とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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君がいた夏は




夏である。
8月に入り、学生達は夏休みを満喫している今日この頃。リア充が最も輝く【ばくはつする】季節でもある。
その例に漏れず、恋人同士となった上条と美琴も、この夏は色々とイベントをこなしてきた。
レジャープールに行ってみたり、肝試し大会に参加してみたり、キャンプでお泊りしたりと、
まぁ見事なまでにカップルカップルしてやがったのである。

そして今日も、二人は夏祭りという格好の遊び場【デートスポット】にやってきていた。
先に来て待っているのは、いつもながら美琴の方だ。
しかし美琴は、この時間が嫌いではなかった。
美琴としては、彼氏が来るのを待つのも楽しみの一つであり、待つのもデートの内らしい。

「ごめん! 待たせて悪かった!」

言いながら、上条が遅れてやってきた。
美琴は頬を膨らませながら、プイっとそっぽ向く。無論、怒っている訳ではない。

「ふーん? 遅れてきたクセに、その程度で許されると思ってんだー。へー」
「うっぐ! じゃ、じゃあどうすりゃ許していただけるので…?」

すると美琴はニヤッと笑い、一言。

「ふっふ~ん! それなら、私が言われて喜ぶ事を三つ言ってくれたら許してあげる♪」

許してあげるも何も、始めからそのつもりだっただろうに。
上条は頭をポリポリとかき、美琴から許しを請う為に、
美琴が喜ぶであろう言葉を三つ口にする。

「…その浴衣、すげぇ似合ってんぞ」

美琴はこの日の為に新しい浴衣を買っており、
校則違反で後々寮監から罰を受けるのを覚悟で、それを着て待っていた。
淡い桃色の生地に花柄。ピンポイントのゲコ太は美琴的にどうしても外せなかったのだろう。

「ふふっ、ありがと。じゃあ、あと二つね」
「…今日も…その、綺麗だな」

美琴は、恋人の贔屓目なしに見ても端正な顔立ちをしており、
正直なところ先程から道行く男性の3~4割くらいは、こちらを振り向いてくる。
しかも今日は浴衣姿という事で、普段とのギャップもあり、
上条はちょっと直視できないくらいまで、実はドキドキしていたりする。

「そっか♪ じゃ、ラス1ね」

上条がドギマギしているのを見抜いている美琴は、楽しむように最後の一つを聞いてくる。
しかし、それは逆に美琴がドギマギさせられる為のフラグでしかなかった。

「えっと……あ…愛してるぞ」
「っ!!!」

あまりの不意打ちに、美琴は背筋をピーンと立てて顔を瞬間沸騰させた。
確かに、それこそが美琴が言われて最も喜ぶ言葉ではあるのだが。

「あああ、あり、ありがと…」
「お、おう…」

お互いに「かあぁ~」と顔を赤くしてしまう。
ちなみに、ここまでまだお祭りの入り口付近での出来事である。
他のお客さんからしたら、もうめっちゃ邪魔なのだがどうしよう。


 ◇


「そ、そろそろ行こうか!?」
「あ、ああうん! そそ、そうね!」

二人してモジモジすること約5分。ようやく動きを見せたバカップル。
二人は一緒に手を繋ぎながら、祭りの中へと歩き出す。

「まだ花火まで時間あるし…屋台でも回ってるか」
「遅れてきたんだし、アンタの奢りね♪」
「…男としてカッコつけたいのは山々なんですが、
 上条さんの経済状況ではそんなに多くは奢れないので何卒お手柔らかに……」
「アンタ、私の事をどれだけ大食いだと思ってんのよ!」

女の子の食事の基本量を、インデックスのそれで記憶している上条。
美琴の言葉でサイフの中身を即座に確認するが、有り難い事に美琴はそこまで食べはしない。

「って言うか冗談よ。自分の分くらい、自分で払うってば」
「いや! 男として、そして高校生として! それは何か負けた気がする!
 だからやっぱり俺が払うよ! …三つくらいなら」

何とも心もとないプライドとサイフの中身である。
しかし美琴は、そんな上条を横目に、

「ふふっ、分かったわよ。三つね」

と上条を立ててあげるのであった。

「で、まずはどこ行こっか」
「とりあえず定番のタコ焼きでも」


 ◇


上条の奢り一つ目はタコ焼きである。

「おじさん! タコ焼き一つ!」
「あいよ! 毎度あり!」

上条が買ったのは一パックのタコ焼き。それをアチアチ言いながら美琴の元へ持ってくる。

「…? 二つじゃないの?」
「一つだけの方がお互いに食べさせ合ったりできるだろ?
 決して上条さんがケチった訳ではありませんので!」

何やら言い訳しながら、上条は8個入りのタコ焼きの一つに楊枝を刺し、
それを美琴の口元に持っていく。

「ほら美琴。あ~~~ん」

美琴も若干の恥ずかしさがあるものの、それでもやはり誘惑に負け、
「あ~ん」と口を大きく開ける。

「あ~~~…あむっ! はふはふほふ! あっこいあっこい!」

相当熱かったらしく、美琴は口の中ではふはふさせながら租借する。
そしてそのまま、流し込むように飲み込んだ。

「そんなに熱かったか!? 悪い!」
「はー、はー…ううん、気にしないで。美味しかったし」

と言いつつ、今度は美琴がタコ焼きに楊枝を刺した。
だが先程の経験を踏まえて、すぐには上条の口元には持っていかず、

「ふーっ! ふーっ!」

と冷ましてくれる。上条は、美琴のその口元に何かドキドキしちゃったりしていたり。

「はい! もう大丈夫だと思うから…どうしたの?」
「い、いや何でもありませんですことよ!?
 そ、それよりタコ焼き【これ】食べ終わったら次はどこ行こっか!?」
「そうねぇ…次は冷たい物が食べたいわね。カキ氷とか」


 ◇


上条の奢り二つ目はカキ氷である。
シロップは上条がコーラを、美琴はレモンをそれぞれ注文したのだが、

「~~~~~っ!!!」
「くぁーっ!!!」

二人とも見事にアイスクリーム頭痛の洗礼を受けていた。

「う~…こ、この痛みもカキ氷の醍醐味と言えば醍醐味よね」
「まぁ、な。これがあって始めてカキ氷食ったって実感がわくよな」

頭を抑えながら、精一杯の強がりを言う両者。
そんなもん、無きゃ無いで無い方が良いに決まっているのに。
と、ここで上条がふとある事に気付く。

「っ! 美琴、ちょっと口を開けてみてくれないか?」
「何で? …まぁ、別にいいけど」

言われるがまま、美琴は口を大きく開けてみる。すると。

「お~…! ベロが真っ黄色だな」

レモンのシロップで染まり、美琴の舌は黄色く変色していた。
上条はそれをまじまじと見つめているのだが、しかし、それ以上に何より、
彼はとんでもない事をしちゃっていたのだ。

「あ、あああろほろ、ららら、らんえわりゃひろへろをひゃあっへいうおかひあっ!!?
 (あ、あああのその、ななな、なんでわたしのベロをさわっているのかしらっ!!?)」

気付けば上条は、無自覚に美琴の黄色い舌をプニプニと指で突いていたのである。
カキ氷を食べて舌の色が変わるとか、珍しい現象でもない所かむしろあるあるネタだろうに。
美琴に言われてハッと我に返った上条は、即座にテンパり上げた。

「うわわわわごめんっ!!! 何か自分でもよく分からん事してたっ!!!」
「べ、べべべ別にいいけど…いいんだけど、さ……」

二人して真っ赤になり、体温も一気に上昇する。
そのせいなのかどうなのか、手に持ったカキ氷はとっくに溶けてしまい、
カップの中はただの甘い水に成り下がってしまっていた。

「と、溶けちまったし、つつ、次の店に行こっか!!?」
「ききき気分転換にくじ引きでもやりましょう!!!」


 ◇


上条の奢り三つ目はくじ引きである。
が、挑戦するのは美琴一人だけだ。
不幸体質な上条が引いた所で、ハズレるのは目に見えているから。

「これは…ガチで行くしかないわね」

くじも抽選箱も紙で出来たアナログな作りの為、美琴の能力が介入する余地はない。
まさかガチで行かなくても大丈夫だったら、イカサマを使う予定だったのだろうか。

「うりゃー!」

と勢い良く美琴が引いたのは―――

「やった! B賞だわ!」

美琴が引いたのはお目当てのB賞。
いくつかの景品の中から好きな物を選べるのだが、美琴が選んだのは勿論。

「ゲコ太ぬいぐるみをください!」
「はい。おめでとう、お嬢ちゃん」

どもまで行ってもゲコラーな美琴である。

「良かったな美琴」
「うん! 一生大事にするわね♪」

上条と初めて行った夏祭りでの、ゲコ太ぬいぐるみゲット。
それは美琴に一生ものの宝物と、一生ものの思い出ができた瞬間である。

「よし! そんじゃあそろそろ、花火の方に行ってみますか!」


 ◇


広場に着くと周りは既に人混みでごった返していて、何発か花火も打ち上がった後だった。

「やべーやべー! 完全に出遅れちまったな!」
「もう! アンタがあんなに出店を回るから!」
「それ上条さんのせいじゃないよねっ!?」

と、一通り口喧嘩【ちわげんか】をした所で。

『ひゅるるるるるるるる………ド―――ンッ!!!!!』

花火の音で喧嘩する声もかき消され、空中に広がる大スペクタクルに目を奪われる。
次々に咲く色とりどりの火薬の大輪は、少女をウットリさせるには充分すぎる威力であった。

「……綺麗ね…」
「…あ、ああ。そうだな」

上条が一瞬だけ返事をどもってしまったのは、
そのあまりの美しさに思考が停止してしまったからだ。
花火に…ではなく、それを見つめる美琴に、である。
打ち上げられた花火の光は美琴の顔をカラフルに彩って、
その浴衣姿とのコントラストは、まるで絵画のような印象を受けた。
上条は思わず美琴の肩を抱き、グイっとこちらに引き寄せる。

「わわっ! な、何!?」
「ん…あー、その……ひ、人混みが凄いからさ、逸れないようにしなきゃと思いまして」
「も、もう! そんなに子供じゃないんだから!」

と、言いつつも自分の身を上条に預ける美琴である。
そして多くの花火が打ち上がる中―――

―――……… チュッ

恋人達は、優しく口付けするのだった。



ちなみにだが、花火が終わった後に二人がどうなったかと言うと。


 ◇


「もっとしてぇ!♡ もっと激し…んんっ! ♡ 当麻の、好きにしていいからぁ!!!♡」

まぁ、そうなるよね。











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