
美琴「幽霊なんて居る訳無いじゃん!」
当麻「……………………ん?」
上条は話の噛み合わせが少しズレた気がして首を傾げる。
当麻「いや魔術なんて物が現に世の中にあるわけだし……」
美琴の足がピタリと止まった。 その表情は固い。
美琴「えっ…………い、居る…………の? 見間違いとか、作り話じゃなくて、本当に実在するの?」
当麻「さあ? 俺もまだ幽霊さんにはお目に掛かった事無いけど……。 ただ居てもおかしくないとは思えるなー」
美琴「な、何だ…………はぁ、ったく脅かすんじゃないわよ」
当麻「さあ? 俺もまだ幽霊さんにはお目に掛かった事無いけど……。 ただ居てもおかしくないとは思えるなー」
美琴「な、何だ…………はぁ、ったく脅かすんじゃないわよ」
ほっと息をついて美琴の足が再び歩き出す。
ついでに屋台からラムネを一瓶買い、手際よく一滴も溢さずに蓋を開け飲み始めた。
上条はその小さな事に妙に感心してしまう。 彼がラムネを買って蓋を開けると確実に泡が勢いよく溢れるのだ。
ついでに屋台からラムネを一瓶買い、手際よく一滴も溢さずに蓋を開け飲み始めた。
上条はその小さな事に妙に感心してしまう。 彼がラムネを買って蓋を開けると確実に泡が勢いよく溢れるのだ。
当麻「ん? ってお前、今もしかして安心した?」
美琴「んぐっ、ケホッケホッ!! し、してないわよ。 怖くないっつの」
当麻「…………まいっか保留だな。 幽霊は居るかどうかなんて分かんねえし、それは今度誰かに聞けばいいとして、他にはうーん
……………あ、高所恐怖症とかはどう?」
美琴「んな訳無いでしょ。 絶叫マシンだって余裕で乗れるわよ」
当麻「だよなー」
美琴「んぐっ、ケホッケホッ!! し、してないわよ。 怖くないっつの」
当麻「…………まいっか保留だな。 幽霊は居るかどうかなんて分かんねえし、それは今度誰かに聞けばいいとして、他にはうーん
……………あ、高所恐怖症とかはどう?」
美琴「んな訳無いでしょ。 絶叫マシンだって余裕で乗れるわよ」
当麻「だよなー」
確かに美琴の身体能力でそういうのは考えにくい。
当麻「そうだ、あとは虫嫌いとか。 生理的に受け付けない人って居るよなー」
美琴「うっ」
美琴「うっ」
美琴の目が泳ぐ。
美琴「…………まああんまり好き、では無いわね」
当麻「ほほう。 大嫌いですか」
美琴「勝手に人の言葉読み替えんな!」
当麻「いやいやー、これは結構重要な事ですぞ? うちの台所でいきなりイニシャルGのブラックデビルとコンニチワしたら体面
なんて取り繕ってる余裕無いじゃねーか。 そこは素直になっといた方が得策だと思うぜー?」
美琴「あ、アンタの部屋、出るの? ヤツが」
当麻「そりゃあ、学園都市なら大概の家で出るんじゃないのか? たまーにだけど。 ってやっぱ怖いんじゃねーか」
美琴「……………………あ、アンタは怖いもの無いわけ!?」
当麻「ほほう。 大嫌いですか」
美琴「勝手に人の言葉読み替えんな!」
当麻「いやいやー、これは結構重要な事ですぞ? うちの台所でいきなりイニシャルGのブラックデビルとコンニチワしたら体面
なんて取り繕ってる余裕無いじゃねーか。 そこは素直になっといた方が得策だと思うぜー?」
美琴「あ、アンタの部屋、出るの? ヤツが」
当麻「そりゃあ、学園都市なら大概の家で出るんじゃないのか? たまーにだけど。 ってやっぱ怖いんじゃねーか」
美琴「……………………あ、アンタは怖いもの無いわけ!?」
上条の問いを無視して強引に矛先を変える。
当麻「俺は家計簿が怖い!!」
美琴「……それは逆に老け込みすぎじゃないの?」
当麻「赤い字が怖い…………」
美琴「……それは逆に老け込みすぎじゃないの?」
当麻「赤い字が怖い…………」
上条のその言葉には妙な重みがあった。
――――――遊戯系
予想通りだが、コルク射的、ボール投げ、輪投げ、ミニゲーム、千本引き、数字合わせ、クジ引きあたりはことごとく能力者
利用禁止のマーク。
人形すくいは何カ所か見たが、めぼしい物が無かった。
唯一美琴がやったのはヨーヨー釣りであるが、思いの外取れてしまい、パステル調で水玉柄の水ヨーヨーを一つだけ受け取る
と、二つを隣に居た幼い女の子の二人組みにあげ、残りは返却した。
もちろん上条は受け取り拒否である。 同じお面を頭の脇に被り、二人で水ヨーヨーを持った上に手を繋いで練り歩くという
のは、上条的にもう恥ずかしさのハードルがどうとかいう次元じゃない。 そもそも今のままで十分限界である。
利用禁止のマーク。
人形すくいは何カ所か見たが、めぼしい物が無かった。
唯一美琴がやったのはヨーヨー釣りであるが、思いの外取れてしまい、パステル調で水玉柄の水ヨーヨーを一つだけ受け取る
と、二つを隣に居た幼い女の子の二人組みにあげ、残りは返却した。
もちろん上条は受け取り拒否である。 同じお面を頭の脇に被り、二人で水ヨーヨーを持った上に手を繋いで練り歩くという
のは、上条的にもう恥ずかしさのハードルがどうとかいう次元じゃない。 そもそも今のままで十分限界である。
当麻「ところで、今更だけどお前ってやっぱ有名人なんだな」
ヨーヨー釣りも一応学生証の提示は義務づけられていたわけだが、美琴が学生証を見せると屋台の若い男性は顔を綻ばせ、
「この前の大覇星祭見たよ! いやー若ぇのにすげーなぁ」と小さく声をかけてきた。 大覇星祭はワールドカップ並の視聴率
であるから、しょっちゅう活躍している美琴はそれだけで有名人だし、それが無くとも努力してレベル5になった美琴は学園
都市の外においても能力者の代表として引き合いに出される事が往々にしてあるため、知名度はかなり高い。 芸能人ではない
のでもちろんテレビ番組に出演したりCMに起用される事は無いが、おそらく『オリンピックで優勝した十四歳の少女』程度
以上には人気もあるのではないだろうか。
「この前の大覇星祭見たよ! いやー若ぇのにすげーなぁ」と小さく声をかけてきた。 大覇星祭はワールドカップ並の視聴率
であるから、しょっちゅう活躍している美琴はそれだけで有名人だし、それが無くとも努力してレベル5になった美琴は学園
都市の外においても能力者の代表として引き合いに出される事が往々にしてあるため、知名度はかなり高い。 芸能人ではない
のでもちろんテレビ番組に出演したりCMに起用される事は無いが、おそらく『オリンピックで優勝した十四歳の少女』程度
以上には人気もあるのではないだろうか。
美琴「まーね。 ってアンタはもしかして気付いてなかったわけ? 私がここに来てから全然能力使ってない理由」
当麻「他の人に当たるからじゃなくて?」
美琴「舐めてんの? そんくらい制御できるわよ。 そうじゃなくて、もし能力使ったら私だって速攻ばれるでしょうが」
当麻「…………あー、はいはいなるほど今納得しました」
当麻「他の人に当たるからじゃなくて?」
美琴「舐めてんの? そんくらい制御できるわよ。 そうじゃなくて、もし能力使ったら私だって速攻ばれるでしょうが」
当麻「…………あー、はいはいなるほど今納得しました」
今の美琴は常盤台の制服を着ていないし、髪型も少し違う。 それに外の人間には『こんな所に御坂美琴が居るわけが無い』
という先入観も働くため、能力を派手に使わない限りほとんどばれる事はないのだ。
しかし外の人間の認識としてエレクトロマスターと言えばイコールほぼ御坂美琴であるので、一旦ビリビリを放てば容姿など
からすぐにばれるというのも想像に難くない。
という先入観も働くため、能力を派手に使わない限りほとんどばれる事はないのだ。
しかし外の人間の認識としてエレクトロマスターと言えばイコールほぼ御坂美琴であるので、一旦ビリビリを放てば容姿など
からすぐにばれるというのも想像に難くない。
美琴「それに外の人って面倒なのよね」
美琴は水ヨーヨーをポチョポチョとバウンドさせながら迷惑そうな顔をして呟く。
美琴「ほら、有名人でもさ、東京で見るのと地方で見るのとではレア度が違うでしょ? レア度が高いほど周りのテンションは
上がるわけ。 私はそこまで自分が有名だと思ってないけどさ、そのレア度が厄介なのよ」
当麻「ああそっか、学園都市にはそう簡単に入れねーからな。 外で見るレベル5のレア度は凄まじいものになる訳だ」
美琴「そゆこと。 外国の有名人を日本で見かけるようなもんなのかしらね。 しかもサインくれとか写真撮りたいとか能力見せて
くれとか、統括理事会が聞いたら怒り出しそうな事も平気で要求してくるのよ。 でも相手に悪気がない分いちいち丁寧に
断らなきゃいけないしホント面倒。 まだバカな不良の方が扱いやすいわ」
当麻「へえ、経験あんのか。 お前も何だかんだ大変なんだなー」
美琴「そうよ。 だからアンタも他人事みたいにしてないで、あんまり私が能力を使いたくなるような事しないようき・ち・ん・と
『協力』してもらえないかしら?」
当麻「…………………以後気をつけます」
上がるわけ。 私はそこまで自分が有名だと思ってないけどさ、そのレア度が厄介なのよ」
当麻「ああそっか、学園都市にはそう簡単に入れねーからな。 外で見るレベル5のレア度は凄まじいものになる訳だ」
美琴「そゆこと。 外国の有名人を日本で見かけるようなもんなのかしらね。 しかもサインくれとか写真撮りたいとか能力見せて
くれとか、統括理事会が聞いたら怒り出しそうな事も平気で要求してくるのよ。 でも相手に悪気がない分いちいち丁寧に
断らなきゃいけないしホント面倒。 まだバカな不良の方が扱いやすいわ」
当麻「へえ、経験あんのか。 お前も何だかんだ大変なんだなー」
美琴「そうよ。 だからアンタも他人事みたいにしてないで、あんまり私が能力を使いたくなるような事しないようき・ち・ん・と
『協力』してもらえないかしら?」
当麻「…………………以後気をつけます」
屋台の立ち並ぶ場所に入ってから上条が立てたフラグの数は、既に片手だけでは数えられない。
美琴はその度に歯を食いしばって上条への攻撃を我慢してきたのだった。
正直上条の頭にピョン子が居なかったら既にやらかしてしまっていたかもしれない、と美琴は思う。
美琴はその度に歯を食いしばって上条への攻撃を我慢してきたのだった。
正直上条の頭にピョン子が居なかったら既にやらかしてしまっていたかもしれない、と美琴は思う。
――――――小動物
美琴「げっ!?」
当麻「ん、どしたん?」
当麻「ん、どしたん?」
美琴は短く叫ぶと無理矢理首を曲げそっぽ向いてしまった。
美琴「な、何でもないわよ………」
当麻「?」
当麻「?」
上条は思いっきり左を見る美琴とは反対の方向を見てみる。
当麻「金魚すくい? それとも動物屋か?」
美琴「……………………両方よ。 見たら連れて帰りたくなるでしょ」
当麻「って子供かよ」
美琴「ぐ…………うっさいわね。 だから言いたくなかったのに」
当麻「しっかし色んなのが居るんだなあ………………………、なんつーか、非常に寒そう」
美琴「わー言うな馬鹿! そのために見ないようにしてるんだから。 可哀想な境遇の子に潤んだ瞳で見つめられたら耐えられる
訳ないじゃない!」
当麻「耐えられないって、動物を解放するのを? 店長に雷落とすのを?」
美琴「どっちもよ」
当麻「……………だからお前の冗談は冗談に聞こえないって」
美琴「……………」
当麻「もう過ぎたぞ。 つーかお前って何かペット飼ってないの? そんだけ可愛い物大好きっ子なのに」
美琴「……………………両方よ。 見たら連れて帰りたくなるでしょ」
当麻「って子供かよ」
美琴「ぐ…………うっさいわね。 だから言いたくなかったのに」
当麻「しっかし色んなのが居るんだなあ………………………、なんつーか、非常に寒そう」
美琴「わー言うな馬鹿! そのために見ないようにしてるんだから。 可哀想な境遇の子に潤んだ瞳で見つめられたら耐えられる
訳ないじゃない!」
当麻「耐えられないって、動物を解放するのを? 店長に雷落とすのを?」
美琴「どっちもよ」
当麻「……………だからお前の冗談は冗談に聞こえないって」
美琴「……………」
当麻「もう過ぎたぞ。 つーかお前って何かペット飼ってないの? そんだけ可愛い物大好きっ子なのに」
美琴は溜息を付いて前を向き、目線だけ上条へとくれてやる。
美琴「飼えるならとっくに飼ってるわよ。 うちの寮は厳しいの。 こっそり飼うとかほぼ不可能なのよ。 うっかり寮監に見つ
かって保健所送りでもされたら一生もののトラウマになるじゃない」
当麻「まあ飼える寮の方が稀ですな。 俺の所も一応不可だし」
かって保健所送りでもされたら一生もののトラウマになるじゃない」
当麻「まあ飼える寮の方が稀ですな。 俺の所も一応不可だし」
親元を離れた子供ばかりの寮で『ペット可』にする管理人というのも中々にチャレンジャーだろう。 子供というのは個人差
はあるものの命に対する責任に無自覚な事が多いものだ。 大抵の場合持て余すことになるのは目に見えている。 そもそも
『命の大切さ』を教えるなら学校でもできるはずだ。
はあるものの命に対する責任に無自覚な事が多いものだ。 大抵の場合持て余すことになるのは目に見えている。 そもそも
『命の大切さ』を教えるなら学校でもできるはずだ。
美琴「あれ? そういえばあのチビっ子が抱いてた猫は飼ってたんじゃないの?」
当麻「アイツが無理矢理拾ったんだ。 だから責任を持って一緒にお引っ越ししてもらった。 まあ『ペット不可』って言っても
結局迷惑掛けずにちゃんと管理すれば別に無視していいんじゃねーの? ……って思ったから許可したんだけど」
当麻「アイツが無理矢理拾ったんだ。 だから責任を持って一緒にお引っ越ししてもらった。 まあ『ペット不可』って言っても
結局迷惑掛けずにちゃんと管理すれば別に無視していいんじゃねーの? ……って思ったから許可したんだけど」
ただし上条がきちんと『迷惑掛けずに管理していた』かは怪しい。 彼は猫という生き物が色んな所に引っ掻き傷を付けたり、
臭い匂いを振りまいたり、遊び道具やら猫用トイレやら餌代やらで家計が火の車になるなんて始めの内は想定すらしていなかった。
正直もう一度一人で飼えと言われたら絶対に拒否すると思う。
臭い匂いを振りまいたり、遊び道具やら猫用トイレやら餌代やらで家計が火の車になるなんて始めの内は想定すらしていなかった。
正直もう一度一人で飼えと言われたら絶対に拒否すると思う。
当麻(猫の飼い方の知識についてはインデックスの頭に入ってるだろうけど、上手くやってんのかなあアイツ)
手間が掛からなくなったは良いが、それでもその分ほんの少しだけ寂しさも感じつつスフィンクスと言う名の猫を思い浮かべる。
美琴「ふーん…………アンタの部屋なら猫飼えるんだ」
当麻「ッ!? ておい、お前今すっげー良からぬ事考えただろ正直に言いなさい!!」
美琴「さーてね、何の事かしら?」
当麻「いきなり拾ってきても絶対に許さないからな! 大体あの時はインデックスが家にほとんどずっと居たから良かったけど、
もう俺の部屋には日中誰も居ないんだぞ。 その間猫が可哀想だろ?」
美琴「…………そっか。 それもそうね」
当麻「ッ!? ておい、お前今すっげー良からぬ事考えただろ正直に言いなさい!!」
美琴「さーてね、何の事かしら?」
当麻「いきなり拾ってきても絶対に許さないからな! 大体あの時はインデックスが家にほとんどずっと居たから良かったけど、
もう俺の部屋には日中誰も居ないんだぞ。 その間猫が可哀想だろ?」
美琴「…………そっか。 それもそうね」
美琴は肩を落しあからさまにしょんぼりする。
どうやら本気で猫を持ち込もうとしていたらしい。
どうやら本気で猫を持ち込もうとしていたらしい。
当麻「つーかお前も妹と同じで猫好きなわけか。 御坂妹の飼ってる猫でも触らせてもらえばいいじゃん」
結局名前はどうなったんだろう、と思いつつ夏に見た黒猫を思い出す。
美琴「ああ、そう言えばあの子も飼ってたわね。 でも無理だと思うわよ、そもそも私の体って微弱な電磁波出てるから小動物は
基本的に逃げるのよ」
当麻「あの猫は多分御坂妹で慣れてると思うけど?」
美琴「電磁波の強さが私とあの子で同程度のわけないでしょ。 そりゃあもうサササーっと一目散に逃げるわよ。 例え捕まえても
ビクビク怖がってて凄く可哀想だし…………………はぁ。 どうにかならないのかしら」
当麻「んー、じゃあ俺が一緒に御坂妹の所に行って、右手でお前の能力を打ち消してってのは?」
美琴「………アンタ、まさかその状態であの子が猫触らせてくれるとでも思ってんの?」
当麻「何かマズイのか?」
美琴「…………………はぁ」
基本的に逃げるのよ」
当麻「あの猫は多分御坂妹で慣れてると思うけど?」
美琴「電磁波の強さが私とあの子で同程度のわけないでしょ。 そりゃあもうサササーっと一目散に逃げるわよ。 例え捕まえても
ビクビク怖がってて凄く可哀想だし…………………はぁ。 どうにかならないのかしら」
当麻「んー、じゃあ俺が一緒に御坂妹の所に行って、右手でお前の能力を打ち消してってのは?」
美琴「………アンタ、まさかその状態であの子が猫触らせてくれるとでも思ってんの?」
当麻「何かマズイのか?」
美琴「…………………はぁ」
美琴は落ち込むというよりは疲れたように何度目かの溜息を吐く。
上条は首を捻り考えてみたが、イマイチ問題が解からない。 藪蛇になる予感がしたので話の方向を変える。
上条は首を捻り考えてみたが、イマイチ問題が解からない。 藪蛇になる予感がしたので話の方向を変える。
当麻「それじゃあ猫じゃないけど学校はどうだ? お前動物委員っぽいし、常盤台中学にはウサたんとか居ないのか?」
美琴「……また随分と昔のネタ引っ張ってきたわね」
当麻「はい?」
美琴「あッ………っと、何でもない………その、ごめん」
当麻「??」
美琴「……………………」
美琴「……また随分と昔のネタ引っ張ってきたわね」
当麻「はい?」
美琴「あッ………っと、何でもない………その、ごめん」
当麻「??」
美琴「……………………」
何故か美琴が視線を逸らしてしまい、二人の間に妙な沈黙が横たわる。
先に耐えられなくなったのは沈黙の理由が分からない上条の方だった。
先に耐えられなくなったのは沈黙の理由が分からない上条の方だった。
当麻「まあでも、多分、その内………、1年ちょっとしたら、自然に飼える状態になるんじゃねーかな」
美琴「ん、何で?」
当麻「そりゃあ……………」
美琴「ん、何で?」
当麻「そりゃあ……………」
上条は視線をキョロキョロと空へ投げかけたりして、上手い表現を探す。
当麻「………………………………………………悪い、やっぱ無し」
美琴「はあ?」
当麻「ほ、ほら。 どっかで動物と戯れるくらいなら俺の幻想殺しが役に立つぜー。 今なら美琴限定で何と無料で貸し出し
ちゃいますよー出血大サービス!! あ、でもホントに流血沙汰は勘弁な?」
美琴「いいからさっきのは何よ? 気になるじゃないの」
当麻「だからそれは無しだって! 俺の口からは今は言えません!! って考え出すのも禁止だー!!」
美琴「んー??」
美琴「はあ?」
当麻「ほ、ほら。 どっかで動物と戯れるくらいなら俺の幻想殺しが役に立つぜー。 今なら美琴限定で何と無料で貸し出し
ちゃいますよー出血大サービス!! あ、でもホントに流血沙汰は勘弁な?」
美琴「いいからさっきのは何よ? 気になるじゃないの」
当麻「だからそれは無しだって! 俺の口からは今は言えません!! って考え出すのも禁止だー!!」
美琴「んー??」
美琴は無視して考え続けたが、数分経っても結局答えには至らなかった、と上条は判断した。
答えが分かったのなら美琴は絶対顔を赤くして慌てるだろうが、そういう素振りは少しもなかったから。
答えが分かったのなら美琴は絶対顔を赤くして慌てるだろうが、そういう素振りは少しもなかったから。
――――食べ物
美琴「やっぱこんな日は温かいものよねー」
美琴は先程りんご飴を口を汚さず綺麗に食べ終え、今は上条と一緒にアツアツのたこ焼きを口から湯気を吐きながら食べている。
腰掛けているのは石の壁の上だ。
腰掛けているのは石の壁の上だ。
美琴(にしても、さっきはびっくりしたわね)
美琴はこの場所に何気なく座ろうとしたのだが、上条は一旦それを止めて、持っていたハンカチをざらついた石の上に敷いて
からそこへ座るよう促したのである。 もちろん美琴はそれに驚き、突如『鈍感馬鹿』から『紳士』へと進化した上条が何か企ん
でいるのではと勘ぐったが、彼は単に美琴の着物が汚れる事を許せなかったらしい。
あれから美琴の中で上条がさらに格好良く見えて仕方がない。
からそこへ座るよう促したのである。 もちろん美琴はそれに驚き、突如『鈍感馬鹿』から『紳士』へと進化した上条が何か企ん
でいるのではと勘ぐったが、彼は単に美琴の着物が汚れる事を許せなかったらしい。
あれから美琴の中で上条がさらに格好良く見えて仕方がない。
美琴(もう、良いから静まりなさいよ私の心臓!)
たこ焼きを乱暴に口へと運ぶ。
その一方で、実は上条当麻も気が気ではなかった。
その一方で、実は上条当麻も気が気ではなかった。
当麻(やっぱり視線が痛い)
先程から道行く人達にチラチラ見られている。 そしてたまに「兄妹? 恋人?」「あ、カエル。 しかもおそろ」「勇気ある
わねー」「可愛いカップルじゃん」「でもちょっと痛い」などと、どこからとも無くボソボソ聞こえてきて落ち着かないのだ。
やはりお揃いピョン子の破壊力が効いているらしいが、お面を取ろうとすると美琴が怒るので上条にはどうしようもなかった。
わねー」「可愛いカップルじゃん」「でもちょっと痛い」などと、どこからとも無くボソボソ聞こえてきて落ち着かないのだ。
やはりお揃いピョン子の破壊力が効いているらしいが、お面を取ろうとすると美琴が怒るので上条にはどうしようもなかった。
当麻(一応こんなでも恋人同士に見えるんだなー)
他人から見れば二人はどう見えるのだろうかと考えながらたこ焼きに手を伸ばすが、既に箱は空だった。
美琴「ねえ、次あれ食べない? 落書きせんべい」
美琴は石の上に立ち、十数メートルくらい離れた店を指差す。
当麻「つーかよく食うなぁ。 どっかのフードファイターには負けるけど」
美琴「なにそれ?」
当麻「知り合いに居るんだよ凄いのが」
美琴「? ふーん」
美琴「なにそれ?」
当麻「知り合いに居るんだよ凄いのが」
美琴「? ふーん」
美琴はお目当ての店へ駆け出す。
当麻「おい、走ると危ないぞ」
上条は美琴の食べっぷりを指摘したが、昼食が中途半端だったため実は彼も結構食べている。
しかし上条はアツアツの食べ物を買うと痛い思いをすることが多いらしく、そろそろ自重気味になっている。
つい先程、味付きコンニャクで軽い火傷を負った右手をさすりながら美琴の後を追った。
しかし上条はアツアツの食べ物を買うと痛い思いをすることが多いらしく、そろそろ自重気味になっている。
つい先程、味付きコンニャクで軽い火傷を負った右手をさすりながら美琴の後を追った。
美琴「アンタはそこでじっとしてて、私が描くから」
当麻「へ? お前って絵も描けるの?」
美琴「得意じゃないけどそれなりにね」
当麻「へ? お前って絵も描けるの?」
美琴「得意じゃないけどそれなりにね」
美琴は設えられたベニヤ板の前で筆とスプーンを取り、上条の顔をチラチラと見る。
当麻「おい、一体まさか何を描こうとしているのでせう?」
どうやら上条の予感は的中したようだった。 彼は言われた通りじっとして美琴の手元を見ていたが、せんべいの上には
徐々に自分の顔が描かれていく。
徐々に自分の顔が描かれていく。
美琴「ほい、かんせーい!」
あまりに芸術性が高かったため、周りの子供や親御さんに小さい拍手までもらってしまった。
キャンバスがせんべいにしておくにはもったいない出来映えである。
キャンバスがせんべいにしておくにはもったいない出来映えである。
当麻(そうだった。 こいつの『得意じゃない』は信用できないんだった)
二人はその数割増しで美化された上条せんべいを持って先程座っていたところまで戻る。
美琴「…………えっと、それでこれ、どうしよ」
作ってみたは良いが、リアルな男の顔が描かれた芸術的せんべいなんて、一体誰が食べるのだろうか。
当麻「んな事聞くなよ…………とりあえず俺は共食いなんかしたくねーぞ」
とすれば食べる人は一人しか居ないだろう。
顔が掛かっていない部分だけ割って上条に渡すと、美琴はおずおずと残りの上条の頭にかぶりつく。
顔が掛かっていない部分だけ割って上条に渡すと、美琴はおずおずと残りの上条の頭にかぶりつく。
美琴「………………」
バリッバリッと無言でせんべいが割れる音だけ響いた。
当麻「……………美味いのか? 俺の顔」
美琴「へ、変な事聞くんじゃないわよ!! せっかく意識しないで食べてたのに」
当麻「おい、人の顔食べながら顔赤くするのやめて頂けませんでせうか? なにそれ、どういう心境?」
美琴「う、うっさいわね分かんないわよ。 ほら、唇あげる。 あーん」
当麻「いらねえ!!」
美琴「あ、あげないわよーだ!」
当麻「一人で何やってんだよ」
美琴「へ、変な事聞くんじゃないわよ!! せっかく意識しないで食べてたのに」
当麻「おい、人の顔食べながら顔赤くするのやめて頂けませんでせうか? なにそれ、どういう心境?」
美琴「う、うっさいわね分かんないわよ。 ほら、唇あげる。 あーん」
当麻「いらねえ!!」
美琴「あ、あげないわよーだ!」
当麻「一人で何やってんだよ」
結局美琴がほとんどを食べると、最後にラムネでそれを流し込んだ。