第3部 第15話 第三章(5)
9月25日 (金)午前5時 大覇星祭 最終日
さすがに、9月末となると日の出も遅くなる。北風と乾燥した気流が生み出す冷気が辺りを
包む。異常な残暑も底を見せ、遠からず夏は終わりだろう。
最高気温も28度という予想で、今日は余りに日射病の心配もなさそうだ。
包む。異常な残暑も底を見せ、遠からず夏は終わりだろう。
最高気温も28度という予想で、今日は余りに日射病の心配もなさそうだ。
5時という時間が、朝から夜へと移行しつつある肌身で感じる。
本来なら一緒に散歩の時間だが、当麻は、前日の競技での頑張りすぎがたったのかまだ
起きない。
本来なら一緒に散歩の時間だが、当麻は、前日の競技での頑張りすぎがたったのかまだ
起きない。
最終日・・初日の戦争まがいの大トラブル以外に大きなトラブルもなくタンタンと
日程をこなしている。私の開発したAI捜査支援システムの初期不具合はほぼすべて
初春飾利が塞ぎ、より強化されたセキュリティシステムが正常な稼働を保証している。
日程をこなしている。私の開発したAI捜査支援システムの初期不具合はほぼすべて
初春飾利が塞ぎ、より強化されたセキュリティシステムが正常な稼働を保証している。
依然として統括理事長アレイスタークロウリーの行方は不明だが、どうせ死んだふり
作戦だろうと、気にしない。大覇星祭は問題なく滞り実施されるだろう。親船統括理事
長代行の元で。
作戦だろうと、気にしない。大覇星祭は問題なく滞り実施されるだろう。親船統括理事
長代行の元で。
実際のところ、今の学園都市学生の関心は、あまりに順調すぎる常盤台の完全総合優勝
が達成されるかどうかに移りつつある。個人総合1位が私であることは事前に想定されて
いたので誰も文句は言わない。それに唯一私に対抗しえる削板がレッドカードを食らい
私の個人総合1位は変わりようがない。
が達成されるかどうかに移りつつある。個人総合1位が私であることは事前に想定されて
いたので誰も文句は言わない。それに唯一私に対抗しえる削板がレッドカードを食らい
私の個人総合1位は変わりようがない。
(だけど勝ちすぎはよくないのね)
いつもなら、常盤台対長点上機で盛り上がる頂上対決もすべて常盤台が、私が開発した
AI シミュレータによる効果的な選手配置と作戦提示で、すべて制し、大差になってしま
っている。
いつもなら、常盤台対長点上機で盛り上がる頂上対決もすべて常盤台が、私が開発した
AI シミュレータによる効果的な選手配置と作戦提示で、すべて制し、大差になってしま
っている。
いままでレベル4を47人有し、圧倒的に質の面では優位なはずの常盤台がしばしば苦杯
を喫していたのは、主に協調性のなさと、実戦経験の不足だが、私の圧倒的なカリスマと
食蜂の人心掌握術により、統制のとれた軍隊として、動き、結果圧倒的な成果を達成した。
を喫していたのは、主に協調性のなさと、実戦経験の不足だが、私の圧倒的なカリスマと
食蜂の人心掌握術により、統制のとれた軍隊として、動き、結果圧倒的な成果を達成した。
だが・・常盤台が圧倒的に圧勝するのも、大覇星祭の盛り上がりと、来年以降の干渉
数値面であまり望ましくなく、結局一部プログラムを変更し、今日の特別イベントを
実施し、長点上機学園に逆転の可能性を残すことにした。
数値面であまり望ましくなく、結局一部プログラムを変更し、今日の特別イベントを
実施し、長点上機学園に逆転の可能性を残すことにした。
(まあ、外のお笑い芸人がよくやる手法だけどね・・・)
ゲームは華やかな目立つものにする、常盤台対長点上機の頂上対決
それも1対長点上機の全校生徒 勝った方が総合優勝というご都合主義
(まあ、このくらいの余興は許容範囲でしょう・・)
ゲームは華やかな目立つものにする、常盤台対長点上機の頂上対決
それも1対長点上機の全校生徒 勝った方が総合優勝というご都合主義
(まあ、このくらいの余興は許容範囲でしょう・・)
さすがに、私も当麻も多忙で食事を作る暇もないので、コンビニ弁当で済ます。
それにカップみそ汁を加え、とりあえず腹を満たすだけの食事で腹ごしらえをする。
コンビニ弁当も、幕の内弁当なら食品添加物や、中国製の農薬まみれの食材が多い
事を除けば、それなりの味と品質なのは最近理解した。
(少し薬品臭いけどね・・正直)
それにカップみそ汁を加え、とりあえず腹を満たすだけの食事で腹ごしらえをする。
コンビニ弁当も、幕の内弁当なら食品添加物や、中国製の農薬まみれの食材が多い
事を除けば、それなりの味と品質なのは最近理解した。
(少し薬品臭いけどね・・正直)
「当麻、おはよう」
「今日で最終日だな、で、えらい盛り上がりだな、御坂美琴対長点上機?」
「実態はそうね、建て前は常盤台対長点上機だけど」
「しかしまあ・・これ長点は敗北すれば大恥じゃねえの?」
「今日で最終日だな、で、えらい盛り上がりだな、御坂美琴対長点上機?」
「実態はそうね、建て前は常盤台対長点上機だけど」
「しかしまあ・・これ長点は敗北すれば大恥じゃねえの?」
「まあいいじゃないの。負けたところで来年はその御坂美琴を獲得できるわけだから」
「なるほど・・ある意味双方の利害が一致したわけね」
私は溜息をつく、本来はたかが子供の遊びにここまで糞真面目になる、学園都市関係者の
滑稽さと、その裏にある利権という名のドロドロした大人の都合に
「なるほど・・ある意味双方の利害が一致したわけね」
私は溜息をつく、本来はたかが子供の遊びにここまで糞真面目になる、学園都市関係者の
滑稽さと、その裏にある利権という名のドロドロした大人の都合に
「まあ、たかが運動会じゃないの、本質は。気楽にいきましょう」
「どうせこれが最後だし・・」
「は・・それは甘いんじゃない?美琴」
「え?」
「どうせこれが最後だし・・」
「は・・それは甘いんじゃない?美琴」
「え?」
「長点上機が美琴先生を大覇星祭に出さないわけないじゃん」
「結局・・美琴は客寄せパンダの価値がある以上それから逃れるのは無理じゃないの?」
上条当麻は時々いや本質的に鋭いところがある。私以上に世の中を突き詰めてみる目を
持っている。
(だからこいつに惚れたわけだけど)
「そうね。マスコミ的に絵柄のいい写真を提供できればいいわね」
「結局・・美琴は客寄せパンダの価値がある以上それから逃れるのは無理じゃないの?」
上条当麻は時々いや本質的に鋭いところがある。私以上に世の中を突き詰めてみる目を
持っている。
(だからこいつに惚れたわけだけど)
「そうね。マスコミ的に絵柄のいい写真を提供できればいいわね」
「結婚式に使えそうな映像をな」
「ふふ・・いいわね。頑張るわ」
「ふふ・・いいわね。頑張るわ」
・・・・・・・・・
9時
9時
緑地公園に数百名の生徒がたった一人を倒すために集まっている。
本日最大のイベント 御坂美琴対長点上機学園は様々なイベントを行い、1試合でも勝てば長点上機学園の勝利というルールで行われる。
本日最大のイベント 御坂美琴対長点上機学園は様々なイベントを行い、1試合でも勝てば長点上機学園の勝利というルールで行われる。
第一試合は、私が数百人の生徒が防衛する、大将を1分以内に気絶させるというもの。
全員電撃を警戒し、晴天にも拘わらずゴム製の雨合羽を装着している
当然のことながら、私には空を飛ぶことも、当然超荷電粒子砲も禁止され、ぎりぎり
レベル5の能力行使ができないので、「電撃」くらいしか攻撃手段がない。
全員電撃を警戒し、晴天にも拘わらずゴム製の雨合羽を装着している
当然のことながら、私には空を飛ぶことも、当然超荷電粒子砲も禁止され、ぎりぎり
レベル5の能力行使ができないので、「電撃」くらいしか攻撃手段がない。
それに風紀副委員長という立場上、殺人はおろか、重傷で病院送りも望ましくない
だから、超電磁砲のような、殺傷力のある攻撃手段も使えない。
だから、超電磁砲のような、殺傷力のある攻撃手段も使えない。
だから・・先方は安心して、にやにや笑っている。
たかが電撃、・・その油断。雨合羽を着込んだくらいで・・攻略した気になっている。
(まあそのくらい油断してもらわないと参加者を集められないしな・・)
(まあレベル3くらいの電撃使いには有効かもね雨合羽も)
(だけど、甘いわよね・・砂鉄を使える私には)
たかが電撃、・・その油断。雨合羽を着込んだくらいで・・攻略した気になっている。
(まあそのくらい油断してもらわないと参加者を集められないしな・・)
(まあレベル3くらいの電撃使いには有効かもね雨合羽も)
(だけど、甘いわよね・・砂鉄を使える私には)
号砲と同時に、地面全体から砂鉄を巻き上げ、そこへ電撃を加える。砂鉄嵐+電撃攻撃で
500人中475人が気絶して昏倒する。空気中を浮遊する砂鉄を電流が伝わり大気全体が帯電する。顔から電流が体表を伝わり地面へ流れる。少々の耐電装備ではまったく意味がなく、大局的には生理食塩水に過ぎない人体を電流が伝わる。
500人中475人が気絶して昏倒する。空気中を浮遊する砂鉄を電流が伝わり大気全体が帯電する。顔から電流が体表を伝わり地面へ流れる。少々の耐電装備ではまったく意味がなく、大局的には生理食塩水に過ぎない人体を電流が伝わる。
(そもそも「素粒子そのもの」を自在に操作できる私に、雨合羽で耐電対策は無謀でしょ)
もしも美琴が記録画像の絵柄を考慮して、手加減しなければ、砂鉄電磁嵐でほぼ全員昏倒
していただろう。そんな片手間のような攻撃でほぼ長点上機軍団は壊滅する。
していただろう。そんな片手間のような攻撃でほぼ長点上機軍団は壊滅する。
電撃にある程度耐性のある残り物の能力者が気を取り直し、攻撃しようとするが、ち密な演算が必要なテレポータは電撃の痛みで演算できず戦力外になり、念能力者は電磁砂鉄嵐が作り出す、磁場に妨害され対象物を操作できない。同系統の電撃系の能力者は余りの力量
格差に意気消沈して震えているだけだ。
格差に意気消沈して震えているだけだ。
唯一発動が容易で激痛でも発動できる発火系能力者だけが抵抗を試みるが、・・・・
レベル4の3000度くらいの火炎など、最低でも数万度に達するプラズマを形成
する高圧放電をいつも扱っている、私にはとってはなんらの脅威になりはしない
レベル4の3000度くらいの火炎など、最低でも数万度に達するプラズマを形成
する高圧放電をいつも扱っている、私にはとってはなんらの脅威になりはしない
その様子に、攻撃の効かなかった男性が震えだす。
「糞・・効かねえのか・・化け物が・・」
「糞・・効かねえのか・・化け物が・・」
「ね、私の通り名て知っている?」
「え?超荷電粒子砲・・?」
「荷電粒子て、通常の物質とはまったく性質が別なのは知っているわよね?」
「え?」
「燃焼は、酸化する現象・・でも、酸素分子が分子結合を失い、酸素元素になったら?」
「あなたの自分だけの現実はそれを観測し、確定できるかしら」
発火系能力者は火を生成しようとするが、まったく発生しない。
「荷電粒子て、通常の物質とはまったく性質が別なのは知っているわよね?」
「え?」
「燃焼は、酸化する現象・・でも、酸素分子が分子結合を失い、酸素元素になったら?」
「あなたの自分だけの現実はそれを観測し、確定できるかしら」
発火系能力者は火を生成しようとするが、まったく発生しない。
焦りでがたがた震えだす。
「えーえ・・そんな・・発動すらしないなんて」
「電撃使いを舐めてもらっては困るわね、物性の変性も可能なのよ」
その現実に打ちひしがれレベル4の最強クラスの発火系能力者は戦意を喪失する。
「えーえ・・そんな・・発動すらしないなんて」
「電撃使いを舐めてもらっては困るわね、物性の変性も可能なのよ」
その現実に打ちひしがれレベル4の最強クラスの発火系能力者は戦意を喪失する。
(さてひと通り戦意は喪失させたし・・)
残り20秒か・・そろそろ終わらせるか
( 電気と言えば水よね・・・)
湿気もちょっどいいし・・
( 電気と言えば水よね・・・)
湿気もちょっどいいし・・
私は、カメラ目線で、よくとおるアルトボイスで言い放つ。
「ねえ、まだ30度近い外気温のあるこの時期に、一気に0度まで、冷やせばどうなるかしらね」
腕を伸ばし、大気を構成する窒素と酸素分子から振動エネルギーを奪い急速に氷点下に
下降させる。たちまち大気から水蒸気が凝結し、地面を濡らし始める。
(これもレベル4の分子運動操作能力でいいかな・・ルール上は)
「ねえ、まだ30度近い外気温のあるこの時期に、一気に0度まで、冷やせばどうなるかしらね」
腕を伸ばし、大気を構成する窒素と酸素分子から振動エネルギーを奪い急速に氷点下に
下降させる。たちまち大気から水蒸気が凝結し、地面を濡らし始める。
(これもレベル4の分子運動操作能力でいいかな・・ルール上は)
解答などなく、そんなものは期待していない。動画の鑑賞者への謎かけ
「砂鉄と食塩交じりの結露が地面を覆う。そこを、高圧電流が流れればどうなるかしらね・・」
「砂鉄と食塩交じりの結露が地面を覆う。そこを、高圧電流が流れればどうなるかしらね・・」
さきほどの、電撃で筆舌に尽くしがたい痛みを味わった残り物の能力者達は、今度こそ
絶望を味わう。
絶望を味わう。
「処刑開始」
青白い火花が当たりを包み、大気の膨張に伴う轟音が辺りに響き渡る。
スイッチが切れたように、残り物の能力者が抵抗することもなく一瞬に倒れる。
「ミッション・コンプリート」
青白い火花が当たりを包み、大気の膨張に伴う轟音が辺りに響き渡る。
スイッチが切れたように、残り物の能力者が抵抗することもなく一瞬に倒れる。
「ミッション・コンプリート」
あたりにオゾンの匂いと、タンパク質が醸し出す焦げた匂いに包まれる。
会場は、あまりに凄惨な光景に最初沈黙に包まれていたが、最後は私への賞賛へ変わる。
結局強い者が賞賛を浴びる学園都市、その中で、行き過ぎた破壊や、残虐行為をしない私は
広告宣伝活動の安全牌、強さと美しさを兼ね備えた存在として不動の地位を保っている。
結局強い者が賞賛を浴びる学園都市、その中で、行き過ぎた破壊や、残虐行為をしない私は
広告宣伝活動の安全牌、強さと美しさを兼ね備えた存在として不動の地位を保っている。
その地位や評判を守るため、事前にある程度心臓まひの可能性を調べ、可能性がある人間はこの試合への参加を排除している。
「おおいなる力には大いなる責任が伴うか・・
(安全第一よね・・長点上機能力開発主幹と細部を詰めたある意味茶番)
(でも、基本電撃だけでもなんとかなるものね・・)
(安全第一よね・・長点上機能力開発主幹と細部を詰めたある意味茶番)
(でも、基本電撃だけでもなんとかなるものね・・)
分かり切った結果を、大げさに伝える、マスコミのインタビューに適当に答えつつ、思考
を巡らす。難しいのは、目立つことのメリットとデメリットを勘案することだ。
を巡らす。難しいのは、目立つことのメリットとデメリットを勘案することだ。
( まあ・・ある意味色物扱いされたほうが、いいかもね )
と適当に割り切り、思考を断ち切る。さて・・私は、当麻の姿を観客席に見つけ声をかける。
「当麻、見てくれたの?」
「美琴の晴れ舞台だからな」
「そう・・?見世物みたいなものよ」
「見世物・・まあそうかもな・・TVとか動画でバンバン流すだろう」
「当麻の幻想殺しのほうが、本当は凄いのにね・・素人にはわからないわね」
私は、マスコミというもののくだらなさをあざ笑う。
「美琴の技は映像映りがいいからな」
「ありがとう。今日はいい映像が提供できればいいわね」
「それにしてもさ、干渉数値で縛られ、重傷者も出さず、しかも敗北もできない。
なかなかシビアだね、おまけに綺麗な絵柄まで要求される」
「まあそれができることが期待され、その対価をいただいている以上はそう思う
しかないわね」
「美琴の晴れ舞台だからな」
「そう・・?見世物みたいなものよ」
「見世物・・まあそうかもな・・TVとか動画でバンバン流すだろう」
「当麻の幻想殺しのほうが、本当は凄いのにね・・素人にはわからないわね」
私は、マスコミというもののくだらなさをあざ笑う。
「美琴の技は映像映りがいいからな」
「ありがとう。今日はいい映像が提供できればいいわね」
「それにしてもさ、干渉数値で縛られ、重傷者も出さず、しかも敗北もできない。
なかなかシビアだね、おまけに綺麗な絵柄まで要求される」
「まあそれができることが期待され、その対価をいただいている以上はそう思う
しかないわね」
私は、少し面倒くさそうに溜息をつく
当麻が私を心配そうに見つめる。
当麻が私を心配そうに見つめる。
「大丈夫か?他に、研究所や風紀委員会、多忙すぎないか?」
「心配してくれてありがとう。まあ、このイベントが終わったら少し考えるわ」
「心配してくれてありがとう。まあ、このイベントが終わったら少し考えるわ」
「無理すんなよ」
「ありがとう」
「ありがとう」
私は、別の競技へ向かう当麻へ手を振って見送る。
私は手を握り、ささやかなイベントを再開する。
私は手を握り、ささやかなイベントを再開する。
「さて残りをこなしましょう」
学園都市の広告塔の御坂美琴の役目を果たすために
学園都市の広告塔の御坂美琴の役目を果たすために
・・・・・・・・・・
同時刻
同時刻
風紀委員 副委員長室
副委員長室は、御坂美琴の執務室、応接室、マシン室、仮眠室など
まるで官邸のような広大なスペースを占有し、そのこと自体がこの部屋の
主の権限の大きさを示しているようだ。
まるで官邸のような広大なスペースを占有し、そのこと自体がこの部屋の
主の権限の大きさを示しているようだ。
この部屋の主は、あくまでも風紀副委員長だが、実際には、委員長が飾りであるのは
周知の事実である。
周知の事実である。
だが・・それも一皮むけば、AIという名のブラックボックスのお告げこそが
治安機関の主なのではないか?
治安機関の主なのではないか?
それを操る初春飾利こそが、アレイスター失踪後の学園都市の影の支配者かもしれない。
副委員長室奥のマシン室で数十台のモニターを眺めながら、初春がAI支援システム
の御守を続けている。人工衛星や監視カメラ、車載コンピュータ、携帯電話の音声記録
携帯電話のGPS発信装置、ICタグ、LAN回線の交信記録あらゆるデータが、集約され、AI支援システムの初期値にUPDATEされる。
の御守を続けている。人工衛星や監視カメラ、車載コンピュータ、携帯電話の音声記録
携帯電話のGPS発信装置、ICタグ、LAN回線の交信記録あらゆるデータが、集約され、AI支援システムの初期値にUPDATEされる。
書庫、軍事クラウド、樹形図の設計者、莫大な演算処理能力と、自己学習機能が、正確な
指示を形成し、お告げのように取り扱われる。
そのお告げに従い、警備は決定される。万を超す、風紀委員とアンチスキルがまるで
神様のお告げのように、初春の管理するシステムの指示を疑いもせず、従うのだ
指示を形成し、お告げのように取り扱われる。
そのお告げに従い、警備は決定される。万を超す、風紀委員とアンチスキルがまるで
神様のお告げのように、初春の管理するシステムの指示を疑いもせず、従うのだ
イベントは、裏方なくして成功しない。実質的な警備責任者が、運動会ごっごに興じて
いられるのも、その裏で有能な実務者が定められたプログラムを忠実に実行しているか
らだろう。その筆頭の初春飾利には、2つのコンプレックスがあった。
いられるのも、その裏で有能な実務者が定められたプログラムを忠実に実行しているか
らだろう。その筆頭の初春飾利には、2つのコンプレックスがあった。
お嬢様への憧れと、前線で戦闘できる能力者への憧れである。
いつもその両方を兼ねそろえる、白井黒子や御坂美琴へ熱い羨望を向けていた。
いつもその両方を兼ねそろえる、白井黒子や御坂美琴へ熱い羨望を向けていた。
そもそも初春が風紀委員を志した最初の理由こそ白井黒子への憧れだった。
たまたま、小学校のころ広域社会見学で知り合った白井黒子が、日本で最大級の流通Gの
創業家の一族だと知り、かつ風紀委員ということで、風紀委員への関心を一気に燃え上がらせた。日本で有数の資産家の一族でなおかつ、戦闘のできる高位の能力者、初春はそんな
白井黒子と一緒に仕事のできる風紀委員へ憧れを募らせた。
たまたま、小学校のころ広域社会見学で知り合った白井黒子が、日本で最大級の流通Gの
創業家の一族だと知り、かつ風紀委員ということで、風紀委員への関心を一気に燃え上がらせた。日本で有数の資産家の一族でなおかつ、戦闘のできる高位の能力者、初春はそんな
白井黒子と一緒に仕事のできる風紀委員へ憧れを募らせた。
そして、何度も風紀委員へ志願したのだ。だが、風紀委員はそもそもそう簡単になれるものではない。筆記試験の他に、身体能力をチェックされ、能力も重視される。
必然的に高位能力者や身体能力が優れた者がなりやすい。
必然的に高位能力者や身体能力が優れた者がなりやすい。
初春飾利は、学力はまあまあだが、致命的なほど身体能力が低い。短距離走も、持久走
もダメ。体力の点では到底合格点には及ばない。
ただひとつ、とびぬけた情報処理能力を評価され、1点突破で合格できた。
もダメ。体力の点では到底合格点には及ばない。
ただひとつ、とびぬけた情報処理能力を評価され、1点突破で合格できた。
とはいうものの、能力はレベル1で体力もない初春に前線勤務は許されるわけもなく
白井黒子のバックアップとして堅実に業務をこなしていた。
白井黒子のバックアップとして堅実に業務をこなしていた。
だが、現場に出ることができない初春にとって、憧れの風紀委員は想像以上に平凡で
退屈な日々の繰り返しだった。もともと風紀委員は、アンチスキルの補助、白井黒子は
独断専行で、始末書の山だが、それでも原則はあくまでも補助。
退屈な日々の繰り返しだった。もともと風紀委員は、アンチスキルの補助、白井黒子は
独断専行で、始末書の山だが、それでも原則はあくまでも補助。
学校の中の犯罪をアンチスキルへ突き出すお手伝いに尽きる。後は交通整理や、迷子の案内など、犯罪捜査などは原則しない。そんな地味なしかも、事務処理に追われる日々に
少々倦んでいた。だが・・・そんな日々も御坂美琴と出会い激変する。
少々倦んでいた。だが・・・そんな日々も御坂美琴と出会い激変する。
だが、初春はまだ、その意味をまだ知らない。
御坂美琴の強烈な光芒に隠された学園都市の異形の意味を
御坂美琴の強烈な光芒に隠された学園都市の異形の意味を
そして、御坂美琴が抱える闇の深さを
だが、その闇を今日初めて思い知らされる。捜査指揮を行うある暗殺未遂事件で。
だが、その闇を今日初めて思い知らされる。捜査指揮を行うある暗殺未遂事件で。
・・・・・・・・・・・・
9時30分
第2試合:障害物競走
第2試合:障害物競走
第2試合は、私が長点上機学園の全生徒の妨害を受けつつ、制限時間内に、複数の
ポイントで襷をもらい、ゴールへ到着する競技である。
ポイントで襷をもらい、ゴールへ到着する競技である。
私は、応援に駆け付けた常盤台の生徒、ことにここぞとばかりに体を密着させてくる
白井黒子と会話を続ける。
白井黒子と会話を続ける。
白井黒子は非常に複雑な演算を有するテレポートを行うだけに、クレーバな頭脳を
有し、今は風紀委員本部で話相手になってもらっている。
有し、今は風紀委員本部で話相手になってもらっている。
「しかし多忙極まりないお姉様がよくこんなしょうもない企画にOKだしましたね」
「まあ、企画自体は外のお気楽お笑い番組でありがちな企画だけどね」
「いいじゃないのこのくらいお気楽な企画でも・・」
「まあ、企画自体は外のお気楽お笑い番組でありがちな企画だけどね」
「いいじゃないのこのくらいお気楽な企画でも・・」
「ですが・・」
聡明な黒子が何が言いたいか大丁想像はつく、「目立ちすぎるのはよくない」と
「逆、逆、どうせこんなお笑い企画に出るなら大したことないと聴衆は思うわよ」
「逆、逆、どうせこんなお笑い企画に出るなら大したことないと聴衆は思うわよ」
「はあ・・お姉様は、いつもポジティブシンキングすぎて・・」
「客寄せパンダの自覚くらいあるわよ」
「客寄せパンダの自覚くらいあるわよ」
「なんにせよどさくさに紛れて、よからぬことを企んでいる輩もいるようですから
警戒を」
「ありがとう警備のほうはよろしくね」
「お任せください、もっともあのシステムさえあれば・・」
白井黒子の顔と口調に、私とあのシステムへの過剰の過信を感じ打ち消しに入る。
警戒を」
「ありがとう警備のほうはよろしくね」
「お任せください、もっともあのシステムさえあれば・・」
白井黒子の顔と口調に、私とあのシステムへの過剰の過信を感じ打ち消しに入る。
「油断は禁物・・でしょ。だから・・」
「あ・・すいません。お姉様への信頼が過信に変わっていました」
「いいわよ、私もブラックボックスに過信していたわ」
「だから、お互いに足元を見ましょう、ね」
「あ・・すいません。お姉様への信頼が過信に変わっていました」
「いいわよ、私もブラックボックスに過信していたわ」
「だから、お互いに足元を見ましょう、ね」
それにしても、よくもまあ、こんなしょうもないルールを考えるわね・・
制限時間は60分
その間に私は約30KMを移動し、5ケ所のチェックポイントで襷を受領する。
突っ込みどころは多々あるが、妨害を受けながら30KMをたった1時間で移動
するというのは、どうなんだろうか?
突っ込みどころは多々あるが、妨害を受けながら30KMをたった1時間で移動
するというのは、どうなんだろうか?
しかもこっちは干渉数値と、移動速度で時速50KMの速度制限を受け、相手の
攻撃手段・攻撃方法は無制限・・
(まったく何の罰ゲームだか・・しかも敗北はできないと)
攻撃手段・攻撃方法は無制限・・
(まったく何の罰ゲームだか・・しかも敗北はできないと)
それでも・・まあなんとかするしかないわよね・・私には敗北が許されない。
どんな茶番でもお遊びでも・・
・・・・・・・・・
どんな茶番でもお遊びでも・・
・・・・・・・・・
号砲と同時にたった一人の障害物競争が始まる。
そもそも30kmの能力なしのランナーの世界記録は約1時間26分
それを60分で妨害されながら走ること自体が相当なレベルだ。
そもそも30kmの能力なしのランナーの世界記録は約1時間26分
それを60分で妨害されながら走ること自体が相当なレベルだ。
サイコキネシスト(念能力者)がマンホールや看板を私にぶつけてくるのを
ぎりぎりレベル4どまりに抑えた磁力で躱す。
火炎や、電撃、氷あらゆる能力者がスタート地点で妨害を図る。
敵は、無粋にもどうやらスタートさせないことに全力を尽くしているらしく
レベル3~レベル4弱の多彩な攻撃が私を翻弄する。
それに・・
射撃の発射音やヘリのシャフトの回転音、敵は私を殺そうとでもしているのだろうか・・
(武装ヘリやスナイパーまでいると・・)
(だけど・・ようはレベル4程度の様々な手段を使えばいいだけの話よね)
ぎりぎりレベル4どまりに抑えた磁力で躱す。
火炎や、電撃、氷あらゆる能力者がスタート地点で妨害を図る。
敵は、無粋にもどうやらスタートさせないことに全力を尽くしているらしく
レベル3~レベル4弱の多彩な攻撃が私を翻弄する。
それに・・
射撃の発射音やヘリのシャフトの回転音、敵は私を殺そうとでもしているのだろうか・・
(武装ヘリやスナイパーまでいると・・)
(だけど・・ようはレベル4程度の様々な手段を使えばいいだけの話よね)
私は、小細工を弄し、活路をこじ開け始める。
筋肉を操作し、細かなステップで多彩な攻撃を躱す。
そしてある程度スペースを確保したところで、攻撃に転じる。
筋肉を操作し、細かなステップで多彩な攻撃を躱す。
そしてある程度スペースを確保したところで、攻撃に転じる。
まず厄介なスナイパーをぎりぎりレベル4どまりに抑えた3億V未満の電撃で打ち倒す。
ヘリを磁力でロータ制御装置を破壊し、撃墜させる。
ヘリを磁力でロータ制御装置を破壊し、撃墜させる。
さらに、人間の脳は、想像以上に音響や、電磁波に弱い。指向性のある音波で、演算を妨害する。
生体電流を操り同士討ちを誘い、残り物の能力者が自滅を始める。
生体電流を操り同士討ちを誘い、残り物の能力者が自滅を始める。
瞬く間に残機が減り、この段階でほぼすべて攻撃が止み、その間隙を縫って、磁力線に沿って体を時速49KMで移動させる。磁力線をワイヤーのように、見えない糸を伝って、結構な高速で戦場を離脱する。
(それに条例違反は・・排除する権利はあるわよね)
私は、インカムを使って、初春飾利へ指示を出す
「もう泳がせる必要はない、条例違反者を全員摘発して」
「了解です」
2分もしないうちに、業務完了の連絡がインカムから伝わる。
(別に銃や戦闘ヘリなんかこわくないけど、・・観客に怪我をさせるわけにはいかない)
私は、インカムを使って、初春飾利へ指示を出す
「もう泳がせる必要はない、条例違反者を全員摘発して」
「了解です」
2分もしないうちに、業務完了の連絡がインカムから伝わる。
(別に銃や戦闘ヘリなんかこわくないけど、・・観客に怪我をさせるわけにはいかない)
今回の茶番劇の目的のひとつに、私の手足足かせを利用して私を殺害しようとする
テロ集団をあぶりだすこともあるのだから・・
・・・・・・・
テロ集団をあぶりだすこともあるのだから・・
・・・・・・・
御坂美琴が大人の事情でくだらない茶番劇を行っているころ、上条当麻はくだらない
女達の復讐劇が始まるのを待っていた。
美琴には、人手は余っているからいいとは言われたが、どうしても気になり、競技をキャンセルして犯行予定現場へ向かう。
女達の復讐劇が始まるのを待っていた。
美琴には、人手は余っているからいいとは言われたが、どうしても気になり、競技をキャンセルして犯行予定現場へ向かう。
単純に言えば、美琴がレベル5の能力を使えない隙を利用して暗殺を企てる
それだけの話。普通に考えれば人工衛星で常に動向を監視されている殺害対象を
いくらレベル5の能力が使えない状況とは言え殺害するなど無謀の極み。
それだけの話。普通に考えれば人工衛星で常に動向を監視されている殺害対象を
いくらレベル5の能力が使えない状況とは言え殺害するなど無謀の極み。
だが、復讐の鬼にそんな道理が通用するはずもなく、女達は凶行に至ろうとしている。
麦野沈利は、ゴール地点を見下ろす、超高層ビルの屋上でターゲットの到着を待ちかねて
いた。空中を効率的に浮遊する能力を持たない、麦野が、一撃必殺で強敵を葬る確実な
方法は、相手が確実にいる場所に、能力暴走体晶を使い強度をかさ上げした原子崩しで葬ることになる。
しかも・・相手は干渉値の制限を受け、能力に制限がある状態。
いた。空中を効率的に浮遊する能力を持たない、麦野が、一撃必殺で強敵を葬る確実な
方法は、相手が確実にいる場所に、能力暴走体晶を使い強度をかさ上げした原子崩しで葬ることになる。
しかも・・相手は干渉値の制限を受け、能力に制限がある状態。
麦野は、再編された暗部で、実質的に格下げに近い扱いを受け、学園都市殊に、暗部
を再編した美琴に逆恨みに近い感情を抱いていた。
その恨みの感情が本来は、冷静で怜悧なはずの麦野の思考を狂わせる。
を再編した美琴に逆恨みに近い感情を抱いていた。
その恨みの感情が本来は、冷静で怜悧なはずの麦野の思考を狂わせる。
「来た・・」
麦野は、AIMストーカの滝壺の支援を受け、美琴の到着を確信する。
2発目はない。慎重にゴール地点へ照準を合わせる。
なんとかゴールに時間ぎりぎりに到着しようとしている美琴に気がついた様子はない。
「よし・・向こうは気がついていない・・」
麦野は、AIMストーカの滝壺の支援を受け、美琴の到着を確信する。
2発目はない。慎重にゴール地点へ照準を合わせる。
なんとかゴールに時間ぎりぎりに到着しようとしている美琴に気がついた様子はない。
「よし・・向こうは気がついていない・・」
麦野は原子崩しのエネルギーを充填し、発射態勢を整える。
圧倒的有利を確信し麦野の顔が喜色に歪む。
それに・・
思えば、3年前に順位がぬかされて以来、あの女が憎らしくてしょうがなかった。
同系統、同性、はっきり言って器用なだけで持て囃される御坂が気になってしょうがない。
(だから・・ここでアイツを一撃で殺す)
よし・・麦野は勝利を確信しほくそ笑む
だが・・
それに・・
思えば、3年前に順位がぬかされて以来、あの女が憎らしくてしょうがなかった。
同系統、同性、はっきり言って器用なだけで持て囃される御坂が気になってしょうがない。
(だから・・ここでアイツを一撃で殺す)
よし・・麦野は勝利を確信しほくそ笑む
だが・・
え?・・・
麦野は起きたことが理解できなかった。
原子崩しが・・届かない・・
まちがいなく御坂美琴を貫いた一撃必殺の原子崩し、・・だがその光芒は標的に届く前に
上空へ弾かれ虚空へ消え去る。
麦野は起きたことが理解できなかった。
原子崩しが・・届かない・・
まちがいなく御坂美琴を貫いた一撃必殺の原子崩し、・・だがその光芒は標的に届く前に
上空へ弾かれ虚空へ消え去る。
何事もなかったように、ゴールテープを切る御坂美琴、麦野は天を仰ぐ。
人工衛星ですべて監視されている学園都市、言い逃れようもない。
風紀副委員長への紛れもない殺人未遂。
人工衛星ですべて監視されている学園都市、言い逃れようもない。
風紀副委員長への紛れもない殺人未遂。
やがて原子崩しを弾いた光学迷彩を施した磁性シールドの姿を視認し、麦野は
仕組まれた茶番に気がつく。
(糞・・あの女全部分かっていたのか・・)
そして、音もなく近づいた複数の風紀委員が視界に現れる。
仕組まれた茶番に気がつく。
(糞・・あの女全部分かっていたのか・・)
そして、音もなく近づいた複数の風紀委員が視界に現れる。
男が、低い声で罪状を告げる。
「そこまでだ麦野、アンタは終わりだ。」
・・・・・・・・・・・
俺は美琴が無事ゴールへ到達したのを確認して胸をなでおろしていた。
罠とは言え、自分の命を天秤にかける度胸のよさと言うのか無謀さに呆れる。
「さて・・言い訳は本部で聞くとして、さっさと手を挙げて投降してくれないか?」
「テメエの犯行はすべて動画に映像・会話が撮られている」
「そこまでだ麦野、アンタは終わりだ。」
・・・・・・・・・・・
俺は美琴が無事ゴールへ到達したのを確認して胸をなでおろしていた。
罠とは言え、自分の命を天秤にかける度胸のよさと言うのか無謀さに呆れる。
「さて・・言い訳は本部で聞くとして、さっさと手を挙げて投降してくれないか?」
「テメエの犯行はすべて動画に映像・会話が撮られている」
俺は淡々と事実だけを告げる。腐ってもレベル5、不利と判断すれば自分から引く
だろう。たくらみは玉砕し、逆転の目がないことさえ認識させれば
だろう。たくらみは玉砕し、逆転の目がないことさえ認識させれば
麦野は、それでも・・目に籠った復讐の炎を消さない
「ふ・・正義の味方御坂美琴の婚約者、上条当麻参上か、カッコつけやがって」
「テメエと後ろの風紀委員皆殺しにして学園都市の外へ脱出するだけよ」
「ふ・・正義の味方御坂美琴の婚約者、上条当麻参上か、カッコつけやがって」
「テメエと後ろの風紀委員皆殺しにして学園都市の外へ脱出するだけよ」
(腐ってやがる・・たった1度の完膚なき敗北がここまでコイツを狂わせるのか・・)
「上条・・2度負けるほど私は弱くない、覚悟しろ」
俺は、後ろに控える風紀委員を下がらせ麦野に対峙する。
「上条・・2度負けるほど私は弱くない、覚悟しろ」
俺は、後ろに控える風紀委員を下がらせ麦野に対峙する。
麦野は拡散支援半導体を配置し、いつでも原子崩しを発射する態勢を整える。
麦野が、口を開く
「なあ上条、・・お前は婚約者をどこまで知っている?」
「は?」
「まさか・・あの笑顔を振りまいている、人畜無害なアイドルフェイスがアイツの本性
なんて思っていないだろうな」
「なあ上条、・・お前は婚約者をどこまで知っている?」
「は?」
「まさか・・あの笑顔を振りまいている、人畜無害なアイドルフェイスがアイツの本性
なんて思っていないだろうな」
「ふ・・つまんねえ、精神攻撃だな・・知っているよ、アイツの本性くらい。」
麦野の綺麗な女子大生のような端麗な顔が醜くゆがみ始める。
「ならなぜアイツを断罪しない。御坂美琴の手は真っ黒に汚れている」
俺は、アイツの敵対者のありきたりな断罪の世迷言に内心腹を立てる。
麦野の綺麗な女子大生のような端麗な顔が醜くゆがみ始める。
「ならなぜアイツを断罪しない。御坂美琴の手は真っ黒に汚れている」
俺は、アイツの敵対者のありきたりな断罪の世迷言に内心腹を立てる。
「愚問だな、・・アイツは・・自分の過ちを決して忘れないからだ」
「そして、真摯に自分の犯した過ちを人にせいにせず自分の過ちとして受け止める心の
強さを持っている」
「だから・・俺は何があろうとアイツを信じる」
「ふ・・つまんねえなあ・・恋は盲目か・・だがな上条、御坂美琴は・・一度は世界を・」
「そして、真摯に自分の犯した過ちを人にせいにせず自分の過ちとして受け止める心の
強さを持っている」
「だから・・俺は何があろうとアイツを信じる」
「ふ・・つまんねえなあ・・恋は盲目か・・だがな上条、御坂美琴は・・一度は世界を・」
「それは過去の事、本人に責任はない、単なる事故だ」
俺はきっぱりと婚約者を擁護する。
俺はきっぱりと婚約者を擁護する。
麦野は歪めた顔から、場違いな気色悪い声音で、クスクス笑い始める。
「甘いな・・テメエは超荷電粒子砲の本当の威力を知っているだろう。
アイツは自分の意思でいつでも70億人を抹殺できる奴だ」
「まあいい、お互いの正義を語ってもしょうがねえ、死ね 」
「甘いな・・テメエは超荷電粒子砲の本当の威力を知っているだろう。
アイツは自分の意思でいつでも70億人を抹殺できる奴だ」
「まあいい、お互いの正義を語ってもしょうがねえ、死ね 」
麦野は頭部の周辺に莫大な電子を蓄え、原子崩しの発射態勢を整える。
拡散支援半導体で拡散させれば、右手一本しか武器のない俺は、全身を光線に貫かれ
死ぬと。
(まあそんなとこだろうな)
莫大な、まばゆい光芒が・・あたりをつつみ光圧さえ感じるほどの圧迫感
破壊力だけなら、大したものだ。戦艦を一撃で葬ると言われるほどの威力
拡散支援半導体で拡散させれば、右手一本しか武器のない俺は、全身を光線に貫かれ
死ぬと。
(まあそんなとこだろうな)
莫大な、まばゆい光芒が・・あたりをつつみ光圧さえ感じるほどの圧迫感
破壊力だけなら、大したものだ。戦艦を一撃で葬ると言われるほどの威力
だが・・
(遅いなあ・遅すぎる)
(遅いなあ・遅すぎる)
美琴や木原唯一の攻撃を見慣れた俺には麦野の動作が止まっているように見える。
慣れだろうか・・AIMの制御による力場を俊足で感知できる俺には、見えないはずの
力場の振動が、力の波動がはっきりわかる。
慣れだろうか・・AIMの制御による力場を俊足で感知できる俺には、見えないはずの
力場の振動が、力の波動がはっきりわかる。
俺は、右手を麦野向け、発射寸前の原子崩しを丸ごと抑え込む。
唖然とした表情で麦野が立ち尽くす。
唖然とした表情で麦野が立ち尽くす。
「お前が、原子崩しで全部壊せるなんて幻想は俺がぶち殺す」
俺の右アッパーがさく裂し、心が砕けた麦野はただの人形のように脆くも崩れ落ちる。
俺の右アッパーがさく裂し、心が砕けた麦野はただの人形のように脆くも崩れ落ちる。
・・・・・・・・・・・・・・
レースが終わり、長点上機とのある意味茶番だが、死闘を制した美琴が
表彰式を終え、俺の元へ駆け寄る。
レースが終わり、長点上機とのある意味茶番だが、死闘を制した美琴が
表彰式を終え、俺の元へ駆け寄る。
その後予定されていた2試合は長点側がみじめな敗北で終わることを恐れ、放棄となり
この時点で常盤台の総合優勝が確定する。
この時点で常盤台の総合優勝が確定する。
すでに美琴の個人優勝は確定しているので常盤台は2冠となり、常盤台を代表して
美琴が学校部門の優勝旗と個人総合優勝のメダルを受ける。
「美琴、優勝おめでとう」
「全部、麦野を排除した当麻のおかげよ」
待合室へ俺を連れ込んだ、美琴が、俺の腰に手を回す。ごく自然にイチャイチャ
し始める。軽く唇を頬に接触させる。
「ご褒美のキスかな」
美琴が学校部門の優勝旗と個人総合優勝のメダルを受ける。
「美琴、優勝おめでとう」
「全部、麦野を排除した当麻のおかげよ」
待合室へ俺を連れ込んだ、美琴が、俺の腰に手を回す。ごく自然にイチャイチャ
し始める。軽く唇を頬に接触させる。
「ご褒美のキスかな」
俺は照れ隠しに憎まれ口をたたく
「まったく、そのうち投稿サイトにのるぞ」
「いいじゃない、どうせ婚約者でしょ、それに・・初春さんがなんとかするでしょ」
「まあそうだが・・」
美琴はさらに体を密着させる。
「まったく、そのうち投稿サイトにのるぞ」
「いいじゃない、どうせ婚約者でしょ、それに・・初春さんがなんとかするでしょ」
「まあそうだが・・」
美琴はさらに体を密着させる。
「でも、本当助かったわ・・」
俺は、用意周到な美琴が万事滞りなく打った芝居の種明かしをする。
俺は、用意周到な美琴が万事滞りなく打った芝居の種明かしをする。
「どうせ、本当は光学迷彩電磁射出ステルス弾で射撃する予定だったんだろう」
「あら、分かっていた」
美琴がいたずらのばれた、子供のようなまばゆい笑顔を返す。
「あら、分かっていた」
美琴がいたずらのばれた、子供のようなまばゆい笑顔を返す。
「麦野は下半身くらい飛ばされても文句は言えないわよね」
美琴の笑顔に少々影が浮かぶ。
「殺したところで刑法36条の正当行為で免罪される」
美琴の笑顔に少々影が浮かぶ。
「殺したところで刑法36条の正当行為で免罪される」
「美琴・・」
美琴が自嘲気味に話しを紡ぐ
「私は、危なく麦野を殺しかけた」
「正義という名の合法的な権力でね」
「だから・・それを止めてくれた当麻には感謝よ」
俺は美琴の心情の吐露を黙って聞く。
美琴が自嘲気味に話しを紡ぐ
「私は、危なく麦野を殺しかけた」
「正義という名の合法的な権力でね」
「だから・・それを止めてくれた当麻には感謝よ」
俺は美琴の心情の吐露を黙って聞く。
「私は、これから何度もこうやってこの街の歪みや悪意にさらされ続ける」
「独裁者が、食い散らかした箱庭を正常化するには並大抵の努力では解消しない」
「だから・・」
「独裁者が、食い散らかした箱庭を正常化するには並大抵の努力では解消しない」
「だから・・」
美琴の目からわずかに涙が零れ落ちる。だがすぐに表情をもとに戻す。
眼圧を感じるほどの、真摯なまなざしで美琴が俺を見つめる。
眼圧を感じるほどの、真摯なまなざしで美琴が俺を見つめる。
「当麻にだけは、私の事を信じてほしい」
「そして、支えてほしい」
「そして、支えてほしい」
「ああ、婚約したその日から・・俺は何があっても美琴とともに生きると決めた」
「だから・・ともに、駆け抜けよう。何が起きてもな」
「だから・・ともに、駆け抜けよう。何が起きてもな」
俺は、美琴の小さなだが、大きな運命を背負った肩を寄せ、腕を回す。
抱擁しながら、汗を吸った体操着越しに鼓動を感じ、声をかける。
抱擁しながら、汗を吸った体操着越しに鼓動を感じ、声をかける。
「死ぬときは一緒だ」
「当麻、・・・これからも頼りない私を支えてね。お願いよ」
「当麻、・・・これからも頼りない私を支えてね。お願いよ」
美琴の瞼からきらきらと眼光が輝き、しっかりとした足取りで、祝賀会場へ
向かう。俺はそんな美琴を支えて生きていこうと心から誓う。
道のりの険しさと、やりがいを感じ、不思議な充足感を感じながら
向かう。俺はそんな美琴を支えて生きていこうと心から誓う。
道のりの険しさと、やりがいを感じ、不思議な充足感を感じながら
続く