とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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水着回と温泉回




室内プール完備のいつものフィットネスクラブの更衣室で、
いつもの母親二人が、いつものように子供達の話で盛り上がっていた。

「あらあら。それではそちらも、外出許可が出たのかしら?」
「そうなんですよ! まぁ、学園都市から許可取るのに、ちょっと苦労したみたいですけど」
「うふふ。お嬢さんはレベル5ですものね。それで、旦那様の方は?」
「それも大丈夫です。何とか長期休暇を貰えたみたいで、『その日』には間に合いそうですから」
「あらあら。それはお嬢さんも喜んだのではないかしら」
「あはは! むしろそれが決め手になったみたいですね!
 電話口で『パパも来るのっ!?』って驚いてましたから。
 レベル5だとか常盤台だとか偉そうな事を言っても、何だかんだでまだ子供って事ですかね?」
「あらあら。親にとって、子供はずっと子供のままですよ」
「…それもそうですね」

そんな会話をしながら、二人の母親は笑い合う。
『その日』に何が起こるのか、この時はまだ子供達には知る由もなかったのだった。


 ◇


夏である。そして海である。

海は広いな大きいな、という歌詞の通り、
ビーチパラソルの下で体育座りする上条の目の前には、
一面真っ青な水と塩分と微量な鉄分の塊が広がっていた。
海に来るのは、少なくとも人生で二度目であり、去年来た時は御使堕しの事件で偉い目に遭った。
その時の浜辺とは違う場所ではあるが、青髪ンデピアックスのトラウマは強烈で、
海にはあまり良い感情を持っていないのが現状である。
御使堕しその物よりも、そちらにトラウマを持っている辺り、
如何に『アレ』の衝撃がハンパなかったのかがお分かり頂けるだろう。
もっとも、当のインデックスは現在サマーホリデー(アメリカで言う所のバカンス)で、
イギリスに帰省している為ここにはいないので、そこは安心なのだが。
ちなみにその間、オティヌスは監視の意味も含めて隣部屋【つちみかど】に預けられている。
その天敵のスフィンクスも同様だ。

「あらあら。
 当麻さんは『海に来ても、はしゃがずにたそがれちゃう俺カッケー!』な人なのかしら?」
「こら当麻! せっかく家族水入らずの旅行なのに、
 そんな高二病みたいなモノを発症してるんじゃない! 母さんが心配してるだろ!」

そんな上条に、海から戻ってきた両親が話しかける。
高二病も何も、上条はリアル高校二年生なのだが。

「そんなんじゃねーよ!
 つかむしろ、いい年して水の掛け合いしてるご両親の方がどうかと思うのですが!?」

上条もお年頃だ。夏休みになり、学園都市から特別に外出許可を貰い、そのまま家族旅行…
というのは上条自身も楽しみではあったが、流石に両親と一緒に、
海できゃっきゃ言いながら遊べる年齢ではない。だって恥ずかしいんだもん。
だが直後、そんな若干テンション低めの上条に、とんでもないサプライズが待っていた。

「あれ~? もしかして、そこにいるのは上条さんですか~?」

聞き覚えのある声だ。どうやらこちらに話しかけているらしい。
その声に反応するように、上条一家が一斉に首を曲げると、そこには何故か、

「あらあら。これはこれは御坂さんの奥様ではありませんか」
「これはこれは、こんな所でグウゼンですね。上条さんの奥さん」

美琴の母、御坂美鈴が立っていた。そして双方の母達達は、どこか微妙におかしい挨拶を交わす。

「やっ! これはどうも、御坂さん」
「こんにちは、上条さん。…って、皆さん『上条さん』ですね」
「あらあら。それでは下の名前で呼んではいかがですか?」
「なるほど! 構いませんかね? 刀夜さん」
「わ…私は構いませんが……」

下の名前で呼ばれて頬を赤らめる刀夜に、詩菜から無言の圧力。と、その時。

「ちょっとママ。急に『こっち来て』って、一体どうした…の…?」

美鈴の後ろから、遅れて駆け足でこちらに近づいてくる人影が一つ。
その人物は勿論。

「なっ! みみ、美琴っ!!?」
「ア! アアア、アン、アン、アンタァァァァァ!!? ななな何でこんな所にっ!!?」


上条と美琴、学園都市の外でバッタリと出会うの巻である。
しかし驚く子供達を横目に母親達は、

「それじゃあ美琴ちゃん! 私はちょっと疲れたから、上条さん達と向こうで話してくるわね」
「当麻さん。あまりハメを外しすぎてはいけませんよ?」

と言って二人っきりにさせてしまう。
しかも言葉を返す暇も無く、美鈴から間髪を容れずにトドメの一言。

「あっ! そうそう、さっき上条さん達と下の名前で呼び合うルールになったから、
 くれぐれも『アンタ』とか失礼な呼び方しちゃダメよ?
 ちゃんと『当麻くん』って呼ぶ事! 分かった?」

「分かった?」とは聞いているが、美琴の返事も待たずに、
そのまま上条夫妻と共に海の家に行ってしまった。
残された上条と美琴は、

「…ど…どうすっか……」
「どどど、どうするって…別に…ふ、普通でいいんじゃないの…?」

とぎこちない会話をするのだった。


 ◇


強制的に二人っきりにされてしまった上条と美琴は、レンタルのゴムボートに乗りながら、
海の上でプカプカと浮いていた。

「じゃ、じゃあ美琴の親父さんは後から来るのか」
「う、うん。夜には間に合うって言ってた」

やはり、どこかぎこちない。
美琴は『いつもの事』なので大した問題ではない(?)が、上条が挙動不審なのは一体何故だろうか。

「この後は…美琴達も温泉宿に泊まるのか?」
「『も』って事は…アンt…………と…当……麻…も…なの…?」
「あ…ああ……うん」

律儀にも、ママの言われた事を実行する美琴。
実はさっきから、上条の名前を言う度に真っ赤になっているのである。

「そ…そっかぁ。美琴も温泉なんだー……な、なら、もしかしたら同じ温泉宿だったりしてな」
「そ…それはない……事もない気がするわ。今日のママと詩菜さんの感じからすると」

悪い予感はよく当たる…とは言うが、この場合は果たして、『悪い』予感なのだろうか。
上条はボートを漕ぎながら「だよなー」と苦笑するが、すぐにハッとなって美琴から視線を逸らす。
二人っきりになってから上条がずっとこんな調子なので、美琴は少々ムッとして、問い詰めてみた。

「…ねぇ、さっきから私と目が合うと、故意に顔を逸らしてるわよね」
「い、いやっ!!? そんな事は…別に……なぁ!?」
「じゃあ! ちゃんと私の目を見て話してよっ!」

美琴の勢いに圧され、「うっ…」と口ごもる上条。
だが、やがて観念したように、溜息を吐きながら正直に話す。

「あのなぁ……ハッキリ言って、目のやり場に困るんだよ。
 …そ、そんなビキニみたいな水着見せられるとさ……」
「っ!!!」

上条からの思わぬ指摘に、美琴は急激に顔を茹で上がらせていく。
要するに上条が挙動不審だった原因は、美琴の水着姿にあったという訳だ。
敢えてどのような水着なのかは詳しく描写せずにおくが、
少なくとも中学三年生が着る水着にしては、少々大胆な代物である。

美琴の水着は、実は母・美鈴が買って来た物で、美琴も「恥ずかしいからヤダ!」と反対したのだが、
「せっかく美琴ちゃんの為に買って来たのに…」と悲しそうな顔をされたので、渋々着たのだ。
思えば、全ては美鈴の陰謀だったのかも知れない。と言うか、絶対にそうだろう。
先程説明した大胆な水着も、攻めすぎると流石に着てくれないので、
「恥ずかしいけど、着られない事もない」というギリギリのラインを保っており、
美鈴のセンス(?)の高さが窺える。

美琴は真っ赤な顔を俯かせたまま、ポソッと呟く。

「……か…可愛く……ない…かな…?」
「っ!!!」

今度は上条が顔を茹で上がらせる番だった。上条は照れを隠すように頬を指でかきながら。

「い…いや。可愛くない事は…ない…と思うぞ?
 つ、つーか美琴……その、何だ…み、水着………似合ってるな…なんて」
「はにゃっ!!? あああ、あの、その……あ、あり…ありが…と……」

ボートの上で、視線も合わせらせずに沈黙してしまう上条と美琴。
二人してお互いに顔が熱くなっているのは、夏の日差しが強いから…というだけではなさそうだ。


 ◇


数時間後、日も暮れてきたので二人は別れ、
それぞれ自分の家族と共に今日宿泊する旅館へと足を運んだ訳なのだが、

「み…美琴…」
「と、とと、当! ………麻…」

やはりと言うべきか何と言うべきか、二人は旅館で再会した。
しかしそれ以上に驚いていたのは、

「まさか上条さんとこと俺んとこの家族に付き合いがあるとはな…
 あ、いや挨拶が遅れて申し訳ない。妻と娘が世話になっています」
「いえいえこちらこそ! いやはや何と言いますか、世間ってのは広いようで存外狭いものですね」

刀夜と、遅れてやってきた美琴の父・旅掛であった。
海外を飛び回る父親【サラリーマン】同士が、お互いに深々と頭を下げる。
どうやらこの二人(と刀夜の部下の田中君)は、以前にロンドンの飲み屋で一杯やった事があるらしい。
すぐさま原石を巡るいざこざに巻き込まれた為、あまり呑む時間は無かったが、
それでも遠い異国の地での同じ日本人客同士だったという事で、それなりに仲良くはなったのだった。

旅掛は刀夜と詩菜に挨拶を済ませた後、その息子の目の前にもやってきた。

「…君は……当麻くんだね?」
「えっ!? は、はい。…そうですけど」
「妻から色々話を聞いてるよ。まさか上条さんのお子さんだとは知らなかったがね」

すると旅掛は顎鬚をなぞりながら豪快に「ニカッ!」と笑みを浮かべ、
そしてとんでもない爆弾を放り込んできた。

「何でも、美琴のボーイフレンドなんだって? んで、どこまでヤったんだ?」
「「ええええええええええぇぇぇぇぇぇっ!!!!?」」

旅掛の一言に、上条と美琴は同時に絶叫した。
旅館到着直後で、しかも初対面な相手に、いきなりそんな事を聞く旅掛も旅掛ではあるが、
美鈴も美鈴で、何を当たり前のように旦那に誤報を伝えているのか。
しかし娘とボーイフレンド(仮)のリアクションを見て、旅掛は首をかしげる。

「…ん? 何だ、違うのか?」
「照れてるだけよ。美琴ちゃんも当麻くんもシャイだから♪」
「あらあら、二人とも固まってしまいましたわ」
「ととと当麻っ! ま、ま、まさか本当にヤってしまったのか!?
 現役JCと…一体どこまでナニまでヤってしまったと言うんだ当麻ああああぁぁぁぁぁ!!!」

この保護者連合は、何かもう既に酔っているのではないだろうか。
上条と美琴は、ただただ顔を真っ赤にさせたまま、口をパクパクするしかできないのであった。


 ◇


「あー…サッパリした…」

宿自慢の露天風呂から上がり、上条は「男湯 ♨」と書かれたのれんを潜る。
海での水着事件【サプライズ】から調子が狂ってばかりだったので、
このモヤモヤを一旦リセットする為に、両親よりも先に温泉に浸かっていたのだ。
ちなみにその両親は、御坂家と共に広間で食事をしているらしい。
今頃は、本格的に『出来上がっている』事だろう。

「……俺の分の料理、ちゃんと取っといてあるよな…?」

そんな心配をしながら広間へと向かおうとする上条。
だがここで、もう本日何度目かも分からないドギマギを、再び食らわさせられる事となる。

「…あっ」

と声がしたので上条が振り向くと、女湯から出てきたばかりの美琴と目が合った。
どうやら美琴も、上条と『全く同じ理由』で、両親より一足先に温泉を堪能していたらしい。

「アンt……と…当麻……も…温泉入ってたんだ…」

未だに「当麻」と呼ぶのに慣れない美琴である。
と言うか、美鈴の見ていない所で彼女【ママ】の言い付けを守る必要など全くないのだが、
美琴も根が真面目なのだろう。相変わらず、律儀に上条の名前を呼び続けている。


「……………」
「…? あれ、どうかした?」

上条からの返事が無い。妙に思った美琴は、上条に近づき、上目遣いで顔を覗き込む。

「っっっ!!! いいいいいや、まったくもって何も問題ありませんですことよ!!?」
「でも、そんなに顔が真っ赤になってるし…もしかして、温泉でのぼせた?」
「ホ、ホントに大丈夫でござりまするですからっ!!! 上条さんの事は気にしないでっ!!!」

上条がこれだけ慌てふためくには、勿論、理由がある。
湯上りで上気した頬。濡れた髪。しっとりと汗ばんだうなじ。裾からチラリと見える生足。
そして覗き込まれた時に見えてしまった(小さいながらも)胸の谷間。もう、お分かりだろう。

(風呂上りで浴衣姿の美琴に見惚れてた…なんて言えませんよね~~~!!?)

という事だ。言えばいいのに。
言   え   ば   い   い   の   に  。

「そう? なら私達も広間に行きましょ。お腹すいちゃった」
「だ、だよな!? うん、あんだけ海で遊んだんだし、腹減るよな! うん!」

自分の脳裏に浮かんだ邪念を振り払うように、不自然なまでに元気良く返事をする上条。
両親が既に宴会をしている広間に、美琴と共に向かっている途中も、こんな事を思ってしまっていた。

(何だか今日のミコっちゃんは色っぽすぎて、心臓がドキドキしっぱなしになってる…
 なんて言えませんよね~~~!!?)

言     え     ば     い     い     の     に   。


 ◇


広間に到着した二人が見た物は、

「まままま! もう一杯もう一杯! 刀夜さん、グイ~~~っと!」
「とっとっとっと! いやいや、もうこれ以上は飲めませんよ旅掛さん!」
「あらあら美鈴さん。私ちょっと飲みすぎてはいないかしら?」
「そんな事ないですよ! 詩菜さん、全然酔ってないじゃないですか」

やはり、ほんのりと酔っ払った双方の父と母の姿。
上条と美琴は軽く嘆息すると、自分の席に座って「いただきます」をする。

「おっ、来たか当麻! 早く来ないから、せっかくの料理が冷めてしまったぞ!」
「…刺身は元々冷めてるよ。鍋は今から火を入れるし」

お酒が入って変に絡んでくる刀夜【ちちおや】に軽く受け答えし、上条は鍋に火を入れた。
一方で美琴の方も、

「お~い、美琴! 風呂上りなんだから、ちゃんと水分取れ! 水分!」
「分かってるわよ」

旅掛に絡まれていた。逆らうと面倒なので、美琴はコップに入った一杯の水を飲む。
しかしそれは、水のようで水ではなかった。

「っ!!? かっ! 何…これ…!? 何が……ぎ…ぎもぢ悪い゛………うっぷ…」

クイッ…と一口、そのコップの中の液体を飲んだ瞬間、喉が焼けるような感覚。
美琴の異変に、上条は慌ててその液体の臭いを嗅いでみる。これは、まさか。

「ちょー、これーっ!!! 美琴が飲んだこれ、何かアルコールの臭いがするんですけどーっ!!?」

ご想像通り、お酒である。
どうやら美琴は、自分のコップと旅掛のコップを取り違えてしまったらしい。

「だ、大丈夫か美琴!?」
「…ちょ、無理…かも……」

美琴の背中をさすってあげる上条だが、美琴の体調は回復する様子もなく、
手を口に当てたまま真っ青な顔をしている。

「美琴ちゃん。夜風にでも当たって来たら?」
「……そうする」

美鈴の提案に、美琴も頷いた。

「あらあら、それでは当麻さん。付き添いをお願いしますね」
「分かった。ほら、立てるか? ゆっくりでいいぞ」

詩菜からの指名で、上条は美琴に肩を貸す。
まだ一口も手をつけていないのだが、料理はまたお預けのようだ。


 ◇


「どうだ? 多少は治ったか?」
「……うん…さっきよりはいいみたい…」

二人は縁側に座りながら、中庭の池をボーっと眺めていた。
夏の夜風が湯上りの肌に心地良く通り過ぎ、美琴の顔色も大分良くなってきたようだ。

「何か…ごめんね? 私のせいで、ご飯食べられなくなっちゃって……」
「いや、気にすんなって。不幸体質の上条さんにとって、こんなのはいつもの事ですから。
 それに、こんな状態のミコっちゃんを放って、暢気にメシなんか食ってらんねーって」

少し困ったように頬を指でかきながら、「ははっ…」と笑みを浮かべる上条。
照れ隠しなのか冗談交じりに言ってはいるが、当たり前のようにサラリと優しい言葉をかけてくれる。
胸の奥が「きゅん…」と締め付けられるような感覚がするのは、きっとお酒を飲んでしまったせいだろう。
だから美琴は、全部お酒のせいにして、ちょっとだけ大胆になってみる。

「っ! ちょ、えっ!? みこ、美琴さん!?」
「………何よ?」
「いや、『何よ』って!」

ふと、上条の右肩に重みがのしかかる。美琴が頭を乗せているのだ。
普段とは違う、美琴の妙に女の子らしい仕草に、
今日一日中ドキドキしっぱなしだった事も手伝ってか、上条は変に意識してしまう。
美琴も、この雰囲気と少量のお酒に後押しされ、いつもよりも性格が丸くなっているようだ。
ツンデレの「ツン」の部分の刺の先端が、ヤスリで削られているのである。

だから全てお酒のせいだ。
こんな言葉が言えてしまうのも。

「……ねぇ、私、今すごく…ドキドキしてるの、分かる…?
 ううん。本当は今だけじゃなくて、いつもドキドキしてるの。
 アンタと……当麻と一緒にいる時はずっとね」

何だろう。と、上条に妙な緊張感が走る。今から美琴が言おうとしてる事は、まるで―――

「………私…ね…? ずっと………ずっと、当麻の事が」
「美琴ちゃ~ん! 気持ち悪いの治った~?」
「あらあら、随分と月が綺麗なのね」
「いや~…すっかり飲んじまった。ここは酔い醒ましには丁度いいな」
「当麻、それに美琴さんも。料理は旅館の方が取って置いてくれてるから、安心しなさい」

と、このタイミングで邪魔な大人達の登場である。
いい雰囲気【げんそう】ぶち殺された事で正気に戻った【まほうがとけた】美琴は、
今、自分が口走ろうとしてた事に対して、急激に恥ずかしくなってきた。
いや、これはもう恥ずかしいなんてもんじゃない。美琴は顔を爆発させ、そのまま俯く。
しかしここで、美琴に更なる追い討ち。

「なぁ、美琴。今さっき、何て言おうとしてたんだ?」
「ん? なになに? もしかして美琴ちゃん、何か大切な事を言おうとしてたの?」
「あらあら。私達、お邪魔だったのかしら?」
「…美琴。言いたい事があるならハッキリ言いなさい」
「ととととと当麻!!? 女子中学生に何を言わせようとしてたんだ!?」

この場に美琴の味方はいなかった。


 ◇


後日である。
美琴はいつものファミレスで佐天に呼び出され、居心地悪そうに椅子に座っている。
テーブルを挟んだ向かい側の席には、いやらしくニヤニヤした佐天が座っており、
テーブルの上には美琴の携帯電話が置かれている。
携帯電話は現在、佐天の手によってスピーカーモードに設定されており、
通話中の相手の声が、美琴にも佐天にも届くようになっている。
その通話中の相手とは、お察しの通り美鈴だ。

「さぁ、御坂さん! その時、上条さんに何を言おうとしたのか吐いてもらいますよ!」
『美琴ちゃん! あの時、本当は何て言おうとしてたの!? ママ気になるにゃ~ん♪』

同時多発的に親友と母親に問い詰められ、美琴はテーブルに突っ伏しながら答えた。

「お願いだから、もう許してえええええぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」










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