とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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第3部 第14話 第三章(4)


9月19日(土)10時

私の選手宣誓で始まった大覇星祭は、朝方の内戦まがいの大トラブルが嘘のように
実行委員会の式次第どおり進行している。

私は、回復したシステムを午前中は初春さんに任せ、自分は競技に専念させてもらう。
最初の競技は、4校合同借り物競争、さっさと済まして義務を果たしたい。

(それにしても借り物競争ね・・)
(高速移動すれば一瞬だけどね・・)

磁力による高速移動で音速移動すれば、半径15kmにすぎない狭い学園都市など
ほぼ中心に位置する第7学区からどこでも往復2分で移動できる。

当然、そんな話では学園都市のアイドル御坂美琴を撮影することを目的に集まった
観客や、マスコミがしらけてしまうので、この競技では干渉数値5以上の能力
発動と、時速50km以上の移動ができない能力制限がかかっている。

また参加者でただ一人、私にだけ、他の競技者への能力による攻撃が禁止されている。
ようは、化け物である私に枷をはめなんとか競技として成立させるという涙ぐましい
話だ。そんな御坂美琴と呼べない僅かな戦力しか与えられていない私に敗北は許され
ていない。観衆も常盤台も、マスコミもなにより上条当麻が私の勝利を望んでいる。

(正直、レベル3くらいの能力者よ・・これじゃ)
私は心の中で悪態をつきながら、借り物のくじを引く

くじには、すでに競技を終えた高校男子と記載されていた
(どうやら私のツキは消えていないようね)
私の脳裏に上条当麻の顔が浮かぶ、予定では当麻は開会式直後の競技を終えたばかりな
はずだから。

私は、神経細胞の伝達速度と、筋繊維の伸縮を生体電流の操作で最適化し、限界速度
の上限値ぎりぎりの時速49KMで移動している。

カーブや、歩行者などの障害物を極限まで演算を駆使し、避けつつ進む。磁気による高速移動という裏技が使えない以上ロス時間は許されない。
(まあ信号をハッキングで無理やり青に変えたのは許容範囲よね、能力は使ってないし)
私は約5KMの道のりを6分ちょうどで移動する。時計で移動時間を確認しにんまりする。

(よしロス時間0と・・)
(当麻は・・いたいた)
「当麻・・」
「あ?そうか俺が借り物?」
「ええ、悪いけど、時間ないからおんぶするわ」
「あ・・ああ」
よいしょ・・と
私は当麻をおんぶして、走り始める。見せかけの勝利に向かって。

「しかしまあ、干渉数値5なんてレベル3くらいだろう?」
「ええそうよ」
「レベル3の電撃使いにできる芸当か?」
「ああ・・でも・・レベル3の肉体強化系なら可能よ」
「なるほど・・頭を使えば済む話か」
「まあ生体電流を使えば、10分くらいは筋力を10倍にできるそれだけの話よ」
私は、歩行者や自転車をジャンプで飛び越え、ゴールを目指す。

「でもさ、美琴が磁力で高速移動したほうが観客やマスコミが喜ぶんじゃねえの?」
「まあね、でもさ・・私が本気だしたら勝負にならないじゃない」
「まあテレポートはともかく秒速300Mで移動すれば40秒よ」
「まあ確かに」
「他に、外部に私の能力を誇示する場はあるわけだから、ここで見せびらかす必要もない」

「まあ一方通行や垣根に言わせれば大覇星祭なんて夢を信じる子供の遊びだそうだけど」
「私は、一応表の顔だから、ルールの範囲で青春ごっこを演じるだけよ」
「そうか」

「でも・・もうそれも今年でおしまいかな」
「え・・ああ大学院生か来年は」
「ええ、もう子供の遊びもおしまい。」

「だ・か・ら今年だけは楽しもう」
私は、時速49KMを維持し最終コーナを曲がる。

 ・・御坂選手、後続を遥かに引き離し圧勝です・・
 ・・まったく疲れもみせず、肉体強化系も真っ青な高速移動を見せ圧倒的な差をつけ
借り物をおぶりその力を見せつけ・・

私は、借り物の内容を見せ、1位の旗を受領する。
スポーツタオルと、スポーツドリンクを50%水で薄めたドリンクを受領し
当麻に渡す。

「当麻ありがとう」
「え・・いや・・まあ」
「ふふ・・でも借り物が競技を終えた高校男子でよかったわ」
「そうか・・まあデート見たいなもんか」
「そう、これで当麻をアピールできたし私も母校に貢献できたし、めでたしめでたしよ」

「そうか」
「で後もうひとつ競技あったな」
「ええ」
「障害物競争よ」
「エースはつらいね・」
「まあ、実際には能力使用の干渉値の限界もあるし、攻撃は禁止されている
レベル5の御坂美琴でできることなんて大覇星祭じゃ知れているのにね」
「常盤台も学園都市も私に幻想抱きすぎじゃないの?」

私は、やや苦笑いを浮かべる。

「それでも勝つんだろう」
「ええ、出る以上私に敗北は許されない、微弱な電撃すら禁止され、磁気による高速
移動もできない、まるで両手両足を縛られている状況でね」
「つらいな」
「ええ、でもそれが、ルールとか法の番人の矜持なのかもね」
「じゃ・・がんばれな」
「ええ、またね」
私は、なんとか初戦を制したことを喜び、協力してくれた婚約者に特上の笑顔で
報酬を支払い、別れを告げる。

12時

AI捜査支援システムは順調に作動し、流れの魔術師や爆弾テロ犯、反科学主義者を
公務執行妨害で犯行直前に摘発している。私はあれだけのトラブルを3時間で復旧させた初春飾利の技量に舌を巻く。

昼を迎え当麻と再会した私はあらかじめ予約した、少々こじゃれたカフェに入店する。
ささやかに警備責任者という権力を行使させてもらい、当麻とゆっくりとできるように
贅沢に個室を確保させてもらった。
むせ返る熱気が収まり、適度の調整されたエアコン冷気が心地よさを感じさせる。

店員が、程よく冷えた氷水を机の上に置き、立ち去る。
日替わりランチは予約済みなので、10分ほど待つこととする。
「当麻、お疲れさま」
「朝のごたごたが嘘みたいだな」
「それも部員総出の頑張りのおかげ、当麻や初春さん、一方通行に本当に感謝だわ」
当麻の顔が、ほのかに紅くなり、私の常盤台の競技用体操着の上に手を添える。

「で・・借り物競争は俺でよかったのか?」
「え?」
「競技を終えた高校男子なら数万人はいただろう?実行委員の美琴なら、他の部員や
風紀委員の競技日程なんか全部把握済み、もっと近場で都合のいい学生を確保する
ことも可能なはず、それなのになぜ・・?」
「それはねえ・・当麻と少しでも一緒にいたいだけよ」

美琴の顔が真っ赤に染まる。もう1月ちょっと同棲しているのに、意外に初心な美琴の
反応に俺もなんか変な気分になる。
「そうか・・まあ」
「迷惑だった?」
「いやまあ・・美琴なら・・全然悪くないし」

「若いのはいいわね・・でも美琴ちゃん、未婚の母だけはダメよ」
そこに美琴の母の美鈴さんが、いきなり俺の隣に座っているのに気がつく

「え?お義母さん」

「当麻君、愛しのラブリー美鈴ちゃんでーす」
そこには、一部を除き美琴の姉にしか見えない、大学生風の美人が座っている。
美琴は、それまでの満面の笑みから、いかにも不機嫌そうな顔へ変える。

「ママ急に入国申請しちゃだめよ・・いくら私の親族でもね」
本来なら学園都市へ簡単には入域できない。通常申請して1週間待たされる。それも
身分がしっかりとし、正当な理由がないとまず門前払い。大覇星祭期間中基準は緩くなるが
当日の朝に申請して入域なんて一般人にはまず無理。

はっきり言うと学園都市1位で実質的な治安責任者である美琴の母でありかつ保護者の代表者的な地位だから特例で入国できただけの話。特権扱いを嫌う美琴には忌々しい話だ。

「いや・・急に当麻君の顔が見たくなってさ・・」

「まったく迷惑な話よ。アンチスキルから苦情が来るでしょうね」
美琴の顔が苦笑いに変わる。

「でも・・あんなことがあったのに来てくれてありがとう」
スキルアウトや暗部を整理中に、美琴を逆恨した暗部に暗殺されかけた御坂美鈴
一般人ならトラウマになりかねない出来事なのに、何事もなく軽口をたたく、その姿に
御坂遺伝子の強靭さを思い知らされる。

「美琴ちゃんに助けられたから、平気・平気」
俺は、美琴が無理に笑顔を作りながら、お義母さんに相対していることに
奇異な感じを向ける。
難しい顔をしながら美琴が口を開く
「ママ、正直この前の状況でわかるとおりあんまり学園都市の治安はよくない」
「だから、・・この指定ルート以外の場所にはいかないでほしい」

「え?」

美鈴が呆然とする。娘が何を言ったのかすぐには理解できないようだ。
やっと口を開く
「でも、・・この前の暗殺犯は全部摘発したのよね」
美琴が、言葉の選択を誤ったと事に気が付き、表情をやわらげ、言い直す。
「一応念の為よ。念のため」
美鈴さんが、いたずらぽい顔を取り戻す。
「ね、美琴ちゃん、私の立場を知っているわよね」

「最近、学園都市で起こる不穏な事件が、都市伝説のように外でも書かれていることを
知らない?」
「ネット、夕刊誌結構面白可笑しく、学園都市1位御坂美琴の・・」
美鈴のぶっそうな発言に美琴が突然立ち上がり、発言を止める。
「ママそれ以上は危険・・」

「ママの言いたいことはわかった。突然観戦を申請したママが安心して、大覇星祭を観戦することが、保護者会の不安を抑える方策なわけね」

「さすがに聡明なわが娘ちゃんとわかっているじゃない」
俺は、聡明でしたたかな御坂美鈴が、なぜ娘を困らせるような、アポなし入国という
娘の顔をつぶす暴挙をした本当の理由を悟る。
(なるほど、保護者会代表の美鈴さんが・・アポなし訪問で最近評判が下落した学園都市
の名誉を回復する役を買って出るという訳ね)

「だから美琴ちゃんとかアンチスキルの警備とかなしよ」
腹が座ったのか、美琴は母親の顔をにこやかに見つめる。

「わかった、でも・・これだけはつけて」

美琴は、カバンから注射針を取り出す。
「追尾装置を取り付けたナノマシンを注射するから腕だして」
「え?ああそう」
「まあ、念のためよ、念のため」
美琴は、手慣れた手つきで注射を終える。
「すぐに危険を感じたら、私に電話してね」

注射を終えたのち、10分ほどで食事が運ばれてくる。
食事じたいは、5000円ほどのランチだが、「場所代」と思えば安いものだろう。

美琴は、朝のトラブルの収拾にいまだに、頭を悩ましているのか、しきりに携帯情報
端末を眺め、恐らく本部の初春委員とひっきりなしにメールで通信している。
恐らく能力でも使っているのか、目をつぶり莫大な情報を脳で処理しているのだろう
情報端末が超高速でスクロールを繰り返し、文字情報が高速で流れている。

「美琴、食べないのか?」
ほとんど瞑想状態の美琴はまったく反応しない
その様子に呆れたのか、美鈴さんが俺に話かける。
「ねえ、当麻君 美琴ちゃんていつもあんな感じ?」
「いや・・普段はきちんと会話するのですが、今日はピリピリしていますね」

「そうか・・美琴ちゃんも風紀副委員長で緊張しているのね」
「ここ2週間ほど責任者として相当緊張状態ですね」

「当麻君はちゃんと美琴ちゃんをみてくれているのね。安心したわ」
美鈴さんが、俺に微笑みかける
「これは娘を溺愛する親の勝手なお願いだけどね」
「美琴ちゃんは、のめり込むと周りが見えなくなる子だから、当麻君にしっかり
見守ってほしい」
俺は、すがるように娘の安全を婚約者に託す母親の思いに心を打たれる。

「はい」
「ありがとう」


私は、結局オレンジジュースを10秒で飲み込み、ミックスグリルもパンも一口も
口をつけず、食事を切り上げる。
私は、知らないうちにママが退出していることに気がつく。

「当麻、ごめんね。ママ押し付けちゃって」
「いいよ、忙しいだろう」
「ありがとう」
「美鈴さん美琴を心配していたぞ」
「そうね。ママのある意味配慮なのかな」
「え?」

「正直あのバカ母が、アポなしで訪問するなんて困ったわと思ったけどね」
「ああそうだな」
「まあ悪意はなさそうだし、いいわよ、どうせ「周りが見えなくなる娘を頼みます」なん
て言っているでしょう?」
「聞いていたのか?」
「当たり前じゃない、忙しいから無視したけど」

「で、午後は予定通り競技するのか?」
「そうね・・キャンセルできないし、ただ初春さんに昼飯食べてもらわなきゃない
から1回本部に戻るわ」

「そうか・・じゃ予定通り7時に、ホテルで再会な」
「じゃ・・ね」

私は当麻を見送り、本部へ急ぐ
同時刻 風紀委員本部

「ふ・・そろそろ御坂さんが来る時間かな」

朝5時から複数の画面に目を凝らしていた初春飾利が背伸びをする。
木原唯一の反乱自体は、御坂と上条、一方通行と結標が制圧したが、その後
の事務処理と、AI捜査支援システムの復旧は初春がほぼ全部を処理した。

初春は、レベルこそ1だが、その情報処理能力はレベル5に匹敵するとも
言われ、もしも、情報処理の樹形図を脳内で自分だけの現実として構築
できれば間違いなくレベル5に昇格できるとさえ言われている。

ただ実際には、そこまでの妄想(自分だけの現実)を構想できず、レベルは1
のままにとどまる。とはいえ、その卓抜した情報処理は春先に碌な準備なしに
面白半分で初春飾利にハッキングを挑んだ美琴が引き分けに追い込まれたこと
でもわかるだろう。

御坂美琴が作った、AI捜査支援システムは概念や構想は突き抜けていたが
穴も少なくなかった。美琴が風紀副委員長に決まってから実質1日で作成したシステム
粗削りの部分も少なかった。それを、初春が詳細に作り直したと言っても過言ではない。

(まあ今回の改竄もある意味御坂さんのうっかりミスが原因だしな・・言えないけど)

相手は、学園都市1位、初春から見て仰ぎ見る存在。大学レベルと言われる、名門
女子中を飛び級卒業し、いきなり大学院へ進学する化け物。あれこれ言える立場じゃない。

情報処理技術の1点だけは彼女に対抗できるかもしれない。だが所詮はそれだけ。
統括理事会から風紀委員会の管理を任され、なによりレベル5の一位、能力者の頂点
すべてが違う。それに・・権限という格差はどうにもならない。

樹形図の設計者、書庫、軍事クラウドあらゆるデータべースのフルアクセス権を持つ
風紀副委員長御坂美琴、自分はその権限を一部譲渡され、その範囲内でしか処理を
許されていない。軍事機密という名の重苦しいカーテンが引かれ、自分はその内側に
関与できない現実。その現実が初春飾利の心をささくれさせる。

いつか、このシステムの裏に横たわる、学園都市の奥底に触れてみたい。恐らく
世界の頂点であろう、サーバー群を操りたい。初春はその野心に胸を躍らせる。
いつか、上司の御坂美琴を出し抜いてやると。さえ思っている。
だが・・今は・・まだ早い。自分の行動(ログ)はすべて上司に監視されているの
だから。

予定通り13時に到着した御坂さんを確認し、声をかける。

「御坂さんお疲れ様です」
「お疲れ」
「本当ありがとうね、全部事務作業を押し付けて」
「いえ・・御坂さんや上条さんが短時間で制圧しなければ全部おしまいでしたから」
「ありがとう、そうそう」
御坂さんはカバンから、マネーカード1万円分を取り出す。
「少ないけど、これで昼でも食べて」
「いいんですか・・」
「いや、ここんとこ多忙にさせたし、気持ちよ・気持ち」
「御坂さん。ありがとうございます。」

「じゃ・・14時55分には戻ってね、私次の競技でなきゃないから」
私は、初春さんを見送り、ログを確認する。初春さんを信用していないわけではないが
食蜂クラスの精神系能力者の攻撃を防げる能力者が私と当麻しかいない以上、確認する
必要はある。学園都市とは人間など簡単に操れる街なのだから。

私は、能力で短時間にログを解析する。電子の動きひとつひとつまで見逃さない。

「まあ当然、異常なことはないわね」
「アンダーライン、ツリーダイアグラム、素養格付け、そしてあれね」
「初春さんは、あれの存在に気がついたら正気でいられるかしらね」
「AI捜査支援システムの裏コマンドにあるあれに気が付いたらね」

初春飾利のような表しかしらない人間にいくら有能とは言え、美琴が構成した新暗部の
情報処理の中枢を担わせることに、良心の呵責はある。

だが・・
(まあほかに代わりもいないし、それに・・初春さんが情報処理技術者として学園都市
で生きなおかつ治安関係者である以上いづれ、闇に対峙する日がくる)
(だったら、私とともにかかわったほうがいいんじゃないかな)

私は短時間でログの解析を終え、研究所の決裁作業を始める。
風紀委員・研究者の職務をこなし、なおかつ、手足をしばられた状態で人間の世界で
子供のお遊びにニコニコと笑いながら参加し広告塔の業務を果たす。

(怪獣が人間世界で暮らすにはそれなりの自己抑制が必要な話よ。一方通行や垣根、麦野
はそれに失敗し、一度は闇に落ちた、私がその轍を踏むわけにはいかない)

私は、最低限の仕事を終え、画面をシャットダウンする。

さあそろそろ、お遊戯の時間かな・・
大覇星祭で勝ちの決まりきった勝負をつけに私は走り出す。

19時

白井黒子との二人三脚とバルーンハントで圧勝し、お遊戯を終える。
さすがに、私と呼吸ぴったりの黒子、摩擦系数操作能力者の妨害を、磁力で
ぶち壊し、さらに発火系能力者の暴走事故さえ防ぎ、賞賛すら浴びた。

又バルーンハントでは、壁を高速で駆け回り、屋根から屋根を磁場で飛び越え
あらゆる能力者の攻撃をかわし母校の勝利に貢献した。攻撃できない以上
逃げ回るしかないが、磁場を巧みに使用し、マスコミ的にもいい絵柄の写真
や動画が提供できただろう。

(まあ、あれちょっと操作を誤ると、干渉数値の制限にひっかかるからやばいけど)

結局、壁を自在に駆け回り、生体電流で握力を350KGにできる能力者など
常盤台でも少数派にすぎないという話だ。

私はレベル1からという底辺からの出発だったので、低レベルで工夫することに頭を
精一杯使ってきた。その経験が大覇星祭で生きてくる。

出場した全試合で勝利に貢献し、面目は保ったのではないだろうか?
他のレベル5は削板以外は出場しないので、(食蜂は棄権)個人部門は
私と削板の争いだが、削板は、あの根性男は予想どおり、干渉数値違反で
レッドカードをくらい、恐らく私の個人総合1位は間違いなさそうだ。

あらかじめ予約した少しこじゃれたホテルの展望室レストランで当麻を待つ。
18時30分から始まった、ナイトパレードを見るためだ。

すでに、テーブルの上に水と前菜の冷たいスープが置かれている。
当麻は約束どおり、19時ちょうどに到着し、テーブルに腰かけている。
あらかじめ注文したウーロン茶が運ばれ、乾杯し、夕食を始める。

ナイトパレードの照明が星空を覆いつくす。

冷たいスープを食し、白身魚のムニエルに手を付ける。

「本当綺麗な景色ね」
「ありがとうな美琴、ここ特等席だろう、高いだろう」
「ええ、普通ならね」
「普通なら?」
「まあ実行委員の役得というやつよ、フルコースで一人1万5000円」
「安くないじゃないの?美琴さん」
(しまった・・当麻の金銭感覚を忘れていた)
「相場なら5万円よ」

当麻が目を丸くする。
「でも、どんな夜景も美琴の笑顔には適わないよ」
(はあ・・たまに気障なことを言うのよね)
「ありがとう、で・・どうだった」
「ああ、不幸もなく結構うまくいったよ。あ・・それと美琴の表彰シーン見たよ
さすがだな」
「ありがとう、でも当麻の学校も結構いい点とっているじゃない」
「まあ、常盤台よりは低空飛行だけどな」
当麻が私の学校を褒めてくれるので私もうれしくなる。

「まあ、母校へ少しでも恩返しできてまずはよかったかな」
当麻が意外な表情で私を見つめる
「美琴は謙虚だな、でも今のところはまだ常盤台が美琴離れしてないけどな」
私は、苦笑いを始める。

「いつか忘れてほしいけど、まだ無理みたいね」
「そうか、でもさ、そうやって後輩に慕われることは凄いことだと俺は思うぞ」
「ありがとう。久しぶりに、黒子とか、食蜂とカラオケでもしない?」
「いいじゃないの?」
「じゃ、今日はよろしくね、旦那様」
「ダメ亭主をよろしくな 美琴」

私と当麻は、デザートのメロンと、エクレアを食べ終え、黒子が手配済みのカラオケ
会場へ向かう。

独裁者が、失踪し先が見えない異常事態の学園都市、でも今の私は一人じゃない
きっとどんな事態にも立ち向かえるそんな気がした。

続く










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