とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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終章その後 デートスポットはデートする為にある訳で




上条はこの世の物とは思えない程に鬱々とした表情を浮かべながら、
その口から重苦しくて、こっちまで気が滅入りそうな深ぁ~い溜息を吐いた。

上 「はああぁ……結局また来ちまったか…」

上条は『今度こそ』、巨大複合商業ビル「ダイヤノイド」。その五階へと足を踏み入れていた。
ラーメンの麺を敢えて伸ばして少しでも食事の量を増やしているような上条が、
学園都市最大最強のオシャレスポットである第15学区の、しかもセレブ御用達のランドマークの、
更にクリスマスムードで辺り一面恋人だらけの場所に来ているのには理由がある。
…まぁ、理由も無しにこんな魔窟へと来る筈もないが。

きっかけは先日のオティヌスの一言【わがまま】だ。
魔神は大型モンスター【にゃんこ】の脅威から逃れる為に、
ここで売られているという、有名デザイナーが手がける「ドールハウス」をご所望なのだそうだ。
そんな訳で上条は、その日げんなりしながらも、
犬【スフィンクス】、猿【インデックス】、雉【オティヌス】を連れて、
鬼ヶ島【ダイヤノイド】にやって来たのだが、
そこでサンジェルマンやら重力爆弾やら、まぁ簡単に言えば、
いつものお約束の一悶着があった為、買い物どころじゃなくなったのだ。

上条としては余計な出費も出ずに、このまま有耶無耶になればいいな~なんて思っていたのだが、
しかし帰ってからも、その事を諦めきれないオティヌスが、
オモチャ屋で駄々をこねる子供のように「買って買って!」言いながらジダバタしたので、
現在上条はここにいる訳だ。前回同様、イン・オティ・スフィというお供に連れて。
にもかかわらず、本日の買い物の主役でもあるオティヌスは、
上条の頭の上で胡坐をかいて、不機嫌そうにムスッとしている。

上 「おい、どうしたオティヌス? せっかくまた来てやったってのに」

オ 「その理由を平然と聞く辺り、やはりお前はお前だと言う事だな!」

訳が分からない。なので上条は、隣で歩いているインデックスに話を振る。

上 「なぁ…俺、何かオティヌスを怒らせるような事したか?」

イ 「知らないんだよっ!!!」

だが話を振られたインデックスは、何故かオティヌス以上にイライラしていた。
腕の中のスフィンクスを、(抱き)締め上げる程に。
スフィンクスが堪らず「ニ゛ャーッ!」と悲鳴にも似た鳴き声を出す程に。
上条は再び溜息を吐き、『もう一人のお供』に話しかける。

上 「はぁ…どうしちまったんかねぇ? なぁ、『御坂』」

美 「さささ、さぁっ!!? わ、わわ、私に聞かれても!?」

そこには前回はいなかったパーティメンバー、御坂美琴がいた。


美琴が上条から連絡を受けたのは、つい数時間前だった。
「……この戦いが終わったら、女の子と一緒に学園都市最大の繁華街・
 第15学区のさらにてっぺんにあるオシャレデートスポット・
 ダイヤノイドに出かけるんだ」
という、死亡フラグの皮を被ったスネ夫風自慢を、つい先日聞かされた美琴と食蜂は、
お互いに「このままではマズイ」と本能で察した。
その結果、二人は手を取り合い、クリスマスに「外出禁止令」という名の壁を破壊し、
いかにして学生寮【ろうごく】を脱獄するかについて話し合っていた…のだが、
そんな中、御坂に上条から電話で、
『悪い御坂、今から付き合ってくれないか!? お前だけが頼りなんだ!』というラブコール。
嗚呼、何という悲劇か。美琴と食蜂【しゅくてきどうし】が手を取り合った歴史的瞬間も、
正に瞬間的に水泡に帰し、美琴は顔を真っ赤にしてテンパリ、食蜂は「ペッ」と唾を吐いた。
上条は食蜂の事を覚える事ができないので、二人のウチ美琴が選ばれたのは、
仕方ないと言えば仕方ないのだが。

そんなこんながありまして、美琴は現在ここにいる。

イ 「そんなこんなって、一体どんなどんななのかな!?」

オ 「おい! せめて理由を説明しろ理由を!」

しかしインデックスとオティヌスが待ったをかける。
まるで「私達が不機嫌な原因はそのビリビリした娘さんです」と主張するかのように。
しかし上条は、至極真っ当理由でそれを跳ね返す。

上 「あのなぁ、お前ら。前回行って分かっただろ。俺達は、おハイソな雰囲気に全く耐性が無ぇ!
   初めて上京した地方出身者かってくらい、周りの雰囲気に呑まれてたじゃねーか。
   だから今回は、常盤台のお嬢様【ほんもののセレブ】に来て貰ったの!
   最大MP0の賢者【インデックス】と最大HP1の賢者【オティヌス】とスライム【スフィンクス】、
   それとしがない村人Aの俺…そんなメンバーで魔王が倒せますか!?
   心強い戦士【みこと】が必要なのよ。このパーティーには」

色々とツッコミたい所はあるが、言っている事は間違いなく正論(?)なので、
インデックスもオティヌスも、「むぅ…」と押し黙る。
確かに、圧倒的に戦力不足だった事は否めない。
その点美琴ならば、こういった場所には慣れているだろうし適任ではある。ではあるのだが。

イ 「でも…」

オ 「しかしだな…」

理解はできても納得ができない。そんな様子の二人である。
何故ならばチラリと目線を向けると、

美 「えへ…えへへへへへへ~………私だけが頼り…かぁ…///」

何やら夢見心地な美琴がいるから。

イ 「短髪! 何か、だらしない顔してるんだよ!」

オ 「おいお前! 我々も同行しているという事実を忘れてはいないだろうな!?」

美 「へにゃっ!!? わ、わわ、分かってるわよ!
   どういう経緯で私が呼ばれたのかも、ちゃんと聞いたし!」


と言いつつも、頬の緩みが止められない美琴。
インデックス達の言っている事を、納得はしても理解はしていない。そんな様子だ。
そんな三人の乙女心やら何やらが複雑に絡み合っている事など気付く訳もなく、
本日も上条の上条たる上条は、

上 「さて、と。じゃあどんなドールハウスにするかだが…」

と暢気な提案をしてくる始末だ。
とりあえずインデックスは上条の腕を噛み、
オティヌスは上条の頭の上でポカポカと地面【かみじょうのとうひ】を殴る。
ついでにスフィンクスも上条の顔面を爪で引っ掻いた。不幸である。

美 「それで、具体的にはどんなのがいいの?」

上 「お前ら止めろって! 痛い! ……あ? ああ、そうだな。
   せっかくだから待避所【シェルター】として使うだけじゃなくて、
   住み心地がいい方がオティヌスもいいだろ?」

オ 「む? …まぁ、贅沢を言えばな」

イ 「前に観た映画【アリエッティ】で小人達の為に用意しておいたドールハウスがあったよね。
   ちゃんと暮らしやすく作ってあるの。あんな感じがいいのかな?」

オ 「……それ最終的に私は家を出る流れにならないか?」

インデックスの意見には苦言を呈した魔神ぐらしのヌスオッティだが、
暮らしやすい作りになっているというのは、確かにありがたい。

上 「となると実際に暮らせそうな家か……ちなみに御坂」

と、ここで上条が突然

上 「将来結婚したら、どんな家に住みたい?」

とんでもない事を言ってきやがった。

美 「ひゃえっ!!!? しょ、しょしょ、しょら、将来っ!!?
   けけけ、結婚したら…って……えええっ!!?///」

イ 「ちょちょちょ、待ってほしいんだよとうまっ! 何でそんな事を短髪に聞く必要があるのかな!?」

オ 「そ、そうだぞ人間! そもそも、実際に住むのはこの私だろ!」

上 「だって実際に住むっつったら、やっぱ結婚生活を想像した方が具体的でいいだろ?
   それに御坂はアドバイザーとして呼んだんだから、意見を聞くのは当然じゃねーか」

イ 「でも!」

オ 「しかしだな!」

言い争いを始める上条、インデックス、オティヌス。
三人が店先でギャーギャーを騒ぐ片隅で、美琴がポツリと呟いた一言は、
この喧騒の中でかき消され、上条の耳に届く事は無かったのだった。

美 「……わ…私は……アンタと一緒…なら………ど、どんな…家でも……いいん…だけど……///」










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