とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とある昨日の『あんなこと』




「んっ……んぁ…?」

心地良い肌寒さが身を包む中、美琴は目を覚ました。
冬の朝という事もあり、まだ眠く、このまま二度寝でもシャレ込もうかと思う美琴である。

(うぅ、ん…あと5分だ……け…?)

寝返りを打って反対側に体を向け、もう一度夢の世界に行こうとした瞬間、
美琴は今現在、異常事態なのだと理解する。
…いや、正確には異常事態だと『思い出した』と言うべきだろうか。
美琴の目の前、そこには。

「っっっ!!!!? なっ、ひゃえ!?」
「う~ん…むにゃむにゃ……ミコっちゃ~………くかー…」

上条の顔。
ちょっと近付けばキス出来てしまう程の距離にいるというのも問題だが、
それより何よりこの状況、明らかに一つのベッドで、
二人一緒に一夜を明かした事を物語っている。
しかも上条は幸せそうな寝顔で美琴の名前を寝言でほざき、その上、

「ん、ん~……むぎゅ~~~………むにゃ…」
「『むにゃ』じゃないわよっ!!!
 何、私を抱き枕代わりにしてくれてんのよアンタはぁあああああああ!!!」

思いっきり抱き締めてきやがったのだ。本当に寝ているのかコイツは。
だがここで、美琴は奇妙な点に気付く。(もっとも、現時点で奇妙な点など腐る程あったが)
上条に抱きつかれた感覚が、何と言うかダイレクトな感じがしたのだ。
いや、服は着ている。服は着ているが、いつもより遮蔽物が無いような感覚。

「っ!!? ま、まさか!?」

美琴はハッと何かに気付き、自分の体をあちこち触ってみる。
すると、とんでもない事に気が付いた。サーッと血の気が引いていくのが自分でも分かる。

「……私…下着つけてない…?」

そう。美琴はいつもの制服を着用しているものの、
その下には上下共に下着を着けていなかったのだ。
つまりはこのJC、ノーブラにしてノーパンなのである。
どうりでスカートの中がスースーする訳だ。
何しろ、いつもの短パンも穿いていないのだから。

益々混沌極まる異常事態。
しかし美琴は、普段ならとっくに「ふにゃー」していてもおかしくないこの状況で、
意外な程に冷静だった。彼女は頭を抱えて、一言呟く。

「あ~……そう言えば昨日、『あんなこと』があったからなぁ…」

どうやら何かあったらしい。この異常事態が平常化するような、更なる異常事態が。
しかし昨日の出来事を思い出して、いつまでも後悔しても始まらない。
美琴は抱きついている上条の腕を(後ろ髪を引かれる思いで)振り解きながら、
毛布を捲り、上条の体を揺さぶって叩き起こそうとする。

「ほら! アンタも起きて…って、ええええええぇぇぇ!!!?」

だが毛布を捲った瞬間、上条のあられもない姿が飛び込んできた。
いや、下着は着けている。下着は着けているが、逆にそれ以外を着ていなかった。
つまりはパンツ一丁な状態である。ある意味、今の美琴とは対極的な姿だ。
美琴は顔を真っ赤にしながらも、「やっぱり『あんなこと』が…」とブツブツ呟く。
その声が脳に届いたのか、上条はうっすらを目を開けた。

「んぁ、あ…? ふあっあああぁ…う~、はよー、美琴…」
「あっ、お、おはよ……じゃなくて! 服着なさいよ馬鹿っ!」
「……ん…? あ~、そういや昨日『あんなこと』があった後そのままだったか…」

上条は目をこすりながら、ぼんやりと周りの状況を把握する。
大きなあくびをしながら、もそもそとベッドから起き上がった。

「えっと、着替え着替え…昨日脱いだ奴でいいか」
「っ!!!」

まだ半分寝ている頭を必死に働かせ、
上条はベッドの周りに無造作に脱ぎ捨ててある自分の服に手を伸ばす。
その姿をポヤ~っと見つめていた美琴は、ハッとして目を逸らした。
でもすぐチラチラと見てしまう。「くやしい…! でも見ちゃう…!」な状態である。
上条からすると自分の下着姿など見られても大して恥ずかしくもないが、美琴は違う。
肌色率80%以上の上条の姿に、否が応でもドギマギしてしまうのだ。


「あっ、そうだ! 結局あの後、電池切れの方は大丈夫か?」

上条はTシャツを着ながら話しかけてきた。
電池切れとは美琴が能力を使い続けた為に、
まともに立っている事も出来なくなる状態の事である。
美琴は確認するように、小さな火花を「パチッ!」と散らせた。

「う~ん…まだ本調子じゃないけど、一応もう使えるみたいね」
「あんま無理すんなよ? 『あんなこと』があった後なんだからな」
「そ、そう、ね…気をつけるわ……」

とは言いつつも、そのおかげで上条と一夜を共にする事が出来たと思うと、
あながち電池切れも悪くないかな、なんて思ってしまう美琴。
そんな美琴の様子に気付く筈もない着替え途中の上条は、そのままズボンを穿こうとする。
しかしズボンを手にかけた瞬間、ポケットに違和感が。

(…あれ? 何だこの布…俺ハンカチなんて持ち歩いてないし…)

妙に膨らみのあるズボンのポケットに手を突っ込むと、布製の何かがある。
不思議に思った上条はそれを出し、広げてみると。

「………………へ?」

そこには、お馴染みのカエル(美琴曰く「ゲコ太」とかいうキャラクター)の顔があった。
そしてその布は、綺麗な逆三角形で大きな穴が三つ開いているという特徴的な形をしていた。
何となく見覚えのある形である。
上条はその布を広げたまま、美琴に聞こえないように心の中で絶叫した。

(これミコっちゃんのおパンツではありませんかああああああ!!!?)

大正解。
上条は美琴に見えないように布改めミコパン(ミコっちゃんのおパンツの略)を広げたが、
背後から「何してんの?」という声に反応し、背筋をビクリと伸ばしてしまう。
ちなみに美琴がノーパンでこんなにも落ち着いていられるのは、
上条に隠れてこっそりと短パンを装着したからだ。
美琴のブラジャーと短パンも上条の衣服と同様、
ベッドの周りに脱ぎ散らかっていたのである。
ただし『何故か』ショーツだけが見当たらなかったようだが。
ゲコ太の顔がプリントされた、お気に入りのショーツだけが『何故か』。

「何してんの?」
「っ!!! ななな、何でもありませんですことよっ!!?」

上条はとっさに元あった場所にしまい込む。ズボンのポケットに、違和感が戻ってきた。
だが瞬間、本能的に隠してしまった事を後悔した。

(あっ! 隠さないで、美琴に事情を話して返せば良かった…
 『あんなこと』があったのは、美琴だって分かってるだろうし…)

だが後悔は先に立ってはくれない。
「何でもない」と言ってしまった手前、今更ポケットの中身を出すと逆に変に思われる。
タイミングを計って、もう一度取り出すとしよう。このカエルの顔がついたミコパンを。

「そ、そう言えばアレだな!
 昨日の夜に美琴がカレー作ってくれたから、朝飯はそれの残りでいいよな!?」

上条は話を逸らす為に、無理矢理話題を変えた。
コンロの上には鍋が置きっぱなしになっており、食欲をそそるスパイスの香りが漂ってくる。

「えっ!? あ、うん…そ、そうね。昨日…カレー食べたもん、ね…」

すると美琴はたちまち「カアァ…」と赤面してしまった。その理由とは。

「ね、ねぇ…アンタ、カレー食べた後に何て言ったか覚えてる…?」
「うっ、え、あ…ま、まぁ…覚えてるけど……」

そして上条も、美琴に釣られて「カアァ…」と赤面する。

「ア、アンタ…あの時『あんなこと』言っちゃったけど、アレ本気…だったの…?」
「い、いい、いやあのその…た、確かに『あんなこと』言ったけど、
 でもアレは、その場の勢いって言うか、
 テンション高くなって思わず言っちまったって言うか…
 でも…わ、割と本気だったような気がしないでもないかと思われますです…はい…」
「そ、そそそ、そうなんだぁ……へ、へぇ~、ふぅ~ん…」

お互い甘酸っぱ気まずそうに目を逸らし、ポリポリと頬をかく。
何だかラブコメの波動を感じるが、
やられっ放しというのも腑に落ちないので、ここで上条は反撃に出る。

「で、でもだぞ!
 それは美琴が先に、カレーで『あんなこと』をするから悪いと思うのですよ!
 上条さんだって男なんだから、女の子から『あんなこと』されたら思わず……」


言いかけて、美琴の様子がおかしい事に気付く上条。
美琴は赤面したままの顔を俯かせて、「だって…だって…」と呟いている。

「だ、だって…アレは、その……アンタがあんなに美味しそうに食べてくれたから、つい…
 そ、そりゃ確かに、私も『あんなこと』したのは…今考えると、は、恥ずかしいけど…」
「ううぅっ…!?」

俯いてモジモジするその姿に、鈍感王たる上条さんも思わずキュンとしてしまう。
何だかじっとりと変な汗が額から滲んできた上条は、
ポケットの中の『ハンカチのような物』を取り出し、汗を拭う。
普段はそんな事しないだろうに、テンパっているせいで、
いつもと違う行動を起こしてしまったようだ。それが不幸の元なのだと、気付きもしないで。

「い、いや~…ま、まぁ実際に美味かったしなぁ……」
「……あれ? アンタ、そのハンカチって…?」
「えっ? ……………ああぁっ!!?」

しかしその『ハンカチのような物』は当然ながらハンカチではない。
見覚えのあるゲコ太の顔に疑問を持った美琴が詰め寄ると、
上条も『それ』が何なのかを思い出し、ハッとする。だが勿論、そんなのは後の祭りだ。

「ちょちょちょっ!!! アアア、アンタ!!! そのハンカチ広げてみなさいよ!!!」
「あっ!!! いや、ダメ!!! 激しくしないでえええええ!!!」

上条が額を拭った『ハンカチのような物』を巡り、ドスンバタンと取っ組み合いが始まった。
二人は小競り合いをしているつもりのようだが、
端から見ればイチャついているようにしか見えない。その証拠に、

「「っっっ!!!!!?」」

最終的に上条が美琴を押し倒す形で床ドンしてしまったから。通常運転である。

「あ、その、わ、悪い…」
「あ、や、べ、別にいいけど…」

顔が間近にある状態で、見詰め合う男女。
このままキスしちゃいそうな雰囲気だが、そこは上条の不幸体質。
上空からヒラヒラと舞い落ちた『布状の何か』により、その幻想はぶち殺される事となる。
お忘れではないだろう。そもそも二人が、何故取っ組み合いを始めたのか、その原因を。

押し倒し倒されな二人の横に、ファサッと落ちてきた『布状の何か』は、
先程まで上条のポケットに入っていた物だ。そして、ゲコ太の顔がプリントされている。
瞬間、美琴の頭からバチバチと電撃は放たれる。
まだ本調子ではないものの、それでも相手を気絶させられるだけの威力はある。
もっとも上条には電撃の威力など関係なく、とっさに右手をかざして打ち消す。
だが上条にとって脅威なのは電撃そのものではなく、その後の美琴の剣幕である。

「アアアアンタやっぱり私のパ、パパ、パ、パン、パン~~~!!!」
「おおおおお落ち着け美琴~~~!!!
 上条さんだって隠してた訳じゃなくて、その、ほら、アレだ……
 そ、そう! 昨日は『あんなこと』があったから仕方なく!!!」

それを聞いた瞬間、美琴の怒りは嘘の様に消火した。

「…ま、まぁ確かに『あんなこと』があったんだから、
 アンタが全部悪いって事はないんだろうけど…」
「だ、だろ!? 『あんなこと』があったんだから………あっ」

すると上条は昨日の事を思い出して、ふと、こんな事を言ってきた。

「なぁ、美琴。『あんなこと』しちゃったんだから、その…
 た、試しにキスとかしてはみませんでせうか?」

すると美琴は。

「ふぇあっ!!? だだだ、ダメよっ!!! それとこれとは話が別じゃないのよっ!!!
 そ、そりゃ私だって……『あんなこと』の後なんだし、
 キキキ、キスくらいなら…しちゃってもいいかな…なんて思うけどゴニョゴニョ…」

さて、ここまで読んで頂いた方には先程から気になっているワードがあると思う。
  『 あ ん な こ と 』
どうやら昨日は二人の間で相当な事件があったらしいのだが、
では具体的に何をしたのかと聞かれたら、実はまだ語られていない。













































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