とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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闇の中のゲコ太パンツ



「しっかし、すごい怪我だったねー、白井さん」
「ほんと無茶しすぎですよね」
「高レベル者って危険と隣り合わせってのが分かったなあ…金属の棒が突き刺さるなんて…ブルブル」
「それでも全然挫けてないところが、強いですよねえ」
「うん」
初春飾利と佐天涙子は、白井黒子の見舞いの帰りである。
結標淡希との死闘で大怪我を負った白井黒子は、数日後の大覇星祭には確実に参加できないようだ。

「私としては、『助けてくれた殿方』さんの話が気になってたけど、突っ込めなかった」
「言葉を濁していましたね~、白井さん。御坂さんの知り合いっぽいニュアンスでしたけど」
「む~、気になる」
等と話していると、ちょうどその御坂美琴の姿が見えた。
どうやらスポーツ用品店の中を窺っているらしい。

「あれ?御坂さん…何してるんでしょう」
「初春、こっちこっち。ちょっと隠れて見てみよう。何もなさそうなら声かけよ」
佐天たちは、自動販売機の影に隠れ、様子を窺う…


御坂美琴は店のロゴの入った手提げ袋を下げている。
中には、丁度今購入した「衝撃吸収テーピング・オメガジェル」が2セット、本日新発売の品である。
大覇星祭で使うかどうかはまだ未定だが、興味があって買ってみたのだ。

自分が買った2セットで、ワゴンの中は売り切れた。
『卵を落としても、卵が割れない!』という売り文句の効果に期待して、予備も押さえておこう、
と思ったのであるが…

『よ、御坂』
『あ、アンタか。買い物?』
『ああ、ちょっとな』
店を出た途端に、上条当麻とすれ違った。そのままさっさと上条は店内に入っていった。
そのままガラス戸ごしに、美琴は上条を観察していたが…ワゴン前で頭を掻いている姿を見て、ギクリとする。
(あの馬鹿も、狙いはコレかしら…)

佐天たちは、そんな美琴をじっと観察している。

上条はトボトボと、「不幸だ…」とつぶやきながら、店を出てきた。
「ね、アンタ。ひょっとしてコレが欲しいの?」
美琴は袋から『オメガジェル』を取り出し、上条に見せびらかす。
「あーーっ!まさかテメエが買い占めたのかっ!」
「失礼ね!2つしか買ってないわよ!」
「1つで十分だろーが!カミジョーさんは年柄年中怪我しまくってて、この商品を待ちわびてたっていうのに!」
「知らないわよ馬鹿!どーせすぐ治るんでしょ!」
「くっそーー…不幸だ…」
上条は肩を落として、回り右をして、立ち去ろうとした。

「ちょ、ちょっと待って!え、えーと」
上条が首だけを美琴に向ける。
「一つお願いを聞いてくれたら、これ1コあげる。お金もいらない」
「な、なに!? 御坂サマ、それは本当ですか!」
「うん、性能も試せて、普段の恨みも晴らせて…うっふっふっふっふー」
「…ちょっと、御坂さん…?」


美琴と上条は、並んで歩く。どうやら土手の方へ向かっているようだ。
佐天と初春は、にまーっと笑いながら、こそこそとつけてゆく…

「ちぇいさー!」
美琴の上段右回し蹴りが上条に炸裂する。上条は左腕でガードする。
「やっはー!気持ちいー!」
「お前な…」

お願いとは、『人間サンドバッグ』だった。
美琴は常識レベルで何でもあり。上条はデコチョップだけ認められた。
美琴は上だけ脱いで、動きやすい格好だ。スカートと短パンのセットはいつも通り。
衝撃吸収テーピングはお互い、手・腕・膝・脛・足首・足に巻きつけてある。
薄くしか巻いていないのだが…
「確かにスゲエぞこれ。衝撃はくるけど、受けた位置がピンポイントで痛いとか、そういうのがない」
「私も思いっきり蹴ってるけど、足首に衝撃残らないわ」
「思いっきり蹴るなテメエ!」

何でもありだったが、美琴はジャブ的なもの以外は蹴りしかしてこなかった。
しかも左からの蹴りは全くなっておらず、形も威力も子供レベルだった。
当然、得意の自販機蹴り…上段右回し蹴り中心の攻撃になる。
スキを見てデコチョップを入れると、プッとふくれて、またムキになって蹴ってくる。
(なんか…楽しくなってきたぞ)

元々スキルアウト等、様々な人間とタイマンを張ってきた上条である。
中学生の女の子の蹴り、さらにテーピングもあれば、受け損なってもダメージは明日に残るほどもない。
(ま、たまにはこんなのも、おもしれーな)
その時、上条は見た。
お決まりの上段右を止めた時――

美琴の短パンの隙間から、ちらっと、パンツが。

意識しだすと止まらない。
美琴の上段を止める度に、確認する。見える。
スラッとした美脚が繰り出す蹴りの角度は、まさに上条の視線とクロスしていた。
(もう少し深くで防御すれば、もっと見れる!)
悲しき男のサガ――上条とて、逃げられるものではなかった。元々、御坂妹の時に片鱗は見せていたが。
(柄は…何やらカラフルな…何のプリントだ…?)
と、余計な事を考えていると。

美琴のつま先が上条の後頭部にヒットし、上条は吹き飛んだ。
受けが疎かになったせいであり、天罰以外の何モノでも無い。

「どぐあああああっ!」
「だ、大丈夫!?」
まさかパンツみてて受け損ないました、とは死んでも言えない。
「あ、いや、心配すんな。ちょっと腕が痺れてきたかな。ちょっと休もうぜ」
「う、うん…」
蹴りをそのまま受けたのではなく、幾分か腕で衝撃を吸収してから当たったので、ダメージはわずかだ。
美琴の目が曇っているのを見て、上条は当てる程度のデコチョップを放つ。
「本当に大丈夫。ダメージねーよ」
「…分かった。ちょっと飲み物買ってくる!」
美琴は駆け出していった。


佐天と初春は、うーんと首を傾げる。会話は微かに聞こえる距離から隠れて見ていたのだが…
「何なんですかね、あのお二人は」
「なんでバトってるのかな。男と女のバトルって、これじゃないでしょー」
「でも何て言うんですかね…ものすごく御坂さんリラックスしてるというか、あたし達と居る時と、ちょっと違う」
「なんだろーね、どこが違うかはわかんないのに、明らかに違うよね」
「やっぱ、恋人だから?」
「かしらね!」

美琴はコンビニまで走ってきたらしく、ドリンクの他にスポーツタオル等も買い込んできたようだ。
スポーツドリンクを上条に手渡し、座っている上条の横に並んで、タオルを首にかけて自分のドリンクを飲みだす。
「ぷはー、おいしー♪」
「そりゃあれだけ動いてのスポーツドリンクはウマイだろ」
「ひょっとして楽しんでるの、私だけ…?」
「いや、楽しい事は否定しねーけど、不公平感は感じる」
「あっははー。そりゃ報酬あるんだもん、諦めて貰うしかないわー」
パンツを楽しんでおいて、不公平とかどの口が言ってるのか状態である。

「あとちょっと、今度はローリングソバット試させて」
「お前、どこまで自動販売機いじめる気だ」
「アンタ専用よ。呼んでもスルーされた時、電撃は周りに迷惑だし、回し蹴りは届きにくいし」

―――バトル再開。
美琴は見よう見まねでローリングソバットを繰り出してくる。
一言で言えば、得意の右回し蹴りを逆回転にし、ジャンプと組み合わせれば、ローリングソバットだ。
「うーん、それじゃただの後ろ回し蹴りだぞ。」 ジャンプが足りないのだ。
「むー」
少し美琴は離れ、ブツブツ言いながら何やらジャンプ蹴りなど試している。

上条は美琴のLV5の片鱗を見たような気がした。
悩み方に無駄がなく、すぐ吸収する。
下手に教えると、自分の首を締めかねない気分になってきた。

「わかった。いっくぞー」
美琴はスッと身を屈める様な体勢を取ったと思うと、回転して上条の顔面に飛び後ろ蹴りを繰り出してきた!
速い!
「くっ」
上条は思わずかわしてしまった。美琴の右脚は上条の右耳をかすめてゆく。
「え?」
受けてもらえると思っていた美琴の体は、浴びせ蹴りのような体勢で、そのまま上条にぶつかっていった……


とっさに左手で後頭部をかばい、テーピングのおかげもあってダメージはなかった。少し背中が痛い。
しかし倒れ込んだ今の状況の把握ができない。
…? なにやら柔らかいものが乗っかっている。
右手はすべすべした柔らかい…顎と言うか首には更に柔らかい…

……!

上条の目の前には美琴のお尻が。そして右手は美琴の右太股を撫でていた…

美琴は、カエルのように仰向けになっている上条の上に、大股開きで座っていた。


(死んだ…な。これは死んだ。これはカミジョーさん終わっちゃったね)
怒りに震えた美琴の来るべき総攻撃を前に、賢者モードになっていた。
しかし、いつまでたっても美琴は動かない。さすがにどういう状況かは分かってるはずだ。

「み…御坂?」
上条は少なくとも右手を自由にしようと、右を強引に抜いた途端、
「ぐひゃああああああああああああ!」
実はあまりの恥ずかしさにふにゃー状態で漏電していた美琴の電撃が。
イマジンブレーカーが解けた瞬間に、固定されて動けない上条の体に一気に流れ込んだ!
右手を美琴の体に再度触れようとしても、痺れて動けない。

何か2人の女の子が駆け寄ってきたような気がしたが…
そのまま上条は気を失った。

上条当麻は目を覚ますと…また病院だった。いつもの病室だ。

傍には、御坂美琴と、見知らぬ女の子が座って、心配そうに見つめている。
「あの…大丈夫?」
「ん…特になんともない、かな」
特に体に違和感はない。
「軽症の感電症らしいですよ。もう数時間で退院できるって先生が言ってました」
「そっか。君…が助けてくれたのかな。ありがとう」
「さ、佐天です!もう一人います!初春って子ですけど。御坂さんのお友達、やってます」

上条は頷くと、美琴に苦笑いを浮かべながら話しかける。
「しかし、久々にくらっちまったな…」
「だって、アンタが、あんなこと…お尻……もうお嫁に…」
美琴は真っ赤になって、うつむいてブツブツ言っている。
佐天はピーンときて、美琴に問いかける。
「ひょっとして、ですけど。白井さんを助けた殿方、ってこの人ですか?」

「忌々しいですけど、その通り、ですの」
白井黒子が車椅子に乗りつつ、初春が引いて病室に入ってきた。
「ごきげんよう、カミジョーさん」
「ああ、白井も口は元気そうだな」

「あーもう、漏電で人を感電させるなんて、ほんっとサイテー…」
「そもそも何故漏電したんですの?」

初春は黒子に耳打ちしている…
「お姉様とくんずほぐれつ?恥じらったお姉様が漏電?何ですのそれ!?」
「ちょっと待てそこの花っ娘!」
「初春さん!それちょっと違う!」
「そもそも最初から君ら、見てたじゃねーか。ちゃんと説明できるだろ!」

「…へ?」
「…ばれてました?」
佐天と初春は、顔を見合わせる。
「バレバレ。別にこっちは見られて困ることしてねーし、ほっといたけどさ」
「私気付かなかったわよ!ど、どうして?」

佐天は諦めて白状した。
同時にそれは黒子への説明にも繋がり、黒子もひとまず今回のことはアクシデントだと了解したようだ。
「それにしてもお姉様、殿方に格闘を挑むとか、黒子には全く理解できませんの」
「うっさいわね!いっぺんやってみたかっただけ!」
「でも上条さんって紳士ですねえ。さりげなく御坂さんの体に触れようとか一切ありませんでしたし」
「そうそう!カミジョーさんは硬派な紳士ですよ。よく見てるねえ、うんうん」
「それはお二人が見てたの知ってたからじゃないんですの?中身は類人猿ですわよ?」
「誰が類人猿だ誰が!」

少し黙っていた佐天が口を開く。
「…紳士? ねえ上条さーん。戦ってる間の視線の話って、しちゃっていーですかあ?私、眼だけはいいんですヨ」
ギックウウ! 上条の表情が一気にこわばる。
「佐天さん、でしたね…? えーと、近いうちに、甘いものでも食べにいきませんか?ハハハ…」
「わっかりました~。是非是非♪ あ、連絡先書いておきますね♪」

「…なに今の話?私にはサッパリわかんないんだけど?」
美琴が明らかに不穏な空気を漂わせている。
「わかんなくていいです! ホラ、いい夕日ですよ!これなら大覇星祭は晴れるなあ~」
「ここまで話を逸らすの下手な方、初めて見ました、ですの…」


上条は小さく『ダイジョウブ!元気だして~♪』と口ずさみつつ、エンディング顔で窓の外を眺めている。
――頭の中であのパンツを再構築しながら。


おしまい


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