とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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捨てがたい




まま、mama、ママ。

あれ? これって、誰を呼ぶ声だっけ??







「……a、…ま、まま!!!」

「ぅ、ぅ……ん?」

「ママ、起きて!! もう10時だから!!」

「……あれー? 麻琴、なんでいるの?」

「娘が休みの日に寮から遊びに来ちゃいけないの??」

「うーん、いや、いいけどさぁ、もう少し寝かせて……昨日も研究がうまくいかなくてさぁ……」

「だめだめ!! こんないい天気なんだから!!」

「ぅあ~~~~!!」

私の名前は上条美琴。学園都市に住む数少ない大人の1人だ。

娘の麻琴は名門、常盤台中学に通っている。自分の母校ゆえ、名門と言えば自画自賛になるか。
寮で生活しているが、たまにこうやって戻ってくる。
母としては、そんなことより『アイツ』君とデートの1つしてもらいたいものだ。

旦那の名は当麻。数十年前のグレムリン戦の動画で高校生当時の姿を知っている人も多いだろう。
その世界規模の問題に巻き込まれる性質や、困っている人を助けないと気が済まないヒーロー性、私との関わりから、現在は父の後継として世界を走り回っている。
本人曰く、天職なんだそうだが、あちこち飛び回ってて今はどこでなにやってんのかも分かんない状態だ。ちゃんと誕生日だけは一緒にいてくれるいい旦那だ。

最初は一緒に旅していたが、お腹に麻琴ができたときに学園都市に戻った。
麻琴が小学生になるまでは旦那も週3はこっちにいてくれた。できた旦那だ。
そんなわたしも、今は研究の手伝いをしながら悠々自適な1人暮らしをしている。
給料ももらうが、それをもらわなくても十二分な生活費を旦那が稼いできてくれる。
さらに旦那は恨みを買うことも多い仕事だが、本人の人脈がパネェので私たちに手を出す人間は当時と比べ、すくな……いや、その分増えてる気も……ま、気にしないでおく。
どうせ、ピンチになったら駆けつけてくれるのだ。理想の旦那すぎるのだ。

「……ちょっとママ、モノローグで惚気てないで、早く顔洗って着替えて」

「あー、そうね」

まったく、口うるさい娘だ。睡眠不足が若さを奪っていくというのに。
ピチピチの10代にはその苦しみがわからんのだろうな。

「そういえばさっき浜面のおばさんと黄泉川姉さんが一緒に出かけようってさ」

「え? 浜面さんと打ち止めが?? どうしよっかなー?」

「わたしも友人から遊ぼうってメール来たし、いってきなよ」

「……『アイツ』く「違うから!!!」

まったく、素直じゃない。
あーいう鈍感の手合いは直接気持ちを伝えないと理解が及ばない脳構造をしている。
他者の気持になって考えるという人間社会の進化から取り残されている種族なのだ。
「アンタのことなんか好きじゃないんだからね!!」と真っ赤な顔してプルプル震えても、
そのかわいらしくいじらしい様をわかってくれないニブチン族なのだ。
……なんか腹がたってきた。

いっぽう娘はそんな種族に対し、相性最悪の部類にいるといえよう。
「別にアンタのためにやってあげたんじゃなくてただの暇つぶしなんだから!!」
と電話していた声をこの前聴いた。
あの子は言語をもってコミュニケーションをとり、自身の感情を相手に伝えるという人間社会の進化を全力で逆走しているのだ。
残念ながら気になるアイツくんは鈍感Level5の実力者だというのに。
一体誰に似たんだか。


と、そんなことを考えている間に待ち合わせ場所のコンサートホールに着いた。
打ち止めたちも直接ではなく、娘に言伝を頼むというのはどういうことだ?
たぶん子供が遊びに誘うメールに便乗したんだろうが。

「やーすみませんでしたーっ!!」

……??
なぜコイツがいる??
そりゃまぁ誕生日一緒に過ごして、その翌日空港で見送り、
1時間後には寂しいと電話して、娘には呆れられていたけども。
あー、そっか、偽物か。
もしくは私が生み出した幻想なのだろう。だから、

「その幻想をぶち殺す!!」

バリバリビリビリバリピシャバーン!!

「それオレの決め台詞!!!」

パキーン!!

へ? あれ??
ものほん???

「なにしてんのよ、パパ??」

「ママ、そんなところも娘が似ちゃってると思うとパパは悲しいよ」

きゃー!! やっぱりスーツ姿も似合うわね!!
じゃ、な・く・て!!!

「どうしてここにパパがいんのよ??」

「いやぁ、寂し、かったから???」

あー、幸せ。

「……ママ、急に、抱き着かないで」

「し、しまった!!! つい本能に負けてしまった!!」

「……付き合い始めて半年後以降、勝ったためしがない気がしますよ?」

「……そ、それはパパもでしょ!!」

「パパは2年も我慢したんですよ!! ママが高校卒業するまで日々我慢だったんでぃ!!」

いや、知ってるけども!!
我慢してたのが自分だけだと思ってるところが相変わらずむかつく!!
いやいやそうじゃない。
なんで海外で大活躍しているはずのパパがこの日曜日、白昼の学園都市に……

「日曜日、白昼の、学園都市……??」

「……どした?」

このニブチン族村長の男はキヅイテイナイノカ?
周囲の人々がヒソヒソ言ってたり、ピコピコ携帯を操作していることを!!

「あ、あはは」

「ん? どしたの?」

「あはははははーっ! うわーん!」


かくして私たちは1時間も街を走り回った。

「って待て! なんか時間の進み方がおかしい! 何で1時間もノンストップで走り続けてんだよ俺達は⁉」

「うるさい! 黙って! ちょっと黙って! お願いだから少し気持ちの整理をさせて!」

あんな状態になったら噂は学園都市中に広まるだろう。
絶対後で麻琴に叱られる。
パパ関連の話ではママの威厳なんてないに等しい。
その苦労をいつも家にいないこの鈍感はわかってないのだ。

「……まぁ、とりあえず飲み物でも飲もうぜ」

スタスタと自販機に向かう旦那は、まったく危機感がない。
あーどうしようどう言い訳しよう。
ん? あれ? あの自販機……。

「ちょ、ちょっとストップ!!」

「あれー、なん、で? なんで5000円入れたのにウンともスンとも言わないの?」

「あー、この自販機、麻琴が2000円飲まれたのよ」

「コイツもあれと同類かよ。ん? なんでそんな中途半端な額……ま、まさか」

「ぷっ!! そ、その、ぷくーっ!! まさかでぶぷーっ!! あっはっはっはっはっはっは!!!!」

「……麻琴よ、オレはお前の味方だぞ」

「まぁ、まぁ、落ち込まない。小銭なら大じょう……あれ? あれれ??」

「あー、小銭もダメかって美琴!! ビリビリすんな!! やめて!! ほらー警報鳴っちゃったじゃん!!」

そっからはいつも通りの逃走劇。
うーん、ちゃんと運動してたから年の割には走れたわね。
別にいつも騒動に巻き込まれて体が老いる暇がないとかそんなことはない、はず。

「もー美琴さんってば全然大人になってないんだから」

「うっさいわねー」

……ん? なんだこの違和感??

「お、懐かしいものがあるじゃんか。食うか?」

「え? あ、うん、そうね。ついでに飲み物も買いましょ」

なんだったんだろう??

「しかし、2000円は高いよな」

「今考えるとねー。……なに泣いてるの?」

「美琴が普通の金銭感覚になって上条さんは嬉しいんですよ」

「なに? 当麻は喧嘩売ってんの?」

あれれ?? また違和感が……。

「好戦的なとこはほんと変わりませんよね」

「当麻が悪い!! あー打ち止めたち心配してるかなぁ」

なんだろう? 違和感が消えない。

「ん? 打ち止め??」

「そう、麻琴に出かけようって言伝されてさ」

「あー、たぶんそれオレだ。秘密にしてくれって麻琴に頼んだから」

「なんでそんなことしたのよ?」

「美琴に、喜んでもらいたくてさ」

あー、幸せ。

「……美琴、不意打ちのキスは勘弁してくれ」

「うれしくないの??」

「うれしいに決まってんでしょうがばヵーーーー!!」

でも、なんだろう、違和感が消えない。

「とはいえ、時間もそんなにないんでな、ちょっと来てくれ」

「???」


2人でツーショットを撮ったりしながらのデート。
そして、たどり着いた場所は、やはりあそこだった。

「ここは」

「ああ」

鉄橋。
ここで、コイツに会えなかったら、私は……。

「なぁ、御坂?」

「なに?」

「生きてくれて、ありがとな」

「ん? アンタ、何言ってんの? ふつう助けてもらった方が礼をいうものでしょ?」

「いいんだよ」

「……アンタも生きてくれてありがとね」

「おや? ビリビリのくせに素直だな」

「うっさいバカ!!」

なんだろう? また、変な感じ??
どちらかというと、懐かしい??

「さて、素直なミコっちゃん」

「ミコっちゃん言うな!!」

「オレの今日の目的をしようと思います」

「なによ? なにしゃがんで膝ついてんの? スーツが汚れ「美琴」

なんだろう、なんなんだろう。

「これからも、オレと一緒に生きてくれ」








「ただいまー」

「お帰りー。ほい」

「お、きれいなカーネーション!!」

「お礼とかいいからね。惚気聞くのが面倒だから」

「わかったー。で、聞いてよこの指輪!! キューピーッドアローの最新作でね!!」

「ちくしょう!! どっちにしろ同じ展開だったか!! ええいやめろ!! ママ!! ストップ!!!」

「…………」

「あれ? 本当に一時停止した? ま、ママー?」

あー、そっか。

「なに? 急にニヤニヤして、なに? また惚気??」

「ん? 違う違うたださ……」





(じゃ、また行ってきます。麻琴を頼んだよ、ママ)





「ママと呼ばれるのも捨てがたい」









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