美琴がふにゃーしてるだけ
本日休日にも関わらずいつもの通り補習があった帰り道、いつもの公園で上条当麻は
「……上条さんは一体何をどうすればいいのでせうか?」
「ふにゃー」
『ふにゃー』してる美琴を支えながら途方に暮れていた。
~美琴がふにゃーしてるだけ~
「もしもーし?御坂さーん?聞こえてますかー?」
『ふにゃー』してる美琴放って置くわけにもいかないので、とりあえず近くのベンチに美琴を座らせた上条は何故『ふにゃー』してるのか聞くために美琴に声を掛けてみる、が
「ふにゃー」
「……ダメだこりゃ」
やはり『ふにゃー』は治らない……というか今回上条は何もしてないのだ。
補習の帰り道いつもの公園を通りかかった時、初春と佐天の二人と話してる(何故か顔を真っ赤にした)美琴を見かけ、見かけたならと挨拶して帰ろうと声をかけたら……急に『ふにゃー』したのだ。
上条からしたらワケが分からない。
ちなみに美琴と一緒にいた二人は上条が慌てて美琴を支えるのを見た瞬間
「「御坂さん‼︎私達急用が出来たので帰りますね‼︎」」
と大変息の合った挨拶をして上条が止める間もなく走り去って行ってしまった。
「……とりあえず今日で良かったと考えるべきだな」
「ふにゃー」
なんとな~く今日は『ふにゃー』が終わるまで時間がかかると踏んだ上条は、昨日美琴に手伝って貰い明日の分までの食材を入手してた事に安堵する。
もしこれが食材無しで特売に行かなければならない日だったのならインデックスに長時間噛みつかれるのが確定していただろう。
「っと、昨日は特売付き合ってくれてサンキューな……っても聞いて無いだろうけど」
「ふにゃー」
そんなこんなで今日は多少遅くなっても問題はない。それは間違いなく美琴のおかげなのだ。
……美琴のせいで帰りが遅くなりそうだという事に気付いて無いのは幸か不幸か
「まぁ、たまにはのんびりするのも悪くないよな」
「ふにゃー」
「……ん?」
と、先ほどから暇を紛らわすため独り言を呟いてた(周りから見たら痛い事なのだが、本人に自覚はない)上条はある事に気付いた。
それはーー
「さっきから御坂返事してね?」
「ふにゃー」
というどうでもいい事だった。
だが美琴は今ハタからみたら寝てるため、話し掛けたら返事してくるのは中々面白い。
そこに気付いた上条は
「ミコっちゃーん?」
「ふにゃー」
「ビリビリ?」
「ふにゃー」
「御坂たん?」
「ふにゃー」
と美琴を使って遊び始める。
「今度また特売付き合ってくれなー」
「ふにゃー」
「課題のお手伝いもお願い出来ますでせうか?」
「ふにゃー」
「ついでにビリビリの回数も減らして下さい」
「ふにゃー」
更にここぞとばかりに普段プライドやら怖さやらが先立って頼めずにいる事を頼みまくる上条。
外から見るとなんとも情けないのだが……多分本人はその情けなさには気付いてないだろう。
「ふにゃーふにゃーってまるで猫みたいですよ?」
「ふにゃー」
「猫美琴ってかー?んーそれだと安直過ぎるな……」
「ふにゃー」
「ねこ……にゃんこ……にゃん?…そうだ!みこにゃんとかどうでせう?」
「ふにゃー」
「よし、今からお前はみこにゃんな!」
「ふにゃー」
挙句の果てに勝手に名前を付けてしまった……そもそもふにゃーって肯定の意味でいいのだろうか。
「みーこにゃん」
「ふにゃー」
「いやぁ、それにしても……癒されますなぁ」
「ふにゃー」
「かーっ!猫耳とかあれば付けたい気分ですよっ!」
「ふにゃー」
と、アニマルセラピー効果なのかなんなのかみこにゃんの返答に癒されていた上条は、猫耳を付けた美琴を妄想するために美琴の顔をよく見ようと観察を始める
のだがーー
「さてさて、どんな感じに……」
「ふにゃー」
そこにいたのは当然、癒しを与えてくれる"みこにゃん"という名の"猫"
などではなくーー
「ふにゃー」
「…………っ‼︎」
だらしなく顔を綻ばせながら静かに眠るーー
"御坂美琴"という名の"女の子"だった。
美琴が女の子であるという事を意識した途端鼓動が加速し出した心臓を、落ち着かせる術を持たない上条はーー
「み、さか……」
「ふにゃー」
自身も気付かない内に自らの顔を美琴の顔に近づけーー
「んにゅ」
「っ‼︎‼︎⁉︎」
突然出た『ふにゃー』じゃない言葉に驚いてベンチの反対側まで遠ざかった。
「んー……んぁ?あれ、私なんでこんな所に……ってア、アンタッ⁉︎………なんでそんな変な格好してんの?」
「み、御坂‼︎起きたのか⁉︎」
「えっと……うん、起きたけどアンタ」
「そうか‼︎良かった良かった‼︎お前の友達が急用で帰っちゃってなっ‼︎急に寝ちまった御坂を置いてくワケにいかないから起きるの待ってたんだよ‼︎」
「そ、そうなの?てかアンタどっかおか」
「スマンッ‼︎俺ももうすぐに帰らないとインデックスに何されるか分からないから帰るなっ‼︎御坂も気を付けて帰れよ‼︎」
「しい気が……ってもう行っちゃった」
ドタバタと退散して行く(何故か顔を真っ赤にした)上条と、余りに突然過ぎてポカーンとする美琴。
そして少し離れた草陰からはポツンと二つの言葉が溢れた。
「……今とんでも無いのを見ちゃった気がするよ初春」
「……そうですね…録画して無かったのが残念です」
ちなみにこの日から数日間上条は美琴を避けたせいでビリビリの回数は増えてしまったらしい。